No.667713

恋姫✝夢想 ━━一人乙女━━  《五》

Hankさん

《太陽の火》

2014-03-03 17:00:02 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1177   閲覧ユーザー数:1092

リントがこの世界にやってきて十日が過ぎた頃だった。

黄巾党が、ついに台頭してきた

これにより、大陸はとうとう乱世への兆しを見せ、人々はざわめき始め、不安を隠せずにいられなくなった。

そして、 ここにも乱世に名乗りを上げ、 義勇軍を立ち上げた英雄の名を語る一人がいた・・・。

 

「はわわ!? 桃香様! 左翼の愛紗さんが黄巾党に囲まれそうです!! 雛里ちゃん、愛紗さんを引かせて!!」

雛里 「あわわ・・・、朱里ちゃん。 そんなことしたら右翼の鈴々ちゃんが大変なことになっちゃうよ!」

桃香 「ならなら、ここは全軍を撤退させて、もう一度攻撃を仕掛けるのはどう?」

朱里 「はわわ!? お待ちください桃香様! それだけはいけましぇん!!」

雛里 「この状況で撤退してしまえば、義勇軍は瓦解してしまい、再起を図ることは難しくなってしまいますぅっ!」

桃香 「うぅ・・・、じゃあどうすればいいの・・・?」

 

この明らかに戦場に遭わぬ風貌を見せる桃色の女性、のちに人徳の御仁こと劉備玄徳その人である。

そんな桃香は現在、黄巾党の大群に思いもよらない奇襲を受けていた。

最初の奇襲は地形を利用して何とか凌いだモノの・・・次々と雪崩れ込んでくる黄巾党の大群に義勇軍は押し込められていき、いくら一騎当千の愛紗と鈴々が居ても焼け石に水状態になっていた。

 

桃香 「どうしよう・・・このままじゃ愛紗ちゃんと鈴々ちゃんが・・・!」

 

桃香が半分泣きそうな状態で慌てている・・・その時だった。

 

 

――――――体を突く程の鋭い殺気を感じた。

 

 

狼? いや・・・違う。

桃香は殺気がする方角を見る。

 

桃香 「・・・誰か来る・・・」

 

見たのは戦地の真上。

そこには、一つの人影が見えた。

桃香の方からでは見づらいが、その人影は明らかに戦地の上空に居た。

下で戦っている者達は戦闘に集中している為、気付かずに居た。

そんな上空に居る者・・・黒のベルトを巻いたロープを羽織った一人の乙女、リントだ。

彼女は移動の途中、この騒ぎを聞きつけ、寄り道のついでにやってきた次第だ。

 

リント 「どの時代に居れども、金と大義・・・それらを理由に戦う阿呆が多いもんだ、哀れでしょうがない」

 

リントは手を下に向かってかざすと、一つの小さな光の玉を生み出す。

 

リント 「消えちまえ」

 

光の玉が落ちた。

まるで蛇口から落ちる水滴のように、重力に抗うことなくストンッと落ちていく。

そして地面に落ちた瞬間、閃光が辺りを包み込み、落ちた光の玉周辺に居た者達から少しずつ消え始めた。

 

「な、なんだ・・・なんだこれ!? う、うわあああぁぁ―――・・・」

 

光に包まれた人間は、まるで高熱の湯に溶ける氷のようにゆっくりのようで早く、確実に消えていく。

逃げようとしても光の範囲が広く、何より速度が人の足では降り切れない早さで追いつき、誰も彼もが消えていく。

 

桃香 「な・・・何が・・・起きてるの・・・?」

 

桃香は、目の前で起きている惨状に絶句しながらも、声を小さく出しながら二人に問おう。

 

朱里 「わ・・・わかりましぇん! でも・・・こんな・・・皆、皆あの光に包まれて・・・消えていってる・・・!?」

雛里 「は・・・はわわわ・・・に、逃げましょう桃香様! ここも直にあの光に・・・!」

桃香 「ううん・・・多分逃げれないよ・・・解るもん・・・あの光は・・・ (あの光には誰も抗えないと思う・・・)」

 

