遂に一行は、最後のサガルマータの遺物がある高射砲塔近くまで辿り着いた。
「あれが最後の目的地・・・!」
キューボラから頭を出しているみほは、空に全てのサーチライトを照らし、そこから見える限りの88㎜高射砲や128㎜高射砲、4連装対空機関砲の砲門を空に向ける高射砲塔を見て、呟いた。
カール達が乗る機関車は、進む先が車などを乗せた貨車が止まっており、進めない。
機関車を止めたカール達は降り、高射砲塔を見た。
「あれで最後か・・・」
地面に膝を付けたカールは高射砲塔を見て、そう呟く。
みほ達もティーガーⅡを止め、高射砲塔を見た。
それと同時に戦車に乗っていた者達が地面におり、上空から航空機のエンジン音が聞こえてくる。
「今更なんですが・・・」
砲塔の上にいるみほと同じくキューボラから出て来た華が、疑問に思うことを口にした為、無線席にいた沙織が彼女に声を掛ける。
「どうしたの、華?」
「何処かで見たことある光景だと思いますが・・・」
「それは真でありますか!?五十鈴殿!」
華の答えに優花里は食いついた。
「それはどういう・・・?」
次にみほが華に聞いた。
「フェアバーンさんと、ちょっとゾンビとあの酷い惨状とは違うんですが・・・何処かで見た気がするんです。あの高射砲塔も」
カールと高射砲塔に目を向けた華の答えに、みほ達は何かを思い出した。
「あれ、確か・・・これって・・・?」
「会長が、全照準手に進めてるゲームですよ。多分」
「あのゲームね・・・」
みほと優花里の言っていることに、沙織は直ぐに答えが浮かび上がった。
「あっ、そう言えば、麻子は何処に・・・?」
沙織は操縦席に麻子が居ないことに気付き、戦車から出て、彼女を探した。
車体の後ろを見ると、大洗町での名物であるあんこう踊りをする麻子の姿があった。
「麻子・・・何やってんの・・・!?」
「何をって・・・?あんこう踊りだ」
「もう・・・麻子ったら・・・誰かに見られたら恥ずかしいじゃないの!」
「大丈夫だ、誰も見てない」
この踊りは、地元出身の沙織達にとっては恥ずかしい踊りである。
以前に、この世界に来る前の学校が廃校の危機の際に、戦車道全国大会準決勝で、みほが士気を高める為にしたが、最近は恥ずかしいのか、あれ以降見せてはいない。
「気分がマシになった・・・沙織、お前もやるか?」
「いや・・・誰かに見られそうだし・・・」
沙織は直ぐに断り、麻子と共に全員の元へ戻る。
これから行こうと準備をしていると、五体のゾンビが襲撃してきたが、短機関銃の銃声が聞こえ、襲ってきたゾンビは全滅した。
銃声がした方向を見ると、硝煙の出るMP41の銃口を上に向け、馬に乗ったコルネリウスが居た。
「なんか・・・格好いい・・・」
「うんうん」
「逞しい御方・・・」
黒い毛の馬に乗ったコルネリウスを見て、みほ、沙織、華は格好いいと思った。
優花里と麻子も同じである。
「凄い・・・!」
「格好ぇ・・・!」
「済まない。遅くなってしまって・・・」
馬から下りたコルネリウスは、まずは一同に謝った。
彼等の人数を確認し、新たに三人が減ったことに気付く。
「ここまでの犠牲は三人か・・・二度も言うようだが、この世界出身の者以外の君達は現実では死なない」
「あぁ、俺達は迂闊には死ねないがな・・・」
カールは皮肉を混ぜ込んで口にする。
「それには本当に申し訳ないと思う。それと朗報だ。連合国と合流する事が出来た。サガルマータの遺物を回収次第、飛行機が向かえに来るらしい。放送が来るはずだ」
コルネリウスは答えると、空を見た。
一同がそうすれば、何処からともなく放送が聞こえてきた。
『君達は近くまで来ている。情報によれば、最後のかけらは高射砲塔にある。奇襲には骨が折れるだろうが、我々は君達に全幅の信頼を置いている。遺物を回収したら、直ぐに君達を迎えに行けるよう飛行機を送るつもりだ』
「手配して貰った。放送の主が言うとおり、連合国を始めとした国々は我々に期待しているようだ。この先からは私も同行する」
羽織っていた上着を脱ぎ捨てたコルネリウスは、一行について行くと言った。
次に彼は、みほ達に視線を向ける。
「お嬢さんフロイライン方。どうかね、ティーガーⅡは?」
「えっ、これは貴方が・・・?」
「そうだ。ターミナルに着くと予想し、何か余った戦車は無いか言って重戦車大隊の整備小隊に置いて貰った。整備兵の者達はさぞ不安がっていたが、エンジンが快適に動いているのを見ると、大丈夫だな」
今、自分達が乗車と決めている重戦車が、コルネリウスが用意してくれた物と分かり、みほ達は少なくとも、目の前にいる男は信用に値する人物だと思った。
「これが少なからずの私の罪滅ぼしだ。
コルネリウスの気前の良さに、カール達も信頼することにし、前に進む彼に続いた。
みほ達も戦車に乗り込み、徒歩組の支援に当たる。
「前進!」
戦車長のみほの指示通り、麻子は戦車を前に進めた。
一行の行く手を塞ぐかのように、ゾンビが地面や貨車、柵から姿を現したが、次々と頭部を撃たれて無力化されていく。
向かってきたゾンビを全て無力化すると、右手の土手に降りていく。
戦車壕である為、コルネリウスは迂回するよう戦車の近くにいたインニェヤルドに言う。
