No.664893

「真・恋姫無双  君の隣に」 第14話

小次郎さん

反董卓連合は汜水関に御遣いの旗を確認する
一刀の戦う理由は

2014-02-21 00:19:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:19786   閲覧ユーザー数:12760

「お~、来た来た。先陣は陶謙か」

「明らかに士気は低いですね」

凪のいう通りだ、おそらくは無理やり押し付けられた先陣だろうな。

軍議の状況が見なくても分かるよ。

よし、配置に着くか、頼りになる軍師たちに一言。

「賈駆、陳宮、指示よろしく」

「フン、舌戦は仕掛けなくていいの」

「そうなのです。ガツーンと言ってやればいいのです」

二人には言いたい事が山程あるだろうけどね。

「そんな価値無いよ、代わりに矢の雨をくれてやろう」

「それもそうね。僕の月に弓引いた事を、死ぬほど後悔させてやるわ」

わあ、怖い顔。

「凪、頼んだよ」

「はっ、お任せを」

さあ、いくぞ。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第14話

 

 

「何ですって!汜水関に天の御遣いの旗が立ってるですって~」

「はい、姫様。董の旗はありません。汜水関に立て籠もっているのは袁術軍です」

私もまさかと思ったけど、連合への参加の返事がいつまでたっても来なかったから事実だと思う。

「何を考えてるんですの、美羽さんに御遣いは。この戦は勅命が出てますのよ、逆らえば董卓と共に逆賊ですのよ」

そう、密勅が届いて麗羽様にとっては渡りに船だった。

当然、他の諸侯にも勅の事は伝えてある。

だから参加してる諸侯もいるのに。

「斗詩さん、急いで集まってる諸侯を集めなさい。軍議を始めますわ」

「はい、姫様」

一刀さん、何を考えてるんですか?

 

麗羽が矢継ぎ早に一刀の文句を言ってるけど、私は御機嫌よ。

一刀、やってくれるわね。

つまらない戦が、とても楽しみになってきたわ。

そうよね、貴方にとっては勅なんて何の意味も無いわ、この戦で王となる者を見定める気かしら?

貴方の事だから当然勝算は有りよね、フフ、見せて貰うわよ。

「華琳さん、貴女に先陣を務めてもらおうかしら」

「あら、手柄を全部くれるの?」

 

一刀ったら、こうくるとはね。

やっばいわねえ、私の勘では良い事無いわよ、この戦。

こうなったら冥琳と相談して一刀と繋ぎをとった方がいいかも。

ホント、一刀には調子狂わせられっぱなしよねえ。

「孫策さん、貴女はどうかしら」

「うちは一番遠いところから遠征してきてるから、兵の疲れが取れてないのよねえ」

 

御遣いが董卓側についた。

やはりこの戦に正義は無いのか。

勅命があるのなら董卓に非があるのかとも思ったが、御遣いは黄巾の乱において元凶は漢帝国にあると明言し、私もその通りだと考えさせられた。

桃香様と袂を分かった後、私の訴えでは兵は付いてこず雛里の言を受け報酬を払う方法で軍を維持した。

私自身荒んでいた事も有り、無茶な戦い方をして多くの兵を死なせてしまった。

今の地位はその者達の上で成り立っている。

感情に任せて放り出す事など出来ない。

桃香様、貴女は御遣いのところにおられるのだろうか、もしそうならば私はどうすれば。

「関羽さん、貴女に先陣の栄誉を」

「申し訳ないが体調が優れぬ、しばし休みを貰いたい」

 

何なんですの、このやる気の無さは。

私の為に働けば、後の褒美は朝廷に口を利いてやらなくもありませんのに。

「でしたら、白蓮さん、馬超さん」

「無茶言うなよ、麗羽。うちの主力は騎兵だぞ」

「右に同じ」

き~、こうなったら。

「盟主命令ですわ!先陣は陶謙軍、後詰に橋瑁軍、韓馥軍と孔伷軍もいつでも出陣出来る様に準備しておきなさい」

 

 

今頃、詠ちゃんや御遣い様は戦闘中でしょうか。

「董卓、心配するでない。一刀たちなら大丈夫なのじゃ」

「袁術さん」

以前はあまり良い噂を聞かなかったのですが、とても信じられません。

私を思いやってくれる優しい女の子です。

「袁術さんは御遣い様を信じてらっしゃるのですね」

「家族じゃからな」

私は、出会った時の事を思い出します。

 

