No.665829

暁光のタイドライン~2~ 時の牢獄/逢魔が刻

ゆいゆいさん

艦隊これくしょん~艦これ~キャラクターによる架空戦記です。
新任提督と秘書艦榛名がエピソード毎の主役艦娘と絡んでいく構成になっています。

金剛着任エピソードとなります。ラブコメ分少し多めです。
次回は扶桑姉妹、時雨が登場する関門海峡編の予定です。

2014-02-24 20:40:18 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1188   閲覧ユーザー数:1163

暁光のタイドライン~2~

 

 

前編 時の牢獄~金剛の記憶~

 

 

新任提督、船越楫八(ふなこしかずや)中佐が友ヶ島に到着し、丸一日が過ぎた。昨夜より必要物資のリストアップに忙殺され、殆ど睡眠を取っていなかった。

 

こんこん。

ドアをノックする音。

「入れ。」

入室を許可して入ってきたのは士官服に身を包んだ少女。当時としてはそこそこの長身と引き締まった体つき、長い髪と整った顔立ちは可憐さと凛々しさを併せ持っていた。

「おはようございます。」

「おはよう、榛名。」

榛名は敬礼すると資料である書類の束をめくりながら、今日のスケジュールを船越に伝える。

「本日、一〇〇〇時より、戦艦一、正規空母一、軽空母一、重巡二、駆逐艦二、以上七名が我が艦隊麾下に編入されます。こちらがその名簿です。」

「…これで、航空戦力も充分とはいかないまでも何とか間に合いそうだな。」

榛名はえーと…と言い淀むと報告を続けた。

「つきましては同時刻より艦隊発足のご挨拶を頂きたいのですが…そのあとお互いの親睦を深めるために食事会などを企画しておりまして…。」

後半部分をややためらいがちに話す榛名に対し船越は大きく溜息をつく。

「結成式のようなものか?私はそういうのはどうにも苦手なのだが。」

「お察し致しますが、艦隊関係者末端までの士気を高く保つのも艦隊司令官の職務かと…。」

「わかった…好きにしろ。」

船越はそれだけ言うと二度目の大きな溜息をついて椅子に身体を沈めた。

 

「…すって!…ん!…さい!」

何やら外が騒々しい。

この声は能代か?

「だから…ですって!時間は…!」

ガチャ!

勢いよくドアが開くと半ばもんどり打つようにして二人の少女が転がり込んできた。

「Hi! I am Kongo. Are you my admiral?」

「も、申し訳ございません!自分がついていながら…時間厳守だと言って抑えていたのですが…。」

セミロングの髪を三つ編みにして両肩に垂らしている方の少女がコメツキバッタの如く頭を垂れる。

「気にするな、能代。貴艦の尽力は認める。それよりも…金剛。」

船越はもう一方の少女を睨みつけた。背格好は榛名と同じくらいだが、榛名より長いと思われる髪は栗色で、二カ所を団子にして残りを下に垂らしている。

「ここは日本だ。日常会話なら日本語を使え。」

「…。」

「どうした?金剛。理解できたのなら復唱しろ。」

「分かりました…高速戦艦金剛、日常会話では日本語を使い…マス。」

「よし。行っていいぞ。定刻まで自室で待機。」

「…あ」

「聞こえなかったのか?自室で待機だ。」

「…はい。失礼しマス。」

 

金剛は何か言おうとするも言葉に出来ず、ふらふらとおぼつかない足取りで退室した。

その様を不安そうに目で追う榛名。

船越は軽く溜息をつくと、榛名に指示した。

 

「榛名、補給物資のリストだ。通信担当に回しておいてくれ。…それから、金剛のフォローもついでに頼む。」

「はい!ありが…いえ、失礼します!」

榛名は深々と頭を下げると、執務室を飛び出した。

 

「…能代。」

「何でしょうか?」

「すまなかったな。」

「いえ、能代にも奔放な姉がおりますので…提督と榛名さんの心中はお察しいたします。」

「そう言ってくれると助かる。貴艦も少し休むと良い。」

「了解致しました。軽巡能代、半舷休息に入ります。」

 

くるりと踵を返し、退室する能代。

能代は船越が到着する以前から友ヶ島基地で前準備に奔走してくれていた艦娘の一人で、阿賀野型軽巡の二番艦だ。

阿賀野型は大戦中に竣工した、当時の新型艦である。島風同様、水雷戦を想定した設計がされた高性能艦ではあったが、海戦の主役は既に航空機に移っており、あとは如何に航空機を運ぶか、或いは護衛するかが当時の戦闘艦に求められていた役割であった。そのため、阿賀野型は戦局を打破するほどの活躍は出来なかったのだ。