そんな絶望感と悲壮感を抱えながら、桃香はリントが放った光を目を細めながらもジッと見つめていた。

 

 

―――――――――――――――・・・

 

――――――――――・・・

 

―――――・・・

 

 

愛紗 「はぁーーーーーーーーーー!!」

 

黄巾党の者たちを、ことごとく斬り捨てていく彼女は、のちに《軍神》と呼ばれる存在になる武将。

姓は関、名は羽、字は雲長・・・三国志で有名な武将として名を残す、あの関羽雲長である・・・。

 

「クッソォ! このアマ、超つえぇーーーっ!!」

「おい見ろ! あの長髪の黒髪・・・まさか、あれが噂に聞く関羽か!?」

 

黄巾党の一人がそういうと、 愛紗は槍を再度構えて大声で述べる

 

愛紗 「その通り! 我が名は関羽、劉玄徳が一の臣なり!! 我が青龍堰月刀の錆になりたければかかって来い!!」

「ちぃっ! 数はこっちが勝ってるんだ・・・囲んで袋叩きにしちまえば怖くねぇ! 囲めぇ!!」

 

黄巾党の一人が豪語すると共に黄巾党軍総出で愛紗の部隊を囲もうとする

 

愛紗 「せーーーーーーーーい!!!」

 

だが、 その作戦も愛紗の斬撃により空しく失敗し、 囲んだ黄巾党全員は吹き飛んだ。

 

「げはっ!!」

 

愛紗は相手の追撃を許さず、バッタバッタと敵を薙ぎ倒していく・・・だが、しかし・・・

 

「押せッ! 押し切れぇぇぇッーーー!!」

「くそっ! 敵の押しが強い・・・ぐあっ!」

愛紗 「くそっ! 斬っても斬ってもきりが無い!! このままでは・・・!」

 

関羽雲長こと愛紗でも、雪崩が如くどこともなく迫ってくる黄巾党軍のゴリ押しに愛紗の軍にも焦りが出始めていた。

 

「関羽様! 我々の部隊は、 このままでは囲まれてしまいます!」

「関羽様! 弓が尽きそうです! どうすれば!?」

愛紗 「ぐぅっ・・・!」

 

愛紗に決断が狭まれていた。

ここは一度退くべきか、 だが・・・その選択をしてしまえば、別側で同じく戦闘をしている鈴々の部隊に危害が及び、最悪の場合、主君である桃香のところまで軍勢が雪崩れ込んでしまうだろう

その時だった。

突如、近くで閃光が発生し、次の瞬間・・・敵味方両者の悲鳴が聞こえ始めた。

 

愛紗 「な、なんだ!?」

 

愛紗は突然の事に驚きながら光の先を目を細めて見た。

愛紗の背筋が凍りつく光景がそこにあった、誰も彼もが光に呑まれ、瞬く間に光が触れていく順から肉体が消えていっている。

悲痛な叫びを挙げながらも必死にもがく兵士たちの願いも空しく、光に呑まれて行くその様に愛紗の脳裏に一つの言葉が浮かんだ。

 

愛紗 「・・・・・・ッ!? (ここに居てはいけない!!!)」

「関羽様!! これは一体・・・!?」

愛紗 「全員、直ちにこの場から退避しろ! 急げっ! あの光に呑まれたら死ぬぞ!!!」

「応ッ!!!」

 

愛紗の号令で兵達は一斉に退避し、自軍の撤退を確認した後、最後にこちらに迫ってくる光をチラ見し、馬を走らせた。

あまりに唐突な出来事・・・尚且つ、勝利という言葉が存在しなくなったが、左翼、関羽隊はこれのおかげで大きな被害を出す前に難を乗り切った。

 

愛紗 「鈴々・・・無事で居てくれよ・・・!」

 

 

―――――――――――――――・・・

 

――――――――――・・・

 

―――――・・・

 

 

鈴々 「にゃーーーーー!! こいつら倒しても倒しても出てくるのだーーーー!!」

 