「月、御遣いが軍を率いてきたの、会談を要求してる」

「御遣い様って、確か袁術さんの宰相だよね」

管輅って人が大陸に平和をもたらすと予言した天の御遣い様。

会ったことのある霞さんから聞きましたら、ええ奴やったで、と言ってました。

「どうするの、月。袁術は袁紹の従姉妹だし、危険かもしれないわ」

「会うよ、会ってみたい」

もし首を要求されるなら、きっと天の意思だと思う。

今なら誰も傷つかなくて済むから。

私は詠ちゃん達と会談の場に赴きました。

「はじめまして、董仲穎です」

「袁公路なのじゃ、と言っても妾は何も分からん。話があるのは一刀なのじゃ」

「はじめまして、北郷です。世間では天の御遣いと言われてます」

優しそうな人だけど、何かじっと見られて、照れてしまいます。

「君が相国なのか。半信半疑だったけど、信じられないくらい可愛い子だよなあ」

「へうっ」

「ちょっとあんた、何言ってんのよ!」

「まったく、この種馬は予想を裏切りませんねえ」

真っ赤になってる私を他所に、御遣い様が詠ちゃんとお仲間の人から攻められてます。

「ハハハ、相変わらずですな、一刀殿は」

「星!」

御遣い様と星さんは知り合いだったの?

遅れてきた星さんに凄く驚いてる。

「今は董卓殿の客将となっていましてな」

「そうだったのか。・・良し、これでいける!一番気になってた事が解消された」

「あ、あの、どういうことですか?」

「この戦、乗り切れる」

私はその言葉に驚き、詠ちゃんが御遣い様に詰め寄る。

「本当?本当に乗り切れるの?月は助かるの?」

「ああ、此処にいる皆が協力し合えば必ず乗り切れる。但し、代償が必要だけどね」

「代償って何を」

「相国の地位だ、そしてこの戦の全権を俺に託す事。この二つだ」

「貴様、ふざけるな!何故我等が貴様の言う事を聞かねばならんのだ!」

「華雄!あんたの口出すことちゃうで!」

華雄さんを霞さんが制止してるけど、御遣い様は気にする事なく私に話しかけます。

「董卓殿、君が決断する事だ。だが正直に言う。俺の言う事を受け入れてもらわないと、この戦は乗り切れない」

御遣い様の目は、真っ直ぐに私を見てます。

私も人の上に立場を持つ者です、私欲に囚われた人と真剣に訴えている人との違いは分かるつもりです。

「・・御遣い様。私の首を取れば、戦は起こらず傷つく者達もいません。どうして戦を求めるのですか?」

死ぬのは怖いです。

ですが、私は戦を求めていません。

「俺も戦なんて大嫌いだよ。お互いの未来を奪い合う、泣く人達が増えるだけだ」

「でしたら私の首をお取り下さい。私一人の命で多くの者が傷つかずにすむんです」

「その代わり、この大陸の民は董仲穎という稀有な為政者を失う。百年先の民を幸せに導ける者を」

百年先の、民の幸せ?

「悪いけど君の事は調べさせてもらった。作物も満足に採れない天水の地に於いて、民の負担を増やすことなく安定した政の運営。更に驚くことに、漢の天敵である五胡に対して外交の道を開き、和平を進めてると聞いた。素晴らしい事だよ」

そんな、同じ涼州の馬騰さんや韓遂さんですら賛成してくれなかった事で、詠ちゃん達も消極的だったのに。

「俺は天の御遣いだ。この大陸に平和をもたらしたい。でも、それは戦を避ける事じゃない。大事なものを失わない為なら、いくらでも戦う。君の仲間達が戦うのと同じ理由だよ、君を失いたくないんだ」

思わず私は詠ちゃん達の方に目を向けます。

笑ってる、私の大好きな皆さんの笑顔。

「辛いと思う。苦しいと思う。でも、生きて欲しい、君の傍には俺達が居る」

御遣い様。

「月」

詠ちゃん、皆さん。

涙が溢れて、止まらないよ。

「ありが とう ございます。 御遣い様、よろしく お願いします」

 

うう、恥ずかしいです。

皆さんの前であんなに泣いちゃって、でも涙を拭いてくれた御遣い様の手、優しかったな。

「七乃、董卓の顔が真っ赤になっておるのじゃが、熱でもあるのかのう?」

「お嬢様、お優しい。でも大丈夫ですよ、誰かさんの事を思い出してるだけでしょうから」

「フッ、相変わらず罪な御仁だ」

へう、ばれてます。

そういえば星さんは御遣い様に真名を預けてられました。

主従ではなく、尊敬できる方としてとの事ですが。

私もお預けしたかったのですが、御遣い様が戦が終わった時にと仰られ、残念ですが保留です。

「さあ、美羽様、董卓様、趙雲さん。私達も大勢の方と会わなければいけません。これからは時間との勝負です」

「七乃、頼りにしとるぞ」

「はい、よろしくお願いします」

「心得た」

 