だが、対深海棲艦戦となると話は別である。上位種ともなると現行の航空機に積載可能な火器では貫通が容易ならざるほどの防弾性能を有していた。

このため、我々の世界では揶揄の対象となっている大艦巨砲主義にも一定の道理はあったといえる。

大和型が未だ前線に投入され続けているのも、46センチ徹甲弾の貫通力を期待されての起用であった。同じ理由で小型艦でも水線下に有効打を与えることが可能な水雷戦力もまた、その価値を見直されることとなった。海軍上層部では大戦中一部に採用された球磨型軽巡の重雷装化について拡充の話が出ているという噂も船越の耳には入ってきていた。

 

司令官舎前の砂浜に座り込んでいる少女。金剛だ。

「…提督に嫌われちゃったのかナ…。」

ぐすっと鼻をすする。落ち込む一方で船越の顔を見たとき何か懐かしい感覚を覚えたことを不思議に思っていた。そのために復唱も忘れ黙り込んでしまったのだった。

「姉様…?」

「榛名…。」

「姉様。あのですね…提督のお叱りは艦隊旗艦である姉様への期待の裏返しなんですよ?」

「…旗艦?Why?」

「…お話はお部屋に戻りながらしましょう。」

 

通常艦隊旗艦は秘書艦が務めるのが通例だ。とはいえ、別個に設けてはいけないというものでもなく、場合によっては秘書艦を複数抱える艦隊も存在する。

船越の考えとしては大きく二つ。

一つは榛名の実戦経験がまだないこと。一足先に金剛を引き継ぎ、戦場を経験した姉の方が戦闘指揮に向いているだろうという判断。

もう一つは榛名の性格的な問題。その献身的な性格では自らがリーダーシップを発揮するよりもその補佐に回る方がその能力を存分に発揮できるのではないか、という判断である。

 

「…ですから、少々変則的ですが船越艦隊の艦隊総旗艦は姉様、主任秘書艦が榛名、ということになります。」

 

司令官舎から海岸線を右手に西へしばらく歩くと艦娘宿舎がある。地上三階建てで最大で100名ほど収容可能である。そこに艦種毎部屋割りして60名程度の利用を想定した内装を施し、1階が戦艦と正規空母、2階が重巡洋艦と軽空母及び水上機母艦、3階が軽巡洋艦と駆逐艦、潜水艦に割り当てられている。

船越到着前から既に異動が完了していた艦娘は重巡二隻、軽巡四隻、駆逐艦四隻である。

船越に同行していた榛名、夕張、電と本日着任した金剛、瑞鶴、瑞鳳、鈴谷、熊野、雪風、長波を加えた二十隻が船越艦隊発足時の総戦力である。

したがって現状はまだ空室だらけの宿舎なのだが、榛名は自室へと姉を案内した。

 

「ここが私達の部屋です。」

「提督から伺っていました。提督のお父様、船越中将も艦隊を率いておられて、そのときの旗艦がお姉様の前の金剛であったとか…。」

 

そこには英国調のインテリアが奢られたティールームがあった。

さらに別室に仕切られた二人用のベッドルームが2部屋。四人が寝泊まりできる設計になっていた

榛名はここに姉妹四人が寝泊まりできるのだという意味合いで姉に見せたのだが、金剛が見せた反応は榛名の期待したそれとは全く異なるものだった。

 

「…。」

 

金剛はその場に立ち尽くしたまま微動だにしなかった。やがて全身を細かく震わせるとその場にへたり込んだ。

目はどこを見るともなく見開かれ、顔からは血の気が失せ、汗が滝のように噴き出している。異常事態であることは誰の目にも明らかであった。

 

「姉様っ!」

 

榛名は姉に呼びかけるが返事はない。

階下の異常に気づいた重巡姉妹、妙高と羽黒が降りてきた。

 

「どうかしたのですか?」

「妙高!姉様が急に…!」

「これは…羽黒、提督をお連れなさい!本部には私が連絡しておきます!」

「は…はい、お姉様!」

 

軍隊である以上原則として部下が上官を呼びつけるようなことは出来ないので、この場合妙高が司令部に連絡を取り、羽黒を迎えにやる形を取った。

実際に羽黒が船越の姿を見たのは司令部と宿舎のちょうど中間。船越も連絡を受けてすぐに飛び出してきたのだ。

 

「司令官さん!」

「羽黒か!状況は?」

「すみません!わ、私はお姉様に言われてすぐ出てきましたので状況までは…本当にすみません!」

「…そうか。いや、ご苦労だった。では急いだ方が良いな。」

「は…はい、お供します!」

 

「金剛!」

船越が宿舎に飛び込むなり名を呼ぶも、返事は返って来ない。様子を見れば相変わらず金剛はその場にへたり込んだまま動かない。口だけがもごもご動くだけだった。

船越は金剛の正面に回り込み、両手で金剛の顔を上げさせた。

「金剛、私が分かるか?」

「提督…。」

 

