No.66776

そして繰り返す…

最後につけた
D.C.
これは音楽用語で
ダ・カーポ
最初に戻ると言う意味ですね

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2009-04-03 11:05:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1034   閲覧ユーザー数:977

 

そして少女は目を覚ました。

 目の前に右手を掲げる。なんどか、手のひらを握ったり開いたりする。

「ここ……どこ……?」

 寝ている体勢から見える景色は、白い地面に白い空。何もない空間がどこまでも続いていた。

 少女は、上体を起こし腕を支えに起き上がった。周りの景色と同じ白い服を身にまとい、短めの黒い髪を揺らした。少女は、きょろきょろと周りを伺う。するとそのとき

「それでは、時が来た…」

 背後で、男の声がした。少女が振り向くとそこには、黒装束をすっぽりと頭までまとった人間が整然と立っていた。男は、腰から、リボルバーを正面に立つ人間へ、白い服を着た少女に向けました。それは、あきらかに、少女を狙い、殺そうとする動きでした。

 当然のごとく少女は、銃を向けられたことに対し恐怖に襲われます。

「あ、あなた誰なの?」

 男は答えます。

「まぁ……いうなれば、殺し屋。黒死装束。…死神?………つーかあっついなこれ。」

 男は、そう答えた後、いったんリボルバーの狙いを少女から放し、かぶっていた装束を開いていた左手で、掻きあげました。中からでできた顔は、白い髪をした、なかなかハンサムな男でした。そしてとぼけたように。

「名前はともあれ…えーと、そう。自分は、あなたを殺します。それが定めですから。それとも…また、命乞いですか?」

 銃を持つ身にしては、実に緊張感のない声です。

「……………」

 少女、男の言っていることが、よく理解できません。何も言うことができない少女に対して、男が妙に楽しそうに言います。

「じゃぁ、決定決定!任務遂行。パターン24」

 かしゃり

 実は、まだ装填されていなかったリボルバーに弾を込めました。そして、少女に向けてピン、とリボルバーを向けました。後は、引き金を引くだけです。

 ようやく、自らの身の危険を理解した少女は、必死の抵抗を見せます。

「いやだ!まだ死にたくない!まだ…!」

 がんばってこれだけ言いました。

 すると男は、ちっとも困っていない声で困りました。

「それは困りますねー。もうあなたは死ぬ運命なんですよ。まだ、まだ生きたいんですか?」

「……………」

 見るとまだ男、リボルバーを向けたままです。

「あぁ、すみませんね」

 再び男は、リボルバーをおろします。

「で、どうするんですか。まだ生きたいんですか?」

「……………」

 少女のこくんとした首肯。

 いきなり死ねと言われて死にたいと思う人間そういません。

 すると男は、あからさまな上から目線で、かつ哀れみの目を少女に向けました。

「…しょうがないですね。それでは、生きる苦しみをあなたに…」

 男は、そういって優雅にお辞儀をしました。

 男の背後から黒い影がものすごいスピードでせまります。

 やがて、闇は二人を包みました。

 

        *      *      *

 

「だいじょうぶ?だいじょうぶ?」

 友達の呼ぶ声に少女は目を覚ました。

 目を開けるとそこには、心配そうな顔で自分を見つめる友達の顔があった。

「もー、いきなり倒れたりするから。みんな心配してたんだよ。」

 少女が答えます。

「うん、だいじょうぶ。変な夢見ちゃった。あはは」

 夏の風がやさしく彼女の髪を揺らしました。

 

        *      *      *

 

 数年がたち大人になった彼女は,否、大人になるはずの彼女の容姿は、なんと夢を見たそのときのままでした。

「こんな人生いやだ…」

 彼女立っているのは、高層ビルの屋上です。ちなみに縁でした。そうまさに彼女は、自らに絶望し、投身自殺を遂げようとしていました。実は、彼女、自らの容姿について、いじめられていました。彼女は、下を覗き込みます。道路を走る車が小さいです。そして、彼女は,元少女は、目をつぶり、ゆっくりと体を前に傾けます。落ちます。落ちました。

 パダ――ン

 そこまで激しくない衝撃音が響き、その光景を目撃した人々から、キャーだの、ワーだのと驚きの声が上がります。

 彼女、アスファルトに撃ち付けられて、まだなお死んでませんでした。むくりと起き上がります。

 最初に見えたのは、かすり傷ひとつない両手。

「え………死んでない……なんで」

 死んでませんでした。それどころか、彼女の体には、傷ひとつないのでした。彼女は、不老不死でした。そして、死ねないことに気づきました。あたりまえですね。 

 

        *      *      *

 

 また数年がたち…

 そこには、昔から前からまったく変わらない容姿の少女。否、少女にしか見えない彼女がいました。

「……死ねない!!」

 暗い、小さな部屋に彼女は、両手で、包丁を手にしていました。ひとつある窓からは、荒涼とした赤い台地が広がっているのがみえます。人類なんて、とうの昔に滅亡していました。包丁は、本来の使い方を無視し、刃先は逆に向けられ、またその先は、彼女の首へと向けられていました。そして勢いよくその刃は、彼女の首にズブリと刃が突き刺さります。一瞬、彼女の体は、びくっと震え、座ったまま倒れます。しかし、

 また起き上がります。彼女が、この数年幾度となく繰り返した行程でした。

「もういやだ!もう生きたくない!もう…!ここまでして!」

 いつ時とはまったく逆の事言ってますが、彼女の本心でした。包丁もって叫びます。

「っ――――――――――!!!!!!!……」 

 彼女泣いてました。可哀相です。その時でした。

「生きるのは…楽しかったですか?おっと、楽しいですか?」

 振り返ると、あのときの男でした。首からかけたネックレスをいじっています。 

「もう…たくさんよ」

「ですよね~。それじゃぁ、パターン24実行していいですか?」

「……………」

 少女のこくんとした首肯

 男はにやりと笑うと言いました。

「それでは、殺し場へと直行いたします。シートベルト…はないですね。出発しんこー」

 そう言うと、ネックレスを首から引きちぎりました。そして、高く放り投げます。

 ピカッ

 ほうられたネックレスから白い光がほとばしります。光は、みるみるうちに二人を包みます。しばらくして、光は、絶頂期に差し掛かります。そこで、男は、こんなことを言いました。

「そうそう、向こうにいったら記憶なくなりますよ。」

「えっ…」

 少女が反応しようとした瞬間、光が完全に二人を包みました。

 

  D.C.

 

 

 
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