No.658646

英雄伝説~光と闇の軌跡~(番外編) 後日談~アリサのお見合い~ 第3話

soranoさん

第3話

2014-01-29 18:37:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3109   閲覧ユーザー数:3007

お見合いの当日、シュバルツァー家とラインフォルト家は保養地ミシュラムのレストランでお見合いを始めようとしていた。

 

~ミシュラム・レストラン”フォルトゥナ”~

 

「ね、ねえシャロン。本当におかしな所はないわよね?」

胸元を開いたパーティー用の漆黒のワンピースを身に纏い、漆黒のウエディンググローブを身につけ、ストレートに流している髪の状態で、レストランの椅子に座っているアリサは不安そうな表情で自分達の背後に控えているシャロンに尋ね

「うふふ、よくお似合いですわ。」

「で、でも……私の年齢ではまだ早い服装だと思うし………それが原因で向こうがひいたりしないかしら?」

微笑みながら答えたシャロンの言葉を聞いたアリサは不安そうな表情をし

「あら、その様子だとお見合い相手に対して結構気がある様子ね。……まあ、私としたらそちらの方が都合がいいのだけれど。」

「ち、違うわよ!相手が知り合いだから、ひかれるのが嫌なだけよ!」

イリーナ会長に言われたアリサは真っ赤にした顔で慌てた様子で答えた。

「会長、お嬢様。」

するとその時レストランに入り、ウェイターに案内される様子のリィン達の姿に気付いたシャロンは二人に声をかけ、声をかけられた二人は姿勢を正して自分達に近づいて来るリィン達を見つめていた。

(うっ……………)

アリサは儀礼用の漆黒の軍服を身に纏ったリィンの隣で歩いている儀礼用の侍女長服を身に纏い、全身から目にも見えるほどの怒気のオーラを纏っている様子のエリゼを見て冷や汗をかき

(アハハ………リィンと正式な婚約を交わしているエリゼさんにとったら私は突然沸いた泥棒猫も同然の存在だから仕方ないわよね………結婚したらエリゼさんとは仲良くしたいんだけどなあ……って、何を考えているのよ!?)

心の中で苦笑した後、自分に突っ込んだ。

「お待たせして申し訳ありません、イリーナ会長。」

「いえ、こちらも先程到着したばかりですのでお気になさらずに。」

シュバルツァー伯爵の言葉を聞いたイリーナ会長は静かな表情で答えた。そしてシュバルツァー伯爵やリィン達は椅子に座ってアリサ達と対面した。

 

「シャロン。」

「はい、会長。」

イリーナ会長に視線を向けられたシャロンは会釈をした後、ウエイターを小声で呼び止めて料理を持ってくるように指示をし

「………お互いに初対面の方達もいらっしゃるので料理が来るまでに自己紹介をいたしましょう。――――ラインフォルトグループ会長、イリーナ・ラインフォルトと申します。こちらのメイドはシャロン。私達ラインフォルト家のメイドと私の秘書を務めています。」