「すまん、皆少し外してもらえるか。」

上官の人払いに三人は従い、部屋の前から離れた。

船越は金剛を抱え上げ、ソファまで連れて行き、どうにか座らせるとドアを閉めた。

ソファの横で膝をついて金剛の顔を覗き込む。

反応が薄い。両手でピシャピシャと軽く頬をはたいた。ようやく視線が船越を捉えたがその顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっており、先ほどの快活な姿は見る影もなかった。

「私だ。船越楫八だ。分かるか?」

船越の問いかけに金剛はぐすっと一回鼻を鳴らすとこくりと頷いた。

「ワタシは…提督を…お父様を…殺してしまいまシタ…だから…謝らないと…!」

「金剛!」

船越が金剛の顔を掴み強引に自分の方を向かせる。

「金剛、私は父甲四郎ではないし、君も先の金剛ではない。君は君だ。謝罪も償いも必要ないのだ。私が期待するのは君という金剛であって先の金剛ではない。過去に囚われるな。未来を、私を見ろ。私にはお前が必要なのだ。」

金剛は船越の言葉に呼応するように我に返ると、また泣いた。その涙は過去ではなく、現在に向けられた涙だった。

金剛がひとしきり泣き追えると船越はハンカチを手渡した。

「まずは涙を拭くことだ。後のことはそれから考えれば良い。」

 

金剛を襲ったのは記憶のフラッシュバックである。

艦娘システム自体が根源的に抱えている問題の一つで、戦闘経験値を引き継ぐことを目的とした記憶の継承には当然轟沈時の記憶も含まれる。自分は生きているにも関わらず死の瞬間までを記憶している、ということになる。

それは少女が抱くにはあまりにも大きく、重い十字架だった。普段は忘れているものだが、時にこの金剛のように何らかのきっかけによって思い出してしまうことで恐慌状態に陥ったり、酷いときは現代でいう脳死状態になったりするケースすらあった。

通常は戦闘中に陥ることが大半の現象であるのだが、金剛のきっかけは部屋の内装だった。当時を船越が知るはずもなく、強いて言うなら父子で趣味が似通っていた程度のまったくの偶然でしかないのだが、あまりにも似ていたのだ。

船越の父、船越甲四郎中将もまた息子と同じく艦娘を単なる戦力…兵器としてではなく、人として接していた。当然艦娘達の自室も彼女らが心身の休息を図るのに最善の環境となるよう努めていた。

この考え方は船越自身も同様だが、父親から直接教わったわけではなく、単純に船越父子の性格によるものである。帝国海軍としても「かくあるべし」という指針は設けていない。戦争状態にあってそのような指針など有形無実。最前線のような過酷な環境では無い袖は振れぬだろう、ということである。

 

金剛が少し落ち着いたところで船越は向かいのソファに腰掛けた。

「少し…話をしようか。」

 

先代金剛は敵艦からの雷撃が遠因ではあったものの、最終的には弾薬庫の爆発によって轟沈していた。当時金剛に乗艦し、指揮を執っていた船越甲四郎中将はその爆発に巻き込まれ、帰らぬ人となった。

金剛が中将を殺した、という言い方をしたのにはこういう事情があってのことだった。

 

「私にとっては厳格な父だったが、軍人としてはどうだったのだろうな…。」

「何度も怒られてたみたいデス…。」

金剛は赤い眼をしたまま苦笑いした。

「…でも、とてもお優しい方だったようデス。」

そんな当時を忍ぶ金剛の言葉からは過去との折り合いがついたことを感じられた。

「とはいえ、私も貴艦のことは責められないのだ…。私は死が恐ろしい。自らの死ではない、他人の死が恐ろしい。父を失ったときのあの感覚。何とも言えない無力感。故に貴艦らを失うのもまた怖いのだ。本来軍人が抱くべき感情ではないのだが…。」

「だったら、失わなければいいのですヨ!」

「簡単に言ってくれるな…。」

今度は船越が苦笑する番だった。

「ワタシがみンなを守りマス!提督の願いはワタシが叶えてあげるネ!」

「ふふ…ずいぶん大きく出たな。」

「Oh、提督。知らないのデスか?ワタシが名前をもらった金剛山には神様が住ンでるのですヨ?」

得意気に語る金剛の姿に船越は思わず笑みを漏らした。

「なるほど、父がなぜ艦隊旗艦に金剛を選んだのか、分かった気がする。確かに貴艦の言葉を聞いていると不可能でも可能に出来そうな、そんな気がしてくる。」

 

「さて、そろそろ外の連中も安心させてやらないとな。」

そういうと船越は立ち上がった。

「あ、あの…!」

「どうした?」

「Well…この…ハンカチは…?」

「安心しろ。替えならある。」

ドアノブに手をかけたままそれだけ返事すると船越は退室した。

しばらくすると榛名が飛び込んできた。

「姉様っ!」

「榛名、ごめんネ。心配かけちゃった。」

ぺろりと舌を出す姉を見て、榛名もようやく胸をなで下ろした。

 