「戦車壕だ!その重戦車では填れば抜け出すのに時間が掛かる!迂回するように言ってくれ!」
「分かった!ニシズミ、この戦車では壕の中にはいると抜け出せなくなるそうだ。迂回しろ!」
キューボラを叩いてみほを呼び出し、言われたとおり、インニェヤルドは迂回するように告げた。
「分かりました!麻子さん、迂回してください!」
「分かった」
その場から迂回して、何処か別の場所でカールとコルネリウス達と合流する事にする。
ちなみに今ティーガーⅡに乗っているのはインニェヤルド、マルゴット、マリ、ルリだ。
車体を揺らしながら、何処か合流出来そうな場所を探す。
銃声が喧しいエンジン音に混ざって聞こえる中、察知系の魔法が使えるマルゴットは、カール達を見付けることに成功した。
「向こう側にいる!」
開けっ放しのキューボラの中身を覗きながら、マルゴットは自分が指差す方向に、カール達が居ると知らせる。
直ぐに、彼等が居る場所へと向かった。
壁を強引に破壊して入ると、そこはドイツ軍の基地であるらしく、石油備蓄大型タンクか天然ガス備蓄タンクが見えることから一大補給拠点と思われる。
ここも遺物がある高射砲塔の近くにあった為か、既に惨状に晒されていた。
丁度そこへ、カールとコルネリウス達がやって来る。
「喋っていると地味だが、やることは相変わらず大胆だな・・・」
壁を突き破って基地に入ってきたみほ達に、カールはそう口にする。
「どうも・・・」
少し謝ってから、みほは周囲を確認した。
「ここも攻撃されると分かって、防戦準備をしてたみたいですね」
優花里が指摘するように、近くには兵舎があり、弾薬などがあったが、組み立て式の机や椅子があって、生活感もあったが、無惨なドイツ兵の死体が幾つか転がっていた。
マリが進む先にトラック等の邪魔な物があると分かり、置かれていた加熱性の高い液体が入ったドラム缶を、自分の狙撃眼鏡付きkar98kで撃った。
案の定7.92㎜弾を受けたドラム缶は燃え始め、近くにあった爆発物に引火し、爆発する。
「爆発の威力が凄いな・・・これでは進めない」
思ったより爆発力が凄かったのか、進む先は炎上して進めない。
全員をティーガーⅡに乗せて移動する案もあったが、破壊されるより故障か燃料切れで放棄された車両の多い重戦車なので、炎上のど真ん中で止まったらたまらないので直ぐに止めた。
しかし、その案を実行しなくとも、暇潰しになるような事が起きた。
それはゾンビの襲撃である。
「丁度良い暇潰しになりそうだ」
行き先が霧で覆われたのを見たカールは、そう呟き、地面から這い出てきたゾンビの頭を自分の獲物で撃ち抜いた。
それを合図に、一同が向かってくるゾンビの排除を始める。
「来た方向からも来るわ!」
PPs43を撃っていたナターリヤが、自分達のやって来た方向からも、ゾンビがやって来た事を知らせる。
ある程度ゾンビを排除していると、フライデーモンが現れた。
「あいつだ!周囲の死に損ない共を強化される前に撃ち倒せ!」
ボニファーツは狙撃スコープ付きGew43を構えながら叫んだ。
「ここは私に任せろ!」
手の中に何かの溜め始めたコルネリウスが飛び出し、手の中に溜めてあった物をフライデーモンに向けて放った。
透明色の物体は命中、フライデーモンは地面に肘を付く。
「縛り系の魔法か?」
ペリスコープから見てた麻子は、膝をついて動けないでいるフライデーモンを見て呟いた。
機関銃を持っていた沙織はこれをチャンスだと思い、みほに戦車砲での攻撃を進めた。
「みぽりん!これってチャンスだよ!」
「あっ、本当だ。華さん、目標は1時方向!」
「はい、照準完了!」
「撃て!」
チャンスを逃さず、みほは華に命じ、それを受けた彼女は直ぐに照準を合わせ、戦車長からの合図で発射ペダルを踏んだ。
弾種は榴弾であり、発射された88㎜榴弾がフライデーモンに命中して爆発し、周囲にいたゾンビを巻き込む。
「まさか本当に超能力者だったとは・・!」
疑っていたハーマンは、コルネリウスが本当に超能力を使えたので、驚きを隠せなかった。
「これを使いこなすのに暫しの時間が必要だった。詳しいことは、この悪夢を終わらせてからしよう!」
聞いてきたハーマンにそう答えたコルネリウスはMP41を構え、近付いてくるゾンビの頭を撃ち始めた。
フライデーモンを排除すれば、次はガイコツと鎧ガイコツ、スナイパーゾンビが出て来た。
スナイパーゾンビは、周囲にある建物を飛び移りながら狙撃してくる。
ゾンビやガイコツ等は狙撃銃を持たない者達やみほ達に任せ、狙撃銃を持つ者達は、スナイパーゾンビの排除に当たる。
直ぐにスナイパーゾンビは、他の者達がゾンビやガイコツの対応をしている御陰で排除できた。
最後に焼け爛れたゾンビが出て来て、それらを排除すれば、進む先を覆っていた霧は晴れた。
「これだけデカイ戦車が進める場所があれば良いがな」
ゲールドは、この基地内でティーガーⅡの巨体が進めるかどうか心配になった。
全てのゾンビの掃討が完了した為、一行は先へと進んだ。
ガスを貯蔵する巨大なタンクが四基見え、他にも必要な物を貯蔵するタンクがある。
蛍光灯の数だけ死体があり、明らかに起きがありそうであった為、一行は自動拳銃などを抜いて頭部を撃った。
