No.666101

義輝記 雷雨の章 その拾参

いたさん

義輝記の続編です。 今週、こちらの都合で忙しくなりそうですので、早めに投稿を。 虎牢関の策は、こうなりましたので、宜しければ読んで下さい。
2/26 猪々子の台詞修正しました。 一部修正しました。

2014-02-25 22:10:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2250   閲覧ユーザー数:1848

【 馬防柵を破壊せよ! の件 】

 

〖虎牢関 前衛にて〗

 

前衛の将が苦戦する中、前衛の部隊に袁本初より『二枚看板』が援軍に訪れる。 袁家の武将『顔良』、『文醜』である。

 

猪々子「何をこんなに、ノロノロ攻撃仕掛けているんだ? これじゃ…洛陽に辿り着くのに、何日掛からせるつもりなんだか………」ハァ

 

斗詩「────そんな訳で、お手伝いさせていただきますね!」ペコ

 

王匡「俺等が苦戦しているこの柵を、アンタら二人で何とか出来るのか!!!」

 

虎牢関の前に『横十三列』に並ぶ馬防柵。 

 

遠距離攻撃の援護もなく、逆に相手からの隙が無い弩や弓の攻撃を受けつつ、柵を破壊するなど無理な話だった。

 

猪々子「あぁ、アタイら二人だけじゃ少し手間取るか…」

 

王匡「そらみろ!!」

 

猪々子「勘違いするな、出来ないんじゃねぇ! 後『二人』来れば、サッサッと終わらせてやるさ!!」

 

兵「文醜将軍! 曹孟徳様にお願いされました『お二方』が来援されました!」

 

李衣「いっちー! ボクらに頼み事って!?」

 

猪々子「おう! 良く来てくれた! きょっちー!!」

 

斗詩「流琉ちゃん、ありがとう!」

 

流琉「いえ、とんでもないです! ……私もカチンときていますので、董卓軍に一矢報いて挙げたくて! 」

 

斗詩「何か………あったの?」

 

流琉「はい…実は、諸候のお一人が毒料理を浴びて、重傷を負ったと聞いたんです! 民の皆さんが一緒懸命作られた作物を、そのような愚劣な行為に使うなんて!! 私、許せないです!!」

 

猪々子「その心意気大いに乗ったぁ! 斗詩! 流琉のその熱き思い、アイツらにぶつけてやろうぜ!!」

 

斗詩「ちょっと気に掛かる部分もあるけど…うん! 頑張ろう!!」

 

季衣「ボクも頑張るからね!! 食べ物を大事にしない奴は許せないよ、流琉!!」

 

流琉「うん!!!」

 

《この四人は、文醜と許緒の力比べから始まった喧嘩より仲直りをし、それぞれ真名を預け合う仲になっている》

 

四人は、相談の上で配置に付く。 

 

楯を持っている兵士を前面に出して、完全防御を取って。

 

***         ***

 

春蘭「むぅぅぅ~~~~!?」 

 

愛紗「くぅぅぅぅぅ~~~!」

 

一刀「何を二人で、唸っているんだい!?」

 

春蘭「……あぁ、一刀か? 何故か流琉と季衣から思いっきり、罵倒されているような気分になってな。 私は二人にどんな悪い事をしたか、考えていたのだが………思いつかなくて……」ハテ?

 

愛紗「私も、流琉と季衣に謝らなくてはならない!!……と考えているのですが、その謝らなくてはいけない理由が判らないので、こうして悩んで………………」ウーン?

 

一刀「本人達に会ってみれば、判るんじゃないかな?」

 

***         ***

 

許緒は、近くの大岩に近寄り…ポテポテと触り、一カ所に見当をつけて、そして、自分の愛用武器『岩打武反魔』を取り出した。

 

季衣「どおおりりゃゃああぁぁぁ──────!!」

 

   ドドォォゴゴゴォォォンンン!!

 

大岩の一つが粉々になった……。 それでも、大人一抱え分の岩を片手で持ち上げて、典韋に放り投げる。

 

李衣「流琉! お願い!!」

 

流琉「うん! 任せて!」

 

典韋は大岩を預かると、文醜と顔良の傍に投げる!!

