No.664251

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第17話

黒天さん

今回は麗ちゃんと月の話しと、張燕さんのお話

2014-02-18 00:19:13 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:6976   閲覧ユーザー数:5072

「失礼します」

 

そういって俺の部屋に入ってきたのは麗ちゃん、その後について冬華も入ってきた。

 

今日は休日、麗ちゃんが話したいっていうから予定を開けておいたのだ。

 

「いらっしゃい」

 

そろそろ来るだろうとおもってお茶とお菓子を3人分用意してスタンバってた俺。

 

やっぱり元気になった麗ちゃんをみるとうれしくなる。

 

一度この子の墓なんて見てるから余計に。主の居ないあの部屋は、忘れられそうにない。

 

「ごめんなさい、麗が無理を言ってしまって」

 

「別に構わないよ」

 

しかしほんとにこの子いくつなんだろ。まぁ桂花とか紫青とかもたいがい年齢不詳だし。

 

アレでお酒が飲める歳なんだもんなぁ……。ただ、俺が見たあの部屋で過ごしていた麗ちゃんより歳上のはず。

 

亡くなったのは黄巾の乱より前なはずだから。

 

「一度、一刀様にお礼が言いたかったんです。私は、あのまま死んでしまうと思ってましたから」

 

「医者を出したのは華琳だよ?」

 

「でも、その代金を出してくれたのは一刀様ですから。見方を変えれば、そういうことですよね?」

 

やっぱり、しっかりしてるなぁ、この子。

 

冬華は実は教育ママだったんだろうか。それとも、外に出られないから本が友達だったのか……。

 

「それで、何で華琳の所から無理してここへ?」

「恩人のために自分の力を貸す、それだけじゃ納得いかないかしら?

 

私にとって、麗は自分の命よりも大切な娘だもの、一刀殿がいなければそもそも華琳殿とああして早くに出会う事もなかった。

 

それに、華琳殿も私に医者を貸してはくれなかったのではないかと思う」

 

それは違うんじゃないかなぁ……。冬華は十分有能だし、きっと俺が居なくても華琳の下につけば麗ちゃんの面倒もみてくれたはず。

 

ただし、麗ちゃんが死ぬ前にそうなっていれば、だけど。

 

「私はもう領主でもなんでもなくなっていたわけだし、それなら今度は華琳殿よりあなたの下につこうと思ったというだけのこと。

 

麗もこっちに来たいみたいだったし。というわけで改めてお願いなのだけど、今度は私を貴方の下で使ってくれるかしら?」

 

「それは願ったりだけど、いいのかなぁ、立場逆転しちゃって」

 

黙って頷く。にこやかに笑って。前の世界で、冬華のこんなに嬉しそうな顔見たことって無かったなぁ。

 

「それじゃあ、これからもよろしくね」

 

「それじゃ、私は仕事があるから戻るわ、この話をしたかったからこちらに来ただけだし」

 

そういって冬華は部屋から出ていく。

 

「ありがとうございます」

 

「ん、んー、俺そんな大したことしてないんだけどな……」

 

俺の言葉に麗ちゃんが軽く首を振る。

 

「それよりも嬉しかったのは、一刀様の言葉です。覚えてますか?」

 

「俺の言葉?」

 

首を傾げる、もしかしてあれかなぁ……。

「俺は天から遣わされたんだ、俺の言葉は天の言葉、天が治るっていってるんだから絶対治る。そういって励ましてくれた事です」

 

「覚えてるよ」

 

自分のいった台詞になんだか恥ずかしくなる。よくもまぁあんなことをいえた物だ。

 

「それで思ったんです、一刀様の言うことを信じてもう少し頑張ろうって。本当に、もう治らないと思ってましたから。

 

それでですね、お願いがあるんです」

 

「お願い?」

 

「まだ政に関われるほど学も備わって無いですので、侍女としてで結構です、傍に置いてもらえませんか?」

 

じっと、すがるような目でこちらを見てくる。まぁ当然その顔をされて俺が断れるわけが無いわけで……。

 

「ん、そういってくれるのは嬉しいけど……、いいの?」

 

「はい。それぐらいしか、私に出来るお礼ってありませんから」

 

