No.664125

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑤~

竜神丸さん

獅子なる魔術師 前編

2014-02-17 15:17:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2024   閲覧ユーザー数:916

これは、OTAKU旅団No.17―――ディアーリーズが旅団へ加入する前の話…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉららららららららぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」

 

メカニックな戦士―――仮面ライダーバースがバースバスターを乱射し、研究施設内の魔導師警備隊を次々と撃破していく。施設内のあちこちが爆発しており、既に壊滅寸前の状態だ。

 

「くそ、ここにもいないか…!!」

 

破壊した警備用アンドロイドを蹴り倒し、後ろの曲がり角の道に対して指を鳴らし、合図を出す。

 

「美由紀ちゃん、もう出てきて大丈夫!」

 

「あ、はい…!」

 

曲がり角から橙色のロングヘアを靡かせた少女―――朝比奈美由紀がヒョコッと顔を出し、バースの下まで駆け寄る。

 

「あの、ウルさんは…」

 

「ここにはいないっぽいな。仕方ない、すぐにここを出よう…!!」

 

その時…

 

-ピリリリリッ-

 

「んお?」

 

突然の通信音に、バースは変身を解除。髭を生やした青年―――ハルトの姿に戻ってから、通信用のデバイスを取り出す。

 

「こちらハルト、まだウルは見つかってねぇが―――」

 

『ハルト、急いで救援に来て!! ウルが見つかったの!!』

 

「「!?」」

 

目的の人物が見つかったという情報に、ハルトと美由紀は驚愕の表情で顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理外の次元世界、オルトロス…

 

 

 

 

 

 

 

「フーッフーッ……おぉ熱い熱い」

 

「23.8%……ふむ、やはり変異性は強いですか…」

 

「……」

 

森の中に存在している少し広めの平地にて、茶髪の青年―――ロキは焚き火を使い、近くの川で捕まえた魚を焼いて食べているところだった。その近くで白衣を纏った銀髪の青年―――竜神丸は倒れている大木の上に座ったままタブレットを操作して作業中。彼の後ろに立っているのが、白いコートにサングラスもかけた大男―――イワン。そして彼等の近くでは、傷だらけの状態から手当てを受け、身体中に包帯を巻かれた黒髪の少年が寝かされていた。

 

そこへ…

 

「お? 何だ、もう来てたのか二人共」

 

「「!」」

 

彼等の前に、顔に一本の斜め傷があるオッドアイの青年―――支配人がやって来た。わざわざ草木の中を通って来た彼の背中には、新鮮そうな肉を多く詰めた袋が背負われている。

 

「お、支配人か。もう任務は完了したのか?」

 

「あぁ。潰すべき支部は潰して来たぜ。んでもって、ここへ来る前にガララワニを何体か狩って、その肉を大量に確保してきたところだ……あれ、団長は何処?」

 

「他のメンバーが合流するまでの暇潰しとして、そこらを適当に散歩するようです。支配人さんが合流しましたので、残るはデルタさんと、ペアを組んで行動しているmiriさんとガルムさんの帰りを待つだけですね」

 

「となれば、次に来るのはデルタさんか? あの人は毎回仕事を終えんの早いし」

 

「まぁデルタさんの可能性が高いだろうなぁ……って」

 

ここで、支配人は未だ眠りに付いている黒髪の少年に気付く。

 

「おいおい、誰だそいつ?」

 

「私達が向かった先で保護しました。名前はえぇっと……ウルティムス・ファートゥム・レオーネ・マクダウェル、ですね。傭兵ギルドに所属していた時期もある、フリーの傭兵らしいです」

 

「ほう、フリーの傭兵ねぇ…」

 

支配人が表情を覗き込んで見るが、黒髪の少年は未だ目覚める気配は無い。

 

「まぁ治療は既に完了してるから、死ぬ可能性は無いんだけどよ」

 

「無いけど……何だ?」

 

「えぇ。実は団長さん、この少年も旅団に加えるべきかと考えているみたいでして」

 

「はぁ!? こんな明らかに若そうな奴をか!? 冗談だろ?」

 

支配人が驚きの表情を見せるが、ロキと竜神丸は否定の素振りを見せない。どうやらマジのようだ。

 

「おいおい……これはこれで、また色々と騒がしくなるんじゃないのか?」

 

「それはもう今更だろうよ。今でも蒼崎やkaitoみたいに、色々な意味で面倒臭いメンバーがいっぱいいるんだしさ」

 

「全く、厄介ったらありゃしませんよね」

 

「「いや、お前も充分面倒臭いわ」」

 

「おや、失敬」

 

彼等がそんな会話をしていたその時…

 

「…ッ!!」

 

無言のまま立っていたイワンが、突然ある方向を向いて戦闘態勢に入った。

 

「? どうしたんだ?」

 

「…どうやら、何か来たようですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼等のいる場所から、数メートル離れた先では…

