どこだここは...
どこか見覚えのある場所...
木々が生い茂る...ジャングルか
「....ろせ....やくそ......」
途切れ途切れ聞こえる声。
なんだなんて言っている.....約束?
なんの約束だ....
次の瞬間視界が真っ赤に染まった。
***
「....はぁはぁはぁ。」
なんて夢を見るんだ。
「........後悔してるのか俺は....」
俺の懺悔にも似たつぶやきはだれの耳に入ることもなく消えていく。
もう一度眠ろうとしたが、嫌な汗をかきすぎて眠れず結局少し早いが起きることにした。
とりあえず服を着替えよう。
そう思い寝巻きを脱ぎ、壁にかかっている服をとろうとしたそのときだった。
どごおおおんっと凄まじい音を立て扉が吹っ飛ぶ。
敵襲か!!
「おきろおおお!」
「起きてるわああ!!」
破壊された扉の先に立っていたのは春蘭だった。
こいつは一体いくつ扉を破壊すればいいんだ!お前が壊しすぎて、最近修理が雑なんだよ!
俺を指差した春蘭が俺の姿を確認すると、みるみる顔が赤くなっていく。
あれ...嫌な予感がするんですけど
「ぎゃああああああ!!」
「きゃあああい!!」
春蘭に吹っ飛ばされてつい女の子らしい悲鳴をあげてしまった俺はそのまま意識を手放した。
***
「まったく、起こしにきた相手を眠らせてどうすんだよ。」
意識が戻った俺の前に待ち受けていたのは華琳と秋蘭だった。
全裸で寝転がる俺に向かって華琳がこう言い放ったのだ。
さっさと起きなさい、視察にでるわよ。
仮にも気絶していた人に向かって言う言葉ですか....
「お、お前が服をきていないのが悪いのだろう!」
「勝手に入ってきたのはだれだよ!」
「はいはい、どうどう。じゃあ、この右の通りを秋蘭、左の通りを春蘭、中央を私と龍華でいくわよ。」
まるで、馬をあやすように俺たちを 抑える。
「華琳様!?どうしてこんなやつが華琳様と!」
「さっき龍華を気絶させてお仕置きよ春蘭。それじゃあいくわよ。」
「あ、ああ。」
うなだれる春蘭を慰める秋蘭を尻目に中央の通りをあるいていく。
「よかったのか?」
「いいのよ、いい加減扉を吹き飛ばす癖も直してもらわないとね。」
それを聞いて俺は乾いた笑いしかでてこなかった。
ま、まあこれで直ってくれるなら俺の扉さんSIDEからも万々歳だけど。
......直るのだろうか。
「それよりも視察中よ。なにか気づいたことはない?」
「気づいたことねー。」
「ええ、あなたの治安改善の提案書は毎回面白いからね。」
前に提案した通り商売をいくつかのジャンルに分けて最も効率よく商売ができるように改善はしたが
人が多くなって警備が追いついていないのが現状といったところか。
「人が多いのはいいことなんだが、街がでかくなりすぎて警備の手が足りなくなってる。」
「警備隊をもっと増やせってこと?」
「いや、それだけじゃなくて。街の区間毎に区庁をつくって小さな単位の指揮系統をつくろう。そうしたら、今の城からの伝達より、早く伝達できて対処がしやすい。」
「そうね...そうなると優秀な指揮官が数多く必要ね。手当たりは?」
「警備隊の中から何人か選んである。多分いけるだろう。」
「そう..わかったわ考えておきましょう。」
それでも限界はあるだろうし、乱世に入ったら明夏に警備隊を任せるのもありだな。
いくら戦火が広がっても警備隊を疎かにはするわけにはいかない。それは華琳も同じ考えのようだし、できる限りの協力はしてくれるだろう。
辺りを見渡しながら歩いていると、気になるものが目に着いた。
あれは籠屋か?
