ベルリンへと再び戻った一行であったが、みほ達にはまたマリとルリが随伴していたが、今度はマルゴットも車体の上に乗っている。
夜は過ぎ去り、朝になっている時間帯だが、青い空は不気味な雲で覆われている。
そんなベルリン市内の進む邪魔となる瓦礫を粉砕しながらみほ達のシュルツェン付きのⅣ号戦車J型は進む。
「ゾンビの数が少ない・・・?」
車体の上で揺られているマリが、市内を歩くゾンビの数が少ないことに気付いた。
だが、歩いているゾンビが少ないからと言って、油断は出来ない。
警戒しながら、地下から向かったカール達への合流を急ぐ。
進む先で丁度戦車辺りが建物の壁を突き破って進んだ後があった為、躊躇せずその開いた穴から進むことにした。
「あっ、麻子さん。あそこから行きましょう」
「分かった」
みほの指示で、麻子はその開いた大きな穴を通ろうとする。
直ぐみほは車外に居る3人にキューボラを開けて知らせた。
「体勢を下げてください!あの道から通ります!」
3人はみほの言うとおりに体勢を下げた。
彼女等の乗る中戦車が先遣者の開いた道を通れば、丁度カール達との合流地点に着いた。
先遣者のソ連のT-34/85中戦車だ。
砲塔のキューボラからは頭を引き千切られた死体が見えている。
どうやらゾンビに乗り掛けられて、首を持って行かれたようだ。
そんな死体を見続けていると、地下鉄の出入り口からカール達が出て来た。
「よし、先に進む・・・」
ショウグンが先へと向かおうと指示を出した瞬間、行き先が濃い霧で覆われ、ゾンビの唸り声が聞こえてくる。
「っ!?迎撃態勢!」
『はい(分かった)!』
霧の中からゾンビが出て来たのをキューボラから確認したみほは、全員に迎撃態勢を取るよう指示した。
操縦手の麻子が、迎撃位置に戦車を止め、沙織が搭載機関銃MG34の安全装置を外して構え、華が照準器を覗き、優花里が次弾である榴弾を抱える。
十分に集まって、榴弾が効果を増す瞬間をみほは待った。
数秒後、ゾンビは榴弾の効果が絶大的の位置に集まり始めた。
この瞬間を逃すわけにはいかず、彼女は即刻砲撃を命じる。
「今です!」
「はい!」
みほの指示で華は榴弾をゾンビに向けて撃った。
砲声が響いた後、ゾンビの集団は纏めて吹き飛んだ。
それと同時に徒歩組による一斉射撃が行われる。
目掛けて飛んでくる銃弾にゾンビが地面に次々と倒れていく。
「これなら楽に倒せる・・・」
カミーユがいつの間にか取り替えたイギリスの軽機関銃ブレン・ガンをMKⅣを撃ちながら言うと、ガイコツが現れた。
そればかりか地下鉄の出入り口から自爆ゾンビが二体も出て来る。
後ろから凄い速さで迫る自爆ゾンビに対し、ボニファーツがStg44突撃銃で手早く対処する。
二体は排除できたが、また二体の自爆ゾンビが地下鉄から出て来た。
「クソッ、雄叫び野郎目!」
ボニファーツが叫びながら向かってくる自爆ゾンビに向けて自分で付けたあだ名を放った。
一通りゾンビを片付け、導かれるかのように自動車のエンジン音が聞こえる裏通りにクレマン、浩二郎、玖美子、陽炎、奈子、イサイ達が向うと、裏通りが突然光り出し、彼等が逃げるように帰ってきた。
「どうした急に?」
「マシンガンを持った奴が出て来た!」
浩二郎が伝えれば、正面からもマシンガンゾンビが複数の自爆ゾンビとガイコツと共に現れる。
「みぽりん!ガイコツと一緒にでっかいのが出て来たんだけど!?」
「照準を機関銃を持っている大きいのに向けてください!」
「はい!」
沙織からの報告に、みほは直ぐに指示を飛ばした。
砲身をマシンガンゾンビに向けるが、手動旋回である為に旋回速度が落ち、イマイチ扱い辛い。
「旋回が遅い・・・!」
「J型は砲塔旋回用の補助エンジンが廃止されてますから!」
砲弾を抱えながら、優花里が苦言を漏らす華に向けて言った。
それに対し、麻子が戦車ごと動かすかをみほに問う。
「車体を標的に向けるか?」
「いえ、砲塔の旋回だけで十分です」
それに答えたみほは、華から照準を合わせたという報告を耳にした。
