「…兄上?」
「言うな…見ればわかる。」
皆さんこんにちは。
東堂大河です。
今僕達の眼前に広がる光景は、人、人、人…
「八十…いや、九十万は下らぬだろうな…」
「ですかねぇ…?」
「一方こちらは十五万前後…」
「『普通』に戦えば敗北は目に見えてますね。」
「あぁ。あくまで、『普通』に戦ったら…な。」
そう言って、互いに見つめ合う二人の人影。
かたや、『神武の死神』と畏れられた男東堂鋼牙。
かたや、『鬼謀の道化師』と謳われた男東堂大河。
「御主の知謀と仙術があれば、負ける事は無いだろう。」
「兄上、過度の信用は油断を招きますよ?」
「わかっておる。ところで…勝算はどのくらいだ?」
「ふむ…」
これだけの兵力差を考えると…
「…僕の仙術を考慮に入れても五分五分ですかね。」
「そうか…なぁ、大河。」
「ん?なんですか、兄上?」
「…必ず…必ず生きて帰るぞ。」
「兄上…えぇ、勿論です!」
そう言って、僕達は戦場へ向かった。
「報告!前方十里先に敵部隊を発見!」
「うむ、ご苦労。後方で休んでおれ。」
「はっ!」
タッタッタッ…
「さて…我ら連合軍はどういった作戦で参るのだ?」
そう言ったのは、蜀の重臣の一人、趙雲 である。
「やはり敵の実力が謀り兼ねるので…」
そう答えるのは、蜀軍参謀の一人、諸葛亮。
「『臥龍』にすら策が浮かば無いとはな。」
そう言うのは、呉の柱石美周朗こと、周瑜。
「それだけ情報が少ないですから…」
そして、それに続く様に話したのは、呉の新星、呂蒙。
「敵陣に放った斥候も戻って来ませんからね」
で、こちらの眼鏡をかけた少女が郭嘉。
「策など練らんでもこの私が賊ごとき打ち砕いてやる!」
そう言ったのは、蜀軍猛将の一人魏延。
「おぉ!よくぞ言ったな魏延!」
「焔耶の言う通りだぜ!」
そう言って魏延に賛同したのは、魏武の大剣こと、夏侯惇と西涼の錦、馬超である。
「「「「「「「「「はぁ…」」」」」」」」」
その場にいた全員が三人を哀れむような目で見ていた事を、彼女達は知らない。
…と。
「も、申し上げます!」
一人の兵士が慌てた様子で入ってきた。
「なんだ!今は軍議の――「て、敵軍が攻めて来ました!」――なっ!?」
連合軍に緊張が走った。
なんせ十里(一里がおよそ四km)を、半刻程(一時間位)で来たのだから。
「くっ!仕方あるまい…すぐに迎撃するぞ!」
こうして、連合軍の準備も調わぬまま二勢力がぶつかった。
「さて…この状況、どうしたものか。」
戦が始まって一刻程経ち、ふと戦場に目をやると、兄上の部隊が敵に半包囲されていました。
「敵の狙いは兄上の部隊を興奮させずにそのままの状態で包囲殲滅…ですかねぇ?しかし、いくらなんでもわかり安すぎる。」
となると…
「足止めですか…。ということは、地形的に奇襲の可能性がありますね。…誰かある!」
「はっ!」
「華雄隊、張遼隊に伝令を。手筈通りに動く様に、と。」
「御意ッ!」
タッタッタッ…
「さて。この采配が吉と出るか凶と出るか…」
「た、大変です関将軍!」
「なんだ!」
「前方から、黒地に『華』の一文字…華雄将軍の旗を掲げた部隊が!」
「なにぃ?!」
関羽が驚いていたその時―――――――
「はぁーーーー!」
ザシュ!
ドシュ!
「ぎゃあ!」
「ぐはぁ!」
突然聞こえた兵士の阿鼻叫喚と、それと共に聞こえる凛とした叫び声。
そして、関羽の目の前で馬に跨がっていたのは…
「久しぶりだな、関羽。」
…凛とした態度で見下ろして来た華雄だった。
「そんな…馬鹿な…!」
関羽は信じられなかった。
目の前に居るのは、紛れも無く華雄である。
だが、確か華雄は処刑されたはず…
「どうなっているんだ…?」
「残念だが、答えてやる暇は無い。」
そう言い終わるや否や、華雄は持っていた大斧を振るった。
ガキィィイン!
「くっ…!」
「まだまだぁ!」
ヒュン!
ガキィィイン!