右翼の鈴々の部隊は、左翼の関羽隊ほどではないが、それでも劣勢に変わりは無かった。

そんな中・・・鈴々は左翼に見える愛紗が苦戦していることに気づく。

 

鈴々 「にゃ!? 愛紗が囲まれそうなのだ、 待ってるのだ! 今、助けに行くのだ!!」

 

鈴々が左翼の愛紗を助けに行こうとすると

 

「鈴々様! 鳳統様からの伝令です! 張飛隊はこのまま戦線を維持! 耐えるようにとの御用達です!」

鈴々 「何故なのだ!? 愛紗が大変なのに、なんで助けに行っちゃ駄目なのだ!」

 

伝令の言葉に鈴々は怒りを露わにした

 

「鳳統様からは、鈴々様が無茶をして関羽様を助けに行かないようにせよ。 ・・・と命令を受けてまいりました!!」

鈴々 「無茶じゃないのだ!! 鈴々だけで愛紗を助けに行くのだ、お前たちにここを任せるのだ!!」

「それこそ無茶です!! 鈴々様がいなければ、ここも持ちません!!」

鈴々 「にゃーーーーー! じゃあ、 一体どうすればいいのだ!?」

 

・・・こうして鈴々が慌てて愛紗を助けようとするのも無理はない

嘗て、 桃園で共に誓い合った愛紗と桃香・・・そして鈴々も一心同体の仲である。

友以上に大事な仲間が今、 まさに危機に立っている中で自重・・・鈴々には耐えられない物だった。

その時だった。

左翼の愛紗の部隊が居る方角から閃光が起こる。

 

鈴々 「にゃにゃーーー!? 一体何がおきているのだーーーーー!?」

「わ、 わかりません!! 関羽隊が居る方角より、閃光が発生したとしか・・・!」

「急達っ! この閃光により、付近の両兵がたちまちに消滅していっているのを確認!」

鈴々 「えええーーー!? 消滅って・・・愛紗たちの軍は大丈夫なのかなのだ!?」

「幸い、関羽隊は光より離れた位置から戦闘していた様です!」

鈴々 「愛紗・・・! 全軍、至急撤退するのだ! 戦っている場合じゃないのだ!!」

「応ッ!!!」

 

鈴々の部隊は急ぎ、本陣へと撤退を始めた。

その際、愛紗も撤退をしているのではと周辺を見渡すが、閃光のせいで確認が出来なかった。

 

鈴々 「・・・・・・。 (この閃光は一体何なのだ? まるで・・・太陽が落っこちたようなのだ・・・)」

 

 

―――――――――――――――・・・

 

――――――――――・・・

 

―――――・・・

 

 

「な、なんだ!?」

 

一方、 突然の衝撃に動揺する黄巾党達・・・その中に一人、 今回の戦で黄巾党を舵する男、 張曼成もまた驚いていた。

 

「曼成様!! 一体、これは何なんですか!? この光は・・・!」

「伝令! 伝令! 今起きている光に呑まれた味方は消滅! 完全に消えて無くなりました!」

「消えた・・・だと・・・!? くそっ! どうなっている!?」

張曼成 「このでたらめな力、こいつは・・・、・・・! まさか!? 信じられねぇ! 嘘だろ・・・!」

「曼成様! 一体奴は・・・?」

張曼成 「・・・一夜狩りだ・・・」

 

その単語を口に出した瞬間、黄巾党全員の血筋が凍りつき、それぞれに戦慄の顔になる。

 

「一夜狩り・・・?! 一夜狩りだって・・・!?」

 

黄巾党の一人がそう言った途端に辺りがザワめき始める。

 

「まさか、各地の賊の連中をたった一夜で全滅させ、呉の国の俺達の仲間8千人を一刻も掛からずに殺った、あの噂の賊狩り!?」

張曼成 「ああ・・・、しかも・・・そいつが都で噂されている“天の御遣い”だって言われているらしい」

 

張曼成がそう言い終えると、 血の気が引いて真っ青になっている黄巾党達はガクガクと震えだす。

 

「ど、どうすんだよ・・・この戦い、俺達に勝ち鬨が上がる筈だったのに・・・!]

