No.659398

機動戦士ガンダム異聞〜旭日の旗の下に〜第10話

現時点における最新話です。ここからはpixiv版と同じペースで進みます。

2014-02-01 06:23:49 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1699   閲覧ユーザー数:1681

これまでのあらすじ

 

 後世世界U.C.0079年1月3日、ジオン公国とプラントは、地球連邦政府に宣戦布告、緒戦を勝利で飾り、その進撃は留まる事を知らず、地球上の3分の1がジオンとザフトの勢力下に置かれた。

 

 この事態に対し連邦軍はMS開発計画である「G計画」と宇宙軍再編計画「ビンソン計画」を発令、反撃の準備を進めていた。

 

 これと同時に大日本帝国も「V作戦」を発動、連邦軍に先立ちMS配備を進めた。

 

 時は経ち、U.C.0079年12月8日、ヘリオポリス崩壊事件が発生、ヘリオポリスで極秘裏に開発が進んでいた新型モビルスーツ4機がザフトの手に渡った。この事件により、オーブではウズミ・ナラ・アスハ代表が辞任、プラントでも、攻撃を行ったクルーゼ隊に対し査問委員会が開かれた。査問委員会の結果、クルーゼ隊は不問とされるが、アークエンジェル討伐の任はジオンに引き継がれ、その役目に、赤い彗星の異名を持つシャア・アズナブル大佐指揮のラグナレク分艦隊に引き継がれた。

 

 これと同じ頃、紺碧艦隊は、新旗艦轟天号の最終試験航行中にユニウスセブン跡にてアークエンジェルと遭遇、尾行を開始した。

 

 世界は、かつての第2次大戦同様の三極構造にあった。だが、その構造は火薬庫の上の蝋燭のように、危険な状態であった。

 

 

 

 

 

 

第10話 決断の時

 

時は遡り、U.C.0079年12月20日 ザンジバル級機動巡洋艦「ラグナレク」会議室

 

 会議室には、各艦の艦長、副長、MS隊々長などが集まっていた。

 

「諸君らも知っての通り、本日1208未明、ドズル中将より木馬討伐の命が下った。木馬の戦力は、諸君らの手持ちの資料で既に把握済みだろう。木馬の航路だが、ヘリオポリス脱出後、日本艦隊の護衛を経てアルテミスに到着、その後第6艦隊への合流進路を取っているものと推測される」

 

 会議室のモニターに表示された航路図に、艦隊を示す凸が表示された。

 

「第6艦隊というと、猛将リーガンの艦隊ですな」

 

 

 

 連邦軍第6艦隊とは、数少ない連邦宇宙軍の残存戦力の一つである。大戦序盤において戦力の8割を失った宇宙軍は、残存戦力である駐留艦隊がアルテミスに立て籠もってしまい、宇宙での勢力圏は事実上ジオンとザフトにあった。そんな中で、ゲリラ戦法でジオンとザフトを攪乱している第6艦隊は、ビンソン計画で再建中の宇宙軍では、まさに命綱であった。その艦隊司令官であるロナルド・ダック・リーガン中将は、猛将として勇名をはせ、ジオンとザフトにとっては目の上の瘤であった。

 

 

 

「そうだ。そこで私は、木馬の予測航路のいずれかを通過する連邦のパトロール艦隊を襲撃し、木馬をおびき寄せる。木馬が搭載機を出撃させたら、私が直々に相手をする」

 

 指揮棒で作戦の説明を終えると、士官達が起立した。

 

「諸君らの検討に期待する!」

 

この戦いが、後のシャアに大きな影響を及ぼす事になるのを、この時のシャアは知らなかった。

 

 

 

 

 

 

現在 U.C.0079年12月24日轟天号艦橋

 

 その頃、轟天号はアークエンジェルの動向を探るため、アークエンジェルの後方6時の方向距離10宇宙kmの地点を維持しつつ、追跡を行っていた。

 

「どうもこういうのはストーカーみたいで好かんな」

 

 前原は頭を掻きながら呟いた。最も、紺碧艦隊は第2次大戦において、第3帝国の潜水艦UX-99を拿捕するために、当時の旗艦であった伊601富嶽号(初代)は追跡を行っていたので、こういった事は紺碧艦隊にとっては十八番なのである。

 

「それにしても、この航路では地球に行くには遠回りにも程がありますな」

 

 航海長の蔵田が航路図を見ながらそう言った。確かに、この航路で地球に行くのは、遥かに遠回りすぎる。まるで敵に撃ってくださいと言わんばかりの航路である。艦長は素人か?それとも単なる無能か?前原は思考を回転させたその時、頭の中にあるビジョンが浮かび上がった。それは、連邦の艦艇がジオンの艦隊に攻撃を受けているビジョンであった。その時

 

「閣下!アークエンジェルが進路を変えました!」

 

 前原は入江の言葉で我に返ると、モニターに映っているアークエンジェルが、進路を2時方向に変えたのだ。先程見たビジョンと関係あるのだろうか?前原の指揮は早かった。

 

「後を追うぞ。面舵いっぱい!」

 

