No.664014

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

soranoさん

第8話

2014-02-17 00:13:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1786   閲覧ユーザー数:1703

~”D∴G教団”ロッジ・”楽園”~

 

「うっ!?」

「こ、これは………!?」

「みんな、バラバラ、です………」

「女神(エイドス)よ………どうかこの子達に安らかな眠りを………」

グチャグチャになった子供らしき死体や体が別れた状態の死体が散乱している地獄絵図すら生温い光景を見たルーク達はそれぞれ絶望の想いを抱えた。あまりにも悲惨な部屋の状態を見て、ルーク達は吐くのを必死に我慢しながらも生存者がいないか確かめた。そして奥に行くと一人の傷だらけの菫色の髪を持つ少女が倒れていた。

 

「脈が僅かだけど、まだある!待っててくれよ!今、助けてやるからなっ!!」

菫色の髪の少女の脈を計ったルークは荷物を乱雑な動作で探って透き通った水色の液体が入った瓶を取り出して少女の口の中へと流し込んだ。

「僕も手伝います!―――我が深淵に眠りし、碧き刻印よ……」

一方イオンは背中に神聖な気配を漂わせる何かの紋章を顕させた。

 

「イ、イオン!?一体何をしようとしてんだ!?」

「!?ジュエ卿、それを使うのは……!」

イオンが教会内でも極秘とされる力を他者がいる目の前で使おうとしている事にルフィナは血相を変えて止めようとしたが

「イオン様の、邪魔しちゃ駄目、です。それに、教会の秘密を守る為に、助けられる子供を見殺しに、するのですか?」

「!!申し訳ありません、アリエッタさん。私が間違っていました。」

アリエッタに指摘され、真に守るべきものは何なのかをすぐに気付いて頭を下げた。

 

「わかったなら、手伝う、です。――――清純なる命水よ、メディテーション!!」

「女神よ、お慈悲を!――――ホーリーブレス!!」

アリエッタとルフィナが発動した術によって少女は淡い光に包まれ、少女の身体に刻み込まれた十字傷(クロス)は徐々に塞がって行き

「大いなる七耀の慈悲にて、彼の者に命の焔を!――――セブンス・アイドス!!」

イオンが紋章を輝かせると少女の頭上から虹色の光の球体が降りて来て少女に同化し、光が消えると少女の傷は全てなくなると共に土気色になっていった顔色は熱を取り戻したかのように赤くなり、少女は規則正しい寝息をたてていた。

 

「す、すげぇっ!イオン、今のは何なんだ?まさか今のも”ダアト式譜術”なのか??」

「いえ、”聖痕(スティグマ)”の力を借り、失った命をも蘇らせる事ができる”奇蹟”です。―――僕がこの世界で目覚めてすぐに使えるようになった力なんです。」

「”聖痕”?何だそりゃ。」

「!!ジュエ卿!ルークさんにそれ以上の説明は……!」

教会でも秘匿とされる言葉を口にしたルフィナは血相を変えた。

 

「僕は最も信頼している人の一人である彼に隠し事はしたくありません。それに彼は口が固い方です。」

「………わかりました。ジュエ卿がそこまで仰るなら。」

(一体何なんだ……?)

重々しい様子を纏う二人を見たルークは首を傾げた。

 

「ルーク、”聖痕”についての詳しい説明は”身喰らう蛇(ウロボロス)”の件と一緒に後で説明します。とにかくまずはその娘だけでもここから安全な場所に運ばないと。――――ルフィナ、貴女は先にこの建物から出て、後方に控えている部隊に状況を連絡してください。……遺体となった子供達を”親元”へ帰さなければなりませんし。」

「わかりました。」

そしてイオンの指示に会釈をしたルフィナは部屋から出て行った。

 

「なあ、イオン。さっきの術でここにいる奴等全員を蘇らせる事はできねぇのか?」

「そうしたいのは山々なんですが……身体や精神に負担がかかる影響で、何度も連続で使えない上、この”どの部分が誰かわからない状態”で蘇らせれる事ができると思いますか?」

「……悪ィ。お前の性格だったら、間違いなく使っているだろうに辛い事を聞いちまったな。」

辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせているイオンの様子からイオンの心情が理解できたルークは辛そうな表情で謝罪した。

 

「イオン様、悪くない、です。悪いのは、”D∴G教団”の人達、です。」

「……慰めてくれて、ありがとうございます、アリエッタ。―――とにかくまずはその娘の安全を確保する為にもここを一端出ましょう。ルークはその娘をお願いできますか?」

「ああ。」

イオンの言葉に頷いたルークはコートで裸の少女を包み込んだ後少女を背負ってイオン達と共に部屋を出た。

 

(……………?誰………?)

ルーク達がどこかに向かっている中、少女は目覚めかけ、疲労や謎の薬物を投与された影響によっておぼろげにしか開けない目を開いて自分を背負う赤き髪の青年の後姿を見つめていた。

 

「それにしてもイオンって、前とは比べ物にならないくらい強くなっているじゃねえか。それにアリエッタも。」

「フフ、ルーク程ではありませんよ。」

「今度こそイオン様を、守る為に、強くなる必要、あるから、です。」

(もしかしてレンを迎えに来てくれた本当の家族?やっと迎えに来てくれたんだ………!やっとレンは本当の”パパ”と”ママ”に会えるんだ………!名前は……ルーク……お兄………様………)

少女は目が覚めたがルークの背中の居心地に安堵を感じ、再び眠りについた。

 

こうして作戦は無事終了したが、生存者は別のロッジを襲撃したカルバードとエレボニアに挟まれ、領有権問題が起こっている自治州――――クロスベル自治州の警察のチームが助けた少女を合せてわずか2名という余りにも少ない救助者の数となった。誘拐した子供達に余りにも惨すぎる事をした外道たちは全員自決し、更には外道の集団に支援していた有力者達も何名か拘束したが、拘束した者達も氷山の一角で、支援していた者達全てはわからなかった。

 

また、今回の作戦によってルークは昇格し、公式上最高ランク――――A級正遊撃士に昇格し、カシウス・ブライトは非公式の最高ランク―――S級正遊撃士に昇格した。

 

 

 


 
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