「はやてちゃん!起きてくださいはやてちゃん!」
「んー…後五分…」
「緊急事態なんです!」
「ふぇ?」
緊急事態。シャマルのその言葉を聞いて、ハッと目が覚める
はやて「なにがあったんや!」
シャマル「わかりません。ですが魔力の反応を感知しました。
こんな朝早くに申し訳ありませんが指示を!」
魔力反応があったポイントはシャマルが割り出してくれた。
ここは、公園か?ちょうどええ。通学路やし、私がでるか
はやて「シャマル!誰が動けそうや?」
シャマル「指示を下されば皆がすぐに向かえます!」
はやて「あー、ちゃうちゃう。起きてるのは誰かなって。
そんな皆で行く必要ないやろ?起こすの可哀想やし」
シャマル「相変わらず、お優しいですね…でしたら、私とザフィーラがすぐにでも向かえます!」
はやて「わかった!んなら、私の準備が終わったら直ぐ行くで!」
シャマル「はい!」
私はすぐに高校の制服を取り出し、着替え始める。
高校初日やっていうのに、ツイてないわ。まぁ、これもお仕事やからしゃあないか
はやて「二人とも、準備できたみたいやね。ほんなら行こか!」
私らは魔力反応があった公園に向かう。
時刻としては7時20分頃。30分で片付けても、余裕で学校には間に合うな
シャマル「……え?」
はやて「ん?どないしたんやシャマル?」
シャマル「あ、あの、反応が、消えました」
はやて「……え?」
え?また?
ザフィーラ「それは確かなのか?」
シャマル「は、はい。確かに先程まであったんですが…」
なんや、昨日もこんな感じやったよな?一体何が起きてんのやろ
はやて「とりあえず、現場見てみよか。何かあるかもやし」
とは言ったものの、無駄足な気がしてならへん。
まぁ、ないならないで、なのはちゃんとフェイトちゃんとこに向かうのもありやな
しばらくして私らは公園に着く。本当に何もなかった。
遊具があって、砂場があって、ベンチがあって。なんもおかしなところなんてなかった。
ただ一点を除いては…
シャマル「あの人、寝てらっしゃるのかしら?」
そう。私らの視線の先には、ベンチに横たわって寝てる男の人がおった。
こないなとこで寝るとか、風邪引かんのやろか
ザフィーラ「もしかしたら、あやつが何か知っているかもしれんな」
はやて「どうなんやろなぁ…」
普通の一般人が、魔法と関わるはずないけど。まぁ、一部例外もおるけどな
はやて「まぁええか。もしもーし!お兄さーん!」
寝ている人は黒髪で長身、ガタイもええし、普通に二枚目って感じやな。歳は…20くらいかな?
「んー…5minutes……」
なんで英語?しかも、全然起きてくれる気ぃせぇへん
はやて「こんなとこで寝てたら、風邪ひきますよー」
私はお兄さんをさすってみる。でもお兄さんは子犬を抱きしめたまま、深く眠ってしまっていた
「んぅ……」
一瞬、お兄さんと目が合う。めちゃくちゃ眠たそうな目やった。こりゃ、起こすの悪いかな
はやて「えらいすんません。私ら、これで失礼しますね」
シャマル「いいんですか?」
はやて「んー、正直気にはなるんやけどなぁ」
ザフィーラ「ふむ…おい、起きろ」
バシッ
「おふっ」
ザフィーラがおもむろにグーで殴って起こしてしまった
はやて「ちょいちょい!さすがにそんな起こし方ないやろ!」
ザフィーラ「い、いけませんでしたか?」
はやて「いけませんよ!もう…」
ザフィーラは申し訳なさそうな顔になる。でも、おかげでお兄さんは起きてくれた。
ものっそい不機嫌な顔やけど
「な、何しやがる急に!?寝てる奴にグーパンとか非常識にも程があるだろ!」
はやて「あははー。えらいすんません。こんなとこで寝てると風邪引くなぁ思てん」
「風邪ぇ?それでグーパン?はぁ…そりゃご親切にありがとさん。
でも大丈夫なんで。それではおやすみ」
はやて「あー!ちょっと待って待って!一つだけいいですか?」
「なに…」
はやて「あぁいや、この辺で、なんや変わったことはありませんでした?」
「変わったこと?例えば?」
はやて「あー、んー…なんて言えばええんかなぁ」
さすがに、魔法見ませんでしたー?なんて、聞けへんしなぁ
「………まぁ、よくわからんが、何もなかったよ。
さっきまでここで、俺とこいつで朝飯食って、それで寝てたんだ。何か妙な事がありゃ気づくだろ」