 

 

 

 

 

 

「ちょっとアキ、本当にこっちで合ってるんでしょうね!?」

 

「間違いないわよ、座標はこの先を示してる!!」

 

「全く、ウルを誘拐するなんて……私達がただじゃおかないよ…!!」

 

黒いロングヘアをドリルのような髪留めで纏めている少女―――アキ。

 

桃色の髪をサイドテールに結んだ、身長が低めの少女―――こなた。

 

銀髪のツインテールと、赤い瞳が特徴の少女―――凛。

 

三人の少女は目的の人物を探し出す為に、森の中を猛スピードで走り抜けていた。途中で様々な原生生物が妨害しようとして来るも、問答無用で跳ね飛ばしながらどんどん先を突き進んで行く。

 

「アスナと咲良ちゃん、それとハルトの方にも連絡はし終えた!! あとは何とかして、ウルを助け出す事が出来れば…ッ!!」

 

「何、ちょっとどうしたのよ急に黙っちゃって!?」

 

「この先、ウルだけじゃない……他にも誰かいる…!!」

 

「「!?」」

 

三人は更にスピードを上げ、一気に森の中を駆け抜けていく。

 

そして…

 

「「「ウルッ!!!」」」

 

「「「!?」」」

 

三人は同時に、森の中の平地へと辿り着いた。そんな彼女達の名前を叫ぶ声に、ロキ達は素早く振り返る。

 

「な、何だいきなり…?」

 

「あれ……女の子?」

 

「……」

 

三人の少女が突然登場した事でロキと支配人が驚く中、竜神丸は懐に収めている拳銃にこっそりと手をかける。

 

「!? 本当だ、誰かいる……って、ウル!?」

 

「え、何処!? 何処にいるの!!」

 

「あそこ!! 怪我して倒れてる!!」

 

こなたが未だ眠り続けている黒髪の少年―――ウルを指差すと同時に、凛は目に見えないようなスピードであっという間にロキ達の下まで接近する。

 

「アンタ達…!!」

 

凛の取り出した一枚のカードが光り出し、そこから一本の剣が出現する。

 

「ウルに一体……何をしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「「「ッ!!」」」

 

怒りを露わにした凛はそのまま、ロキ達に向かって攻撃を仕掛ける。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ぬぉっと…!?」

 

凛が振り下ろしてきた剣を、ロキはユーズから出現させたデュランダルで受け止める。それでも凛の猛攻は止まらず、どんどんロキが押されていく。

 

「許さない……アンタ達、絶対に許さないっ!!」

 

「ちょ、いきなり何をしやがるのかね……ぬぉわっと!?」

 

凛の速過ぎる剣技にロキは上手く防御しつつ、二人は再び森の中へと突入していく。

 

「ロキ!? おいおい、いきなり何だってんだ…ッ!!」

 

ロキの下まで援護に向かおうとした支配人だったが、そんな彼の足下に何本もの薔薇が突き刺さる。

 

「アンタの相手は私よ!!」

 

支配人の前にはアキが立ち塞がる。彼女の周囲には、黒い騎士甲冑と剣を装備した少年のようなモンスター“夜薔薇の騎士”と、杖を構えたゴスロリ風の魔女らしきモンスター“黒薔薇の魔女”が出現する。

 

「お前等、一体何者だ…?」

 

「それはこっちの台詞よ。ウルを捕まえて、一体どうするつもりなのかしらね?」

 

「ウル? …あぁ、あの少年の事か」

 

「アンタ達には絶対渡さないわよ……アンタ達のような、管理局の魔導師には絶対にっ!!!」

 

「管理局だと? ちょっと待て、何か勘違いして―――」

 

「問答無用ッ!!!」

 

「な、ちょ、うぉうっ!?」

 

夜薔薇の騎士が斬りかかってきたのを回避してから、支配人は懐から一つのバックルを取り出す。

 

「話し合いは無理っぽいか……たく、これはあんまし使いたくなかったのによ…!!」

 

支配人はバックルに一枚のカードを差し込んでから、それを腰に装着する。

 

「!? ライダーシステム…!?」

 

アキが驚く中で、支配人は左手を腰に下げてから右手を左斜め前方にゆっくり突き出してから、素早く右手首を180度引っ繰り返し…

 

「変身ッ!!」

 

≪TURN UP≫

 

バックルのレバーを引く。そうする事でバックルから青いトランプカード状のゲート“オリハルコンエレメント”が放出され、支配人に斬りかかろうとしていた夜薔薇の騎士を弾き飛ばす。

 

「…おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

そのオリハルコンエレメントの中を駆け抜ける事で、支配人は雷を操る青いカブトムシの戦士“仮面ライダーブレイド”への変身を遂げた。

 

「ウェェェェェイッ!!」

 

『『ッ…!?』』

 