「勝てるワケねぇ・・・に、逃げよう! 逃げなきゃ・・・!」

「馬鹿野郎!! あいつから逃げれない・・・仮に・・・万が一この場を逃げ切れても、次の日には奴に追いつかれて殺される・・・!」

「嫌だ・・・嫌だああああ!!! 俺はまだ死にたくねぇ! あんな・・・あんな死に方したくねぇっ!!!」

 

黄巾党の下っ端達は、 過去の一夜狩りが今までしたことを思い出す・・・。

ある時は、拠点丸ごと沈められ、残っていてもそこは血の池地獄、洞窟の外まで臭いが充満する始末になる程に血祭りにあげられていたり、それぞれの死体の全てが体が切断されており、中にはもはや原型が残っていない程に肉片にされているのもある。

『人の殺し方じゃない』

その言葉しか出てこない程の惨状になっていた。

そんな惨状に自分達も今まさに巻き込まれていると思うと身の毛が逆立ち、絶望で泣き崩れて嘔吐する者が居た。

 

張曼成 「・・・取り乱すなッ!!!」

 

その時、張曼成は部下達に大声で喝を入れる。

それによって部下達は一時的に正気に戻り、張曼成の方を振り向く。

 

張曼成  「いいか!? 俺達にとって天とは、天和ちゃん、地和ちゃん、人和ちゃんのことだ!! それ以外の奴が天を名乗ることなど、決して・・・決して許してはいけないのだ!!!」

「で、 ですが・・・奴は・・・」

張曼成 「それがなんだ!? 奴は一人! 俺達は多勢! 数は圧倒的に勝ってる!! 奴も人間だ! 俺達が一気に攻めりゃ奴も勝ち目はねぇ!! そうだろう!?」

「そ・・・そうだ・・・俺達が力を合わせりゃあ、一夜狩りも楽勝だぁ!!!」

「そうだ!! 俺達には、天和ちゃんと地和ちゃん! そして人和ちゃんが付いてるんだ!!」

 

張曼成の言葉により、 先ほどまで戦意消失していた黄巾党達が息を吹き返した。

この時、張曼成が口にした天和・地和・人和、という人物達は彼らに取ってかけがえない者であり、今回の一連を起こすきっかけとなった人物だ。

この張曼成は、この三人に魅入られ、三人の為ならば命も厭わないという何ともアホらしくて危険な思考を持つ人物でもあった。

 

張曼成 「そうだ!! だからこそ、その一夜狩りに教えてやろうじゃねぇか!! 俺達にとっての天は、天和ちゃんと地和ちゃんと人和ちゃんだということをっ!!!」

「おおおおおおおおおおおおおっ!!」

「しゃあ!!! やってやるぜ!!」

 

自分達の希望や拠り所について熱く語ったことにより、黄巾党の戦意は完全に息を吹き返した。

 

 

――――――だが、 その希望を・・・乙女は踏み砕き、破壊する。

 

 

”ボンッ!”

張曼成の頭が突然爆発を起こし、黒い煙を上げながらフラフラと前に数歩進み、そのまま黄巾党達の前に倒れ込んだ。

突然の事で黄巾党達は目を点にし、ポカンと口を開けて固まっていた。

今さっきまで自分等を慰めてくれた頼りの人物が突然頭が爆発して死んだ。

次に彼らが起こす行動は解り切っていた。

 

「あ・・・あ・・・ああ・・・!!」

「う・・・うわあああああああああああああああ!!!」

「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」

 

悲鳴が鳴り響き、黄巾党の士気はたった今、完全に崩れ落ちた。

 

「うあああああああああああああああ!!! 助けてくれえええええええ!!!」

「死にたくねえええええええええ!!!」

 

パニックを起こす黄巾党は気付かずに居たが、直ぐ近くの上空で魔法使いの衣装に変身したリントが魔法を唱えていた。

 

