【 馬防柵を破壊せよ! の件 】
〖虎牢関 前衛にて〗
前衛の将が苦戦する中、前衛の部隊に袁本初より『二枚看板』が援軍に訪れる。 袁家の武将『顔良』、『文醜』である。
猪々子「何をこんなに、ノロノロ攻撃仕掛けているんだ? これじゃ…洛陽に辿り着くのに、何日掛からせるつもりなんだか………」ハァ
斗詩「────そんな訳で、お手伝いさせていただきますね!」ペコ
王匡「俺等が苦戦しているこの柵を、アンタら二人で何とか出来るのか!!!」
虎牢関の前に『横十三列』に並ぶ馬防柵。
遠距離攻撃の援護もなく、逆に相手からの隙が無い弩や弓の攻撃を受けつつ、柵を破壊するなど無理な話だった。
猪々子「あぁ、アタイら二人だけじゃ少し手間取るか…」
王匡「そらみろ!!」
猪々子「勘違いするな、出来ないんじゃねぇ! 後『二人』来れば、サッサッと終わらせてやるさ!!」
兵「文醜将軍! 曹孟徳様にお願いされました『お二方』が来援されました!」
李衣「いっちー! ボクらに頼み事って!?」
猪々子「おう! 良く来てくれた! きょっちー!!」
斗詩「流琉ちゃん、ありがとう!」
流琉「いえ、とんでもないです! ……私もカチンときていますので、董卓軍に一矢報いて挙げたくて! 」
斗詩「何か………あったの?」
流琉「はい…実は、諸候のお一人が毒料理を浴びて、重傷を負ったと聞いたんです! 民の皆さんが一緒懸命作られた作物を、そのような愚劣な行為に使うなんて!! 私、許せないです!!」
猪々子「その心意気大いに乗ったぁ! 斗詩! 流琉のその熱き思い、アイツらにぶつけてやろうぜ!!」
斗詩「ちょっと気に掛かる部分もあるけど…うん! 頑張ろう!!」
季衣「ボクも頑張るからね!! 食べ物を大事にしない奴は許せないよ、流琉!!」
流琉「うん!!!」
《この四人は、文醜と許緒の力比べから始まった喧嘩より仲直りをし、それぞれ真名を預け合う仲になっている》
四人は、相談の上で配置に付く。
楯を持っている兵士を前面に出して、完全防御を取って。
*** ***
春蘭「むぅぅぅ~~~~!?」
愛紗「くぅぅぅぅぅ~~~!」
一刀「何を二人で、唸っているんだい!?」
春蘭「……あぁ、一刀か? 何故か流琉と季衣から思いっきり、罵倒されているような気分になってな。 私は二人にどんな悪い事をしたか、考えていたのだが………思いつかなくて……」ハテ?
愛紗「私も、流琉と季衣に謝らなくてはならない!!……と考えているのですが、その謝らなくてはいけない理由が判らないので、こうして悩んで………………」ウーン?
一刀「本人達に会ってみれば、判るんじゃないかな?」
*** ***
許緒は、近くの大岩に近寄り…ポテポテと触り、一カ所に見当をつけて、そして、自分の愛用武器『岩打武反魔』を取り出した。
季衣「どおおりりゃゃああぁぁぁ──────!!」
ドドォォゴゴゴォォォンンン!!
大岩の一つが粉々になった……。 それでも、大人一抱え分の岩を片手で持ち上げて、典韋に放り投げる。
李衣「流琉! お願い!!」
流琉「うん! 任せて!」
典韋は大岩を預かると、文醜と顔良の傍に投げる!!
流琉「斗詩さん! お願いします!!」
斗詩「了解!!」
顔良は、典韋より投げつけられる岩を、次々と片手で受け取ると傍に置く。 それを見て、文醜が楽しそうな笑顔を浮かべて、やっぱり片手で岩を取り軽く振った。
猪々子「よぉしよーし! 手頃な大きさ、操り易い重さ! いいね!いいね!! それじゃ────いってみようかぁぁぁ!!!」
ブゥ────ン!!
バキャッ! ゴキャッ!!
文醜が投げた岩は、『一段目の馬防柵』を破壊した!!
味方からは歓声が!! 馬防柵から衝撃音が!!
………敵である信長は……上掛けを翻し、虎牢関への退却を命じた!
信長「引けえぇぇ! 無駄死には許さぬ! 引けえぇぇぇ!!!」
大音声で呼び掛け、兵士を虎牢関に導く!!
猪々子「逃がすかぁぁ!!」
文醜が岩を投げつける!
先程よりも速度が乗り威力も加わる岩が、信長に当てるべく、定めて投擲された─────!!