表に出ると妙高と羽黒が立っていた。

「妙高、羽黒。貴艦らにも世話をかけたな。」

「いえ、お役に立てて何よりです。」

「ほ、他の艦娘さん達が今日着任される艦娘さんの荷物を運びに港の方へ行ってるので…残ってたのは私達だけだったんです…。」

「そろそろ戻ってくるかと思いますが…。あら?」

妙高がぽんと手を叩く。

「忘れていましたわ。川内が上で寝ていました。」

船越はやれやれと肩を落とすと、妙高に指示した。

「皆が戻ってくるならちょうど良い。長良あたりに叩き起こすよう言ってくれ。適任だろう。」

「了解致しました。提督。」

「それでは、私は戻るよ。」

「失礼致します、提督。」

「し…失礼します、司令官さん!」

敬礼を交わすと三人は分かれた。

 

金剛姉妹の自室。

顔を洗って身なりを整えた金剛は榛名に髪を結ってもらっていた。

「…ねえ、榛名。」

「なんですか、姉様。」

「榛名は、提督のこと…好き?」

急に榛名の手が止まる。

「な!ななな…何を急に言い出すんですか!」

「嫌いなのデスか?」

「嫌いなわけないじゃないですか!」

妹は姉の言葉に耳まで真っ赤にして否定する。

「If so…榛名も提督のことが好きって事でOK?」

「もう…はい、それでいいですよもう…。」

「モウ!大事なコトなンだヨ?」

そう言うと金剛はプーッと頬を膨らませた。が、すぐ真面目な顔になる。

「ワタシは提督が好きデス。」

「今日会ったばかりじゃないですかっ!」

「そうなンデス。もしかしたらワタシの中にある金剛の記憶が提督に中将を重ねているだけなンじゃないかって…。もしそうならワタシはなンて最低な女なンだろうって…。そう考えたら胸が苦しいンデス…。」

榛名は優しく姉を抱きしめた。

「姉様はちゃんと恋してますよ。嫌われたくない、そばにいたいから不安になるんじゃないですか。私だっていつも提督に…。」

金剛がぷるぷると震えている。泣いているのではない。笑いをこらえているのだ。

「ぷぷぷ…榛名も提督に恋してるのデスね?」

「あっ、いえっ…こ、これは違っ…!」

必死に言い繕おうとする榛名だが、図星であることは誰の目にも明らかだった。

「No,ごまかさなくていいデス。ううン、大事なコトだからこそごまかしてほしくないデスよ。覚えてますか?アナタは小さい頃から姉妹四人のうち一番後ろを歩いてまシタ。三人の誰かが転ンだりすると、最初に気づいて助け起こしてくれたのはアナタでシタ。ワタシの自慢の妹デス。そんなアナタが提督のコトを好きで、ワタシを姉と慕ってくれるのナラ絶対に引き下がらナイで。ここはFairにいきたいネ。」

「…はい、姉様。…でも。」

「What?」

「提督は誰にでもお優しいので…慕っている艦娘は多いと思いますよ?例えば電ちゃん…とか…。これから艦隊が増強されればもっと増えるかと…。」

「…Oh.駆逐艦娘とは盲点でシタ。提督にソッチのシュミがあれば勝ち目ナイですねソレは…。」

「姉様、それはちょっと失礼なんじゃあ…。」

「そうカナ?」

「そうですよ。」

 

部屋に静寂が訪れた。

後編 逢魔が刻~夜戦狂の詩~

 

 

宿舎の南に隣接して蛇ヶ池がある。池の畔に沿って南へ行くと少し開けた広場に出る。普段は訓練等で使っているが、この時はオーブンなどが用意され、ちょっとしたパーティ会場が出来上がっていた。最低限索敵、通信に要する人員を除いた友ヶ島基地の全スタッフがここに集まっていた。

 

「…私からの挨拶は以上だ。これより艦隊編成を発表する。艦隊総旗艦に金剛。主任秘書艦に榛名。秘書艦補佐、能代、羽黒、瑞鳳。」

「艦隊を預かりマス、金剛デース!ヨロシクお願いしマース!」

「続いて各艦種の指揮艦。重巡、妙高。軽巡、長良。駆逐艦、長波。航空母艦、瑞鶴。」

これは各艦種毎のリーダーである。帝国海軍としては特に設けよという規定はないが、その艦種にしか分からないこともあるだろうと船越は考え、意見具申し易いようにと設けたポストである。

その後、整備班、通信班などの人員を紹介、最後に島の管理人、八十八姉妹の紹介で式は滞りなく終了した。

 