「じゃあ、俺から一つ条件。絶対無理をしないこと。少しでも具合が悪いとか感じたら周りの誰かに言うように」

 

「わかりました」

 

いい子だなぁ、俺に娘ができたらこんな子に育って欲しいなぁ。何て思いながら、思わず頭に手を伸ばして撫でてみたり。

 

頭を撫でてあげたのがよほど嬉しかったようで、俺に抱きついてくる。

 

月より小柄だけど、見方によっては同年代ぐらいに見えるなぁ……。

 

この後、しばらく他愛無い話しをして過ごし、それから数日後。

 

せっかくなので麗ちゃんにメイド服をあげることにした。

 

……悪魔が俺に囁いたんだ、侍女ならばメイド服を着せろ、と。

 

麗ちゃんの容姿は背中の中程でゆるくまとめた灰色の髪に、青い目。小柄でまだ出るとこは出てない。

 

体を冷やさないようにって配慮から床上10センチのロングスカートにパンスト。見た目的には月の着てたのに近い感じ。

 

年齢不相応に落ち着いた様子の麗ちゃんには何だか良く似あっている。

 

麗ちゃんの感想はとても可愛いので気に行った、とのことで、仕事中はこれを着る事にするらしい。

 

そして俺は麗ちゃんの入れてくれるお茶を励みに仕事に打ち込むのだった。

───────────────────────

 

「あ、一刀さ……」

 

一刀さんを見かけて声をかけようとしてどきりとして、思わず隠れてしまいました……。

 

それは一刀さんをみたからじゃなくその隣、華琳さんの所から一刀さんを追ってこちらにやってきた冬華さんの娘さんの、

 

確か、華表さん。

 

あの子が、白と黒の衣服を着てその隣を歩いていたからです。

 

どうしてか、胸が苦しい……。あそこは私の場所。私の場所をとらないで。

 

そんな気持ちが湧いてきて、思わず隠れてしまって、

 

きっと、華表さんに嫉妬してしまったのだと思うけれど、どうしてなのだかわかりません。

 

それに、一瞬だったけれど、どうしてあんなに……。

 

確かに、一刀さんのことは恩人だということもあってお慕いしてます。

 

けど、あの気持は……、そんな生易しいものじゃなかった気がします。

 

「月~? こんな所で何やってるの?」

 

「へぅ!?」

 

詠ちゃんの声で現実に引き戻されました。

 

「あれ……?」

 

詠ちゃんも、華表さんの姿を見て、何だか不機嫌そうな、不思議そうな顔。

 

どうしてなんだろう……。

 

結局疑問は解決しなくて、もやもやした気持ちのまま眠りました。

……、その晩、夢を見ました。

 

私は詠ちゃんと一緒に華表さんが着ていたのとそっくりの服を着ていて、一刀さんにお茶を入れてあげて、

 

他愛無い話しを色々したり、時にはそれに諸葛亮さんや関羽さん、知らない人も居て。

 

でも、それがただの夢とは思えなかったです。

 

だって夢の中で私は諸葛亮さんを「朱里さん」関羽さんを「愛紗さん」と呼んでいました。

 

おそらく2人の真名……、私はそれを知らないのに。

 

「ご主人様……?」

 

夢の中で私が呼んでいた、一刀さんの呼び名。口に出してそういうと、胸がまた、ズキリと痛む。

 

あんな服、私は持ってなかったハズだけど……。

 

そう思い、自分の服を確かめてみる。そこにソレはありました。夢の中で見たものが。

 

「嘘……」

 

昨日までこんなものなかったと思ったのに……。でも、それに袖を通してみると驚くほど体に馴染む。

 

着慣れた服。そんな気がする。

 

それから……私は毎夜毎夜、その夢を見るようになりました。詠ちゃんに聞いてみると詠ちゃんも同じみたいでした。

───────────────────────

 

「やれやれ、あたしも焼きが回ったかねぇ」

 

張燕が走りながら毒づく。

 

馬騰に一杯食わされたのだ。現在も撤退の真っ最中。

 

輸送隊だと思って襲いかかったら馬車の中から一斉に兵士が出てきたのだ。

 