「チィ…!」
その頃――――――
「ふむ…まずは上々ですね。」
華雄殿を蜀軍に、張遼殿を魏軍に突撃させて、敵が混乱している隙に兄上の部隊を救出する算段…ですが。
「…どなたを救出に向かわせましょう?」
実は他の皆さんには救出できない状況役目を任せてあったので…いやはや困りましたねぇ…
「仕方ありません。…伝令兵!」
「「「はっ!」」」
「華雄隊、張遼隊、鋼牙隊の三部隊に、敗戦を装いつつ撤退するように伝えてください。」
「「「御意!」」」
ザッザッザッ…
「フゥ…」
はてさて…
「夏侯惇将軍!敵部隊が撤退して行きます!」
「逃がすか、全軍追撃しろ!」
「「「オォォォ!!」」」
そう言って夏侯惇の部隊が凄まじい速さで突撃して行った。
…余談だが、同じ報告を受けた馬超隊ももの凄い速さで突撃して行った(魏延隊は厳顔隊に止められた)。
「くっ…もう追いついて来たか!」
「さっすが春蘭の部隊やなぁ〜」
「敵を褒めてどうするのだ、張遼将軍?」
「んー…そうやねんけど…なんか安心したっちゅうか…」
「…なるほど。」
今、鋼牙達は全力で逃げている。理由はそうしろと本陣からの伝令に言われたから。
「しっかし、大河はなにをするつもりなんや?」
「あぁ…このタイミングで撤退など、私でも指示せんぞ。」
「(何故この時代に『タイミング』などという言葉が…)」
「大河殿、前方に砂塵を発見!」
「旗はわかりますか?」
「えー…黒地に『華』一文字、紺碧の張旗、紅蓮の旗に『鋼』の一文字…味方の部隊です!」
「…ん?他にも部隊が見えますが…夏侯の旗に馬の旗…あの速度を見るに…夏侯惇と馬超ですかねぇ…?」
「はっ!恐らくはそうなるかと!」
「ふむ…では、僕の合図で銅鑼を鳴らしてください。それから、合図の後、僕も出陣しますので!」
「御意ッ!」
「(…まだ……もう少し……あとちょっと…)」
「…今です!」
ゴォオン!
銅鑼の音と共に敵部隊の前に伏兵が現れた。
「夏侯惇将軍、前方に新手の敵部隊発見!」
「構わん、このまま蹂躙しろ!」
そう言って夏侯惇の部隊と馬超の部隊が騎馬隊の速度を上げた、その直後…!
バキュン!ドキュン!
「ぎゃあ!」
「ごはぁ!」
騎馬隊が目に見える早さで潰されていった。
「なっ!?」
「なに?!」
「クハハハハハハ!騎馬隊など、僕の鉄砲隊の前には無力なのですよ!…にしても、凄いですね、李典殿の開発技術は。」
たった五日で、一千丁の火繩銃を造ったのですから…
「さてと…伝令兵!本陣の華雄隊、張遼隊、鋼牙隊に出陣の命を!」
「御意ッ!」
タッタッタッ…
「クフフ…さぁ、ショーの始まりです…」
その時の大河の微笑みは、味方の兵士が恐怖を覚えたという…。
「はぁーーー!!」
ザシュ!
「うらぁーー!!」
ドシュ!
「ぎゃあ!」
「た、助げぶぉ!」
いやはや、華雄殿も張遼殿もお強い。
あれだけの雑兵がどんどん減っていってます。
…え?兄上ですか?兄上ならば向こうの方で戦ってますよ?
「フンッ…!」
ザシュ!
ドシュ!
グサッ!
「ぎゃあ!」
「ぐはぁ!」
「ごぶぁ!」
「はぁ…やはり数が多くても雑魚は雑魚…なんの張り合いにもならぬ…。もっと骨のある奴はおらぬのか…」
そう言いながら、鋼牙は武器を振るう。
…と。
「待て!」
「…ん?」
鋼牙の目の前には、黒の長髪を後ろで結んだ少女と水色短髪で瞳が紅い少女、そして、桃色の髪に褐色の肌で首飾りをつけた女性が立っていた。
「…なんだ、御主らは?」
「我が名は関羽!字は雲長!徐州の青龍刀にして、大徳が一の矛なり!」
「我が名は超子龍!一身これ胆の将器なり!」
「我が名は孫伯符!江東の小覇王とは私のことだ!」
三人が名乗り終えたところで、
「はぁ…………」
鋼牙は溜め息をついた。
「また女か…いい加減ウンザリしてきたな。」
「貴様、素直に縛につけば命だけは助けてやるが…どうする?」
「まったく…今のところ男武将は滅覇、王充、李確、郭氾…四人位か?」
「おい、御主!聞いているのか?!」
「この一月で出会った男が四人程度…残りの将は全て女か…はぁ………。」
「…聞く気は無いみたいね。」
「うむ、そのようだな。」
「ならば仕方あるまい…我が青龍偃月刀の、錆にしてくれる!」
そう言って、関羽は自分の得物を振りかざした。
「せりゃ〜〜〜!」
ブンッ!
「チッ…」
ガキィィイン!