「おーもかーじ!いっぱい!」

 

航海長が復唱すると、轟天号は右へ進路を取った。

 

 

 

 

 

 

 事の発端は、15分前に遡る。

 

 艦長室にいたアークエンジェル艦長マリュー・ラミアス大尉は頭を抱えていた。専任の艦長であったパオロ・カシアス大佐がザフトの攻撃で重傷を負い、無事な士官で最も最高位だった自分が艦長代理を拝命、日本軍の沖田准将の了承を得て、彼の艦隊の護衛でアルテミスまで着いたのは良かったものの、到着早々要塞司令官ガルシア少将に出ていけと言われ、駐留艦隊司令官のワッケイン少将には現状維持のままリーガン中将の第6艦隊と合流し、アラスカに行けと言われる始末であった。それで第6艦隊へ合流する為航行していたら水が不足し、仕方なくユニウスセブン跡で水を採掘していたら、ストライクが哨戒中のジンを撃破、かつ救命ポッドを発見して帰還してきたのである。救命ポッドを開けると、そこにいたのは、なんと現プラント最高評議会議長シーゲル・クラインのご令嬢、ラクス・クラインだったのである。南極条約の規定では、遭難者を発見した場合、敵味方問わず保護し、国に送るとされているが、その遭難者が敵国の国家元首の令嬢ではおいそれと渡せるわけにもいかないが、このままではきっと政治利用されるのがオチである。

 

 なんとかしなければと思っていた、その時だった。突然、艦内通信で艦橋にいるナタル・バジルール中尉が呼び出してきたのである。

 

 マリューは思案するのをやめると、艦橋へ向かった。

 

 艦橋に着いたマリューは、同じく艦橋にいたアーノルド・ノイマン曹長から友軍の救援要請を受信したという報告を受けた。罠という可能性もあるが、受信した周波は間違いなく友軍のレーザー暗号通信である事が判明したのである。ナタルがモニターに航路図を出し、現在宙域から発信された宙域を特定すると、現在アークエンジェルが最も近い位置にいたのである。しかし、ここでむやみに戦闘を行えば、第6艦隊との合流が遅れる可能性ができ、尚且つ、これが陽動という事も考えられたが、みすみす味方を見殺しにする事は出来ない。この時マリューは二つの決断に左右されていた。任務優先か味方救援か…考えの末、マリューは味方救援を選んだ。確かに若干の遅れは出るかもしれんが、みすみす味方を見殺しにもできなかった。

 

 

 

 このマリューの性格が、後にこの大戦で大きな役割を果たす事になるのである。

 

 

 

 

 

 

地球圏 B7R宙域

 

 その頃、シャア・アズナブル大佐指揮下のラグナレク隊は、連邦軍第17哨戒パトロール艦隊と遭遇していた。

 

「ミノフスキー粒子、戦闘濃度散布終了!」

 

「総員!第1戦闘配置!全砲門開け!モビルスーツ隊の発進準備急げ!」

 

「敵艦隊の戦力は、サラミス級改装型2!ネルソン級護衛母艦2!その他、セイバーフィッシュ、メビウスを中心とした艦載機が確認されます!」

 

 艦橋が慌ただしくなり、ムサイ級からはリックドムⅡ(ツヴァイ)が続々発進していた。

 

 

 

 MS-09R-2「リックドムⅡ(ツヴァイ)」とは、ツィマッド社が開発した地上用重MS「ドム」の宇宙仕様であるMS-09Rをベースに、マ・クベ中将が立案した「統合整備計画」で開発された機体である。このドムシリーズは、プラントから技術交換で入手したスケイルモーターの強化型を使う事により、ホバー移動を実現、見た目とはかけ離れた機動性を持っており、ゲルググが量産ラインに入るまでの“繋ぎ”として配備されていた。

 

 

 

 その頃、シャアはゲルググのコックピット内でいつでも出撃できるよう、待機していた。

 

「ドレン、レーダーに木馬のMSが映ったら直に報告しろ、私が直々に相手をする」

 

『分かりました大佐。ですが、『鷹』の方はどうしましょう?』

 

 ドレンの問いに、シャアは読んでいたかのように答えた

 

「鷹は彼女が相手をしてくれる。心配はいらん」

 

『解りました大佐。では!』

 

 交信を終えると、シャアはOSのパネルからストライクの映像を開いた。

 

「(妙だな。この私が胸騒ぎを覚えるのは…まあいい、いずれわかる事だ)」

 

 この時、シャアはこの機体が、後に自分の最大の宿敵になる事になろうとは、まだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

キャラ設定

 

地球連邦軍

マリュー・ラミアス

初出:機動戦士ガンダムSEED

概要

 アークエンジェル艦長。専任の艦長が重傷を負った為、無事な士官の中で一番階級が高かったため、艦長に選ばれた。まだ若く、経験が浅いが、指揮能力は高い。

 

ロナルド・ダック・リーガン

初出:紺碧の艦隊

 連邦宇宙軍第6艦隊司令官。階級は中将。猛将の名にふさわしく、豪快な戦術で敵を圧倒する。

 


 
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