「捉えました!いつでも撃てます!」
「はい、華さんは目標を撃ってください!沙織さんは全部機銃で撃ち続けてください!」
「分かった!」
同時に前部機関銃を握る沙織と照準手の華に指示する。
指示通り、二人はそれぞれの目標であるマシンガンゾンビを撃った。
砲身を向けられたマシンガンゾンビは榴弾を喰らって、唸り声を上げながら苦しみ出す。
機関銃を向けられたマシンガンゾンビは何度も頭に7.92㎜弾を受けて頭が吹き飛んだ。
榴弾を受けたマシンガンゾンビはトドメに砲塔機銃で頭を吹き飛ばされる。
残りはカール達が迅速に排除してくれた。
最後の一体が頭を吹き飛ばされて地面に倒れ込むと、カールが何名かを連れて先程マシンガンゾンビが出て来た裏通りへ向かい、マリ、ルリ、玖美子、マルゴットがみほ達についてくる。
「前が塞がれているぞ」
「このまま進んでください」
みほ達は、そのまま前方に進み、道を塞ぐSU-85駆逐戦車の残骸を踏み潰しながら左手に進んだ。
「広いな・・・」
「えぇ、少し中央のモニュメントが邪魔なようですが・・・」
広場に広がる光景を見ながら麻子が言えば、車外から頭も出して見渡す優花里が、中央の塔の天辺にある卍マークのモニュメントが邪魔に見えた。
華も沙織も車外に頭を出して、周囲を見渡す。
「結構広いね・・・」
「静かすぎて不気味です・・・」
外に広がる光景を見て言う沙織達の言葉に、みほは少し不安になった。
双眼鏡を手に取って辺りを見渡す。
この広場は図書館前の広場であり、砲撃か空襲で所々破壊された建物が周囲を囲むように並び、中央の北と南にはバンカーがあり、中央には卍マークのモニュメントがある。
「なにも起きないと良いんだけど・・・」
みほがそれを口にした瞬間、銃声が耳に入ってきた。
どうやら近くでカール達が戦闘を行っているらしい。
直ぐに一緒についてきた者達と共に加勢に向かう。
四階から複数のゾンビがカール達の元へ向かってきた為、みほはそこへ向けて砲撃を命じた。
「四階の廊下に向けて砲撃を!」
砲身が四階に向けられ、数秒後には砲声が響き、ゾンビが居た四階の廊下が吹き飛んだ。
ゾンビを全滅させたカール達が外へと出て来る。
その瞬間である。
図書館が見えないくらいに霧が立ち籠め、そこから多数のガイコツとゾンビが出て来た。
「次から次へと!」
カールは狙撃スコープ付きスプリングフィールドM1903A4でガイコツを撃ちながら悪態を付いた。
向かってきたゾンビとガイコツを全滅させれば霧晴れ、図書館の方へと向かうと、ゾンビと自爆ゾンビがセットで現れた。
「爆弾ゾンビ!」
「被害が出る前に倒してください!」
みほ達は搭載機銃で優先的に自爆ゾンビを片付け始めた。
周囲のゾンビを巻き沿いにしながら爆発しつつ、図書館の玄関まで辿り着いたカール達の攻撃でも倒され、なんとか他のゾンビと共に撃退できた。
図書館へ入ろうとすると、教会で戦ったオカルト将軍の声が聞こえてきた。
『HAHAHA!』
不気味な笑い声を上げた後、謎の声は「そのドアは魂を集めなければ解けない!この辺にある魂を探すんだな!」と言い、笑い声を上げながら消えた。
「またあいつか・・・」
ボルトを引いて空薬莢を排出し、次弾を装填しながらカールは呟いた。
「向こうで光ってる扉に向かうか・・・」
ヒゲが双眼鏡を覗いて、何故か光っている扉がある破壊された建物へと向かった。
そこからゾンビとガイコツの急襲が迫る。
みほ達はゾンビやガイコツが集まっている場所に榴弾を撃ち込み、殲滅できる時間を稼いだ。
残りのゾンビも始末すると、扉の封印らしき物が解け、扉が開いた。
戦車では流石に入れないので、外で待つことになった。
中にもゾンビは居たようで、壊れた壁からゾンビの姿が見えた。
取り敢えず榴弾は勿体ないので、みほが沙織から貰った手榴弾を二階に投げ込んで排除する。
どうやら上手く爆発したらしく、数体ほど二階から落ちてくる。
二階に上がってきたカールがみほ達にそこを動かないように指示を出した。
言われたとおり、みほ達は屋外で待つことにした。