そりゃそうや。まぁ、一般人が魔法に気づくとは思えんし。ここまでやな
はやて「そうですか。お兄さん、おおきにな。ゆっくり寝てください」
「おう。じゃあな」
お兄さんは再び横になり、寝始めた。なんや、変わった人もおるもんやな
シャマル「どうします?」
シャマルが少し困った顔で尋ねてくる。昨日も含めて、これで二回目やもんなぁ。
魔力反応が消えるなんて。こりゃちょっと、真面目に調査しやなアカンかな。
その前に時間……7時45分か。結構経ってんな。こりゃこのまま学校に直行やな
はやて「とりあえず、私はこのまま学校行くわ。
なのはちゃんとフェイトちゃんには、今回の件私から報告しとくわ。
シャマル達は時空管理局に報告して、ほんで町の見回りとかお願いしてもええか?」
シャマル「わかりました」
ザフィーラ「では、お気をつけて」
それから私らはそれぞれ解散し、私は学校を目指した。
この事件?も気にはなるけど、それ以上に今は高校が楽しみで仕方なかった
「あ!はやてちゃーん!」
「おはよう、はやて」
私が通うとある高校の正門前に辿り着くと、そこには高町なのはちゃん、
そしてフェイト・T・ハラオウンちゃんがいた
はやて「おはようさん!二人とも、えらい早いなぁ」
なのは「うん。今日が楽しみで、早く起きたっていうのもあるけど…」
フェイト「魔力反応、あったよね?はやてが確認しに行ったみたいだけど」
はやて「ありゃ、二人とも気づいてたんや。ちょうどええわ。実はな…」
私は昨日と今日の事をざっくり説明する。魔力反応があって、それが消えた。
それも二回も。するとなのはちゃんもフェイトちゃんも、神妙な面持ちになる
なのは「確かに、気になるね」
フェイト「反応が消える、か…普通じゃないよね」
はやて「そうなんよなぁ。一応、シャマル達には頼んでおいたんやけど。
放課後、ちょっと付き合うてくれる?」
なのは「もちろん!」
フェイト「うん!力になるよ」
はやて「おおきにな。よーし!じゃあまずは、クラス確認やな。一緒やとええけど」
フェイト「あ、さっきちょっと見たけど、一緒だったよ」
はやて「ほんまに?」
なのは「うん。一年間一緒だね」
それから私らは校舎の中に移動する。
残念やったのは、すずかちゃんやアリサちゃんとは離れ離れになってもうたこと。
まぁ、休み時間になれば会えるし、いっかな
入学式が終わり、クラス皆の自己紹介を済まして行く。
私は八神やから、席は結構後ろのほう。全体を見渡せるし、寝れるしで絶好のポイントや
先生「では、みなさん一年間よろしくお願いね」
担任は気の良さそうな女の先生。周りの生徒も明るい良い子ばかり。恵まれた環境やな
先生「うーん…本当はあと一人いるんだけど、初日から休みかなー?」
そういえば、一つ席が空いてんな。確か名前は…
「すんませーん、遅れましたー」
扉が勢い良く開かれ、長身の男が入ってきた。
この人が最後の一人か。制服やないけど、どうしたんやろ?
なんてことを思ってると、フェイトちゃんから念話が来る
フェイト「(どど、どうしよ…不良さんだよ…)」
フェイトちゃんは意外とビビりなとこがあるさかい、こういう手合いには慣れてないんやろな
なのは「(あはは、初日から遅刻で、しかも私服だもんねー)」
対するなのはちゃんは、対して気にもしていないようやった。この子は逆に図太いんよなぁ
先生「あの、雑賀士希君ですよね?制服はどうしたんですか?」
雑賀士希と呼ばれた人は、先生の問いに対して、あれ?といった表情になる
士希「制服、まだ届いてないって連絡したはずなんですけど、聞いてませんでした?」
先生「え?そうなの?」
士希「はい。なんか業者の手違いで、今アメリカにあるらしいんですよ」
先生「あ、アメリカぁ?あ、後で確認します。あ、自己紹介お願いしてもいいかしら?」
士希「はいはい」
雑賀士希君は面倒臭そうに生徒に向き直る。その際、私と目が合った。
あれ?よう見たらこの人…
士希「あぁ?朝会った関西弁女じゃねーか」
はやて「朝の公園で寝てたお兄さんやん」
え?この人学生なん?てか、私と同い年?見えやんわぁ
フェイト「(え?はやて、知り合いなの?)」
はやて「(あー、朝ちょっとなー)」
なのは(この人、同い年なんだー)
士希「まぁ、いっか」
ええんかい!興味ゼロかいな!
