No.669903

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

soranoさん

第36話

2014-03-11 17:31:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:978   閲覧ユーザー数:937

~女王宮・テラス~

 

「驚いたな……。まさかここまでやるとは。」

地面に膝をついているロランス少尉はエステル達を称賛するかのように口元に笑みを浮かべていた。

「はあ、はあ……なんとか勝った~!」

「うふふ、強かったけど所詮は一人。レン達が協力すればどんな強敵が来てもへっちゃらよ♪」

「フウ………アリエッタさんが一番の功労者ですね……」

「ええ。彼女のサポートがなければ負けていたのはあたし達だったでしょうね。」

ロランス少尉に勝利した事にエステル達はそれぞれ喜んだり安堵の表情をしていたが

「油断しないで、下さい。”剣帝”が、”この程度”で無力化できるとは、思えません……!」

アリエッタは警戒の表情でロランス少尉を睨んでいた。

 

「け、”剣帝”……?」

「……もしかして知り合いなのかしら?」

アリエッタが口にした言葉を聞いたエステルは戸惑い、シェラザードは真剣な表情でアリエッタに尋ね

「フッ、そう警戒しなくても先程の雷撃を受けた影響で満足に剣を振るう事もできん。」

ロランス少尉は静かな笑みを浮かべて身体を震わせながら立ち上がった!

 

「そ、そんな……!?」

「まだやる気なのかしら?」

倒したと思ったはずのロランス少尉が立ち上がった事にクローゼは驚き、レンは油断なく武器を構えていた。

 

「もうやめて下さい……私はこれ以上、人々が争い、傷ついて行く姿を見たくないのです……」

「……………………………」

そして悲痛そうな表情で言ったアリシア女王の言葉に反応したロランス少尉は黙ってアリシア女王を見つめた。

「………………………………。その瞳……なんて深い色をしているのかしら。まだ若いのに……たいそう苦労してきたようですね。」

ロランス少尉の目を見て何かを感じ取ったアリシア女王はロランス少尉を哀れんだが

「………………………………。女王よ、あなたに俺を哀れむ資格などない。『ハーメル』の名を知っているあなたには……」

「!?」

ロランス少尉の口から出た予想外の言葉を聞き、血相を変えた。

 

「さてと、そろそろ時間だ。お望み通り、女王陛下は返してやろう。」

「へ……!?」

「大佐を止めたければ地下に急いだ方がよかろう。もはや手遅れだろうが……。無用な被害が広がるのを食い止められるかもしれん。」

「地下に……まさか、あの場所から地下に降りたという事ですか?」

ロランス少尉の話に反応したアリシア女王は驚きの表情で尋ね

「フ……今のあなたならばその意味が嫌というほど判るはず。彼らを導いてやるといいだろう。……それでは、さらばだ。」

ロランス少尉は静かな笑みを浮かべて答えた後高度のあるテラスから飛び降りた!

 

「なっ!?」

「しょ、正気!?」

「諦めて自殺したのかしら?」

ロランス少尉の行動に驚いたエステル、シェラザード、レンはテラスに近づいて見下ろしたがロランス少尉の姿はなかった。

 

「い、いない……。池に落ちたのかな……?」

「それにしては……水面が波立っていないわ……。あの男、いったい……」

「もしかしたら落下しながらワイヤーか何かを使って別の場所から降りたかもしれないわよ。」

「…………………」

エステル達が戸惑ったり考え込んでいる中、アリエッタは真剣な表情で黙り込んでいた。

 

「お祖母さま……お怪我はありませんか!?」

「大丈夫よ、クローディア。乱暴なことはされていません。それよりも……」

クローゼに話しかけられたアリシア女王は微笑んだ後、今後の事を口にしようとした。するとその時

「エステル!」

「2人とも無事か!?」

ヨシュアとルークの声が聞こえた後、二人はエステル達に駆け寄り、二人に続くようにジン、オリビエ、フレン、バダック、ユリア中尉も駆け寄って来た。

 

「ヨシュア!?それにルーク兄も!よかった、無事だったみたいね!」

「エステルの方こそ……。リシャール大佐やロランス少尉が城内にいなかったから心配だったんだ。」

「ああ。てっきりロランス少尉辺りが俺達の方に仕掛けてくると思ったんだが、完全に読み違えてしまったぜ……」

「あの赤ヘルムならさっきまでここにいたけど……」

「え……!?」

「何っ!?」

自分達が警戒していた相手がエステル達と戦っていた事を知ったヨシュアとルークは血相を変えた。

 

「その手すりを越えて飛び降りて逃げていったわ。とんでもない化物ね、あれは……」

「ええ、アリエッタお姉さんの援護が無かったら、レン達が負けていた可能性が高かったわ。」

シェラザードとレンはそれぞれ自分達の力の無さを嘆くかのように疲れた表情で答え

「フッ、さすがだな、アリエッタ。」

「もう子供扱いしないで、下さい。アリエッタも立派な大人、です。」

二人の話を聞いてアリエッタの技量に感心したバダックは静かな笑みを浮かべてアリエッタの頭を撫で、撫でられたアリエッタは気持ちよさそうな表情をし

「クク、そう言っている割には喜んでいるじゃねえか。」

その様子を見ていたフレンは笑いをかみ殺していた。

 