 

流琉「斗詩さん! お願いします!!」

 

斗詩「了解!!」

 

顔良は、典韋より投げつけられる岩を、次々と片手で受け取ると傍に置く。 それを見て、文醜が楽しそうな笑顔を浮かべて、やっぱり片手で岩を取り軽く振った。

 

猪々子「よぉしよーし! 手頃な大きさ、操り易い重さ! いいね!いいね!! それじゃ────いってみようかぁぁぁ!!!」

 

  ブゥ────ン!! 

 

  バキャッ! ゴキャッ!!

 

文醜が投げた岩は、『一段目の馬防柵』を破壊した!!

 

味方からは歓声が!! 馬防柵から衝撃音が!! 

 

………敵である信長は……上掛けを翻し、虎牢関への退却を命じた!

 

信長「引けえぇぇ! 無駄死には許さぬ! 引けえぇぇぇ!!!」

 

大音声で呼び掛け、兵士を虎牢関に導く!!

 

猪々子「逃がすかぁぁ!!」

 

文醜が岩を投げつける! 

 

先程よりも速度が乗り威力も加わる岩が、信長に当てるべく、定めて投擲された─────!!

 

信長は、素早く振り向き…腰の得物を抜き払い、中段に構える。

 

だが…岩は目の前!! 上段に上げる間も…避ける間も無し!!!

 

信長『たぁぁわぁぁけぇぇがぁぁぁ!!!!』

 

  ギッシャァァ─────ン!!  …ボトッ! ……ボトッ!!

 

……信長は………岩を『押し切り』にして…切り捨てた!!

 

シィ──────────────ン

 

その出来事を見た者共の時間が……止まった。 

 

一人だけ除けば……………

 

信長「何を呆けている!! 早く虎牢関に戻れ!!!」

 

敵、味方の時間が流れ出した…………

 

信長「おい!! そこの敵将!!!」

 

猪々子「………な、何だぁ!! 」

 

文醜は、少し怯えながらも返答をする。

 

その姿を見ながら信長は、薄く笑い…………言い放つ!

 

信長「良い攻撃だ!! 機会あれば…また相手をしてやるぞぉ!!」

 

『ア───ッハッハッハッハッハッ!!』と、高笑いを上げて…虎牢関の門を潜っていった。 

 

◇◆◇

 

【 各々の反応 の件 】

 

麗羽「何ですのぉ! 何ですのぉ!! わたくし達は、敵の策を破ったのですのよぉ!! 負け惜しみですわぁ!!!」キィ─!

 

★☆☆

 

華琳「………………………………」

 

一刀「いやぁ、凄かったな!! って、華琳! どうした!!」

 

華琳「……フッ、フフッ、フフフフフッ!!

 

流石『覇王』より上の『魔王』の称号を持つ将よ!! 覇気に当てられ、一瞬と言えど動けなかったなんて………… 」

 

一刀「………か、華琳さん?」

 

華琳「ぜっったいに超える! 超えて眼下で見据えてあげるわ!! 見ていなさい! 『織田信長』!!!」

 

★★☆

 

雪蓮「凄い! 凄い!! 凄い!!! 冥琳! アレ! アレ!!」

 

冥琳「……………敵将を賞賛するのも、将の大器を魅せる要件だが…お前のそれは、童が興味を示す事と同じだ!」ハアー

 

蓮華「でも……私も、あれほどの器量があれば……………」

 

祭「権殿……奴の器量は奴の持ち味、権殿の持ち味は権殿にしか出せません! 努々忘れてはいけませんぞ!?」

 

★★★

 

美羽「ピィ───────────!! 怖すぎる!! な、な、七乃!!! 一緒に寝てたのもぉぉぉ───────!!!」ブルブル

 

七乃「お、お嬢様! 私…からも、お願い…します!!」ガタガタ

 

 

◆◇◆

 

【 于吉の策謀 その弐 の件 】

 

〖劉岱軍陣営にて〗

 

于吉「貴方様を、皇帝の玉座へ導くために参上致しました……!」

 

劉岱「わ、儂をだと……!?」

 

于吉「貴方様が、先程申していらしたではないですか? 『皇帝にさえ成れる男』…と。 私は貴方様が相応しいと思い、お近付きしたのですが…。 まぁ、私の見込み違いなら申し訳ない…この話無い 」

 

劉岱「ま、まて!!! 本当に…儂が成れると?」

 

于吉「勿論、そのために二つの『道具』と一つの『策』を御用意してあります。 まず、『道具』を拝見頂きたい!」

 

パチィン!!  ───スゥ!