暫し銃声やゾンビの唸り声が聞こえる中、みほ達は軽い食事を取る。
丁度食事を済ませた途端、子供の歌声が聞こえてきた。
「うわっ!な、なに!?」
こんな状況下での子供の歌声は不気味以外何物でない。
車内は少しパニックになった。
「な、なんだこの歌声は・・・!?」
特に麻子は尋常じゃないくらい怖がっていた。
その歌声は何かを導くように歌っており、それが終わった後は、子供の笑い声が耳に入ってくる。
真に愛くるしい声ではあるが、正直言って彼女等には恐怖その物である。
「こ、この歌声・・・かなり恐い・・・」
「子供の声が、こんな状況では恐いとは思っていませんでした・・・」
「まるで何かを導いてるような・・・?」
「多分・・・そう・・・かな・・・?」
恐怖を紛らわす為に雑談を交わす中、銃声が聞こえなくなり、弾薬を補充し終えたカール達が出て来た。
「お待たせ。外は恐かった?」
みほがキューボラを開いて、駆け寄ってきたルリの笑顔に胸をなで下ろした。
だが、そんなみほ達を他所に、先程カール達が出て来た建物が霧で見えないくらいに覆われ、ゾンビとガイコツが一行に襲ってくる。
「迎撃を!」
直ぐに迎撃態勢を取って、向かってくるゾンビやガイコツを撃ち倒していく。
機関銃だけでは心持ちそうも無いので、榴弾を使って手早く片付けようとする。
自爆ゾンビも現れるが、優先的に排除され、周りのゾンビとガイコツを片付ける為の爆発物として利用される。
全滅したのか、霧が晴れ、一行は子供の笑い声に導かれるまま、最初に出て来た壁や屋根を破壊された建物へと向かった。
向かっている最中、自爆ゾンビが複数召還され、その場で直ぐに自爆する光景を目にしたが、即刻離れて爆発から身を守ったので、回避できた。
最初に出て来た建物の出入り口に辿り着くと、またゾンビが彼等を待ち受けていた。
的確に頭を撃ち抜いたり、殴ったりして容易に全滅させた後、建物中に入って、遭遇するゾンビを倒しながら魂を探す。
無論、戦車に乗るみほ達はただ待っていることしか出来ない。
銃声が聞こえる中、また車内にいる彼女等に子供の歌声が耳に入った。
「今度は3と4と言っているようですが・・・?」
「兎に角不気味すぎるぞ・・・この歌は・・・!」
聞いていた華が、子供が歌う導きの声が番号を歌っている事を言うと、麻子がまた尋常じゃないくらいに震え始めた。
次なる子供も歌声が聞こえてくると、麻子は耳を塞いで聞こえないようにしていた。
無線手である沙織は無線機を弄くり回し、何処かの放送局が陽気な音楽を流していないのかを探す。
暫し、銃声を耳にしていると、爆発音が外から聞こえ、みほ達は咄嗟に頭を抱えた。
その後、何かがぶつかったような音が車内に響き、それを確かめる為に全員が車外へと頭を出すと、自分の戦車の隣に頭が無くなったマシンガンゾンビの死体が転がっていた。
物の数秒後にはまた弾薬の補充を終えたカール達が建物から出て来た。
今度はⅣ号戦車用の榴弾を抱えており、それをみほに渡す。
「なにかあったんですか?」
「いや、少しヤバイのが二匹居てな」
砲弾を渡してくるカールに質問したみほは、返答に先程落ちてきたマシンガンゾンビの死体に納得がいった。
戦車の弾薬補充をしている間に、またもやゾンビが襲ってきたが、セーフハウスで調達した機関銃の攻撃で容易に殲滅できた。
一行は戦車の弾薬補充を終えた後、図書館の方へと向かっていく。
「これで開くはずだ・・・」
ボニファーツが扉の前に来た瞬間、扉に浮かんでいる封印の紋章が消え、扉が開いた。
直ぐに扉の前に居た者達は物陰に隠れ、みほ達に砲撃を命じた。
何故なら建物の中に複数のゾンビが居るからだ。
「砲撃命令・・・?華さん、撃って!」
「あっ、はい!」
みほの指示で、華は照準を図書館の中に合わせ、砲撃した。
建物内から砂煙が舞い散り、ゾンビの腕や足が出入り口から飛んできた。
機関銃の銃声が建物の中から聞こえてきたので、扉の近くに居る者達が手榴弾を中に投げ込む。
爆発音が聞こえた後、機関銃の銃声は聞こえなくなり、カール達は図書館の中に入っていく。