一五○○時、執務室。

「提督、お茶でも煎れましょうか。」

「ああ、頼む。」

「難しい顔をされて、どうかなさいました?」

「西方面の戦局が思わしくないらしい…。」

「関門海峡、磯村中将の艦隊旗艦は…扶桑でしたね…。」

「そうだ。それと伊勢らを擁する豊後水道の太田艦隊で南北を抑えている。」

「彼女らが苦戦するなんて…。」

 

扶桑型、伊勢型は建造当時より欠陥戦艦、鈍足戦艦と呼ばれなかなか外洋で活躍する機会に恵まれなかった。が、航空機母艦と連携しての拠点防衛任務ならば有用であろう、という判断で呉、佐世保両鎮守府からほど近い戦略拠点である豊後水道と関門海峡の防衛を任されていた。本来大和、武蔵もここに含まれるのだが、現在は遠征任務で外洋に出ていた。付け加えるならば、今後船越艦隊に合流予定の比叡、翔鶴らもこれに同行している。

 

「Teatimeは大事にしないとネ!」

空気を読まず入室してきたのは言うまでも無く金剛である。

「…金剛。確かに艦隊旗艦である貴艦は執務室に出入りして構わないとは言ったが、ノックを省略しても良いと言った覚えはないぞ。」

「Oh…スミマセン。」

「まあ良い。貴艦も無関係ではない話だ。同席して聴いていけ。」

 

榛名が手短にこれまでの内容を話すと金剛は艦隊旗艦に相応しい目つきへと変わった。

 

「それで…呉からは何と?」

「今後の戦局如何では応援の要請もあり得る…だそうだ。」

「No!ワタシ達だって決して充分な戦力とは言えませン!」

「姉様、それは呉も承知の上だと思いますよ。」

「それほどに戦局が悪化している、ということだろう。上も出来ることならこんな若造の手など借りたくないだろう。」

船越は椅子に座り直すと、深く溜息をついた。

「もっとも、上が言ってきたら我々はそれに従うより他ないさ。」

 

不意にサイレンが響き渡った。

通信係から連絡が入る。

 

「早期警戒艦、筑摩より入電!我、敵艦発見セリ!」

 

「旗艦、金剛!出撃しマース!」

金剛が威勢良く立ち上がる。が、船越はそれを制した。

「待て、金剛。交戦ポイントに到達する頃にはもう日が暮れている。夜戦になるぞ。万が一にも防衛線突破を許すわけにはいかない。二段構えで迎え撃つ。前衛は小型艦による水雷戦隊、後衛に貴艦ら戦艦と重巡を配置する。早速だが各指揮艦を招集してくれ。他の艦は戦闘準備で待機。」

 

指揮艦が招集されると早速出撃艦艇の編成に入った。まず前衛、水雷戦隊の編成である。船越が提案する。

「旗艦は川内で問題ないだろう。むしろ出さんと五月蠅くて敵わん。長良、他に軽巡からは能代、夕張でどうだ?」

「能代はともかく…夕張ですか?」

「万一に備えてだ。あいつなら夜間でも砲雷撃戦と対潜攻撃を同時にやれる。長良、貴艦と阿武隈には後衛にて対潜攻撃を担当してもらいたい。」

「そういうことなら断る理由はないですね。そっか、夕張は提督にとって都合のいい女なんだ。」

長波がぷっと吹き出した。

「…いや、失礼。私もまだ提督に手土産がないのでな。前衛で出させてもらう。提督、島風と雪風を使いたい。良いか?特型駆逐艦と夕張を侮るわけではないが、この場合前衛に足自慢をいくらか配置しておくに越したことはないだろう?」

「もっともだな。貴艦の提案を採用しよう。前回損傷した島風の艤装体も神戸で修理が完了し、先ほどこちらに届いている。問題ない。後衛は金剛と榛名、妙高と羽黒、長良と阿武隈で行く。良いな?妙高。」

「提督直々の御指名、光栄です。」

妙高は柔らかな笑みを以て回答とした。

 

港。出撃を前に慌ただしい中金剛の悲鳴が轟く。

「エーッ!提督、ワタシに乗らないの?」

「榛名にとって初めての実戦だ。今回は我慢しろ。嫌なら構わんぞ。鈴谷と代わるか?」

「そーゆーコトじゃないデス!」

「なら出るぞ。しっかりしろ、艦隊旗艦。」

「Yes,sir!旗艦金剛、Sally go!!皆さん、着いて来て下さいネ!」

「戦艦榛名、出撃します!勝利を、提督に!」

 

本来、艦娘に乗員は必要ない。当然船越も乗艦する必要は無かった。艦娘を兵器として割り切っている司令官はまず乗艦することはない。が、現場海域の状況をより正確に把握し直接指揮が可能なように自ら望んで乗艦する司令官もいた。船越もその一人である。

 

「よし、では作戦通り前衛と後衛に別れて進航する。金剛、速度落とせ。島風、前に出すぎるなよ。これより、迎撃作戦を開始する!」

 