 

于吉が指を鳴らすと、傍に白い衣装、白い覆面を被った『男』が二人現れる。 一人の男は、『白い衣装』を大事そうに持っている。

 

于吉「まずは、この『御遣いの衣装』です。 大きさは、既に劉岱様に合わせてありますので………」

 

劉岱が着用した事が無い『衣装』が、目の前に置かれる。 

 

劉岱は知らないが、この服は『ポリエステル製』で出来ている。

 

于吉「………それと、この『二人』を従者として、お使い下さい。こちらは、武なら曹孟徳配下の夏侯元譲を上回り、もう一人は文武両道ですよ。 貴方様の力になってくれますよ!」ククク

 

劉岱「ふむ…!? まさか………貴方は!!!」

 

于吉「おや? 意外と聡い…コホ、鋭いですな? 貴方様の知り合いの方ですが、大丈夫ですよ。 知らせが直ぐに来ますが、この方は亡くなっているのです。 天水の者達の手により……」

 

劉岱「う………ぐぅ……………!」

 

于吉「それに、この二人は片言しか喋れませんし、主人には忠実ですので、命じれば…どのような事もやりますよ?」ニヤニヤ

 

劉岱「─────────!!」

 

于吉「どうです? 納得されれば『道具』をお渡して、策を伝授しますよ? 貴方様が皇帝に成れれば、私は何も言いませんし、要求も致しません。 ………………如何でしょうか?」

 

◇◆◇

 

【 ー予感ー の件 】

 

〖虎牢関にて〗

 

猪々子「こえぇぇ────!! こえぇぇ───よぉ! 斗詩!!」

 

斗詩「私だって!!!」

 

季衣「流琉──! あ、あの人………!!」

 

流琉「季衣も!? 華琳様より怖かった~~!!」

 

猪々子「………………だけど、アタイ達が行動しないと、先にすすめられない! それに、姫にドヤされる!!!」

 

斗詩「うん…! 二人共…怖いだろうけど…」

 

李衣「大丈夫! これでも華琳様の将だもの!! 行くよ、流琉!」

 

流琉「うん!!」

 

四人は…再度『岩投げ』の作業を繰り返し、馬防柵を粗方破壊した!

 

残った馬防柵は、虎牢関の門傍付近の二段のみ。

 

辺りは…散らばった竹の破片、竹から流れ出る『臭き濁った水』、岩の塊が転々と………………。

 

猪々子「よぉしぃ──!!! これでアタイ達の役割は終わりだ!」

 

季衣「でもさぁ……何か変な臭いしない?」

 

流琉「何かな? どこかで嗅いだ事が……あっ!! み、皆さん、退いて下さい!! 早く、早く!!!」

 

斗詩「え? え!?」

 

四人は流琉の言葉を聞き、脱兎の如く逃走する!

 

─────バタバタバタバタッ!!

 

ザザザザザザザッ──────!!!

 

そして、横を───前衛部隊が通り抜けて行く!!!

 

流琉「だめぇぇ━━━━!!! 戻ってぇぇぇ━━━━!!!」

 

流琉が力一杯叫ぶが、将兵ともども聞く耳を持たず………

 

王匡「我々の勇猛さに、曹孟徳の将が吠えよるわぁ!! 全軍! 手柄を立てるのは今ぞ!! かかれ!!」

 

兵『ううおおおぉぉぉーーーーーーーーー!!!』

 

孔ユウ「抜かるでない! 我々こそ先攻第一の手柄を立てるのだ!」

 

兵『突撃いいいぃぃぃーーーーーーーーーー!!!』

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

鮑信「あの二将が疲れた時に、俺が入れば漁夫の利…! 指示があるまで待機せよ!!!」

 