信長は、素早く振り向き…腰の得物を抜き払い、中段に構える。
だが…岩は目の前!! 上段に上げる間も…避ける間も無し!!!
信長『たぁぁわぁぁけぇぇがぁぁぁ!!!!』
ギッシャァァ─────ン!! …ボトッ! ……ボトッ!!
……信長は………岩を『押し切り』にして…切り捨てた!!
シィ──────────────ン
その出来事を見た者共の時間が……止まった。
一人だけ除けば……………
信長「何を呆けている!! 早く虎牢関に戻れ!!!」
敵、味方の時間が流れ出した…………
信長「おい!! そこの敵将!!!」
猪々子「………な、何だぁ!! 」
文醜は、少し怯えながらも返答をする。
その姿を見ながら信長は、薄く笑い…………言い放つ!
信長「良い攻撃だ!! 機会あれば…また相手をしてやるぞぉ!!」
『ア───ッハッハッハッハッハッ!!』と、高笑いを上げて…虎牢関の門を潜っていった。
◇◆◇
【 各々の反応 の件 】
麗羽「何ですのぉ! 何ですのぉ!! わたくし達は、敵の策を破ったのですのよぉ!! 負け惜しみですわぁ!!!」キィ─!
★☆☆
華琳「………………………………」
一刀「いやぁ、凄かったな!! って、華琳! どうした!!」
華琳「……フッ、フフッ、フフフフフッ!!
流石『覇王』より上の『魔王』の称号を持つ将よ!! 覇気に当てられ、一瞬と言えど動けなかったなんて………… 」
一刀「………か、華琳さん?」
華琳「ぜっったいに超える! 超えて眼下で見据えてあげるわ!! 見ていなさい! 『織田信長』!!!」
★★☆
雪蓮「凄い! 凄い!! 凄い!!! 冥琳! アレ! アレ!!」
冥琳「……………敵将を賞賛するのも、将の大器を魅せる要件だが…お前のそれは、童が興味を示す事と同じだ!」ハアー
蓮華「でも……私も、あれほどの器量があれば……………」
祭「権殿……奴の器量は奴の持ち味、権殿の持ち味は権殿にしか出せません! 努々忘れてはいけませんぞ!?」
★★★
美羽「ピィ───────────!! 怖すぎる!! な、な、七乃!!! 一緒に寝てたのもぉぉぉ───────!!!」ブルブル
七乃「お、お嬢様! 私…からも、お願い…します!!」ガタガタ
◆◇◆
【 于吉の策謀 その弐 の件 】
〖劉岱軍陣営にて〗
于吉「貴方様を、皇帝の玉座へ導くために参上致しました……!」
劉岱「わ、儂をだと……!?」
于吉「貴方様が、先程申していらしたではないですか? 『皇帝にさえ成れる男』…と。 私は貴方様が相応しいと思い、お近付きしたのですが…。 まぁ、私の見込み違いなら申し訳ない…この話無い 」
劉岱「ま、まて!!! 本当に…儂が成れると?」
于吉「勿論、そのために二つの『道具』と一つの『策』を御用意してあります。 まず、『道具』を拝見頂きたい!」
パチィン!! ───スゥ!
于吉が指を鳴らすと、傍に白い衣装、白い覆面を被った『男』が二人現れる。 一人の男は、『白い衣装』を大事そうに持っている。
于吉「まずは、この『御遣いの衣装』です。 大きさは、既に劉岱様に合わせてありますので………」
劉岱が着用した事が無い『衣装』が、目の前に置かれる。
劉岱は知らないが、この服は『ポリエステル製』で出来ている。
于吉「………それと、この『二人』を従者として、お使い下さい。こちらは、武なら曹孟徳配下の夏侯元譲を上回り、もう一人は文武両道ですよ。 貴方様の力になってくれますよ!」ククク
劉岱「ふむ…!? まさか………貴方は!!!」
于吉「おや? 意外と聡い…コホ、鋭いですな? 貴方様の知り合いの方ですが、大丈夫ですよ。 知らせが直ぐに来ますが、この方は亡くなっているのです。 天水の者達の手により……」
劉岱「う………ぐぅ……………!」
于吉「それに、この二人は片言しか喋れませんし、主人には忠実ですので、命じれば…どのような事もやりますよ?」ニヤニヤ
劉岱「─────────!!」
于吉「どうです? 納得されれば『道具』をお渡して、策を伝授しますよ? 貴方様が皇帝に成れれば、私は何も言いませんし、要求も致しません。 ………………如何でしょうか?」
◇◆◇
【 ー予感ー の件 】
〖虎牢関にて〗
猪々子「こえぇぇ────!! こえぇぇ───よぉ! 斗詩!!」
斗詩「私だって!!!」
季衣「流琉──! あ、あの人………!!」
流琉「季衣も!? 華琳様より怖かった~~!!」
猪々子「………………だけど、アタイ達が行動しないと、先にすすめられない! それに、姫にドヤされる!!!」
斗詩「うん…! 二人共…怖いだろうけど…」
李衣「大丈夫! これでも華琳様の将だもの!! 行くよ、流琉!」
流琉「うん!!」
四人は…再度『岩投げ』の作業を繰り返し、馬防柵を粗方破壊した!