金剛ら後衛部隊は減速し、川内ら前衛部隊は加速した。そして予測交戦海域へと突入した。

「能代、敵影を発見!数四…いえ、六です!重巡赤一、雷巡白一、駆逐艦赤二、潜水艦白二です!」

零水偵からの報告で敵の編成を把握する。と、同時に零水偵は照明弾を投下する。

 

「川内、主砲、てーっ!」

照明弾を目印に川内が砲撃を指示する。

が、命中はしない。間もなく完全に日が落ちる。薄暮の中では如何にその身を燐光に包んだ深海棲艦とて容易に捕捉は出来ない。

この砲撃はあくまでも牽制。足を止めさせ、距離を詰めるのが狙いだ。

 

後方、戦艦榛名艦橋。

「これが…実戦…。」

榛名は混乱していた。初めて感じる実戦の空気。

自分に与えられた役割は待機すること。

いつもは積極的な姉が微動だにしないこと。

気づけば榛名はいつもよりやや上ずった声て船越を呼んでいた。

「提督…。」

「どうした?」

「榛名は何をすればよいのでしょう?」

「戦闘指揮は金剛に任せてある。金剛から何の指示もないと言うことは、動くなということだ。」

「…でも軽巡や駆逐艦の子達があんなに戦ってるのに、戦艦の榛名が…」

「自惚れるな。戦艦で全ての戦闘が片付くなら軍とて戦艦ばかり建造している。彼女らには彼女らの役割がある。それを果たしているに過ぎない。そして、貴艦がいま果たすべき役割は、彼女らの戦闘をよく見ておくことだ。戦闘が次の局面に移ったとき、何をすべきかを見誤らないようにだ。」

「…は、はい。」

船越は軽く溜息をついた。

「榛名、実戦は怖いか?」

「はい、…いえ、あの…少し。」

「それで良い。気にするな。恐怖に慣れてしまってはおしまいだ。恐怖は消し去ってもダメだし、呑み込まれてもダメだ。忘れるなよ。」

 

前線。夕張のソナーが敵潜水艦を捉えた。

「潜水艦一隻撃破!もう一隻がそっちに行ったわ、能代!深度25…いえ、30!」

兵装実験軽巡夕張。軽巡に分類されているが、実質その船体は大戦期に竣工した駆逐艦群と大差ない。軍艦設計の神様とも言われる平賀謙が小さな船体に如何に効率よく兵装を搭載できるかというテーマの元に開発された艦である。

航続距離や、速力に於いて劣る面はあるが、兵装の搭載方法が特殊なため、遙かに大きな船体を持つ阿賀野型ですら不可能な砲雷撃戦装備と対潜水艦戦装備を同時に搭載できる唯一の艦娘となった。

「了解です!爆雷、深度30で投下します!」

能代を含めた他の軽巡及び駆逐艦はソナーと爆雷をオプション装備してしまうと最低限護身用に残された武装しか残らない。故に能代には主砲、副砲と爆雷、川内には主砲と魚雷、そして電探を装備しての出撃となっていた。尚、これら艦娘の武装は徹底したモジュール化により、換装は極めて容易に行える。但しそれには一度港に戻る必要があるため、夕張の搭載能力は他のどの艦にもないアドバンテージであるといえた。

「着弾確認、敵艦撃破!」

能代の着弾確認を受け、夕張がソナーで改めて敵艦の轟沈を確認する。この時代、夜間に於ける潜水艦の存在はそれほどまでに驚異であった。

 

前衛部隊旗艦、川内。

「さーて、邪魔者はいなくなったわ。長波、残りは私達で片付けるわよ!」

「了解した。私と島風で回り込もう。雪風は川内の援護だ。」

枢軸国…特にドイツの航空隊が得意としたロッテ戦術を基軸とした作戦を船越も得意としていた。人が自らの前と後ろを同時に見ることが出来ないように、如何に巨大な戦闘艦を自らの身体の一部として操艦できる艦娘といえども当然物理的や心理的な死角は発生する。どんな高性能な電探を積んでも、艦載機を用いても知覚領域の限界を超えて拡張されるわけではないのだ。船越はそんな艦娘の戦闘を大戦時の空戦に近いと考え、当時空戦で有効とされた二機単位での戦術行動=ロッテ戦術を海戦に採用することを好み、二艦単位での運用を心がけていた。

事実船越は海軍士官学校在籍時、この戦術を用いることで模擬戦に於いて極めて優秀な成績を残していたことを付け加えておく。

 

再び榛名艦橋。

「打ち勝つ…のですか?」

「そうだ。恐怖は感覚を研ぎ澄ます。恐怖により大きな精神で打ち勝つことが肝要だ。」

「より大きな、精神…。」

「何でも構わない。帝国のため、家族のため、自分自身の理想のため。…つまり戦う理由だ。戦う理由と想いの強さが大義を生む。その大義を以て恐怖に打ち勝つ。」

榛名は胸の中で船越の言葉を反芻した。すると今まで頑なに閉じていた扉が開いたように、多くの情報が五感を通じて入ってきた。

「…。」

「震えは止まったようだな。」

「はい。」

このとき榛名の胸に刻まれた大義が何であったのかを榛名の口から語られることは後々まで一度もなかったという。

 

