一刀「くそ!どこだ!」
一刀は焦る。
それは、このままでは一刀の二の舞になる可能性があるから。
故に焦る。
辺りを見回しながらしばらく走っていると、一人のうずくまっている女性を見つける。
おそらく先程の叫び声はこの女性。
彼女は、腰まで伸びた綺麗な直線の黒髪、左目に蝶の形の眼帯を付けている。
一刀「春蘭!」
魏武の大剣、夏侯元譲────春蘭。
春蘭「…ぶつぶつ…」
一刀の呼び声は彼女の耳には入っていない。放心している。
一刀「春蘭!おい、春蘭!おいってば!……くそ、だめか…」
一刀は春蘭の肩を揺すりながら呼びかけるが返事がない。
一刀「なにが、あったんだ?…いや、『どっち』に会ったんだ?」
いつもと違う彼女に、一体なにがあったのであろうか…。
【case1,春蘭の場合】
春蘭「~~♪」
春蘭はご機嫌だった。今にもスキップをしそうな程に。
ご機嫌の理由は、華琳に今晩(かなり久しぶりに)閨に誘われたから。
そして、その嬉しさ
今の彼女は、大抵の事では動じないだろう。
そう、お馬鹿な発言をして秋蘭達に呆れられようが、一刀に一本取られようと。
そして
─────桂花に何を言われようも…。
しばらく歩いていると、中庭付近の廊下の先に見知った顔を見つける。
ネコミミ頭巾をつけた碧眼の瞳の女性。王佐の才と称される軍師、桂花がいた。
本来、桂花とは犬猿の仲。どうも反りが合わない。───他にも華琳のことなどがあるが……。
だが、今の春蘭は意気揚々と桂花に近づき、話しかけようとする。
浮かれていたのかもしれない、自慢したかったのかも知れない、華琳に誘われた事を。
だが、彼女は知らなかった。
──────この桂花は進化(流琉と魂をチェンジ)した桂花だということを…。
春蘭「おーい、桂f…」
桂花「あ、春蘭『さま』!」
春蘭「ひっ!」
ぞわ!
寒気────。
春蘭の全身に鳥肌が立つ。
『さま』をつけたのだ。春蘭に。
怖い。化け物でも見たような気分なのだろう。少し混乱した。
だが、春蘭は一刀よりも幾分冷静だった。
『間違えたのだろう』と。つい、つけてしまったのだろうと、思った。
春蘭「お、おい。わたしは春蘭だぞ?華琳さまではないのだぞ?」
だから、訂正させようとした。
桂花「?分かってますよ。春蘭さま」
春蘭「ひぃ!」
だが、今の桂花に意味はない。
────これはなんだ!?これは誰だ!?天変地異の前触れか!?
思うことは一刀と同じこと。───少し激しいのと最後は無かったが……。
春蘭がそう思うのも、当然。
桂花にとって、春蘭は敵だ。加えて、それと一刀。──ついでに軍師、郭嘉──稟。
桂花は春蘭と仲が悪い。これが周知の事実。
この光景は周りが見れば、寸劇に見えるだろう。
だが、春蘭としては、───化け物を見ている気分だった。
春蘭「な、なぜ、様をつけるのだ?つ、つつつけなくとも良いのだぞ?」
さっきは間違ったのだろうから、訂正させようとした。だが、今回は訂正してもらいたっかった。
でなければ、おかしくなりそうだった。
桂花「?なぜですか?春蘭さまは春蘭さまでしょう。敬意を払うのは当然だと思います」
春蘭「と、当然なのか!?」
桂花「はい」
春蘭「そ、そうか…」
いつもの春蘭なら『そうだろう!そうだろう!』と、自慢げに胸を張ったかもしれない。
けど、それ以上に目の前の桂花が怖かった。異質だった。
一刀はこの桂花に対して、歓喜した。
だが、春蘭にとっては恐怖でしかなかった。
鳥肌が治まらない。寒気が止まらない。
桂花「そう言えば春蘭さま?」
春蘭「な、なンだ!?」
声が裏返っている。
桂花「先程は、なんだか、嬉しそうでしたけど、何かあったのですか?」
───先程は。……正しい。今は正反対の感情だから。
春蘭「う、うん!?そ、それはだな…」
春蘭はどもる。──言っていいものかと。
桂花と言葉を交わす前は話すつもりだった。そう、自慢げに。
だが、今の桂花に話しても良いことだろうか?と、悩む。
この桂花、何が起こっているのか、そして、何が起こるのかが、予想出来ない。
桂花「?」
春蘭「くっ」
春蘭は悩む、悩む。猪突猛進型の彼女にしては珍しい程に。
そして、彼女は悩んだ末に──────自慢をとった。
春蘭「じ、実はだな…」
桂花「はい」
春蘭「…その、だな。華琳さまに、ひ、久方ぶりに閨に誘われたのだ…」
どもりながらも答える春蘭。
ビビっている。それは、この桂花に罵倒されたらどうなるか分からないからだ。
だが────
桂花「そうなんですか。良かったですね、春蘭さま!」
返ってきたのは賛辞だった。
春蘭「よ、良いのか!?わたしが華琳さまと閨を共にしても?」
予想とは真逆の答えに驚く。
桂花「良いのか?と、聞かれても…。まぁ、女性同士で不毛だとは思いますけど…」
お前が言うな
と、魏の誰もが突っ込みたくなる台詞を放つ桂花。