ある意味虎牢関での意趣返しなのだが、張燕はそれを知るわけもなく。

 

馬超、馬騰の双方が揃った黒山賊を上回る規模の隊だったから手に負えない。

 

「菖蒲-アヤメ-! ヤバイよぉ、どうするの!?」

 

「いいから走るんだよ! 国境まで逃げれば多分なんとかなる!」

 

実際の所、張燕……菖蒲はなんとかなるなんて思っていなかった。

 

絶対追いかけてくる。そんな確信があった。

 

どうにか国境まで追いつかれずに逃げられたものの、相手は騎兵。

 

「こっちが疲れ果てるのを待ってるみたいだね……」

 

どちらかといえば付かず離れずで追いかけてきている気がする。巻くために森を通ったのだがキッチリ背後をついてきているのは流石か。

 

しかも輜重隊の後方に兵を伏せていたのか数が増えている。その数はおよそ5万。進軍が遅かったのはコレを待っていたせいもあるかもしれない。

 

「砦まで逃してくれるかな?」

 

「さぁてね。ここであたしが犠牲になれば、アンタ達は逃げれるかもしれないね」

 

菖蒲の言葉に周囲を走っていた者がはたと足を止める。

「姉御に先に地獄にいってもらっちゃ困る、そうだろ! 野郎ども! 一刻でも半刻でもいい、足止めするぞ!

 

姉御、地獄に来たらまた一緒に酒でも飲みましょうや」

 

一部の隊が剣を構え、馬騰軍に向かう、菖蒲も白兎も、それを振り返ることなく、砦へと速度を上げて走る。

 

どうにか菖蒲達が砦まで撤退した所で、黒山賊の数は半分まで減っていた。

 

にげきれたのは、菖蒲が周囲の地形を事前に調べあげ、それを最大限有効活用した結果と言えた。

 

「あの島津ってのがつけてくれたのに、援軍を送ってもらえるように伝令になってもらったけど……」

 

「ま、来ないだろうね」

 

「菖蒲!」

 

壁にもたれかかり、息を整える菖蒲が白兎にあっさりとそう言い放つ。

 

「あたしらは所詮捨て駒。あたしらの仕事は三つ。

 

1つ目は島津自身から依頼してきた物資の略奪。

 

2つ目は出陣してきた馬騰軍を少しでも疲弊させること。

 

3つ目は国境を超えさせる事。無断で入り込んだ事で因縁をつけられるからね。

 

多分援軍はあたしらが全滅する頃に来る。

 

疲れた馬騰軍と、黒山賊を一気に始末出来る。一石二鳥じゃないか」

 

「確かにそうかもしれないけど……。そこまで分かってて何で交渉に乗ったのさ!

 

あのお金に目がくらんだの!?」

 

「どのみち断ったらあそこで首を刎ねられてたんだ、それにね」

 

「それに?」

 

「あの島津って将の目……。あいつの目はあたしをゴミを見る目でみちゃあ居なかった。

 

だからもしかしたら見捨てずに来るかもね。でも来ないと思ってたほうが無難さ」

 

「それで、これからどうするの?」

 

「仕事をキッチリこなすだけさね、報告に戻った奴が、馬騰と馬超の存在と兵の数を話したなら、選択肢に背後の街を襲う事が入ってくる。

 

なら、4つ目の仕事として、空き巣を狙えるだけの時間を稼ぐ事があたしらの仕事に追加される。

 

馬騰の間諜が優秀なら、あたしらが全滅する前に撤退してくれるかもしれない。

 

とまぁ、生き残る道はいくつか残ってるわけさ。いずれにせよ問題はいかに時間を稼ぐかが問題になってくるねぇ……

 

白兎ならどうする?」

 

にやりと笑いながら、菖蒲が白兎に問いかけた

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回麗ちゃんにメイド服を着せてみました、後悔はしていない。

 

それをきっかけにして月と詠も徐々に思い出しつつあります。

 

張燕さんの真名、菖蒲-アヤメ-は同じ字でショウブとも読みます。

 

ショウブの花言葉は世渡り上手。史実で世渡り上手なので……。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
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