リント 「煉獄の炎よ、下の者を焼き尽くし、灰に還せ」

 

その詠唱の後、彼らの足場より勢いよく黒と赤が混じり合った炎が燃え上がり、彼らを焼き尽くし始める。

 

「熱い・・・熱い! 熱い熱い熱い熱い熱い熱ぅいぃぃぃ!!!」

「あぁ・・・! あ・・・!」

「やだぁ・・・死にた・・・」

 

燃え盛る炎の中、黄巾党達の声は段々と弱まっていき、1分もしない内にその場に居る全員は真っ黒に焦げた焼死体へと変貌した。

そんな事などどうでもいいと、そっぽ向くリントは閃光に向かって指を鳴らした。

すると、光はみるみる内に萎んでいき、最終的には完全に消滅した。

その様子を見たリントは鼻でため息をついた。

 

リント 「アホらしい」

 

リントの傍に居る猫・・・ぬこは、そんなリントの顔をジッと見つめながら尻尾をユラユラ動かしていた。

それに気付いたのか、リントは微笑みかけ、ぬこの頭を優しく撫でた。

その顔は何処か退屈そうで、物足りなさを感じている顔をしていた。

 

 

―――――――――――――――・・・

 

――――――――――・・・

 

―――――・・・

 

 

愛紗 「これは・・・一体・・・」

 

それから10分後、愛紗たちは敵本陣に上がる炎と黒い煙に不信に思い、一か八かで突撃を掛けた。

そして、現場に辿り着くと共に愛紗を含めた全員が絶句した。

人が焼け焦げる臭い、そしてそこにあるのは黒こげになった敵の黄巾党達だった。

それらの焼死体を確認し、臭いを嗅いでしまった者の大半はその場で嘔吐し始める。

討伐目的であった張曼成が誰なのか分からない程に全員黒こげに焼かれており、まだ黒くなった地面からは汗ばむほどの熱を発していた。

 

愛紗 「一体・・・何があったんだ・・・」

「うぷっ・・・解りません・・・ただ、彼らが自ら自害をしたとは考えられませんね・・・」

愛紗 「・・・・・・。 (いや・・・例え自ら炎で死ぬとしてもここまでなるだろうか・・・?)」

 

愛紗の疑問は当然だった。

普通、彼らが一斉に炎を身に纏ったり、巨大な焚火か何かに飛び込んでとしても、こんなに変則的にバラバラな位置に倒れて死ぬだろうか?

仮に変則的に倒れて焼け死んだとしても、地面がこうも足が火傷しそうになる程に熱を残しているだろうか?

まるでフライパンのように黒くなった地面を見ながら愛紗はそう思った。

 

鈴々 「愛紗ーーー!! 敵の大将はどこに行ったのだーーー?」

 

そこに、 応援に駆け付けた鈴々がやってくる。

 

愛紗 「来るな! 鈴々!!」

鈴々 「どうした・・・うっ・・・!」

 

鈴々は、すぐに現場の異常性に勘付く。

その様子を見た愛紗は、鈴々を部下と共にこの場から離れるように指示する。

 

愛紗 「鈴々、桃香様には私から報告する・・・これはあまりにも正直に全て離す事は出来ぬが・・・」

鈴々 「・・・解ったのだ・・・愛紗?」

愛紗 「なんだ?」

鈴々 「これ・・・誰がやったのだ・・・?」

 

その問いに愛紗は口籠って答える事が出来なかった。

 

――――――そう眺めている愛紗を遠くで見ている乙女が一人。

 

リント 「・・・・・・。 (あれが、関羽雲長・・・軍神と崇められた存在か・・・)」

 

この世界の武将、関羽雲長は黒髪のポニーテールに巨乳と言った、自身が知っているイメージの関羽とはまったく異なっていた。

もっとこう、もみあげまで髭が伸びた面をしたゴリラのような感じなのだが、この世界だと八方美人なのが妙に気にくわなかった。

その他の武将なども明らかにファンタジー世界の人物だと言い張れば違和感が無い様な容姿をした人物が多い。

正直言って、この世界は三国志の皮を被ったファンタジー小説の世界の中なのではと時折思ってしまう。

そう思う度にため息が出てくるリントだった。

 