戦車が、今カール達の居る場所へと辿り着いた瞬間、タンクの前から魔法陣が浮かび上がり、そこからガイコツと鎧ガイコツが出て来た。
それと同時にタンクとタンクの通路から自爆ゾンビが何体も突っ込んでくる。
「これでも食らえ!」
向かってくる自爆ゾンビに向けて、浩二郎は九九式軽機関銃を撃つ。
玖美子も襲ってくるガイコツを仕留めつつ、GM M3A1で自爆ゾンビの排除に加わる。
ガイコツ等は殲滅し、少数のゾンビと自爆ゾンビが全滅すると、一行は先へと進んだ。
ティーガーⅡに乗るみほ達は、徒歩組が進む場所がどう足掻いても入れそうにも無いので、壁を崩してショートカットを図ることにした。
「大丈夫ですかね・・・」
無理矢理道を造りながら進むティーガーⅡの車内にて、砲弾を抱えながら優花里は不安な声を漏らした。
「まぁ、派手に撃たなきゃ大丈夫だろう・・・」
操縦桿を握る麻子が、優花里にそう告げた。
押し倒した壁の先にはマシンガンゾンビが立っていた。
そればかりか、丁度カール達も近い距離にいた為、複数のゾンビが地中から這い出てくる。
「え、Sマイン!」
慌ててみほは、近接防御兵器発射機にSマインを詰め込み、引き金を引いた。
発射されたSマインは、ティーガーⅡの上を一定の高さまで飛んだ後、中にあったボールが散らばった。
散らばったボールを受けたゾンビは地面に倒れていく。
流石にマシンガンゾンビは倒れず、ずっとMG42を撃ち続けてくる。
「まだ生きてるんだけど!?」
「対人地雷を耐えるなんて・・・!」
まだ生きているマシンガンゾンビを見て、沙織は声を上げ、優花里は驚きを隠せなかった。
砲身を向けようにも距離が近すぎるので撃てず、機関銃を撃ちまくってなんとか仕留める事に成功する。
「俺達が居なくとも出来るようになったな」
辿り着いたカールは、自分らの支援無しでもやれるようになったみほ達を見て、褒め言葉を漏らした。
「ど、どうも・・・」
みほはキューボラから上半身を出して、礼を言った。
「なにか、股間の辺りが蒸れてるような・・・?」
「私も・・・」
「うっ・・・」
車内にて華が股間の辺りが蒸れたのを感じ、それを口にすれば、沙織と麻子が同じ感覚を感じた。
「私もです・・・」
「あれ・・・?私も・・・なんか危険そうだから、気にしないでおこう」
優花里もみほも蒸れた感覚を感じたようだが、気にしないことにする。
取り敢えず、壁の上に戦車が乗るわけが無いので、迂回することにした。
カール達が向かったルートに行くと、自爆ゾンビが突っ込んできたが、二挺の機関銃の掃射で呆気なく倒れる。
壁の上から銃声は聞こえたりタンクの上で爆破音が聞こえたりしたが、カール達なら無事だろうと思い、地図を見ながら前に進んだ。
沙織が暇潰しに無線を弄っていると、カール達に向けた声が聞こえてきた。
『よう、下の諸君。まだ生きているとは驚きだよ。それとさっきの小さいお嬢さんの踊りは一体何処のアフリカ部族の踊りだ?全くたいした見せ物だよ!うまくやってくれよ!俺は着陸できるところを探している。止まるなよ。また連絡する』
「見られてた・・・」
言いたいことを言った後、上空を飛ぶ輸送機のパイロットは無線を切った。
どうやら麻子のあんこう踊りは見られていたようだ。
「踊りって・・・?」
華は聞いてきたが、麻子は目の前にある壁を突き破ると言って、誤魔化す。
「前に進むぞ・・・」
「やっぱり見られてたじゃなっ!?」
口にしようとした沙織が言い終えず、なんとか車内にいる者達には聞こえなかった。
壁を突き破った先には、野営地があり、ティーガーⅡでも走り回れそうな広さがあった。
何両かのトラックが止まり、仮設兵舎も見え、右手の隅っこにバンカーも見える。
それと何体かのゾンビも見え、右手の通路からカール達も出て来る。
出て来たゾンビは物の数秒で全て排除された。
「恐らく何か来るな・・・誰かバンカーに向かって機銃に付いてくれ。戦車は中央で迎撃態勢」
ゾンビが襲来してくることを予想したコルネリウスは、一同に迎撃態勢を取るよう命じた。
予想が当たったのか、自分達が出て来た先が霧で覆われ、進む先も霧で覆われ始める。
「敵が来る!」
リーエンフィールドNo4を構えていたルリが知らせると、一同は向かってくるゾンビに向けて撃ち始めた。
ティーガーⅡの88㎜大口径戦車砲の砲声が響き、数体のゾンビが纏めて吹き飛ばされる。
目の前にあったトラックの横に立て掛けてあったジェリカンに弾丸が命中し、トラック諸共爆発する。
バタバタとゾンビが薙ぎ倒される中、自爆ゾンビまで現れ、突っ込んで来るも、機関銃の弾幕に撃たれて爆発した。
一行がやって来た道からも、ゾンビがやって来る。
「反対側からも!」
マリの知らせで直ぐに手の空いている者達が迎撃に当たる。
多数のゾンビを撃ち倒していくと、次にガイコツとスナイパーゾンビが現れた。
ガイコツは鎧ガイコツと共に向かってくるが、スナイパーゾンビは見張り台という見張り台を飛び越して狙撃してくる。
「狙撃は私に任せろ!」
インニェヤルドはスコープ付きFG42を構えながら、スナイパーゾンビの排除に当たった。
ナターリヤも狙撃スコープ付きモシンナガンM1891/30で加勢に加わる。
次々とガイコツがバラバラになる中、襲ってきた二体のスナイパーゾンビは頭部を撃たれて全滅した。