残った馬防柵は、虎牢関の門傍付近の二段のみ。
辺りは…散らばった竹の破片、竹から流れ出る『臭き濁った水』、岩の塊が転々と………………。
猪々子「よぉしぃ──!!! これでアタイ達の役割は終わりだ!」
季衣「でもさぁ……何か変な臭いしない?」
流琉「何かな? どこかで嗅いだ事が……あっ!! み、皆さん、退いて下さい!! 早く、早く!!!」
斗詩「え? え!?」
四人は流琉の言葉を聞き、脱兎の如く逃走する!
─────バタバタバタバタッ!!
ザザザザザザザッ──────!!!
そして、横を───前衛部隊が通り抜けて行く!!!
流琉「だめぇぇ━━━━!!! 戻ってぇぇぇ━━━━!!!」
流琉が力一杯叫ぶが、将兵ともども聞く耳を持たず………
王匡「我々の勇猛さに、曹孟徳の将が吠えよるわぁ!! 全軍! 手柄を立てるのは今ぞ!! かかれ!!」
兵『ううおおおぉぉぉーーーーーーーーー!!!』
孔ユウ「抜かるでない! 我々こそ先攻第一の手柄を立てるのだ!」
兵『突撃いいいぃぃぃーーーーーーーーーー!!!』
ーーーーーーーーーーーーー
鮑信「あの二将が疲れた時に、俺が入れば漁夫の利…! 指示があるまで待機せよ!!!」
兵『はっ!!!』
虎牢関の傍に、約二万人近い兵士達が、溢れ返っていた。
☆☆★
光秀「敵が接近してきます! 弓部隊『火矢』を用意! 『竈』(かまど)の火入り口を狙いなさい! 放てぇ!!!」
光秀の指示で、三十程ある『竈』に火矢が射られる。 信長が矢を射掛けている時に、準備をしていた『釜』が、竈の上に乗っている。(勿論、蓋は外してある)
そんな『釜』の中から、中をくり貫いた『竹』の棒が馬防策に支えられるように斜めに倒れ、連合軍側に向かって煙を吹きだす。
異様な光景に驚き、先程の勢いを落としてユックリ進む連合軍。
一人の兵が、興味本位で『竹』を覗こうとした……その時!!
パチィン! パアァン! シュッポ!!
竹の棒より、途轍もない勢いで飛び出して出てきた『物』がある!
その兵は、運良く当たらなかったが…後方の兵の顔に当たり、呻き声を上げて倒れたり、『何か熱い物が飛んできた!!』と慌てふためき近くの兵を巻き込む者等、被害が続出した。
信長「ハッハッハッハッハッ! 『栗の実』が爆ぜただけで怯えるなど、連合軍には宦官しか居らぬと見えるな!! おなごの将の方が、まだ働きが良いぞ!? ハッハッハッハッハッ!!」
それを聞いた将兵達は………憤怒の表情で果敢に攻めたてた!!
王匡「必ず落とすのだ!! 落とせ! 陥落させよ!!」
孔ユウ「意地でも、抜いてしまえ!!!」
鮑信「我々も加勢するぞ!!!」
風評が大事なこの時代に『『栗の実』が弾けて驚き、大慌てをして怪我をした!』などと悪評が流れでもしたら、死活問題!!
しかも、洛陽側で名高い『伏竜の軍勢』『天水に降り立った天の御遣い』が批評したとなれば……………身の破滅!!!
兵『ウウウオオオォォォォォーーーーーー!!!!!』
ドオオォォ━━━ン!
ドオオォォ━━━ン!
二万の兵が、残った馬防柵に手を掛けて、破壊を開始すると……銅鑼の音が鳴り響いた!!!