兵『はっ!!!』

 

虎牢関の傍に、約二万人近い兵士達が、溢れ返っていた。

 

☆☆★

 

光秀「敵が接近してきます! 弓部隊『火矢』を用意! 『竈』(かまど)の火入り口を狙いなさい! 放てぇ!!!」

 

光秀の指示で、三十程ある『竈』に火矢が射られる。 信長が矢を射掛けている時に、準備をしていた『釜』が、竈の上に乗っている。(勿論、蓋は外してある)

 

そんな『釜』の中から、中をくり貫いた『竹』の棒が馬防策に支えられるように斜めに倒れ、連合軍側に向かって煙を吹きだす。

 

異様な光景に驚き、先程の勢いを落としてユックリ進む連合軍。

 

一人の兵が、興味本位で『竹』を覗こうとした……その時!!

 

  パチィン! パアァン! シュッポ!!

 

竹の棒より、途轍もない勢いで飛び出して出てきた『物』がある!

 

その兵は、運良く当たらなかったが…後方の兵の顔に当たり、呻き声を上げて倒れたり、『何か熱い物が飛んできた!!』と慌てふためき近くの兵を巻き込む者等、被害が続出した。

 

信長「ハッハッハッハッハッ! 『栗の実』が爆ぜただけで怯えるなど、連合軍には宦官しか居らぬと見えるな!! おなごの将の方が、まだ働きが良いぞ!? ハッハッハッハッハッ!!」

 

それを聞いた将兵達は………憤怒の表情で果敢に攻めたてた!!

 

王匡「必ず落とすのだ!! 落とせ! 陥落させよ!!」

 

孔ユウ「意地でも、抜いてしまえ!!!」

 

鮑信「我々も加勢するぞ!!!」

 

風評が大事なこの時代に『『栗の実』が弾けて驚き、大慌てをして怪我をした!』などと悪評が流れでもしたら、死活問題!!

 

しかも、洛陽側で名高い『伏竜の軍勢』『天水に降り立った天の御遣い』が批評したとなれば……………身の破滅!!!

 

 

兵『ウウウオオオォォォォォーーーーーー!!!!!』

 

  

ドオオォォ━━━ン! 

 

 

ドオオォォ━━━ン!

 

 

 

二万の兵が、残った馬防柵に手を掛けて、破壊を開始すると……銅鑼の音が鳴り響いた!!!

 

 

◆◇◆

 

 

【 焔の舞台 踊り子は… の件】

 

〖虎牢関 門前にて〗

 

先程の馬防柵の残骸より、かなり離れた場所に…四人は息を切らしながら……立ち止まっていた。

 

流琉「だめぇ! だめぇー! 早く其処から離れて──!!!」

 

流琉は…前衛の兵達に声を枯らしてまで呼び掛けるが、全く気付く様子はない。 寧ろ、無視している様にも見えるが…………

 

季衣「流琉!! どうして逃げるの!?」

 

猪々子「アタイもサッパリ分かんないぜ? 斗詩は分かるか?」

 

斗詩「………私も分かんないよ。 流琉ちゃん、どうして……!」

 

ドオオォォ━━━ン! ドオオォォ━━━ン!

 

季衣「銅鑼の音?」

 

☆☆★

 

 

〖虎牢関 道の上にて〗

 

三太夫「………おっ? 合図だな! お前ら!! 行動開始だ!!」

 

忍び「はっ!」

 

最後備より少し離れた場所に、投げられる『竹筒』(少し切り込み入れて)。 他にも『素焼きの壺』の壺口に縄を付け、クルクルと何回も回し、遠心力を利用して遠くに投げる!!

 

ガチャン! バキャ! バキィ! 

 

ドロッ、ドロッ~

 

連合軍兵前衛「なんだぁ!?」

 

連合軍兵前衛「前に詰めろ!! 当たるぞぉ!!」

 

三太夫の合図で、藁を球体に丸め、竹で周囲を止めた『玉』が幾つも現れる。 眼下には、虎牢関に張り付く将兵達……!!