動いている敵が全滅すると、全ての道を覆っていた霧は晴れ、進む先には自動車整備場とパンターG型の残骸、まだ動けそうなヘッツァーが見える。
先に先行したのはマリとルリだった。
「迂闊に前に出るなよ!」
カールはそう釘を刺したが、マリとルリは聞かず、セーフハウスのマークがある施設まで向かう。
「ここのようね・・・」
「うん、何か妙な感じがするけど・・・」
「妙って、いつものことでしょう」
「それもそうだね」
直ぐに辿り着いた二人は、ドアを開けようとした。
「「えっ?」」
二人の声がハモった瞬間、壁が突然爆発し、マリとルリは吹き飛ばされた。
『HAHAHAHAHA!』
何処から戸もなく聞こえてくる声と共に、二人が入ろうとした施設から霧が立ち籠め、そこからマシンガンゾンビ十二体と大多数のゾンビが出て来る。
「総員遮蔽物か戦車の後ろに隠れろ!!」
「デカ物が十二体だと!?クソっ!」
連続するMG42の銃声を聞いたコルネリウスは直ぐに、全員に隠れるよう指示を飛ばした。
カールは遮蔽物に隠れ、一行の後ろから襲ってくるゾンビを左手で抜いたコルトM1911A1で、頭を撃ち抜く。
「痛ぁ・・・なによ・・・もう・・・」
吹き飛ばされたマリは、起き上がってルリを起こそうとしたが、六体分の銃撃を受けてルリ共々蜂の巣になって死ぬ。
「あっ・・・助けられなかった・・・」
その光景をキューボラから見ていたみほは、またも脱落者が出た事を悲痛に思う。
「あんなにデカ物が居るなんて、無理じゃないの!?」
奈子は文句を言いながらM1928A1を撃ち続けるが、文句を言ったところで変わる訳ではない。
これ以上犠牲者を出さないために、みほは兎に角マシンガンゾンビを優先的に排除することにした。
「まずは大きいのから片付けます!まずは近い方から!」
「はい、照準次第撃ちます!」
直ぐさま華は一番近い距離に居るマシンガンゾンビを照準し、発射ペダルを踏んだ。
発射された榴弾はマシンガンゾンビに命中、距離が近かった為、マシンガンゾンビの上半身は粉々に吹き飛ぶ。
「次!」
「装填完了!」
「照準完了!」
「撃て!」
次のマシンガンゾンビに目を付けたみほは、優花里と華の知らせに耳を傾け、指示を飛ばす。
「もぉ、ヤダモー!このメタボ!」
沙織は前部機銃のMG34をマシンガンゾンビの頭部に向けて連射しながら叫んだ。
「俺達もやるぞ!」
「頭部を集中砲火だ!パンツァーファウストも使え!」
ボリスの声に、ボニファーツも対戦車擲弾を付けたワルサーカンプピストルを持ちながら全員に向けて爆発物を使うよう指示した。
「これで満腹の筈だ!」
コルネリウスも左手に溜めた気弾をマシンガンゾンビに向けて放ち、苦しませる。
火力の増した一行の前に、マシンガンゾンビは、他のゾンビと共に倒されていき、やがては全滅した。
全滅を確認した一行は、マリとルリから装備を回収した後、頭に布を被せるなりして弔い、セーフハウスへ向かった。
流石に戦車は入れないので、迂回することにしたが、カール達の方ではちょっとした事が起きた。
キースが施設の中で、銃器を持った四体の死体が倒れているのを見付け、死体から武器を取ろうとした瞬間、後ろからマシンガンゾンビが現れ、彼を殴り付けた。
なんとかキースは助かったが、殴ったマシンガンゾンビは姿を暗まし、倒せずじまいだ。
治療をするために、セーフハウスへと入り、死体には手榴弾を投げ込み、排除しておく。
今度はチャンネルを合わせずとも、輸送機のパイロットからの無線機から聞こえてきた。
『聞こえるか?その先には注意だ。高射砲塔の近くで何かが起きている。嫌な予感はするが、そこを通らないと、高射砲塔には向かえないのは確かだ。出来る限りのことはしよう。諸君達に何が何でもやって貰わねば、人類の存続が出来ないかもしれん。足を止めるなよ!俺は着陸できる場所を探す!』
言いたいことを言い終えると、パイロットは無線を切る。
みほは、キューボラから、煙突の上で何かを召還しようとする召還者を見付けたが、攻撃はしなかった。
山を登ることで、上へと向かおうとするみほ達だが、階段近くで弾薬補充を終えたカール達がゾンビと死闘を演じているのが見えた。
「ちょっと不味そう・・・華さん、フェアバーンさん達に援護を」
「はい!」
彼女が身を案じる彼等と戦うゾンビの数は、異常なほど多かった。
下からも三十体ほどのゾンビがカール達の退路を塞ぐように向かってくる。
おまけに自爆ゾンビまで現れ、彼等に更なる絶望感を与える。
直ぐにみほは砲身を彼等の居る場所へ向けるよう指示し、誤射しないように撃つよう華に命じた。
「あっ・・・また・・・」
この死闘で、脱落者が出てしまった。
それは先程負傷した殴られたキースであり、多数のゾンビに袋叩きにされたのだ。
みほ達の援護があって、なんとか突破できたカール達であったが、無傷では済まなかった。
キースの亡骸に布を被せて塹壕まで進む。
ティーガーⅡに乗るみほ達も塹壕まで進み、有刺鉄線を潰しながら目標へと進む。
塹壕には何体かのゾンビが潜んでいたが、カール達の敵ではなく、一瞬で片付けられてしまう。
塹壕で出た先は、二つのバンカーが離れた距離にある広い場所だった。
