No.667748

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

soranoさん

第23話

2014-03-03 19:42:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1002   閲覧ユーザー数:964

~紅蓮の塔・屋上~

 

「グッ、”化物”め……!」

「まさか”獅子王”がこれほどまでとは……!」

「だが、こちらには人質がいる事を忘れていないか?」

ルーク達との戦いで満身創痍になった男達はすぐに立ち上がって気絶しているラッセル博士に武器をつきつけた。

 

「あんたたち!往生際が悪すぎるわよ!?」

「あなた達の目的はラッセル博士の頭脳でしょう。危害を加えてもいいんですか?」

「う、うるさい!本当に傷つけられないのか試してやってもいいのだぞ!?」

エステルとヨシュアの叫びを聞き、半ば自棄気味になった男は銃口をラッセル博士の頭につきつけた。

 

「いい加減、諦めろや!王国軍だって動いている。てめえらに逃げ場はねえんだよ。」

「そうだぜ!特にこのツァイス地方は”レイストン要塞”が近くにある!そろそろ軍の連中がこっちに向かっているんじゃねえのか?」

「……………」

アガットとルークの宣言を聞いた男達は黙り込んだが

「クク……」

「ははは………」

突如不敵な笑みを浮かべて笑い始めた。

 

「……なにがおかしい?」

(まさか………)

笑い続けている男達の様子にアガットは眉を顰め、ある事に思い当たったバダックは厳しい表情をした。

 

「いや、なに。おめでたい連中だと思ってな。それに、我らの”勝ち”だ。」

「なに………」

男の宣言を聞いたアガットは眉を顰めた。

「ハッ!」

「チィッ!」

「ムッ……!」

「エステル、危ない!」

「わかってる!」

その時銃撃が放たれ、ルーク達は後ろに跳躍して銃撃を回避した。すると謎の飛空艇が男達の背後に現れた。

 

「やっぱり、飛行艇!」

「飛行艇だと!?何でそんな物まで持ってんだよ!?」

「クソ、ここまで大がかりな組織だったのか!?」

飛行艇の存在にルーク達は悔しそうな表情をした。

 

「フフ、形勢逆転だな。」

「ここで殲滅するのもいいが、遊撃士協会を敵に回すつもりはない。」

「そこで黙ってみれいれば、命だけは見逃してやるぞ。」

「こ、この~~っ!言わせておけば……」

男達の勝ち誇った笑みを向けられたエステルは今にも飛び出しそうな雰囲気を出していたが

(エステル、ここは彼らの言う通りにしよう。)

(えっ!?)

ヨシュアの忠告に目を丸くした。

 

(奴等に従うフリをして、油断をさせろ。)

(奴等が爺さんを運び込もうとする瞬間、そのタイミングで飛行艇に突入、飛行艇ごと奴等を制圧する。)

(だから、今はこらえろ、エステル。)

(りょ、了解……!)

そして先輩である正遊撃士達の指示に頷いた。

 

「フフ、賢明な判断だ。」

「では、失礼させてもらおう。」

ルーク達の様子を見た男達は次々と飛行艇に乗り込み、最後の一人がルーク達に背を向けてラッセル博士を担ごうとしたその時

(今だ……!)

アガットの号令を合図にルーク達は突撃したが

「だ、だめえ~っ!」

聞き覚えのある少女の悲鳴と共に砲弾が飛行艇に命中した!

 

「なにっ!?」

「ムッ!?」

「まさか……!」

突然の攻撃にアガットやバダック、ルークが驚いたその時、導力砲を両手に持ったティータがルーク達の背後から現れた。

 

「こ、子供!?」

「ティータ!?」

「しまった!レンとは入れ違いになって、僕達に付いてきていたのか!?」

ティータの登場に男達とエステル達、双方は驚いた。

 

「お、おじいちゃんを返してっ!返してくれなかったら……こ、こうなんだからああっ!」

そしてティータは導力砲で連続で砲撃を行い、何度も飛行艇に砲弾を命中させていた。

「ガ、ガキが!俺達の邪魔をするんじゃない!」

その時ラッセル博士の近くにいた男が銃口をティータに向け

「あ……」

銃口を向けられたティータは恐怖によって硬直した。

 