「雪風、牽制お願い!」

「了解しました!雪風、砲撃開始します!…あれ?川内さん、川内さん。」

「何?どうかしたの?」

「当たっちゃいました。…あ、沈んでいきます。」

「…え?」

川内が雪風の示す方向を見ると敵雷巡が一隻、火柱を上げ真っ二つになりながら沈んでいくのが見えた。牽制で撃った一斉射がたまたま敵雷巡のバイタルパートを撃ち抜き、引火した火薬庫が大爆発を起こしたのだった。

「うわー、ラッキーでしたね!」

「そうね。真面目にやってるこっちがバカらしくなるくらいにね…。」

まるで人ごとのような雪風のリアクションに独り愚痴る川内であった。

 

「…さてと、私達もひとつ良い所を見せないとな。島風、行くぞ。」

「りょうかーい!」

駆逐艦同士、2対2による追いかけっこである。

「この長波も川内ほどではないが、夜戦には少々自信があるのでな。そう簡単に逃げられると思ってもらっては困る。」

大戦中に竣工した夕雲型駆逐艦は前型である陽炎型の発展型にして、水雷戦隊編成を前提とした艦隊型駆逐艦の完成形である。速力に於いて個体差が大きかった陽炎型を省み、喫水下の形状を改めることで安定した速力の発揮を実現している。島風ほどではないが、俊足と高い雷撃性能を両立させた高性能艦なのである。

水平機動だけ、という但し書きを付けるならばこの二隻から逃げ果せる艦は存在しないといっていいだろう。

果たして敵駆逐艦二隻はあっさりと追いつかれ同行戦に持ち込まれる。敵艦は反撃を試みるも有効打を与えることもなく、酸素魚雷の直撃を受け轟沈した。

 

「あと一つ…どこだ?」

周囲一体を索敵する川内。完全に日は落ち、周囲は漆黒に包まれている。聞こえるのは船体を掠めていく風の音と、波の音。

不意に川内の後方に新たな機関音が現れた。敵重巡である。戦闘開始と同時に徐々に戦闘海域から離れ機関を停止、潮流を利用し、前衛部隊の形成した防衛線をかいくぐってみせたのだ。

闇の中で光はその周辺を照らしこそするが、遠方は却って見えなくなるものだ。敵は曳光弾や照明弾の光を利用したのだった。

 

「馬鹿にして…!」

川内は急速反転し、全速力で敵重巡を追った。

 

「川内、無理をするな!後衛に任せればいい!」

船越の声もいまの川内には聞こえていない。

航行性能で上回る川内はじりじりと敵重巡との差を詰めていき、ついに船尾を捉えた。…が、川内は減速しない。トップスピードのまま、敵艦の舷側めがけて突進した。

 

「この私が…夜戦で突破されて…はいそうですかとおめおめ引き下がれるわけないでしょう!」

舷側を擦り付けたままゼロ距離で艦砲を斉射した。

「待ちに待った夜戦で後れを取ってるようじゃあ夜戦バカはやってらんないのよっ!」

徹甲弾と焼夷弾を続けざまに叩き込まれ、敵重巡は沈黙。しばらくすると巨大な火柱を上げて海中へと姿を消していった。

残った川内はというと、衝突の痕と敵艦の反撃、ゼロ距離砲撃で発生した誰の物とも知れぬ破片でズタボロになっていた。

海域は再び静けさを取り戻す。

 

「Oh,My god…」

呆気に取られていた金剛が我に返り、敵残存兵力がないことを確認、戦闘終了を宣言した。

 

傷つき自力航行できなくなった川内の艦体は能代が曳航し、帰路に就いた。

当の川内本人は榛名の艦内、かつて艦長室であった部屋で正座させられていた。

 

「なぜ呼ばれたか、解るな?」

「…はい。」

「敵艦撃破はさておき、艦体航行不能。これは必要な犠牲だったのか?」

「…いいえ。」

「万一突破されたときの後衛だったはずだな?」

「…はい。」

「旗艦が単独で隊を離れて良いのか?」

「…いいえ。」

「…まったく。しばらくそこで反省していろ。それから、帰ったら便所と風呂場の掃除、一週間。」

「…ひっ!」

「軽巡川内、私の命令が聞こえなかったのか?」

「…いいえ。軽巡川内、一週間の掃除任務、了解しました…。」

 