 

配下の忍びが、『玉』に火を着けた!

 

ボオッ!! ボッボッボッボッボッ!

 

三太夫「よし! 落とせ!!!」

 

両側から連合軍の頭上より…複数の『火球』が転がり込んだ!!

 

グラッ………コロコローーーーゴゴゴゴゴ! 

 

 

グシャン!! 

 

『火球』が下の岩に当たり、予め(あらかじめ)中に入れてあった竹筒が破片と共に飛散らかる!! 勿論、この竹筒にも『燃える水』が入っている。

 

   ━━━━━━━━━━!!!!

 

馬防柵の破片、中から流れ落ちた『黒き水』が……『火球』から別れた炎に更なる活躍の場を与え、虎牢関門前を舐めつくす!!!

 

前は『虎』、左右は『壁』、後は『炎』………

 

兵『━━━━! ━━━! ーーー!』

 

将『───! ──! ーー! ー!』 

 

━━虎牢関の門前━━━将兵合わせて約二万━━━

 

━━『焔の舞台』で━━『死の踊り』を━━━

 

━━『披露』する事に━━━━なった━━━!!

 

☆★★

 

 

   バアァァフウゥゥゥ━━━━━!!

 

季衣「あっ、熱━━━━━ぃ!!!」

 

流琉「!!!!! は…早く…に、逃げな…きゃ─!!」 

 

猪々子「ぐっ!! 熱風が──!?  クソッ━━━! 斗詩!! きょっちー達を連れて、この場を離れるぞぉ──!!」

 

斗詩「分かった!! 流琉ちゃんは私がー!!」

 

ガッ! ガッ!   

 

ダッダッダッダッダッダッ!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〖曹操陣営内にて〗

 

華琳「顔良、文醜………臣下の命を救ってもらい、礼を言う。 本当にありがとう! 貴女達が居なければ、この子達は………!」

 

顔良「とんでもない!! 命を救われたのは私達の方です!!」

 

猪々子「あぁ…。流琉が、アタイ達を急かして、場所を移動する様に言ってくれたお陰で…助かったんだよ。 …理由が分かんないけど」

 

華琳「…そう。 今日の戦も終わりね。 ……夜の帳(とばり)がユックリと下りてきたわ。 今は貴女達も体を休めて頂戴。 麗羽には伝令を送って知らせ「必要ありませんわ!!」!?」

 

カッカッカッカッ!

 

麗羽「猪々子さん! 斗詩さん!」

 

猪々子「はいっ!!」 斗詩「はい!!」

 

麗羽「貴女達は、貴女達は────────!!!」

 

 

ガバッ!! 「「  !!  」」

 

 

麗羽「無事でぇ! 無事でぇ良かったですわぁぁぁぁ!!!」

 

 

★★★

 

この後、典韋は許緒に、手を握りしめて貰いながら…気付いた理由を語った。

 

『私が……皆と柵を壊す作業を行っていたとき、季衣が変な臭いがすると言い出したんです。 それで、私も嗅いでみたら……《燃える水》の臭いだったんですよ!! 』

 

『その《燃える水》とは? 流琉は、どうして知っているの?』

 

『はい。 この前…陳留の裏道で食材を探していましたら、露天商のおじさんが《燃える水》を売っていたんです。 それは、名前の通り水みたいにドロドロしているんですが、火を着けると…かなりの勢いで燃えだすんですよ!』

 

『………わかったわ。 その臭いを嗅いだときに思い出し、火計を使われたら危険と判断して、皆を誘導した……というわけね』

 

『あの………華琳様……虎牢関に向かった将や兵士さんは……?』

 

…………フルフル

 

『………………………そうですか。 私が……もっと早く気付いていれば………』

 

『違う! 流琉は悪く無い!! ボクは知ってる…流琉が大きな声を出して止めた事。 ボクは見てる……そんな流琉を嘲り向かっていたアイツらを! だから、だから……流琉は、悪くなんか無い!!』

 

『………季衣…………ウワワァァァ──────ンンン!!!』

 

◇◆◇

 

【 颯馬の思惑 の件 】

 

〖虎牢関 董卓軍内にて〗

 