「なっ!?」
「ん?…ほぉ、これは中々骨がありそうな…楽しめそうだな。」
そう言って、鋼牙は金剛暗器を取り出した。
「む?なんだそれは?」
「なに…と言われても、我の得物だとしか…」
そう言って、鋼牙は薙刀を構えた。
「やれやれ…無防備にも程があろう…」
そう言いながら、槍を構える趙雲。
「でも、愛紗の一撃を止めるなんてやるじゃない♪」
そう言う孫策の言葉に、
「うぐ…」
ただ押し黙る関羽でした。
「なんだ、かかって来ぬのか?ならば…こちらから参る!」
そう言って鋼牙は、関羽達に斬りかかった。
ガキィィイン!
「あまい!」
「チッ…やはり雑魚とは違うか…」
そう言って、鋼牙は後ろに跳び退き、間合いを取った。
「(恐らく、あの者達と我の力量に大差は無かろう…が、やはり油断はできぬか…)はてさて、どうしたものか…」
鋼牙が考えに耽ったその時――――――
「せりゃ〜〜〜!」
ブンッ!
「はぁー!」
ヒュン!
「せい!やぁ!」
ヒュヒュン!
(※上から、関羽、孫策、趙雲です。)
「うぉわ!?」
咄嗟に攻撃を躱した鋼牙。
「やれやれ、考える時間くらい与えて欲しいものだな…と、いい加減型を変えるか…」
そう言って鋼牙が金剛暗器をいじって数秒後。その手にあったのは…
「金剛暗器五の型、『暗』、魔弓。」
…鋼の弓だった。
「ほぉ…あれが兵の言っていた『形が変わる武器』か。」
「そのようだな。」
「変わった武器もあったものねぇ〜」
鋼牙の武器に対して各々感想をぼやいていた。
「…ん?御主ら、あまり驚かぬのだな」
「あぁ。我らは伝令からすでに聞いていたからな。」
「そうか…まぁ良い。知っていた所でどうなるといったものでもあるまい。」
そう言って鋼牙は弓を構える。
「我が一矢…受けきれるか!」
ヒュン!
ガキィィイン!
「くっ…!」
鋼牙の一撃を咄嗟に防ぐ関羽。
「ほぉ。受けきったか…」
鋼牙が感嘆していた時…
「はぁぁぁ!」
ブンッ!
「おらぁー!」
ブンッ!
「…ッ!?」
咄嗟に後方に跳び退いて躱した鋼牙。
「おい、馬超!貴様が出遅れるから当たらなかったではないか!」
「はぁ!?てめぇがなにも言わないで勝手に行ったのが悪いんだろ夏侯惇!」
「なに!?」
「なんだよ!?」
「…こんな奴らに我は斬られかけたのか?」
トホホ…とうなだれる鋼牙だった。…と
「兄上!ご無事でなによりです!」
「ん?おぉ、大河。丁度良いところに来た。加勢してくれ。」
「え?加勢ですか?兄上がてこずるほどの相手には見えないのですが…?」
「いや、さすがに疲れてな…」
「…わかりました。ですが、貸し一つですからね?」
「承知。」
「クフフ…では、趙雲と孫策はお任せを。」
「すると、我は関羽に馬超、それから、夏侯惇か…まぁ妥当だな。」
「そうでしょう?それから、楽進殿達に行動を開始させましたので…」
「華雄将軍と張遼将軍はどうした?」
「華雄殿は、滅覇と王充を同行させて厳顔、魏延の部隊に。張遼殿は、李確と郭氾を同行させて夏侯淵、呂蒙の部隊に当たらせています。」
「…ん?そういえば孫権、甘寧、周泰の部隊が、見当たらぬが…」
「あぁ、恐らく奇襲でしょう。」
「……………は?」
「ですから、恐らく奇しy――「大問題ではないか!?」――おぉ!?い、いきなり大声を出さないでくださいよ、ビックリするじゃないですか!」
そう言う大河に鋼牙は詰め寄った。
「御主がここにおっては、誰が本陣の防衛を――「そんな心配は無用ですよ、兄上。」――…どういう事だ?」
不思議がる鋼牙に、大河は続けた。
「あんな見え透いた策をやられれば、誰だって奇襲を疑いますよ。…尤も、他にも何か仕掛けているでしょうが…と、話しが逸れましたね。つまり、本陣には、今呂布殿を配備しているから問題なし、と言うことです。」
「そうか。ならば…」
言って鋼牙は得物を構え直す。
「存分に暴れられるな!」
「クフフ…そうですね、兄上。」
そう言って、二人はそれぞれの敵に向かって行った。
鋼牙の武…大河の知…そして、各々の活躍により、『勝利』という名の天秤は、確実に鋼牙達に傾いた。
しかし――――――
――この戦いは、物語りの一部に過ぎない。例え、なにかを得て、なにかを失おうとも、終焉には影響を及ぼさない。
そして
それは、失ったモノが、この物語りの突端だとしても終焉に影響しない――――
次回につづく
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いや、ども!
稚文乱文で申し訳ありませんが、ご容赦を…
それから、大河の策、鋼牙の武についてのツッコミは勘弁してください。