No.668556 九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑪~竜神丸さん 2014-03-06 19:40:24 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2027 閲覧ユーザー数:951 |
『お前の望みを言え、どんな願いでも叶えてやろう』
ある日、突然そんな事を言う未知の存在と出くわしたとしよう。
そんな時、あなたは一体何を望む―――
地球、海鳴市…
「「ハッハァーッ!!」」
「泥棒ーッ!!」
街中にて、二人組のスリがバイクに二人乗りして女性のカバンを盗んでいた。女性が叫ぶもスリ達は下卑た笑い声を上げながらバイクで走り去って行く。
「よっしゃあ、今回も上手くいったぜ!!」
「流石だぜ兄貴!! 今度はどいつを狙うよ?」
「そうだな……今度はジジイかババアでも狙ってみっか!」
「そりゃ良いねぇ、最高だ!!」
「「ギャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」」
どうやらこの二人、スリの常習犯のようだ。他人の迷惑も考えずに悪事を働く彼等は、更なる収穫を得るべく次のターゲットになり得そうな民間人を探す。
「お?」
そんな時、スリ達の視界に一人の少女が映る。肩にはカバンを引っ提げており、絶好の狙い目だ。
(兄貴)
(あぁ、次はあのガキだ)
スリ達はバイクのスピードを上げ、少女が持つカバンを狙う。
しかし、そんな二人の悪事もそこまでだった。
「!」
スリ達の気配を察知した少女は後ろを振り向き、近くの建物の壁を蹴って宙に舞う。
「「…へ?」」
呆気に取られたスリ達に対し、少女は彼等の顔面に向かって…
-ドゴゴォッ!!-
「「ほばぁっ!?」」
強力な回し蹴りを炸裂させ、スリ達を吹っ飛ばした。顔面を蹴られたスリ達は地面を転がり、彼等の乗っていたバイクは横転したまま地面を滑り、壁にぶつかってようやく止まる。
「…またスリか。お前、随分と狙われやすいな」
スリ達を蹴り飛ばした少女―――ルイは自身の服装を整える。しかしその雰囲気はいつもと違い、銀色の瞳とメッシュ、そして彼女らしくない男性らしいような口調だった。しかもその台詞は誰かに対してではなく、自分自身に対して話しているかのような感じだ。
「ッ…このガキがぁっ!!」
「やってくれんじゃねぇか、えぇおい!!」
「む…!」
顔面を蹴られた事で逆ギレしたスリ達が、ルイに襲い掛かる。しかしルイは慣れているかのように彼等の振るう拳を回避し…
「げふっ!?」
「な…おごぁっ!?」
一人は鳩尾を蹴られ、もう一人は顎に強烈なアッパーを喰らう。少女がここまで強いと想定していなかったスリ達はあっという間にノックアウトされてしまった。
「他愛の無い」
ルイは服の汚れを払ってから、先程地面に置いたカバンを手に取る。後方からパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。
「…後の事は、警察に任せるとしよう」
ルイはカバンの汚れもしっかり払ってから、その場を後にするのだった。
歩いた道に、身体から砂を零しながら…
一方、
「はぐれイマジンの討伐?」
「えぇ」
厨房で調理中だった支配人は竜神丸から呼び出しを受け、彼から任務内容の説明を受けていた。
「電王の活動している世界から、何体かのはぐれイマジンが他の次元世界に流れ込んだという知らせがありましてね。そのはぐれイマジンの討伐を、あなたにお願いしたいのですよ」
「それは良いが……何故俺だ? それだけなら別に、俺以外のメンバーでも良い筈だが…」
「あなたじゃないといけない理由がある、という事ですよ」
「…俺じゃないといけない理由?」
「詳しい事情は、団長さんから聞くと良いでしょう……そういう訳で」
竜神丸は一枚のチケットらしき物を取り出してから、部屋の扉を開ける。
「ッ!?」
その扉の先には、無限の砂漠が広がっていた。そして…
「お乗り下さい。あなたの分のチケットは、ここにありますので」
「…マジかよ」
竜神丸からチケットを受け取った支配人は、扉の先に広がる空間“時の砂漠”へと足を進めて行く。
時の列車、デンライナー。
次に向かう先は、過去か、未来か―――
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歌姫と守護騎士 序章