いつ、何時見ても………この風景は………慣れない。

 

自分が誘い(いざない)導いて陥った敵兵達。 

 

虎牢関の門は…近付くだけで熱く、多数の焼死した者共の遺体と肉と骨と脂が散乱している。

 

焼き焦げた人肉の臭いが濃密に漂い…その臭いに釣られてか、近くで狼の遠吠えが聞こえる…………

 

☆★☆             ☆★☆

 

今回の策の要は、『馬防策』だった。 

 

普通、馬防柵は耐久性も考えて『木材』を使う。 信長も馬防柵と三段打ちで、強敵を撃破したと自慢し、信玄殿も謙信殿も材質の点で納得がいかないらしく、木材に変えるべきだと進言してくれた。

 

だけど、今回の馬防柵は『耐久性』は不要。 必要なのは『空洞』、『非耐久性』、『可燃性』の三つ。

 

その材質に適していた『竹』を刈り取り、数日干す。

 

その後、竹の空洞の中に『燃える水』を注入する。 

 

最後に、その竹を束ねて剛性を持たせた。 

 

 

干して『非耐久性』、『可燃性』を実現。 『空洞』に燃える水を入れ、馬防柵を作り上げる。 これが、虎牢関に備えた馬防柵の正体だ。

 

 

***   ***   ***

 

虎牢関の最後に置いてあった竈(かまど)と釜は、一緒に入れてあった『竹筒』の中の『栗の実』を弾けさせる為の一連の道具だ。

 

連合軍が『栗』だと気が付かないのは、今が普通の栗は成らない時期だから。 俺は、日の本に居た当時、『年に三度栗の実がなる木』がある事を知り、この大陸にあるか調査してもらった。

 

そうしたら、西涼にあると聞いたので、お願いして用立てていただいた次第。 ……戦が終われば、食糧不足の所で苗木を栽培して貰えば、解消に役立つだろう。

 

***   ***   ***

 

そんな苦労の末に出来た物だが、殆どお遊びみたいな『兵器 勝ち栗砲』。 これをどう扱うか………かなり悩んだ。 

 

そのため、信長ならと期待して渡したが、まさか…挑発に使うとは恐れいる。 光秀も補佐してくれたお陰もあるんだろうな………

 

***   ***   ***

 

そんな中、連合軍の先発隊が到着して、馬防柵を攻撃してくれるのだが……なかなか破壊してくれなくて………正直困った。

 

だが、別の援軍の将が来てくれたらしく、この将達で難なく破壊を終了してしまった。 俺がひと抱えしないと、持てそうもないある岩を、片手で渡しながら投げるなんて………怖すぎるぞ!

 

まぁ………そのお陰で馬防柵が破壊されて、『燃える水』や『竹』が散らばり、三太夫の『火玉』が落ちて、燃え広がったわけだ………

 

この盛大な火計は、『警告』であり『戒め』であり『見せしめ』である。 攻めれば……お前達がこの様になるという……

 

それでも……来るのであれば、宣言通り叩き潰すのみ!!!

 

 

☆★☆             ☆★☆

 

火計の効果か……反董卓連合軍は、これ以上攻めてこなかった。

 

俺は、忠勝殿や恋を伏兵任命を解いて呼び戻し、休んで貰うようにお願いした。 …………明日は、どうなるか判らないから。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

眼下の様子を見ながら、静かに手を合わせると……口から経文が流れでた。 俺が日の本に居た頃から、敵味方問わず行ってきた行為。 

 

天に上がるか地に下るか……死んだ者達への、良き道標になればと思い実行している……終わった後に、静かに一礼を行う。

 

多分無理だと思う。これだけでは終わらないだろうと判断しているが、それでも……俺は明日に思いを馳せる!

 

どうか……これ以上の犠牲が出ない事を─────!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

作者はチキンですので、この作品書いてて少し気分が悪くなりました。 書いた張本人がどうよ? と言われそう………。

 

次回の策も、火計ですが…やり方が異なりますので、楽しんでいただけると思います。 来週の日曜日までに投稿できるか微妙ですが。

 

また、宜しければ読んで下さい。

 


 
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