「いらっしゃーい、この籠に目ぇつけるなんてお目が高いなぁ兄ちゃん。」
「そのからくりはなんだ?」
「これか?ほんまに目つけるとこがちゃいますわ。これは全自動籠編み機や!」
全自動籠編み機だと...!?この時代にそんなことが可能だとでも!
「こうやってここをぐるぐる回すと、この通りカゴの側面ができるっちゅうわけや。」
「へえ、底の部分はどうするの?」
「そこは手編みで。」
「便利といえば便利ね....」
いやいやいや、それでもすごすぎるだろう。この時代に歯車なんてあったっけ。
「君の名前は?」
「ウチか?うちの名前は李典や!」
「李典、俺たちの元へ来ないか?」
俺の言葉に驚く華琳と李典。
この技術は必ず華琳の力になる。
「えーと、失礼かとしれんけど兄ちゃんたちは?」
「私の名前は曹孟徳、この男は北条よ。」
曹孟徳の名を聞いてさらに驚きの色を見せる李典。
「陳留の刺史様と天の御使いさまやてぇ!?す、すみません。お誘いはうれしいんやけど、友達2人とずっと一緒だと約束してるんやけど....」
「わかったわ、ならその友達にも会いにいきましょう。」
「いいのか?」
「ええ、あなたが欲しがるくらいなのだもの。私の役に立ってくれるのでしょう?」
「ああ、保障しよう。」
その言葉を聞いて満足そうに先に歩いていく。
***
「それで揃いも揃ってどうしたのかしら。」
待ち合わせ場所で待っていたのは秋蘭と春蘭。そして、二人の女性だった。
「あれ?曹操さまたちの知り合いなんか?」
「ああ、夏侯惇と夏侯淵。華琳の将軍だ。」
曹操さま、将軍...と李典と他の二人の女の子が息を飲むのがわかる。
「が、楽進と申します。」
「于禁って言うのー。」
「曹孟徳よ。龍華、この二人はどうかしら?」
楽進、于禁。歴史上間違いなく勇将。
だが、それを抜きにしてもこの二人の瞳の奥から覗ける光。
「はっ必ずや曹孟徳様の覇道の支えになるかと。」
春蘭、秋蘭たちと同じ天下を憂い、覇王を支えるものの瞳。
それを聞くと華琳は満足そうに微笑み頷く。
「貴女たちはこの世をどう思うかしら。宦官たちが好き勝手に政をし、賊が蔓延り、民たちに全てのしわ寄せがきているこの世を。」
華琳の言葉を聞き、灰色の髪の女の子が悔しそうに俯く。
「変えたい...苦しんでいる人たちを救いたい...でも私たちにはそのための力がありません.....」
「ならそのための力、私が貸しましょう。だから、そのためにその力私に貸しなさい。」
華琳の自信に満ち溢れた強い言葉に俯いていた顔をあげ、驚きの色を見せる。
「つまり、俺たちと一緒に戦おうってことさ。」
「......真桜、沙和。」
「凪の好きにしたらええよ。」
「うんなのー。沙和たちは一心同体。これからも三人一緒なのー!」
二人の言葉に一度うつむきそして....
「我が名は楽文謙、真名は凪と申します。曹操さま、我が力を存分にお使いください。」
その目に覚悟の炎を燃やし、力強く言い放った。
「名前は于禁、真名は沙和。曹操さまにお仕えしたいのー。」
「ウチは李典、真名は真桜。からくりの力、天に示させてもらおうやないか。」
そして二人も楽進に続くように言うと、華琳が一歩前にでる。
「華琳よ、そう呼びなさい。」
そう言って、満足そうにきびつを返し、先に歩いていく。
その様子を俺は秋蘭と笑い合い、それに続く。
「さっ、三人とも立ち止まってたら我らが覇王さまは先にいっちまうぞ。」
その言葉に三人とも顔を見つめ合い、やがて笑顔をみせる。
「「「はっ!!!」」」
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part9です。
すみません遅くなりました。新しいゲームを買ってそればっかりやってたら笑
凪、真桜、沙和登場回です。