中央には、破壊されて燃え続けるIS-2スターリンがある。
丁度真ん中の二つの木から、何か電流が流れている事に気付く。
「パイロット情報によれば、ここで何かが起こるらしいな」
流れる電流を見ながら、カールはそう告げた。
「どうもそのようだ。直ぐに迎撃態勢を取ろう。それぞれのバンカーに人員を配置だ。戦車は中央」
それに答えたコルネリウスは、全員に迎撃態勢を取るよう指示する。
右のバンカーにはインニェヤルド、クレマン、浩二郎、奈子の四人。
左のバンカーにはカール、ゲールド、ボリス、ハーマンの四名。
みほ等の戦車にはコルネリウス、ボニファーツ、ナターリヤ、玖美子、マルゴット、リンダの四名だ。
唸り声が聞こえると、目の前に広がる光景が霧で覆われ、霧の中から大多数のガイコツと鎧ガイコツが出て来る。
「迎撃しろ!」
コルネリウスが叫ぶと、二つのバンカーから機関銃や各々が持つ銃の銃声が聞こえた。
「うわぁ・・・ガイコツがあんなに・・・」
「何処かで見たことあるような光景じゃないの・・・」
ペリスコープから向かってくる大多数のガイコツを見て、麻子と沙織が口にする。
戦車の近くにいるコルネリウス等も、銃をガイコツの集団に向けて撃ち始める。
「外を見てみましたが、ノルマンディーみたいですね」
「うん」
優花里は砲弾を抱えながら言えば、みほはそれに答える。
「あれはFw190フォッケウルフ!」
上空からドイツ空軍の戦闘機Fw190フォッケウルフが現れ、一向に向かって突っ込んでくるガイコツに機銃掃射を仕掛けた。
航空支援やバンカーからの機銃掃射、戦車砲による砲撃でガイコツは次々とバラバラになっていき、向かってきたガイコツはやがて全滅した。
だが、霧はまだ晴れない。
「まだ続くな・・・!」
「邪悪な魔力を感じる・・・」
「私もよ・・・」
晴れない霧を見て、コルネリウスが言えば、マルゴットとリンダが口にする。
それぞれが第二波に備えて弾薬補充を終えると、彼等が構えたとおり第二波は来た。
数は第一派よりもさらに多く、とても裁ききれるような数ではない。
「何て数だ!これでは倒しきれない!」
MG42を撃ちながら、インニェヤルドが目の前を埋め尽くすようなガイコツの集団を見て叫んだ。
クレマンや浩二郎、奈子も加わるが、全くガイコツの数が減らない。
「ビュルルンドさん達が!」
右のバンカーにガイコツが殺到し、今にも落ちようとしていたが、こちらも手一杯なので助けに行けない。
「うわぁ、入ってくる!」
「クソッ!ここまでだってのかい!」
「まだ死にたくねぇよ!」
警報装置をガイコツが踏み、もうすぐバンカーに入ってくるのを知り、出入り口に銃を向けるクレマン、浩二郎、奈子。
入ってくるガイコツを何体も仕留めていくが、きりがなく、やがてバンカーに入られる。
「あぁ、もう・・・」
右のバンカーからみほは機関銃の発砲音が聞こえなくなり、次々と倒れていくクレマン、浩二郎、奈子の影を見て、直ぐに助けられない自分に対して悔しい気持ちになる。
何かを右手に持った血塗れのインニェヤルドの姿が銃眼から見え、まだ助けられると思って砲身を向けよう指示しようとしたが、突然キューボラを叩く音がする。
「止めろ・・・彼女等はもう助からない・・・!」
みほがキューボラから頭を出すと、ボニファーツが自分のやろうとした事を言う。
「でも・・・!」
口答えするみほであるが、突然バンカーが爆発した。
「自爆したか・・・彼女等の分も我々がやり遂げねばならない・・・!バンカーに砲身を向けろ!」
ボニファーツはそうみほに告げた後、右手のバンカーから来るガイコツの迎撃に当たった。
「砲身を右のバンカーに向けてください」
「落ちたのですか?西住殿」
「どうやらそのようみたいですね・・・」
言われたとおり、みほは砲身を右のバンカーに向けるよう指示した。
砲弾を抱えていた優花里がみほに対して聞けば、華は察して砲身を右のバンカーに向ける。
砲身がバンカーに向けられると、彼女は直ぐに砲撃を命じる。
「撃て!」
その指示と共に、砲口から榴弾が発射され、バンカーに居たガイコツは全滅した。
残るガイコツも肝心なときにやって来なかったフォッケウルフの機銃掃射や一行の攻撃を受け、次々と倒されていき、やがて動くガイコツは一体も居なくなった。
「また脱落者が・・・幾ら現実世界では死なぬとはいえ、心が痛む・・・!」
MP41をスリリングでぶら下げ、ルガーP08を握っていたコルネリウスは、先程インニェヤルド達が居た燃え盛るバンカーを見ながら苦言を漏らす。
犠牲を出しながらも、一行は次の場所へと進むしか無かった。
「っ!?止まれ!自爆ゾンビと召還野郎だ!」
カールは石の上に立つ召還者と、召還されて直ぐに爆発する自爆ゾンビを見て、全員に知らせる。
召還される度に近付いてくる爆発攻撃だが、上空からやって来たアメリカ陸軍の攻撃機であるP-47サンダーボルトのロケット攻撃を受けて、召還者諸共排除された。
「P-47サンダーボルトか・・・敵にしたら脅威だが、味方なら案外頼もしいな」
過ぎ去っていくサンダーボルトを見て、ボニファーツはそう呟いた。
道行きに進んでいくと、ティーガーの残骸の周囲に倒れ込んでいた死体が起き上がり、一行を見るなり襲ってきたが、一瞬で全滅させられる。