ブレイドはそのまま駆け出していき、夜薔薇の騎士を思い切り殴り飛ばす。そしてすかさず長剣型カードリーダー“ブレイラウザー”を鞘から抜き取り、黒薔薇の魔女に斬撃を浴びせる。

 

「アンタ、ライダーシステムまで…!!」

 

「説得は無駄だと分かったんでな!! ちょいと痛くなるだろうが、我慢してくれよ!!」

 

「ふん、痛くなるのはどっちでしょうねっ!!!」

 

アキが両手から放った魔力弾を、ブレイドはブレイラウザーで弾き返しつつ夜薔薇の騎士と黒薔薇の魔女を同時に相手取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、これは面倒な事態になりましたね……イワン」

 

支配人の変身したブレイドがアキの召喚したモンスター達と戦っているのを見て、この場から移動した方が良さそうだと判断したのだろう。竜神丸が指を鳴らすとイワンはコクリと頷き、地面に寝かせていたウル掴み上げようとする。

 

「させないわよ!!」

 

そんなイワンの動きに気付いたアキが、イワンに対しても魔力弾を放つ。しかし魔力弾はイワンに命中する直前で霧散し、消滅してしまう。

 

「!? だったら!!」

 

「ッ!?」

 

攻撃が効かないと分かったアキはすかさず狙いを変更し、イワンではなくイワンの足下を狙って魔力弾を放つ。足下の地面が爆発した事でイワンの動きが少しだけ鈍り、掴み上げようとしていたウルを地面に落としてしまう。

 

「今だ!!」

 

「ッ!?」

 

その隙を見逃さず、アキは魔力の込められた両手を地面に翳す。するとイワンの足下の地面から植物で出来た巨大な壁“アイヴィ・ウォール”が出現。イワンとウルを分断する事に成功する。

 

「こなた!!」

 

「OK、任された!!」

 

アキが呼びかけると同時にこなたが駆け出し、アイヴィ・ウォールに守られているウルの下まで猛スピードで接近する。

 

「よし、これで―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毘沙門(びしゃもん)(つぶて)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? ちょ、おわわわわわっ!?」

 

そんなこなたの目の前を二本のナイフ状エネルギーが通過。近くに生えていた大木を貫き、二つの風穴を開ける。

 

「な…」

 

「いきなり攻撃を仕掛けて来ておいて、勝手に連れてくのは何か違うんじゃないですか?」

 

「ッ…!!」

 

こなたの振り向いた先にいた竜神丸は、自身のタブレットを操作しながら淡々と告げる。

 

「誰だい? 私達の邪魔をしないで欲しいんだけどねぇ」

 

「一応、私達のリーダーから彼を保護するように言われてますのでね。お持ち帰りするのは、少々待って頂けないかと」

 

「残念だけど……アンタの格好が胡散臭いし、信用出来ない!!」

 

「あ、やっぱりですか?」

 

こなたが炎を纏った回し蹴りを繰り出したが、竜神丸は頭を下げるだけでその攻撃を回避する。

 

「やれやれ、ちょっと待って欲しいところなんですけどねぇ~」

 

「ぐちぐち言わずに、良いからそこをどいて頂戴なってのっ!!」

 

「いやだから、それは無理だと―――」

 

こなたの攻撃を回避しつつ、竜神丸は彼女の左足を掴み…

 

「言っているでしょう……よっ!!」

 

「な、うわぁっ!?」

 

そのまま大木に向かって高速で投げつけた。こなたが激突した事で大木が圧し折れ、地面に倒れて地響きが鳴る。

 

「ふむ、小さいながらも魔力は高いですか…」

 

「ぷはっ!!」

 

折れた大木を魔力パワーで強引にどかし、こなたが竜神丸の前に立つ。それを見て一筋縄ではいかないと判断したのか、竜神丸はタブレットを懐にしまう。

 

「とにかく、ウルはこっちに返して貰うよ!!」

 

「やれやれ……戦闘は面倒だから嫌いなんですけどねぇ」

 

こなたは周囲に炎を出現させ、竜神丸は右手に刀剣状エネルギー“神刃(カミキリ)”を出現させる。こちらもまた、戦闘が開始されようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、とある次元世界にて…

 

 

 

 

 

 

 

「「…あれれ?」」

 

薄い茶色のロングヘアで横髪を編み込んでいる少女―――アスナ。

 

赤い髪をポニーテールに結んだ小さき少女―――咲良。

 

現在、この二人は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「グルルルルル…!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その世界の原生生物達によって四方八方を囲まれている状態だった。

 

「…何で私だけいつもこうなっちゃうのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」

 

「うわぁ~……カッコいいのが、たくさんいる~…!」

 

アスナが頭を抱えて絶叫しているのに対し、咲良は見た事の無い猛獣達を見て楽しそうに目を輝かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このペアが合流するには、少しばかり時間がかかりそうである。

 


 
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