◆◇◆
【 焔の舞台 踊り子は… の件】
〖虎牢関 門前にて〗
先程の馬防柵の残骸より、かなり離れた場所に…四人は息を切らしながら……立ち止まっていた。
流琉「だめぇ! だめぇー! 早く其処から離れて──!!!」
流琉は…前衛の兵達に声を枯らしてまで呼び掛けるが、全く気付く様子はない。 寧ろ、無視している様にも見えるが…………
季衣「流琉!! どうして逃げるの!?」
猪々子「アタイもサッパリ分かんないぜ? 斗詩は分かるか?」
斗詩「………私も分かんないよ。 流琉ちゃん、どうして……!」
ドオオォォ━━━ン! ドオオォォ━━━ン!
季衣「銅鑼の音?」
☆☆★
〖虎牢関 道の上にて〗
三太夫「………おっ? 合図だな! お前ら!! 行動開始だ!!」
忍び「はっ!」
最後備より少し離れた場所に、投げられる『竹筒』(少し切り込み入れて)。 他にも『素焼きの壺』の壺口に縄を付け、クルクルと何回も回し、遠心力を利用して遠くに投げる!!
ガチャン! バキャ! バキィ!
ドロッ、ドロッ~
連合軍兵前衛「なんだぁ!?」
連合軍兵前衛「前に詰めろ!! 当たるぞぉ!!」
三太夫の合図で、藁を球体に丸め、竹で周囲を止めた『玉』が幾つも現れる。 眼下には、虎牢関に張り付く将兵達……!!
配下の忍びが、『玉』に火を着けた!
ボオッ!! ボッボッボッボッボッ!
三太夫「よし! 落とせ!!!」
両側から連合軍の頭上より…複数の『火球』が転がり込んだ!!
グラッ………コロコローーーーゴゴゴゴゴ!
グシャン!!
『火球』が下の岩に当たり、予め(あらかじめ)中に入れてあった竹筒が破片と共に飛散らかる!! 勿論、この竹筒にも『燃える水』が入っている。
━━━━━━━━━━!!!!
馬防柵の破片、中から流れ落ちた『黒き水』が……『火球』から別れた炎に更なる活躍の場を与え、虎牢関門前を舐めつくす!!!
前は『虎』、左右は『壁』、後は『炎』………
兵『━━━━! ━━━! ーーー!』
将『───! ──! ーー! ー!』
━━虎牢関の門前━━━将兵合わせて約二万━━━
━━『焔の舞台』で━━『死の踊り』を━━━
━━『披露』する事に━━━━なった━━━!!
☆★★
バアァァフウゥゥゥ━━━━━!!
季衣「あっ、熱━━━━━ぃ!!!」
流琉「!!!!! は…早く…に、逃げな…きゃ─!!」
猪々子「ぐっ!! 熱風が──!? クソッ━━━! 斗詩!! きょっちー達を連れて、この場を離れるぞぉ──!!」
斗詩「分かった!! 流琉ちゃんは私がー!!」
ガッ! ガッ!
ダッダッダッダッダッダッ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〖曹操陣営内にて〗
華琳「顔良、文醜………臣下の命を救ってもらい、礼を言う。 本当にありがとう! 貴女達が居なければ、この子達は………!」
顔良「とんでもない!! 命を救われたのは私達の方です!!」
猪々子「あぁ…。流琉が、アタイ達を急かして、場所を移動する様に言ってくれたお陰で…助かったんだよ。 …理由が分かんないけど」
華琳「…そう。 今日の戦も終わりね。 ……夜の帳(とばり)がユックリと下りてきたわ。 今は貴女達も体を休めて頂戴。 麗羽には伝令を送って知らせ「必要ありませんわ!!」!?」
カッカッカッカッ!