「まずいっ!」

「ティータ!」

「クッ……!」

男の行動を見たヨシュアとエステルが血相を変え、ルークが拳に闘気を込めて振るおうとしたが

「やめろ、小僧!あの位置では人質まで巻き添えを喰らうぞ!」

「!!クソッ!」

バダックに警告され、悔しそうな表情ですぐに攻撃を中断し

「チイイイッ!」

アガットはティータを突き飛ばした。その瞬間、男の銃口から銃弾が放たれ、アガットの腕をかすった。

 

「くっ………!」

「アガット!?」

「アガットさん!」

腕から血を流し始めたアガットを見たエステルとヨシュアは声を上げ

「お、おい!子供を撃とうとするヤツがいるか!万が一こんな事、閣下に知られたらどう言い訳をするつもりだ!?」

「しかもそいつはテスト用の……!」

一方男達の仲間は仲間の行動を咎めるかのように慌てた様子で声を上げた。

 

「す、すまん。船が落とされると思って、つい……」

「まあいい、このまま撤収するぞ!」

そして男はラッセル博士を担いで飛行艇に飛び移った。

「あっ……!ま、待ちなさいよっ!」

「お、おじいちゃあああああん!」

ティータの悲鳴を上げた瞬間、男達を乗せた飛行艇は塔から去って行った。

 

「ヒック、ううっ………」

飛行艇が去るとティータは夕陽を背に涙を流して泣き始め

「ティータ………」

「…………………」

幼い子供が大好きな祖父を攫われた事に悲しむ様子にエステルは悲痛そうな表情をし、バダックは目を伏せて黙り込み

「とりあえず……いったんツァイスに戻ろう。レンにティータの無事を教える事やあの飛行艇の事をギルドに報告しなくちゃ……」

「そうだな……」

悔しさを纏わせるヨシュアの提案にルークは重々しく頷いた。

 

「―――いえ、レンに報告する必要はないわ。」

その時レンがルーク達に近づいてきた。

「レン………一体いつ、こっちに来たの?」

「町に戻ってティータを探したんだけど、どこにも見つからなかったから、もしかしてと思って急いでここまで来たんだけど………どうやら遅かったようね。―――ティータ、辛いとは思うけど一旦戻るわよ。」

エステルに尋ねられたレンは答えた後、疲れた表情で溜息を吐き、ティータに視線を向けた。

 

「ひっく、ううっ………なんで……どうしておじいちゃんが………ひどいよ……どうしてぇ……」

「おい、チビ。」

「……………?」

アガットは泣きじゃくるティータの頬を無言で平手打ちをした。

 

「………あ………」

平手打ちをされたティータは様々なショックで泣き止み、地面に膝をついた。

「ちょ、ちょっと!?」

「アガット!?」

「何でティータをぶったのよ!?」

アガットの行動にエステルとルークは驚き、レンは親友に平手打ちをしたアガットを睨んだ。

 

「言ったはずだぜ……足手まといは付いてくんなって。お前が邪魔したおかげで爺さんを助けるタイミングを逃した。この責任……どう取るつもりだ?」

「あ……わたし……わたし……そ、そんなつもりじゃ……」

アガットに責められたティータは表情を青ざめさせた。

 

「おまけに下手な脅しかまして命を危険にさらしやがって……俺はな、お前みたいに力も無いくせに出しゃばるガキがこの世で一番ムカつくんだよ。」

(出しゃばるガキ………か。)

(”力の無さ”………か。)

アガットの言葉からかつての自分を思い出したルークは複雑そうな表情をし、ルークと同じようにかつて愛する娘と妻を同時に失った時の当時の自分の力の無さを嘆き、娘と妻が失うきっかけを作った”予言(スコア)”を憎むようになった自分を思い出したバダックは目を伏せた。

 