榛名と艦橋に戻った船越は金剛を呼び出した。

「先程の敵の動き、貴艦はどう見る?」

「敵が人であったなら単なる特攻かも知れませンが…深海棲艦に自己犠牲やPrideのような概念はアリませン。何らかの意図があっての行動…だと考えマス。」

船越は金剛の言葉に相槌を打つ。

「私も同意見だ。後続艦隊が存在したと考えている。」

「Yes,能代と長波がその場から動かず陣形を維持してくれたので、コチラの後衛に気づいて引き返したンだと思いマス。」

「そうだな。おそらく前衛総出であの重巡を追いかけていたら後方から仕掛けられていた可能性は高い。」

 

淡々と戦況分析から未来の戦局を予測する姉もまた、榛名にとっては初めて目にする姿だった。そんな姉を尊敬すると共に、自分との経験の差を痛感するのだった。

実際に後続艦隊の艦影を確認できたわけではない以上、二人の推測が事実であるかどうかは誰にも分からない。だが、この「起こり得るかも知れない可能性の未来」を予測することが艦隊を指揮する上で重要なことなのだと榛名は受け止めた。

加えて、川内が見せた行動。

軍艦として褒められた行動ではないが、船越の言う「与えられた役割」に対する誇りを感じた。

 

友ヶ島に帰った一行を待っていたのは呉からの巨大な贈り物と、高知からやってきた少女だった。

 

「貴官がここの司令か。実際に会うのはこれが初めてじゃな。吾輩は重巡洋艦利根である。」

大仰な言葉遣いの割に小柄な少女はそう名乗った。

「ここでしばらく厄介になるぞ。」

 

重巡利根と同型艦の筑摩は室戸沖に配置された早期警戒艦である。

「さて、どこから話したもんかの?…西側の戦況が思わしくないことは知っておろう?その件絡みじゃと考えてもらって良い。近々西の方から応援要請があろう。」

「そんな余裕はないネ!」

金剛が反論する。当然艦隊旗艦の金剛と、秘書艦の榛名はこの場に同席している。

「まあ落ち着け。だから吾輩らがここで厄介になると言っておるのじゃ。金剛型残り二隻が帰還するまでの穴埋めとして吾輩と妹の筑摩がな。」

「貴艦の言いたいことはよく分かった。が、貴艦ら本来の任務、早期警戒任務はどうなるのだ?」

「それは別の者が担当する。いや、本来その者の方が貴官の艦隊に編入される予定だったのじゃ。…が、戦局からその件は先送りになった。なんせ少々灰汁の強い連中故…な。此が正式な命令書じゃ。貴官の卓にも届いておろうがな。」

命令書を受け取り、内容を確認する。

内容は利根と筑摩の一時的な艦隊への編入。そして、六隻規模の艦隊を要請に応じ応援を出すという件。命令はこの2点だった。

「この内容だと今すぐではないようだが、要請あれば即座に対応せよということではないか。我々にそんな機動力はないぞ。」

「なんじゃ、表の大荷物を見ておらんのか。呉め、二式大艇を寄越してきおったわ。相当あてにされとるのう。名誉なことではないか。」

そう言うと利根はかっかっかと笑った。

「ま、そういうわけじゃて吾輩にも部屋をもらおうか。筑摩と二人部屋で良いぞ。」

「榛名、案内してやってくれ。」

「わかりました。重巡利根、こちらへ。」

 

「ム~…。」

榛名と利根、宿舎へ向かう二人の背中を見送っていると横で金剛が唸っていた。

 

「金剛、不機嫌そうだな。」

「勿論デス。喋り方にクセがあるのはどうにも苦手デース!」

金剛はそう言うと頬をプーッと膨らませた。

「…そうか。」

船越は一言だけ残し執務室に戻ろうとした。

「…おい。」

「What?どうかシマシタか?提督。」

「どうかしたじゃない、何故ついてくる?」

「艦隊旗艦は…」

「帰れ。」

「う~…わかりまシタ。部屋に戻りマス。その代わり、ワタシの姿が見えなくなるマデは、ココで見送っていて下サイ。」

金剛は船越の腕に抱きつくと潤んだ瞳で顔を覗き込んだ。

「…分かった。分かったからさっさと帰れ。」

「約束デスよ?」

そう言うと金剛は宿舎に向かって駆け出した。

…と思ったら立ち止まり船越の方を振り返る。

「オヤスミナサーイ、提督~!」

ぶんぶんと手を振ると、また駆け出す。

しばらく行くとまた立ち止まり振り返る。

これを数回繰り返して金剛はようやく船越の視界から消えた。

「…犬みたいな奴だ。」

そういえば…と思い返せば秘書艦の仕事をする榛名も淡々と作業していたところに直接指示を出してやると急に張り切り出すなど、どことなく犬っぽい仕草をしていることを思い出した。

「金剛型は犬っぽいもの…なのか?」

首を傾げながら、船越は自室へと戻った。

 

 

暁光のタイドライン~2~ 完

 


 
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