 

―――――――――――――――・・・

 

――――――――――・・・

 

―――――・・・

 

 

そんな一方・・・黄巾党を掃討し終わった劉備陣営内では・・・

 

桃香 「愛紗ちゃーーん! 鈴々ちゃんも無事でよかったよ~~~!」

 

鈴々と共にやってきた桃香は早速と言わんばかりに愛紗に突撃ダイブを決める。

 

愛紗 「わっぷ!? と、 桃香様・・・!」

鈴々 「にゃははは! お姉ちゃん、すっごい早いのだー!」

桃香 「うえええぇぇぇーーーん!! すっごく心配したんだから~~!!」

 

半泣き・・・というよりも完全に泣く寸前の状態で桃香は愛紗を強く抱きしめる。

 

愛紗 「桃香様・・・私達はご覧の通り無傷です、だから心配ご無用ですよ」

鈴々 「そうなのだ! お姉ちゃんは心配性なのだ!」

桃香 「うん・・・そうだね!! 本当に無事で良かった! ・・・本当に・・・」

 

そう言う桃香だが、 まだ気にかかっていてしょうがない。

 

愛紗  「あの光ですね?」

 

愛紗の言葉に無言で頷いて答えを返す。

 

鈴々 「でも確かに気になるのだ! あの光のせいで戦どころじゃなくなったけど、黄巾党の人達は皆消えちゃったのだ!」

桃香 「うん・・・私も遠くで見て、聞いてた・・・あの光に呑みこまれた人達はたちまち消滅していったって・・・」

愛紗 「私もあの光景を見ました、まるで太陽が落ちたと思えてしまう光景だった・・・」

鈴々 「鈴々も思ったのだ! いきなりピカッ! と光って、お日様が落っこちたのかと思ったのだ!」

雛里 「未だに私はあの光景は夢なのかと思ってしまってしょうがありません・・・あんな事・・・過去の現象でも起きた事が無いです」

朱里 「・・・ねぇ雛里ちゃん・・・これ、あくまで仮説なんだけど・・・もしかして・・・噂に出ている天の御遣いの仕業じゃないのかな?」

 

”天の御遣い”

朱里のその単語に4人は反応する。

 

桃香 「天の御遣いって・・・あの!?」

朱里 「はい・・・一夜狩り・・・その名の通り、この地域や他の土地の賊という賊を一夜で滅ぼした巷では天の御遣いと呼ばれている賊狩り・・・」

愛紗 「天の御遣い・・・。 (確かに、可能性は大きいだろう・・・あの惨劇を体現出来るとするならば・・・)」

桃香 「もし本当に今回の事が一夜狩りさんの仕業なら、上手く話し合えば私たちの助けに―――・・・」

愛紗 「桃香様! それはいけません!!」

 

桃香の発言に愛紗は顔色を変えてリントの関与に断固拒否した。

 

桃香 「え!? ど、どうして? 愛紗ちゃん・・・」

愛紗 「・・・・・・。 (あの様な・・・あんな・・・)」

 

先ほどの死体達を見た愛紗には分かる・・・。

 

 

――――――あんな”人で無し”の殺し方・・・桃香が見れば、必ず泣き叫ぶ事になる、絶対に自分等の助けになぞなってくれないと。

 

 

朱里 「・・・桃香様、その一夜狩りさんなのですが・・・必ずと言って良いほどに敵に対してこの上無い恐怖を植え付けるのでしゅ・・・」

桃香 「恐怖・・・?」

愛紗 「一夜狩りは、相手を完膚無きまでに駆逐し、そのやり方も・・・」

 

愛紗の口が鈍る。

 

鈴々 「人間とは考えられない仕打ちをするのだ」

 

その時、先ほどまで聞いていた鈴々の口が開く。

 

愛紗 「鈴々・・・?! お前見て・・・!」

 