「ご………ごめ……ごめ……ん……なさ……ふえ……うえええっ……!」

「ちょ、ちょっと!どうしてそんな酷い事を言うの!?」

「エステルの言う通りよ!ただでさえ、大事な家族を浚われたばかりだっていうのに!」

「だから言ってるんだ。おい……チビ。泣いたままでいいから聞け。」

ティータが涙を流して泣き始めたきっかけを作ったアガットをエステルとレンはそれぞれ睨み、二人に睨まれたアガットは冷静に答えた後ティータに視線を向けた。

 

「うぐ……ひっく……?」

「お前、このままでいいのか?爺さんのことを助けないで諦めちまうのか?」

「うううううっ……」

アガットの言葉を否定するかのようにティータは涙を流しながら首を何度も横に振った。

「だったら腑抜けてないでシャキッとしろ。泣いてもいい。喚いてもいい。まずは自分の足で立ち上がれ。てめえの面倒も見られねえヤツが人助けなんざできるわけねえだろ?」

「……あ……」

「それが出来ねえなら二度と俺達の邪魔をせず、ガキらしく家に帰ってメソメソするんだな。……フン、俺はその方が楽なんだがな……」

「「………ティータ……」」

「…………大丈夫だよ……お姉ちゃん、レンちゃん……わたし、ひとりで立てるから……」

家族を攫われ、悲しみに暮れていたティータは泣き止んで立ち上がった。

 

「へっ……やれば出来るじゃねえか。」

「ほう?今のは俺も驚いたぞ。」

ティータの心の強さにアガットとバダックはそれぞれ感心した。

 

「本当に……ごめんなさい。わ、わたしのせいであの人達に逃げられちゃって……」

そしてティータは自分の祖父を取り返そうとしてくれた遊撃士達に自分の否を謝罪した。

「バカ……謝ることなんてないわよ。」

「エステルの言う通りよ。ティータの行動を把握できなかったレンにも責任はあるんだから……」

「うん。ティータが無事でよかった。」

「うむ、お前のような幼子に怪我がなかっただけ、不幸中の幸いだ。」

「だな。ティータが無事でよかったぜ。」

「ありがとう……レンちゃん、お姉ちゃん、お兄ちゃん、ルークさん、それにえっと……」

エステル達にそれぞれ声をかけられたティータは微笑んだ後見覚えのない大男を見上げ

「――バダックだ。エステル達と同じ遊撃士だ。道中、彼女達に事情を聞き、ここまで同行した。」

「そうだったんですか……バダックさんもありがとうございます。」

バダックの事情を聞いたティータはぺこりと頭を下げた。

 

「あ、あの……アガットさん……」

「なんだ?文句なら受つけねえぞ?」

「えと……あ、ありがとーございます。危ない所を助けてくれて……それから……励ましてくれてありがとう……」

「は、励ましたわけじゃねえ!メソメソしてるガキに活を入れてやっただけだ!」

ティータに優しげな微笑みを向けられ、予想外の言葉を聞いたアガットは慌てた様子で答えた。

 

「ふふ……そーですね。」

「だ~から、泣いてたくせになんでそこで笑うんだよ!?ちょ、調子の狂うガキだな……」

「あんたねぇ、お礼くらい素直に受け取りなさいよ。」

「いや、アガットさん、単に照れてるだけじゃないかな。」

「うふふ、そうね。一匹狼を気取っているようだけど中々可愛い所あるじゃない♪」

ティータの笑顔に照れているアガットをエステル達は生暖かい視線で見つめ

「フッ、どこかの誰かと同じで、まだまだ小僧だな。」

「おい、その”どこかの誰か”ってのは誰の事で、しかも何で俺を見ながら言うんだ!?」

口元に笑みを浮かべたバダックに見つめられたルークは顔に青筋を立ててバダックを睨み

「お前ら、うるせえぞ!」

口々に言い合うエステル達をアガットは声を上げて睨んだ。

 

こうしてラッセル博士の奪還に失敗したルーク達はギルドへ報告し、これからの方針を決めるために、紅蓮の塔から去った………

 

 


 
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