「なんだ・・・?」
ティーガーの右側の履帯に何かが下敷きになって、蠢いているのが見えた。
それを確認するべく近くに寄ってみると、マシンガンゾンビが残骸の下敷きになっており、抜け出そうと藻掻いていた。
「こいつに何人殺されたことか・・・」
ハーマンはルガーP08を取り出し、マシンガンゾンビの頭を撃ち始める。
ゲールドもWSリボルバーで頭を撃ち始めた。
何発か撃っていると、マシンガンゾンビの頭は粉々になり、動かなくなった。
徒歩組がセーフハウスになっているバンカーにはいると、みほ達は近くで戦車を止め、少し休憩を取ることにする。
「あっ、誰だろう・・・?」
無線機から連絡が入ってきた為、沙織は無線を全員に聞こえるよう音量を上げた。
『聞こえるか?着陸できる場所を見付けたが、ゾンビが這い回ってる!しかもここら一体は、米軍とソ連軍の爆撃機の大編隊がやって来て、この辺りは大空襲が行われて更地にされる・・・!まだ旋回を続けるが、いずれ私も脱出しなくてはならない。諸君には申し訳ないが、奇跡でも起こさない限り君達には独力でやってもらうしかない!』
言いたいことを言い終えると、パイロットは無線を切る。
上空からは輸送機のエンジン音が聞こえ、一行の上を通り過ぎた。
セーフハウスから出て来たコルネリウスは、車体に上がり、みほ達に告げる。
「どうやら我々の双肩に人類の希望が託されているようだ・・・異世界の君達には済まないが、最後まで付き合ってくれ・・・」
「分かりました・・・」
「本当に済まないと思っている・・・」
みほが返答すると、コルネリウスは新たに手に入れたStg44を持ちながら、目の前に見える高射砲塔の入り口まで向かった。
途中で見える対空戦車のメーベルワーゲンやヴァルヴェルヴェントの残骸を見ながら進むと、高射砲塔の入り口まで辿り着くことが出来た。
「遂に辿り着いたか・・・」
「まるでRPGのラスボスの城だな」
「悪趣味な飾りだ・・・」
高射砲塔の入り口を見てカールと麻子が呟けば、ボニファーツが棒の数だけある串刺しにされた頭と、柱に釘付けにされた死体を見て口にする。
高射砲塔の周囲を見てみると、損壊の酷い死体が散乱しており、小さな血の湖ができあがっている。
「禍々しい感じがしてくる・・・前よりも酷い・・・」
「なんか気分が悪くなるわ・・・」
高射砲塔から感じられる邪悪な魔力を感じて、マルゴットとリンダはそう呟いた。
「このような惨事は終わらせなければ・・・!」
ボニファーツがまず始めに前に出て、階段を上がって入り口を目指した。
優花里は装填手用のハッチから上半身を出し、後ろにある門を見た。
「入り口があったんだな・・・」
門を見ながら呟く優花里であったが、玖美子に文句を言われる。
「戦車が無かったら私達は死んでるじゃないの」
「あっ、ごもっともです」
玖美子の言葉に優花里は頭を掻きながら応えた。
ボニファーツが扉を開けようとした瞬間、危険を感じたコルネリウスが止めようとしたが、間に合わなかった。
「ドアから離れるんだ!!」
「何を言って・・・?」
コルネリウスの声に振り向いた途端、突然扉が開き、ボニファーツは吹き飛ばされた。
彼が地面に倒れると、マルゴットは直ぐに彼の容態を確かようとしたが、ボニファーツは後頭部を強く打ち付け、もう既に亡くなっていた。
「し、死んでる・・・」
開いた扉から大多数のゾンビが出て来る。
「ゾンビだ!誰か機銃に付け!」
直ぐにカールは全員に迎撃態勢を取るよう指示する。
周囲にある機関銃はゲールドとボリス、ハーマンが付き、入り口から出て来るゾンビに銃撃を加える。
呆然としていたみほ達にも、砲塔を叩く音が聞こえてくる。
「戦車砲で吹き飛ばせ!高射砲塔は爆撃に耐えれるように造られている!」
コルネリウスから指示に、みほは直ぐに華に指示を飛ばした。
「華さん、目標は入り口!」
「はい!」
その指示に華は砲を高射砲塔の入り口に向けた。
機関銃を撃ちまくる沙織は、きりがないほど出て来るゾンビを見て、あれこれ言う。
「もう、何かの歓迎会みたいじゃないの!それに肩痛い!」
沙織が文句を言いながら前部機銃を撃ちながら言うと、戦車砲の砲声が響き、中から出て来るゾンビは吹き飛ばされる。
マシンガンゾンビや自爆ゾンビも出て来たが、集中砲火であえなく倒れ、自爆ゾンビは周りのゾンビを巻き込んで爆発する。
百体以上倒すと、最後のマシンガンゾンビが出て来た。
「照準完了!」
「装填完了!」
「撃て!」
華や優花里の知らせに、みほは砲撃を命じ、マシンガンゾンビを徹甲弾で挽肉に変えて倒した。
入り口から出て来たゾンビは全滅したが、またも犠牲者が出た。
ボニファーツの亡骸に布を被せると、一行は高射砲塔へと入ろうとした。
「私達も出るか・・・?」
「はい。だって、この世界を救わないと!」
麻子から問いに、みほはそう答え、MP40を持ってキューボラから出た。
「西住殿!私も続きます!」
「私も向かいます!」
「わ、私だって!」
「フッ、やれやれだぜ・・・」
優花里達も、みほの後へと続いた。
一行が高射砲塔の内部に入ると、禍々しい雰囲気が肌にも伝わって感じてきた。
「これは・・・早く決着を付けなくてはならないようだ・・・!」
