「君は、私が目の前にいるのに全く私を見ていないな」
ギクリッとした。ティナとの初対面のイベントの時の切り返しといい、王様10年やるだけの事はあるなあ。
この人、馬鹿じゃない。
いい勘してる。支配者でなく指導者の器だ。
まぁ、そうでなければ今頃謀反の1つも起こされて政権交代してるだろうしね。
「フィガロはエドガーさんが王様で幸せですね」
「そうかね?それは嬉しい限りだが・・・どうしてそう思う?」
「兵士や、家臣、エドガーさんの周りの方々を見てればなんとなく・・・
皆さん活気がありますし、伸び伸びとしています。統治者として慕われてるんですね。見るかぎりただのナン
パ師だったんでちょっと誤解してました」
実際に会って見たエドガーは、いかにゲームでは一面でしか無かったのだと痛感する程、多角的だった。
まず、ドットでは金の髪に蒼い目でヒラヒラした衣装という事しか分からず、女性には礼儀として声を掛ける
と言い切る所や、女性を魅了する美貌の持ち主という設定から優男、中性的というイメージを勝手に抱いてい
た。
だが、実際に会ったエドガーは確かに金髪。蒼い目、ヒラヒラした衣装ではあったが全くと云っていいほど女
性的な印象など無く、100%男性にしか見えない。
思わず見た瞬間、「エドガーって男性ぽい」っと云ってしまい。
ポーカフェイスなど絶対条件であろう王族の彼が、片眉を上げさせる事を成功させたくらいだ。
そして家臣の方々のアワアワいった表情も、今考えれば見物だったなと思うのは私が生きてるからだろう。
仮にも突然、爆発と共にその国の統治者の頭上から現れ、それだけならまだしも危害を加えたのだ、普通ならば生きていられないと思う。
ある日、私は、突然ここに飛ばされてしまった。
「ん・・・・」
ここ、どこだろう?なんか目が開けられない。
なんか、コンクリみたいで、下、冷たいしゴツゴツする。
おかしいなぁ?家でクッション抱きつつゲームやってたハズなんだけどな?
「お目覚めかな・・・どうだね気分は?」
「・・・なんか頭の天辺が痛い」
しかもなんで男の人の声してるんだろ?
CDタイマーでも掛けておいたっけ?
それともイベント発生で音声オンになったのかな?
でもやってたのFF6だよね?あれまだ音声機能付いてないし。
「フッ・・安心するといい。私もだ。なんせ私の真上に落ちてきたのだからな」
「は?」
なんで音源が私の云ってる事に返事するの?!
目を見開き、身体を起こすとそこには、金髪碧眼で豪華な衣装に身を包まれた、まさしくゲームや映画でよく
みる「貴族」っぽい身なりのいい人がいた。
周りの態度から見るにこの人が一番上なんだろうなという事も分かる。
それにしても周りも明らかに貴族ぽい衣装で、なんか映画のセットに巻き込まれような気分。
「・・・・ここ、どこ?私、ゲームやっている真っ最中だったハズなんだけど?」
「それはこちらの質問だよ。レディ。潜行中の我が城へどうやって忍び込めたのかな?」
口調は穏やかだが、その眼差しは私の一挙手一投足を見逃すまいとしているのが見て取れた。
多分ここで、妙な動きとかしたら腰の剣でバッサリかもなぁ~~・・・
でもそもそも、私本人が何故ここにいるか理解出来ないのに説明も出来ない訳だし。
だからと云って相手が欲しい答えを云えば満足して貰えるだろうが、確実に私の命も終わる。
というか・・・
「もしかして、これ現実?」
「折角忍び込んだにも関わらず、兵士に囲まれたんだ。夢だと思いたい君の気持ちは分かるが、残念ながらこ
れは現実だ。ゲームなどではない」
駄目だ完全に密航者だと思われてる。その上誤解されてる。
そして私の命のカウントダウンが始まってる!
これは、下手な事云わず正直に云った方がいいよね。
「絶対信じて貰えないと自覚している前提でお話しますが。家でゲームをやっていたら、TV画面が真っ白に
ひかり、気が付いたら頭の天辺が痛かったです」
因みに今も痛いです。
「そんな話私が信じるとでも?」
目を細め、見下ろす蒼い目は冷たい。
「でしょうね・・・私も同じ事云われたら信じられる自信ありません」
目の前で剣を抜くのが見える。
そしてそのまま私の首にヒヤリとした金属が当たる。
見知らぬ所で死ぬのか・・・
「せめて、死ぬ前にここが何処か知りたかったかなぁ・・・」
「フッ・・なにを・・ここがフィガロだと分かって忍び込んだのだろう?」
「分かってないし忍び込んでもいないですよ。しかも命が懸かってるこの状況で、嘘なんて云いません。私死
にたくないんですしね。何度聞いてもゲームをやっていたら画面が白く光って・・・ん?ゲーム?え?フィガ
ロ?ここフィガロ?潜行中ってさっき・・・え?」
まさか・・・・ゲームの中?嘘でしょ?