桂花「けど、春蘭さまは華琳さまのことを愛しておられるのでしょう?ならば、良いではないでしょうか?」
春蘭「し、しかしだな…。お前はいいのか?華琳さまのことを…」
桂花も愛している筈だと、思う春蘭。
桂花「い、いえ!私はそういうのはいいです!…わ、私には兄様がいますし…」
語尾の小さくなる桂花。
春蘭「な、なんと!それに、に、兄様とは、か…北郷のことか!?」
なぜ兄様と呼ぶのか、しかも、一刀のことは嫌いだったはずだと認識している。
桂花「…そ、そうです…」
小声だがしっかりと春蘭には聞こえた。
春蘭「…う~~~~~む」
桂花の答えに対して春蘭は複雑だった。
確かに華琳のことでライバルは減った。
だが、一刀のことではライバルが増えた。それは当然、春蘭も一刀を愛しているから。
だが、今の桂花はそんなことは知らない。
桂花「何をうなっておられるのですか?」
下からのぞき込む桂花。
春蘭「うっ!(そんな純粋な目でわたしをみるなぁ!)」
桂花が正常になった今、春蘭は汚れている感覚になったのかもしれない。
────実際は、異常になっているのだが………。
桂花「あ、そうだ。私お仕事があったんだった!」
ふと、気付く桂花。
春蘭「そ、そうか!ならば、早く行くといい!さぁ!」
春蘭は救われた気分だった。
だからこその厄介払い。
桂花「きゃ!は、はい。わかりました!」
春蘭に背中を押されながら離れる桂花。
桂花「あ、春蘭さまもお仕事が頑張ってくださいね!」
春蘭「お、おウ!?」
またも声が裏返る。
桂花「はい!それでは、失礼します!」
お辞儀をしながら、最大級の天使のような笑顔を浮かべ去っていく桂花。
春蘭「(そ、そんな目でわたしを見ないでくれ!!)」
春蘭にとって、その天使は眩し過ぎたようだが…。
春蘭「あいつは一体何なのだ!」
少し怒気をはらんだ声で言う。
狐に化かされた、とでも思っていた春蘭。
けど、背中を押したときお感触は桂花だった。
本物だと理解してしまった。
だとすると、今の桂花は正常すぎる。
女性を、華琳を愛する女性ではなくなった。
限りなくまともになっている桂花。
それは、春蘭にとっては毒だった。
今の桂花はまともじゃないのに、自分がまともじゃないように錯覚している。
─────まぁ、どちらもまともではないのだが…。
春蘭「う……」
う?
春蘭「うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!今のは一体なんなのだ!」
叫び壊れる。
2人目の犠牲者がここに生まれた。
そして、一刀が来るまでの間も『自分はまともだ』と言い聞かせていた。
そして、冒頭─────
一刀「春蘭!おい、春蘭ってば!」
必死に肩を揺さぶるが全く答えない。
一刀「そうとう参ってるな…。こりゃ、流琉の姿の桂花に会ったか?」
残念、逆だ。
ドゴーーーーーーーーン!!!!
一刀「な、なんだ!?」
遠くで聞こえる爆発音。
一刀「またなにかあったのか!?くそ、早く止めないと!」
走り出す一刀。
一刀「…春蘭をこのままにして置くのも、ちょっと気が引けるけど…。仕方ない!…そこで待ってろよ、春蘭!あとで説明するから!」
そう言って、春蘭から離れていく一刀。
だが、彼はまだ知る由もなかった。
この判断が間違っていたことを─────。
つづく
~あとがき~
どうも、間に合わなかったつよしです。
一刀「……なぁ」
なにさ。
一刀「つまんないぞ?」
ぐっ!
一刀「また短いし、なんていうか最近『マンネリ』だよな」
ちょ、ちょっと待て、言いすぎだ!しかもマンネリは男としては言われたくない台詞、TOP10に入るんだが…!
一刀「…マンネリに対して、過去になにか、あったのか?…でもマンネリも事実だし」
くっ、分かっているさ!分かっているとも!だが、どうしようもなかろう!ネタが思い浮かばんのだからなぁ!
一刀「…………やめるべきじゃないのか?」
なんだと!?
一刀「お前はよくやったさ、な?次で終わらせてみたらどうだ?」
…………。そうかな。そうかもな。ここまでかもな。
一刀「この外史は俺が望みたくないんじゃなくて、読者の、じゃないのか?」
うまいこといったつもりかよ。……でも、そう…かもな。じゃあ、次で終わるかもな。(強制的に)
一刀「決めたか。……まぁ頑張れ」
ああ。
と、言う訳で、いいわけ臭いですが、これはもう終わらせるべきなんじゃないかな、と思いまして、たぶん次で終わりです。理由は「つまらないから」これだけです!
では次をしばらくお待ちください!
でわでわ~~
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明後日って言ったのに明々後日になってしまった。
ごめんなさい。
誤字等ありましたらご指摘お願いします。
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