コルネリウスは銃を構えながらそう呟き、前へと進む。
死体がつり下げられているバルコニーに出ると、魔法陣の上で倒れている死体から、頭蓋骨が現れ、上へと上がっていき、それが終わればゾンビが一向に向かって襲って来る。
「やはり待ち受けていたか!」
カールはM1A1トンプソンを握りながら上階から降りてくるゾンビの頭を正確に撃ち始めた。
一階からもゾロゾロと出て来るが、銃弾の雨を受けて次々と倒れていき、やがては全滅した。
そのまま上を目指すように進んでいけば、惨状も酷くなっていく。
「同志の死体が多いな・・・」
ナターリヤがソ連兵の死体が多いことを見て、口にする。
襲ってくるゾンビの数は少数であり、容易に撃退できた。
司令室に来ると、そこにもゾンビは潜んでいたが、あっさりと見破られ、手榴弾で纏めて排除される。
そんなことで、限界階まで上がると、一行は少し休憩を入れることにする。
「もうここまで来たか・・・
カールは壁に腰掛け、水筒の水を飲んだ後、全員に告げた。
休憩を終えた一行は目の前の扉を開け、外に出た。
「ようやくここまで来たか・・・」
「だが、油断は出来ない」
ボリスは下を見ながら言えば、ハーマンがMP40を構えながら言う。
目の前に弾薬箱があった為、一応弾薬補充をしておくと、一向に耳に声が聞こえてきた。
「だ、誰か・・・!た、助けてくれ!」
「声が?」
ナターリヤは聞こえてくる男の声の方向に向かい、みほ達やマルゴットもそれに続いた。
階段を上がってみると、召還者から苦しめられている軍服を着て、左腕にハーケンクロイツの腕章を付けた男の姿があった。
「何かの儀式か・・・?」
「何してるんだろう・・・?」
同じく見ていた麻子と沙織は四つの大きな柱に立つ召還者を見て、そう思った。
「は、早く!助けてくれぇ!」
苦しめられている男は助けを求め、ナターリヤはそれに応えるよう召還者を次々と撃ち殺した。
男は解放されたが、マルゴットは邪悪な魔力を感じ取る。
「いけない!これは・・・!?」
『ハッハッハッ!貴様等も仲間になれ!』
突如四問の128㎜高射砲が火を吹き始め、上空に対空砲火の爆発が起こり、空を飛んでいた航空機は高射砲塔から離れ始める。
男は霊体化し、周囲に頭蓋骨を旋回させ、自分の足下にゾンビを召還した。
男の正体はオカルト将軍であったのだ。
「またあいつか・・・!」
騒ぎを聞きつけてやって来たカールは、最後の敵がオカルト将軍であった事を見て、口にする。
「前より弱っていそうだが、油断はするなよ!」
続けてカールは全員にそう告げると、真っ先に頭蓋骨を撃ち始めた。
たった三つしか無かった為、あえなくオカルト将軍は実体化し、力をため込んでいる間に何発も頭を撃たれて力尽き、召還されたゾンビは全て死に、やったかと思った。
「やりましたかね・・・?」
『ハッハッハッ!終わったと思ったか!?』
M1カービンを構えていた優花里がそう言えば、オカルト将軍はまた復活し、今度は自爆ゾンビとガイコツを召還し始めた。
「こいつ!召還するゾンビやガイコツの数が多くなってる!」
「でも、弱体化はしてると思うわ!」
ナターリヤが頭蓋骨を撃ちながら言えば、ゾンビやガイコツをM1ガーランドで撃っているリンダが答えた。
数が多すぎたが、無理をすればなんとか排除できるレベルだった。
頭蓋骨が全て撃ち落とされ、再びオカルト将軍は実体化し、また力を溜め始めた。
「頭を一斉射撃だ!撃ちまくれ!」
コルネリウスの指示に、一同は一斉にオカルト将軍の頭部を撃ち始めた。
物の数秒でオカルト将軍は再び苦しみだし、大多数の頭蓋骨を旋回させ、霊体となってマシンガンゾンビやフライデーモンを、大多数のゾンビと共に召還する。
「また厄介な奴らを・・・!」
玖美子は召還された厄介な敵を見て、自身の短機関銃で、手短にいるゾンビの頭を吹き飛ばしていく。
フライデーモンは召還されるなり、直ぐに炎を拡散させ、周りにいたゾンビを強化した。
「あっ、しまっ!?」
向かってくる炎上ゾンビを倒しきれず、玖美子は袋叩きにされて死んだ。
「ちょ、多すぎ!」
リンダも炎上ゾンビに袋叩きにされ、死んでしまった。
今度はナターリヤにも死神が襲い掛かる。
「うっ!?」
マシンガンゾンビの銃弾を腹に受けたナターリヤは銃を手放してしまい、それを拾おうとするが、容赦なく来る銃弾の雨の前に倒れてしまう。
「ぐぁ!あがぁ・・・!」
無数の銃弾を受け、ナターリヤは血を吐いて倒れた。
一方のみほ達は、自分達に向かってくる敵と頭蓋骨を撃つのに手一杯なので、彼女等の死に気付かなかった。
「あっ、助け・・・」
マルゴットも気付かれず、多数の炎上ゾンビに囲まれ、袋叩きにされる。
「これでも食らいなさい!」
沙織はパンツァーファウストを向かってくるゾンビの集団に向けて放ち、纏めて一掃することに成功して喜ぶ。
「やった・・・!」
だが、幼馴染みである麻子は、沙織よりも凄いのかどうか分からない事をした。
「く、来るなぁ!」
強力な二連装散弾銃をフライデーモンに向けて放ち、見事倒したのだが、反動で吹き飛び、偶然後ろにいたゾンビを地面に叩き付けた。
「ダブルキルか・・・?」
落下防止のコンクリートの柵に乗りながら、麻子はそう思った。
華は一人でMG42を抱え、向かってくる炎上ゾンビを次々と薙ぎ倒していく。