士希「どうも、雑賀士希だ。一年間よろしく」
うわぁ、えらい無愛想やなぁ。なんかもう、不良って思われてもしゃあない雰囲気やで。
フェイトちゃんなんて、めっちゃビビってんやん。顔真っ青やで
先生「えと、雑賀君の席はあそこだから」
そう言って、先生は空いている席、フェイトちゃんの隣の席を指した。
アカン、フェイトちゃん涙目や
士希君はダルそうに席に着く。
その大きさからか、フェイトちゃんはさらにビクッとなってたように見えた
「きゅーん」
士希君が席に着くと、可愛らしい鳴き声が聞こえた気がする。
気づけば、皆も声の聞こえた方を見ていた。その先には…
士希「あ!こらレーゲン!ここで鳴くなよ!」
士希君のカバンの中から、ちっさい犬がひょっこり顔を出してた
先生「あの、雑賀君、校内はペット禁止…」
士希「あははー、やだなぁ先生。ペットじゃないっすよ。ぬいぐるみっすよ、ぬいぐるみ。
ほら、全然動かない。な!レーゲン!」
すると犬はピシッと固まった。それを見た先生は不思議そうにしていたが…
先生「まぁ、ぬいぐるみならいいですね~」
この先生もたいがい天然やな
やがてホームルームも終わり、つかの間の自由時間になる。
私はなのはちゃん、フェイトちゃんとかたまり、クラス内の交遊を広げていた。
そんな中で、私は士希君が気になっていた。彼のその雰囲気から、近寄りがたいのだろう。
彼は孤立していた
はやて「なのはちゃん、フェイトちゃん、ちょっと待っててー」
フェイト「え?もしかして話しかけるの?」
はやて「知らん仲やないしねー」
フェイト「だ、大丈夫?」
この子、こないビビりやったっけ?
なのは「フェイトちゃんは怖がり過ぎだよー。あんな可愛いワンちゃん連れてるんだよ。
きっといい人だよ」
はやて「そゆこと。ってわけで、なぁ、雑賀士希君?」
士希「ん?あぁ、朝の…えーっと…」
はやて「はやてや!八神はやて。よろしゅうな」
士希「あぁ、よろしく」
はやて「さっきの犬、ぬいぐるみちゃうよね?」
士希「…なに言ってんだよ。どこからどう見ても、ぬいぐるみじゃねぇか」
はやて「朝、抱きしめて寝とった子やんな?確か朝ごはんも一緒に食べたとか言ってたけど」
士希君はこれにハッとし、私を睨みつけてくる
士希「あぁ、抱きしめて、朝飯食ったな。可愛いだろ?レーゲンっていうぬいぐるみだ!」
えらい、ぬいぐるみって部分を強調したな
フェイト「(か、可愛い…ぷっ…)」
ちょっと振り向くと、フェイトちゃんは顔を赤くして、笑いを堪えていた。
まぁ、ごつい外見には似合わんもんなぁ
なのは「あはは、やっぱいい人そうだよフェイトちゃん」
なのはちゃんは隠す事なく笑っている。
士希君はそれに対して怒るかな、なんて思てたけど、意外な反応を見せてくれた
士希「…やっぱ、怖く見えてたか…」
少し落ち込むあたり、自覚なかったんかいな
はやて「そりゃ、あんな無愛想な自己紹介や、しゃあないよ」
士希「う…」
なんや、そんな怖い奴やないんやな
なのは「私は高町なのは。はやてちゃんとは幼馴染なの。よろしくね。それでこっちが…」
フェイト「ふぇ、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。よろしくお願いします」
二人も近寄り、自己紹介を済ませていく。フェイトちゃんはまだ堅いけどなぁ
士希「雑賀士希だ。あー、フェイト?悪いなビビらせちまってたみたいで」
フェイト「あ、いえ、こっちが勝手に怖がっていただけだから…」
士希「その要素を作ったのは俺だ。悪かったな」
フェイト「あ、はい…(なのは、はやて、この人いい人だよ!)」
フェイトちゃん、単純で可愛いなぁ
なのは「それで、それって本当にぬいぐるみなの?」
士希「あー、当たり前だろ?ぬいぐるみを愛でる高一男子だ」
はやて「さっきからめっちゃ動いてるけど」
士希「…え?」
足元にはコロコロ動き回る犬がいた。犬種は、柴犬やろか?こんな小さいもんなんや
士希「れ、レーゲン!大人しくしてろ!」
レーゲン「わぅん…」
はやて「やっぱ犬やん」
少し間ができる。私ら三人はまっすぐ士希君を見つめた。
すると士希君は冷や汗を流し、目を逸らして…
士希「…よーし三人とも、なにが望みだ?士希さんが好きなもの奢ってやる!」
はやて「いえーい!ほな、放課後頼むなぁ」
あはは、これでお昼ご飯代浮きそうや!
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こんにちは!
今回からストーリーが始まります
頑張って書いていきますので、よろしくです!