「何故だ、霞!何故私が汜水関に出陣せず、虎牢関で待機せねばならんのだ」

「あんたは軍議で何を聞いとったんや、ウチらは此処で待機や」

ホンマにこいつは、御遣いが連れて行かん理由がよう分かるで。

「そもそもだな、あんな奴の言う事を何故聞かねばならんのだ。あいつはこの戦に勝ち目は無いと言ってたんだぞ」

その通りや、でもちょっと考えれば当たり前やろ。

御遣いの軍が味方になったとはいえ、まだ四倍以上の兵力差や。

向こうには勅命を受けた大義名分もあるんや、下手すれば更に増える可能性もある。

おまけに盟主の袁紹はどうせ連合軍の後ろの方や、討ち取れる訳もあらへん。

総力戦になったら、そら勝ち目無いわ。

「だから守りの戦やて言うとるやろ。ウチらは洛陽に残った月達が休戦の勅を貰う為の時間を稼ぐのが役割なんや」

月が相国となって、漢帝国の権威の失墜を恐れた司徒の王允と皇家親族の董承が、帝を唆して勅を袁紹に出したんやと分かった。

一度出した勅を反古にすんのは無理や、ほんなら勅を重ねるしかない。

王允や董承を討ち取るわけにもいかん、そんな事したらホンマの逆賊の理由になってまう。

袁家の名を使って交渉の場を設けて、相国の地位の辞退を理由に休戦の勅を出させるように朝臣共に働きかける。

腹立つけど袁紹達の出世も付けんと連合軍の矛も収まらんやろ。

逆に言えば勅が出てたから月の助かる道が残ってたって、御遣いが皮肉っとったな。

ほんで洛陽で動く月達を護る役目に、武があって機転の利く星がおったんは幸運やったてな。

「だったら私が汜水関を守ればいいだろう。何故御遣いの軍と詠とねねだけで出るのだ」

ホンマにこいつ、軍議で何を聞いとったんや。

「汜水関で守り過ぎたら別働軍が出るかもしれんからや。程々で放棄せなあかんから、ウチらよりまだ冷静に対応できる御遣いが引き受けてくれたんや」

猪のあんたにそれが出来んのかい。

虎牢関に引き込んでからが本番で、その見極めの為に詠とねねを連れてったんや。

特に奇をてらっとる訳やないけど、よう考えとるわ。

「余計なこと考えとる暇あったら、李典の関の補強作業手伝ってき。副将に任命されたウチの命令や」

華雄は文句を言いながら作業場に向かった。

疲れるわ、副将の役目って華雄のおもりやないやろな。

 

もうすぐ日が沈む。

今日はここまでだな、連合軍が撤退していく。

三軍追い払ったが、こちらの損害は軽微。

まずまずの戦果だ。

「お疲れ、凪、賈駆、陳宮」

「いえ、宰相こそお疲れ様です」

「フン、これ位たいした事ないわよ」

「その通りなのです。あんな雑魚相手に疲れるわけがないのです」

雑魚ね、確かに酷かった。

美味しいところだけ貰おうと参戦してるのが丸わかりで、攻城戦の準備も碌にしていない。

届かない梯子に飛んでくる矢の少なさ。

敵将の質も低い。

野戦を誘う為に挑発をしかけてくるには幼稚な論法。

せめて盾を使わずに言えよ、両軍の兵士が呆れてたぞ。

いいけどね、時間稼ぎの為には。

俺の予想では、暫く華琳や雪蓮は動かないと思う。

二人は俺が大量の矢と油を用意しているのを稟や蓮華から聞いてる筈。

とはいえ、あの二陣営なら俺の考えくらい看破するだろうし、手を組む可能性もあるよなあ。

・・よし、グダグダ考えるのは止め。

俺は俺のやれる事をするだけだ。

俺の足りない分は、皆が補ってくれる。

 

日が暮れて、篝火が照らす者達が現れる。

ほう、あの娘が曹孟徳か。

なかなかの気を放っておるわ、堅殿を思い出すのう。

控えておる者達もいい顔をしておる。

「いらっしゃい、よく来てくれたわね、曹孟徳」

「貴女とは話してみたいと思ってたわ、孫伯符」

策殿も負けておらんわ、よいのう、この老骨も久しぶりに血が沸いてくるわ。

「率直にいきましょ、組まない?」

「いいわ、まずは互いの情報交換といきましょう」

暫し話し合いが続いたのじゃが、なにやら雲行きが変になってきておらんか?

「それじゃあ、曹操、貴女が一刀と出会ったのは黄巾の時なのね」

「そうよ。ところで孫策、何故貴女が一刀を真名で呼んでるのかしら」

「う~ん、私の勘では一刀の言ってた人って貴女かな~って思ってたんだけど」

「質問に答えて欲しいのだけど、それに、一刀の言ってた人って誰の事よ」

「まあいいわ、どうせ私のものになってもらうんだし。過去の女なんて敵じゃないわ」

「ちょっと待ちなさい、一刀は私のものなのよ!」

両者を慌てて止めに入る冥琳達を見ながら、儂は笑いが止まらんかった。

面白い、面白いのう。

天の御遣い、恋する女子は怖いぞ。


 
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