またもみほ達は外で待っている事となった。
「またまた待たされるのか・・・」
「流石に戦車は入れませんからね・・・」
みほがあちこち破壊された図書館を見ながら口にすると、優花里がそれに答えた。
彼等が全員図書館の中に入った瞬間、子供の歌声が聞こえた。
「またその歌!?ヤダモー!」
「あぁ・・・早く帰りたい・・・」
「やっぱり何かを示す歌声だったのですね・・・」
エンジン音と銃声を耳にしながら待っている沙織と麻子が度々聞こえてくる子供の歌声に恐怖して声に出せば、華はその歌が何かを導く歌だと判断する。
暫くすれば銃声が聞こえ、子供の笑い声も聞こえてくる。
数分後、図書館への出入り口が突如と無く閉じた。
それを見たみほは驚きの余り声に出す。
「ドアが・・・急に閉じだ・・・!?」
同時に先程の不気味な声も聞こえてきた。
声の主は一行に対して挑戦的な言葉を叩き付け、それが終わればカール達が調べ回った建物の周囲に霧と魔法陣を発生させた。
どうやら包囲攻撃を仕掛けるらしい、直ぐにみほ達は出て来たカール達と共に迎撃態勢を取る。
「迎撃態勢を!」
みほは車内にいる沙織達に指示を出す。
霧の中からゾンビやガイコツが現れ、モニュメント周囲からもゾンビが地中から這い出てくる。
一行は、目に付くゾンビやガイコツは徹底的に排除した。
自爆ゾンビも同時に出て来るが、対策法になれてしまった一行の相手にはならず、またも効率的にゾンビを排除する爆弾として利用される。
第一派を片付けた後、砲撃や空襲のつもりの即時爆発の自爆ゾンビが次々と召還されて、直ぐに自爆する。
戦車に乗るみほ達の近場で自爆ゾンビが爆発した為、車内が揺れる。
「キャアッ!皆さん、落ち着いてください!」
車内で少し不安になる沙織達を宥めたみほはキューボラから周囲の状況を伺った。
第二波はスナイパーゾンビであるらしく、一発撃った後には周囲を飛び回り、徒歩組を翻弄する。
スナイパーゾンビの行動パターンを読み込むと、みほは狙撃銃を持つゾンビが狙撃を行う場所に砲身を向けるよう指示を出す。
「四時の方向に向けてください」
「敵は居ませんが・・・?」
「その内来ます。来たら撃ってください」
照準器を覗いた華が言えば、みほはそう返して、スナイパーゾンビが来るのを待った。
案の定、砲身が向けられた建物にスナイパーゾンビが着地した。
しかも二体も居り、纏めて仕留められるチャンスだ。
即刻、華は引き金を引いて標的の建物に砲撃する。
飛ばされた榴弾はスナイパーゾンビが居る建物の屋上に命中し、二体同時排除に成功した。
こうしている間に、マシンガンゾンビをセットにした第三派が来る。
「これで最後かもな!全員奮闘しろ!」
カールの指示に、みほ達もこれで最後だと思った。
マシンガンゾンビの相手はみほ達の戦車が担当する。
こちらに向けて機関銃を乱射してくるマシンガンゾンビを榴弾で、近くにいるゾンビごと排除しつつ、徒歩組の脅威を取り除く。
徒歩組もゾンビの頭を撃ったり殴ったりし、ガイコツの心臓を撃ち抜いたり突き刺したりして的確に数を減らしていく。
それを繰り返している内に、最後のマシンガンゾンビは狙撃銃による頭部への集中攻撃により頭を吹き飛ばされて、地面に倒れた。
第三派を全滅させた一行は、ややフラフラになりながらもモニュメントも前に集まった。
「これから何が始まるのですかね・・・?」
「さぁ・・・?」
「どうでも良いから早く帰りたい・・・」
謎の紋章が刻まれて光るモニュメントを見ながら優花里が口にすると、沙織は適当に答え、麻子は早く元の世界へ帰りたいと願う。
数秒後、モニュメントの天辺にある卍マークが光り出し、その光は天へと上っていき、またあの声が聞こえてくる。
「我の前で死ね!」と言っており、この場所のみならず、向こうにも光が見える。
一行はその光の元へ向かった・・・
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シュトロハイム「これは随分と酷い有様じゃぁないかぁ!」