「じゅ、銃身が暴れる・・・!」
銃身が焼けて撃てなくなる頃には、炎上ゾンビは堅い床に全て倒れていた。
「快感・・・?」
全て倒れたゾンビを見て、華はそう口にする。
みほと優花里はゾロターンS-18/1100で、マシンガンゾンビを撃っていた。
「西住殿!撃ってください!」
「わ、分かりました!」
優花里が二脚を持ち、みほが引き金を握り、自分達に機関銃を撃ってくる巨体ゾンビの頭を撃つ。
機関砲クラスの弾丸である20㎜を受けたマシンガンゾンビの頭は粉々に吹き飛んだ。
そんな仲間達の死に気付かぬみほ達の活躍があり、オカルト将軍の全ての頭蓋骨が撃ち落とされた。
「あと一息だ!頭を撃ち抜け!!」
周りのゾンビを超能力で吹き飛ばしたコルネリウスが、実体化したオカルト将軍を指差し、死んでいる砲兵の隣に落ちていたkar98kを撃ち始める。
「お前のために用意したような
ボリスが何処からか手に入れたのか、シモノフPTRS1941を構え、撃ち始めた。
最後と言わんばかり、ハーマンもパンツァーシュレックを構え、ゲールドもボーイズ対戦車ライフルを構える。
カールは再装填を終えたスプリングフィールドM1903A4で仕留める事にする。
強力な攻撃を頭部に食らい、最後はカールの放ったライフル弾を受け、オカルト将軍は地面に吸収されるよう落ちていく。
『ウワァァァ・・・!』
苦しみながら、オカルト将軍は堅い床の中へと消えた。
砲声が鳴り止むと、召還された全てのゾンビがバタバタと倒れていき、辺りが死体でいっぱいになる。
その中に、戦闘の間に死んだ仲間達を、みほ達は見付けた。
「いつの間に・・・」
倒れているナターリヤ、玖美子、リンダ、マルゴットの亡骸を見て、みほは膝を床に付けるが、人数分の布を持ってきたコルネリウスが、近くに寄りそう。
「済まないが時間がない。我々には、布を被せてやるくらいのことしかできない」
そうみほに告げ、彼は亡くなった4人に布を被せた。
オカルト将軍が居た場所から、サガルマータの最後の遺物が乗せられた祭壇が出現する。
「そろそろ彼等を元の世界に帰さねば・・・!」
「あぁ、そうするか・・・」
コルネリウスは祭壇の上に立ち、カールが渡した二つ付いているサガルマータの遺物を最後の遺物に近付けた。
吸い寄せられるように、遺物はくっつき、彼等の頭上に光の球体が現れた。
「な、何が起こってるのでしょうか・・・!?」
「分からないよ・・・!」
頭上の球体を見て、優花里が口にした後、沙織は分からないと答える。
その光の球体に、小さな光が集まっていく。
「見てください!あれ!」
華は地上で起きている事を見て、一同に知らせた。
「ゾンビが次々と倒れていく・・・!」
驚いた麻子が口にした事は、それは魂魄なような物を引き抜かれて、元の死体に戻っていくゾンビの姿であった。
魂魄は自分達の頭上にある球体に吸収される。
「やっと終わったんだね・・・」
「えぇ」
「長いように思えた・・・」
「はい・・・」
「凄い冒険しちゃったね・・・」
次々と吸収されるゾンビの魂魄を見て、みほは安心しきった。
『おい!見取れている場合か!もうすぐ連合軍の爆撃機の大軍が来るぞ!!』
「そうだった!急ぐぞ!!」
「着陸現場は多分あそこだ!急げ!」
カールがパイロットからの声に気付いた後、コルネリウスが飛行機が着陸できる場所を指差し、一行はそこへ向かった。
「ダンテユーですね!」
優花里はエンジン音を鳴らしている輸送機を、ユンカースJu52と分かり、それを口にする。
「本当にそうだな・・・鹵獲か?」
「馬鹿言ってないで、早く乗れ!」
コルネリウスは優花里が当てた事に輸送機を見て、口にしたが、パイロットに催促されて急いで輸送機に乗り込む。
全員を乗せた輸送機は飛び上がり、徐々に高度を上げていく。
みほが窓から外を見てみると、遠くの方にアメリカ軍の大編隊を見付けた。
随伴機のP-51マスタングを引き連れた鳥の群れのようなB-17が見えた。
反対側の方は、Yak9等の随伴機を引き連れるペトリャコフPe-8等の大型爆撃機の大軍が見える。
窓から爆弾の雨で破壊され尽くすドイツの地を見ていると、みほはとても言い切れない気持ちになった。
「これでこの世界のドイツは・・・」
沙織達の方を見てみると、もうみんな安心しきって寝ているのが見えた。
どうやら連戦の末に疲れて寝たようだ。
コルネリウスが彼女等に布を被せながら、みほに告げる。
「さぁ、君も眠れば元の世界に帰れる。ここまで付き合ってくれてありがとう・・・」
みほはそれに甘え、沙織達が眠る所へ行き、壁に凭れ掛かる。
睡魔に襲われるかのように、みほは眠りの中へと入り込んだ。
その時、最後に彼女の光景に見えてみた物は、カールの手の中にある完成したサガルマータの遺物が光を失う瞬間だった。
彼女が眠りについた途端、空を覆っていた不気味な雲は晴れ、青い空が顔を出す。
それと同時に不気味な笑い声が聞こえたが、太陽が爆弾で破壊され尽くす大地を照らす頃には、聞こえなくなった。
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日本兵「オラぁ、ドイツがこんなじゃ、行きたくねぇだ」