そう考えると、色々説明は付くし納得も出来る。
命の危険は全く回避されてないけど。
「本当の事を話す気にはなったかな?私とて女性に手荒な真似は極力避けたい」
っという事は、今私の命を握ってるこの人は多分・・・
「・・・・その前に貴方の名前聞いてもいいですか?」
「いいだろう。私の名はエドガー・フィガロ。この城の王だ」
やっぱりーーーーーーーーー!!!
エドガーって最初から味方だしドットだし、面白いイメージだけだけで敵対する事なんて無かったけどまさか
、こんなにも容赦ないとは。
ゲームじゃ少女にも声を掛けようとするただのロリコン女好きにしか見えないのに!!
「分かりました。お話します。私異世界から来ました」
「・・・・・・証拠は?」
「どういった物なら証拠だと認めてくれますか?」
「それは君次第だね。何か異世界の住人と云える物があるかい?」
ゲーム内に飛ばされる予定なんかなかった人間になんという無茶ぶり・・・・
そもそもエドガー、私そんな好きでも嫌いでもないのに。
主戦力で使えるってだけで。
どうせなら「エドガー様大好きv」を豪語するアザミがここに来ればいいのに。
しかも来た早々、そのキャラに余命幾ばくにされるとかあり得ない。
――――とか考えつつも、寿命を延ばす為、頭をフル稼動させる。
♪~~~♪~~~
「ッ」
突如携帯のアラームが鳴った。突然の事に、寿命が縮むかと思っていたら、
「何事だ?!」
動揺したエドガーさんが、私の首に当てていた切っ先も揺らすので、縮むどころか終わりそうになった。
そう云えば、タイマーを掛けていたのを忘れてたっけ。
まさか携帯で死ぬ思いするなんて、セットした時には思いもしなかったよ。
かつ、FF6ってファンタジーゲームのクセに「剣と魔法の国」でなく、「機械と科学の国」だった。
っと云う事は・・・・
「異世界への証拠ですエドガーさん。はい携帯」
彼の目の前にさっきから鳴るそれを私は差し出す。
確か、作って動かすマシーナリーだったし、作るって事はそれなりに機械に詳
しいだろうから、こことは違う原動力を持つ携帯ならいい証拠に・・・・なる
といいなぁ・・・・
まだ死にたくないし。
「ケイタイ?なんだこれは?」
「電話ですね」
「デンワ?」
「私たちの世界の通信機ですね。遠くに離れた相手と交信出来ます」
「・・・・・・」
「うわっ。うさんくさそうな顔!美貌の王が台無しですよエドガーさん」
そんな顔してたら女性逃げちゃうよ。
「・・・・自分が殺されるかもしれないのに、随分とキミは余裕だね」
「なんか色々分かったら、緊張が頂点に達して逆に吹っ切れました。それに・・・・」
「それに?」
ここで私は一端、エドガーさんにだけ聞こえるように声量を絞る。
『もう私、殺す気無いですよね・・・エドガーさん。剣を下ろさないのは警戒を解かない家臣を気遣ってです
か・・・王様なんだから、不審者への処遇や生殺与奪の権限ありそうなのに』
『・・・・・家臣に謀反の隙を作りたくないのでね』
『確かに不審者を王様が即信用なんてしたら、付け込まれますよね。痛くもない腹を探られるのは不愉快です
し、エドガーさんの立場上命取りにもなりかねません・・か』
『聡い女性は嫌いではないよ。それにしても・・さて・・・どうするかな・・・』
やっぱりこの人、馬鹿じゃないなぁ~~・・・ゲームでは一面しか見えないから結構誤解してた。
そんな会話をしていると、私から剣を引き鞘へと戻すと、
「皆の者下がれ。この者の処遇は私が決める」
家臣へと向き直り凛としたよく響く声で告げる。
「さて、君の部屋に案内しようか・・・」
「監禁するつもりですね」
「察しがいいな」
重役さんには「王自らそのようなこと・・・・」とか「いくら女とはいえ危険すぎます。まさかあの者を召抱
えるおつもりでは」とか窘められいた。
それを「私が女ごときに遅れをとると思っているのか?」や「危険な女は嫌いではないな」とかあしらってい
る。
前者の台詞はいいですが、後者の台詞はどうかと思いますよ。
あれ?なんか皆が壁に集まって話し込んでいたと思ったら、エドガーさんだけこちらにやって来た。
うん・・あの顔。
あれはきっと丸め込んだに違いない。
「待たせたね。行こうか」
「・・・・エドガーさん質問は受け付けていますか?」
「私に答えられる事なら構わんよ」
「どうやって家臣の方々丸めこんだですか?さっきまであんなに皆様、不服そうでしたよね」
「丸め込むなんて人聞きの悪い。私はこれでも部下には信頼されてる王のつもりだが?」
「信用されてる王様は「まさかあの者を・・・」とは云われないと思いますよ」
「それもまた、信頼のうちさ」
肩を抱かれ、高い位置からウインクをされる。
「・・・・・・・・・」
ああ、そう云えば城のメイド全員に声を掛けた。って裏設定だかエピソードあったけ。
ならば彼が女好きというのは家臣にも流布されてに違いないし、彼らのエドガーさんに対してのあの反応も納得がいく。
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FF6 エドガーの夢小説です。
途中で終ります。
※注意書きはプロフに書いてあります