愛紗は、少し焦る。

鈴々は、何処か鋭い所がある。 ・・・動物的な勘が働くというのか・・・知らないであろうと思ったことを知っており、 理解している。

 

桃香 「人間とは考えられない仕打ち・・・?」

 

その桃香の質問に先ほどまで鈍っていた愛紗の口から先ほどの焼死体の件を話す。

 

愛紗 「・・・というワケです・・・」

 

桃香は、少し青ざめながら小さく震えていた。

 

桃香 「酷いよ・・・そんな・・・」

愛紗 「桃香様、お分かりになられましたか? 一夜狩りは、巷では天の御遣いと呼ばれていますが・・・」

鈴々 「にゃあ・・・でも・・・一夜狩りは賊や黄巾党ぐらいしか襲わないのだ! だから、鈴々達は平気・・・」

愛紗 「いや、そうとは限らない。 あそこまで惨い殺しをする者だ・・・何時かは狂い、我々の敵になる可能性がある」

鈴々 「にゃあ~・・・」

桃香 「それだったら・・・」

 

その時だった、 先ほどまで震えていた桃香の声に元気が戻ってくる。

 

桃香 「それだったら、私達でその一夜狩りさんを救ってあげようよ!!」

 

桃香の無謀にして、ぶっ飛んだ言葉に愛紗と鈴々含む全員が驚いた。

 

雛里 「はわわ!? と、 桃香様!? 突然、 何を言い出すんですかぁ!?」

朱里 「そそそ! そうでしゅよぉッ!! 相手は、 危険な人なんでしゅよ!?」

桃香 「だからだよ! その一夜狩りさんだって、 人だもん! 必死に説得すれば、 きっと一夜狩りさんも分かってくれるよ!!」

 

・・・ここまで阿呆な者は見たことがない・・・だが、それが桃香の・・・桃香が持つ能力なのだろう。

決して他人を捨てようとしない気持ち、自分を犠牲にしてでも誰かを助けようと思う心。

・・・もしかしたら、ただの馬鹿なのかもしれないが、それでもこれが彼女なりの答えなのだろう。

滅ぼすのではなく、救う。

惨い殺しをしている賊狩りだろうが関係ない、ただ単純に助けたいと思う気持ちが彼女を動かしていた。

 

―――――――だが、それは彼女にとってたった一度の過ちになる。

 

●【リント変身図鑑】

 

《サイコ・ドクター》

 

 

(小話)

前回登場して紹介出来なかった衣装。

今回の話では前回紹介したマジコメイジの衣装で活躍してましたが、あえて前回はマジコメイジの紹介しました。

(※特に意味無し)

この衣装の大きな特徴は何より巨大な注射器。

ただし、これでブスリッというわけではなく、中の液体をぶっかけるという予想の斜め上を行く機能。

これもちゃんと理由があり、後々本編で語られますが・・・一言いうならば、注射針を使う機会は相手がどうあがいても死ぬ時ぐらい・・・ですね。

どういう意味なのかは暫く進んで再度登場した時にでも本編でリントが説明してくれます。

 

 

●【今話のバトル・・・は、思いつくBGMが無かったのでキャンセル】

 

 

●【あとがき】

 

どうも、今回は第二話よりもちょいエグい展開でしたね。

修正前は、もっとエグめだったのですが、あまりにもバイオレンスで大胆過ぎたので変更しました。

イメージとしては、冷酷な惨殺と言った感じです。(炎と光使ってたけど)

こちらの小説では、大概のモブがこのように悲惨な目に遭うのは確実なので、今後もリントとモブがあったらとんでもないことになります。

そして今回は蜀のメインヒロイン五名に出会い(?)ましたね。

公式だとアホっぽいキャラの鈴々ちゃんですが、こちらでは肝心な所は鋭いキャラとなっています。

公式認定のとある漫画版でも鋭かったりと、地味に凄い武将を見せつけくれてる鈴々ちゃん。

 

・・・北郷の一物を相手に出来ている辺り、やっぱとんでもねぇ子かもしれんな・・・(おい。

 


 
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