麗羽「猪々子さん! 斗詩さん!」
猪々子「はいっ!!」 斗詩「はい!!」
麗羽「貴女達は、貴女達は────────!!!」
ガバッ!! 「「 !! 」」
麗羽「無事でぇ! 無事でぇ良かったですわぁぁぁぁ!!!」
★★★
この後、典韋は許緒に、手を握りしめて貰いながら…気付いた理由を語った。
『私が……皆と柵を壊す作業を行っていたとき、季衣が変な臭いがすると言い出したんです。 それで、私も嗅いでみたら……《燃える水》の臭いだったんですよ!! 』
『その《燃える水》とは? 流琉は、どうして知っているの?』
『はい。 この前…陳留の裏道で食材を探していましたら、露天商のおじさんが《燃える水》を売っていたんです。 それは、名前の通り水みたいにドロドロしているんですが、火を着けると…かなりの勢いで燃えだすんですよ!』
『………わかったわ。 その臭いを嗅いだときに思い出し、火計を使われたら危険と判断して、皆を誘導した……というわけね』
『あの………華琳様……虎牢関に向かった将や兵士さんは……?』
…………フルフル
『………………………そうですか。 私が……もっと早く気付いていれば………』
『違う! 流琉は悪く無い!! ボクは知ってる…流琉が大きな声を出して止めた事。 ボクは見てる……そんな流琉を嘲り向かっていたアイツらを! だから、だから……流琉は、悪くなんか無い!!』
『………季衣…………ウワワァァァ──────ンンン!!!』
◇◆◇
【 颯馬の思惑 の件 】
〖虎牢関 董卓軍内にて〗
いつ、何時見ても………この風景は………慣れない。
自分が誘い(いざない)導いて陥った敵兵達。
虎牢関の門は…近付くだけで熱く、多数の焼死した者共の遺体と肉と骨と脂が散乱している。
焼き焦げた人肉の臭いが濃密に漂い…その臭いに釣られてか、近くで狼の遠吠えが聞こえる…………
☆★☆ ☆★☆
今回の策の要は、『馬防策』だった。
普通、馬防柵は耐久性も考えて『木材』を使う。 信長も馬防柵と三段打ちで、強敵を撃破したと自慢し、信玄殿も謙信殿も材質の点で納得がいかないらしく、木材に変えるべきだと進言してくれた。
だけど、今回の馬防柵は『耐久性』は不要。 必要なのは『空洞』、『非耐久性』、『可燃性』の三つ。
その材質に適していた『竹』を刈り取り、数日干す。
その後、竹の空洞の中に『燃える水』を注入する。
最後に、その竹を束ねて剛性を持たせた。
干して『非耐久性』、『可燃性』を実現。 『空洞』に燃える水を入れ、馬防柵を作り上げる。 これが、虎牢関に備えた馬防柵の正体だ。
*** *** ***
虎牢関の最後に置いてあった竈(かまど)と釜は、一緒に入れてあった『竹筒』の中の『栗の実』を弾けさせる為の一連の道具だ。
連合軍が『栗』だと気が付かないのは、今が普通の栗は成らない時期だから。 俺は、日の本に居た当時、『年に三度栗の実がなる木』がある事を知り、この大陸にあるか調査してもらった。
そうしたら、西涼にあると聞いたので、お願いして用立てていただいた次第。 ……戦が終われば、食糧不足の所で苗木を栽培して貰えば、解消に役立つだろう。
*** *** ***
そんな苦労の末に出来た物だが、殆どお遊びみたいな『兵器 勝ち栗砲』。 これをどう扱うか………かなり悩んだ。
そのため、信長ならと期待して渡したが、まさか…挑発に使うとは恐れいる。 光秀も補佐してくれたお陰もあるんだろうな………
*** *** ***
そんな中、連合軍の先発隊が到着して、馬防柵を攻撃してくれるのだが……なかなか破壊してくれなくて………正直困った。
だが、別の援軍の将が来てくれたらしく、この将達で難なく破壊を終了してしまった。 俺がひと抱えしないと、持てそうもないある岩を、片手で渡しながら投げるなんて………怖すぎるぞ!
まぁ………そのお陰で馬防柵が破壊されて、『燃える水』や『竹』が散らばり、三太夫の『火玉』が落ちて、燃え広がったわけだ………
この盛大な火計は、『警告』であり『戒め』であり『見せしめ』である。 攻めれば……お前達がこの様になるという……
それでも……来るのであれば、宣言通り叩き潰すのみ!!!
☆★☆ ☆★☆
火計の効果か……反董卓連合軍は、これ以上攻めてこなかった。
俺は、忠勝殿や恋を伏兵任命を解いて呼び戻し、休んで貰うようにお願いした。 …………明日は、どうなるか判らないから。
ーーーーーーーーーーーーー
眼下の様子を見ながら、静かに手を合わせると……口から経文が流れでた。 俺が日の本に居た頃から、敵味方問わず行ってきた行為。
天に上がるか地に下るか……死んだ者達への、良き道標になればと思い実行している……終わった後に、静かに一礼を行う。
多分無理だと思う。これだけでは終わらないだろうと判断しているが、それでも……俺は明日に思いを馳せる!
どうか……これ以上の犠牲が出ない事を─────!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
作者はチキンですので、この作品書いてて少し気分が悪くなりました。 書いた張本人がどうよ? と言われそう………。
次回の策も、火計ですが…やり方が異なりますので、楽しんでいただけると思います。 来週の日曜日までに投稿できるか微妙ですが。
また、宜しければ読んで下さい。
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義輝記の続編です。 今週、こちらの都合で忙しくなりそうですので、早めに投稿を。 虎牢関の策は、こうなりましたので、宜しければ読んで下さい。
2/26 猪々子の台詞修正しました。 一部修正しました。