「そ、そうだったんですか……。本当によかった……エステル、君が無事でいてくれて……」

「ヨシュア……」

そして自分の身を案じたヨシュアの言葉を聞いたエステルは顔を真っ赤にした。

「陛下……よくぞご無事で……」

「ユリア中尉……また会えてうれしいわ。それに皆さんも……本当に感謝の言葉が尽きません。」

「フッ、女王陛下。過分なお言葉、ありがたき幸せ。」

「お役に立てたならば幸いです。ですが、まだこれで終わりではなさそうですな。」

アリシア女王の感謝の言葉にオリビエは珍しくも殊勝な態度で受け取り、ジンは会釈をした後真剣な表情で言い

「城内の特務兵は鎮圧しましたがよくない報せが届いています。各地の正規軍部隊が王都を目指しているとのこと……。どうやら、情報部によってコントロールされているようです」

「そうですか……」

ユリア中尉の報告を聞くと表情を曇らせた。

 

「失礼ですが、あまり時間がありません。どうか今すぐ飛行艇でここから脱出なさってください。」

「いえ……それはできません。それよりも……どうやら大変なことになりました。何としても、リシャール大佐を止めなくてはなりません。」

「ど、どういう事ですか?」

「昨夜、大佐と話をしてみてようやく真の目的が判りました。」

「真の目的……?リベールを陰から操ることではなかったんですか?」

アリシア女王の話を聞いたヨシュアは不思議そうな表情で尋ねた。

 

「ええ……どうやら彼は、『輝く環(オーリオール)』を手に入れるつもりのようなのです。」

「『輝く環(オーリオール)』……。そ、それってどこかで聞いたことがあるような……」

「!!」

アリシア女王の口から出た聞き覚えのある言葉を聞いたエステルは首を傾げ、アリエッタは血相を変えた。

 

「古代人が女神から授かった『七の至宝(セプト=テリオン)』のひとつ……。全てを支配する力を持つといわれる伝説のアーティファクトのことですね。」

「ああ、アルバ教授が言ってた……。でもそれって、教会に伝わっているただのおとぎ話なんでしょう?」

「「………………………………」」

そしてヨシュアの説明を聞いて完全に思い出したエステルはアリシア女王とアリエッタに視線を向けたが、二人はそれぞれ重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

 

「え……」

「その様子からすると、どうやらその『輝く環(オーリオール)』って古代遺物(アーティファクト)がリベールに実在しているのですね……それもこの王城のどこかに。」

二人の様子を見たエステルが呆けている中、フレンは真剣な表情で尋ねた。

「古き王家の伝承にはこうあります。『輝く環、いつしか災いとなり人の子らの魂を煉獄へと繋がん。我ら、人として生きるがために昏(くら)き闇の狭間にこれを封じん……』」

「七耀教会も大体同じような内容の伝承が、伝わって、います。」

「この言葉は、代々の国王への戒めとして伝えられてきました。おそらく『輝く環』と呼ばれる何かはその危険性ゆえ、王家の始祖によって封印されたのだと推測できます。そして、王都の地下から検出された巨大な導力反応……。この2つを結びつけて考えたら……」

「王都の地下に『輝く環』が封印されている……。そう考えるのが自然でしょうね」

「ええ……。大佐もそう考えたのでしょう。『輝く環』がどういう物なのかは伝承にも残っていませんが……。もし、蘇らせてしまったら大変なことが起きるかもしれません。それこそ過去に起きたという伝説の『大崩壊』に匹敵する……」

「『七の至宝(セプト=テリオン)』は、他の古代遺物(アーティファクト)と違って、一つでも存在すれば、世界を変えると言われるほどの、古代遺物(アーティファクト)、です。」

「そ、そんな……」

アリシア女王とアリエッタの口から出た壮大な話にクローゼは不安そうな表情をし

「おいおい……とんでもない話になって来たな……」

「参ったわね、こりゃあ……」

「―――だが、リシャール大佐達がまだ手に入れていないのなら、間に合うはずだ。」

「問題はリシャール大佐達がどこにいるか、ね。」

ルークとシェラザードが疲れた表情をして今後どうするか考え込んでいる中、バダックの話を聞いたレンは考え込んでいた。

 

「あ、あの女王様!ロランス少尉は『地下に行け』と言ってましたけど……。あれってどういう意味なんでしょう?」

「このグランセル城には不思議な部屋があるのです……。特に何も保管されていないのに昔から立入禁止とされた場所……」

「あ……」

「宝物庫のことですか!?」

アリシア女王の言葉から心当たりを思い出したクローゼとユリア中尉はそれぞれ声を上げ、その場にいる全員は宝物庫へ向かった。

 


 
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