~ プロローグ ~
人はみんな往々にして「大事なモノ」を抱えている。
それは、家族だったり友人だったり恋人だったり、学生時代の思い出だったり長年弾き込んでぼろぼろになったギターだったり先週買った新作のゲームだったりと、人それぞれたくさんある。
そういったモノは日々の生活の中で手に入れ、同時に日々の生活の中で減っていく。
人は「選択」をする生き物なのだ。
毎日のあらゆる場面で人は「選択」を迫られる。
そういう中で「大事なモノ」を捨て、「大事だったモノ」としてすり替えるのだ。
時には友情と恋愛、どちらを「大事だったモノ」にするか取捨選択をし、社会に出れば、学生時代の思い出など現在進行形のまま「大事なモノ」として持ってはおけない。
街中を忙しく行き交っている、平凡そうな彼らの毎日も、そんな「選択」の結果による結晶なのだ。
それは僕らも同じで。
そう、
僕らは知っている。
選択とは何かを得るためではなく、何かを切り捨てるための過程であることを。
だからこそ僕らは幸せを求めて選択をするのだ。
自分がより幸せに近づくためになにかを選び、切り捨てて歩いている。
切り捨てた「輝き」の残り火のようなものをひきずりながらも、僕らは幸せへの道を進もうとするのだ。
それならば、
雪の音が降るこの街の、冬空の下で、
今も眠る「彼女」が、あの日した選択が、
幸せになるために、「彼女」があの日した選択が、 祝福される日は、来るのだろうか。
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十何年かに一度、雪が「音」をまとって降ってくるという町・ そこでおりなされる少年少女たちの、一年間の物語。
~ ~ ~
今回はプロローグです。
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