「シャロン・クルーガーと申します。どうぞお見知り置きを。」

イリーナ会長に紹介されたシャロンは会釈をし

「これはご丁寧に。では私達の方からも。シュバルツァー家当主、テオ・シュバルツァーです。以後お見知り置きを。」

「テオ・シュバルツァーの妻のルシアと申します。」

「………テオ・シュバルツァーとルシア・シュバルツァーの娘で、”リィン・シュバルツァーの婚約者”のエリゼ・シュバルツァーと申します。以後”お見知り置きを”。」

両親に続くようにエリゼはジト目でアリサを見つめながらリィンの婚約者である事の部分を強調しながら自己紹介をした。

「ラインフォルトグループ会長イリーナ・ラインフォルトの娘のアリサと申します。……え、えっと……今回は色々とごめんなさい、エリゼさん。」

エリゼにジト目で見つめられたアリサは冷や汗をかきながら自己紹介をした後、エリゼを見つめて言い

「………いえ。今回のお見合いには色々と複雑な事情が絡んでいる事は理解していますので、お気になさらずに。」

見つめられたエリゼは静かな表情で答えた。

「え、えっと………シュバルツァー伯爵の息子、リィン・シュバルツァーと申します。お初にお目にかかります、イリーナ会長。」

一方その様子を大量の冷や汗をかきながら見守っていたリィンはイリーナ会長を見つめて自己紹介し

「フフ、そんなに固くならなくてもいいわよ。今回のお見合いはこちらの強い希望を聞いてもらって実現できたのだから。」

「お気遣いありがとうございます。それと……………ひ、久しぶりだな、アリサ。」

苦笑しながら言ったイリーナ会長の言葉を聞いたリィンは会釈をした後、大量の冷や汗をかきながらアリサを見つめ

「そ、そうね………あの”碧の大樹”で初めて出会った時、後でこんな状況になるとは思わなかったけど………」

見つめられたアリサも大量の冷や汗をかきながら答えた。

 

「……そう仰っている割には今回のお見合いにかなり気合いを入れているご様子ですね。とても”家の都合”の為にお見合いに臨んでいる様子には見えない所か、むしろ本気で兄様を誘惑する為に着飾っているとしか思えないのですが。あくまで私の予想になりますが今のアリサさんの姿を見たら、多くの独身の殿方が求愛をしてくるのではないですか?」

二人の会話を聞いていたエリゼはアリサの服装や髪型を軽く確認した後ジト目でアリサの顔を見つめながら呟き

「う………」

「エ、エリゼ………」

遠回しな言い方で自分を攻撃して来るエリゼの言葉を聞いたアリサは表情を引き攣らせ、リィンは冷や汗をかきながらエリゼに視線を向け

「うふふ、皇族専属侍女長を務めておられるエリゼお嬢様にそのような誉め言葉を頂けるなんて光栄です。出発までの間の時間―――約半日も賭けて厳選した甲斐がありましたわ。」

「シャ、シャロン。」

「…………………”半日も賭けて”、ですか。」

上品に微笑みながら言ったシャロンの説明を聞いたアリサは冷や汗をかき、エリゼは静かな口調で呟いた後全身に纏っている怒気のオーラを更に強めてジト目でアリサを見つめ続け

(お願いだから火に油を注がないでよ、シャロン!!被害を受けるのは私なのよ!?というか貴女、絶対こうなるとわかっていてわざと言っているでしょう!?)

(どこを探しても婚約者の目の前でするお見合いなんて絶対にないぞ………)

エリゼに見つめ続けられたアリサは大量の冷や汗をかきながら表情を引き攣らせて心の中でシャロンに突込み、リィンは疲れた表情になった。

「え、えっと……そ、そう言えば二人とも以前出会った時と服装が違うわよね?親衛隊員や皇族専属侍女長の服装でもお見合いで十分通用する服装だと思うのだけれど……」

そして話を変えるかのようにアリサは冷や汗をかいて若干焦った様子でリィンとエリゼを見つめて尋ね

「ハハ………ま、まあお見合いなんだからそのまま戦場に出る軍服姿だと相手に対して失礼だからな。」

「お相手はあのラインフォルトグループを率いる立場の一族の方達なのですから、こちらとしても失礼をする訳には参りません。」

尋ねられたリィンは苦笑しながら答え、エリゼは静かな表情で答えた。その後料理が運ばれ、両家は料理を口にしながら会話を交わしていたが、リィンとアリサは互いに気まずい雰囲気を纏わしながら会話を交わしていた。

 

「さてと………後は本人達に任せて私達はそろそろ失礼しましょうか。」

そして食事を終えて、ある程度の時間が経つとシュバルツァー伯爵が提案し

「そうですね。………シャロン、行くわよ。」

提案に頷いたイリーナ会長はシャロンに視線を向けた。

「かしこまりました、会長。……それでは私達はこれで失礼しますので頑張って下さいね、アリサお嬢様。ちなみにこの後の会長は予定が入っておりまして……ホテルの部屋で待っているのは私だけになります。ですので朝帰りをされましてもシャロンは決して誰にも言いませんわ♪……あ、何でしたらお二人で甘い夜を過ごしたい時に連絡して下さったらいつでもこのシャロンが部屋を手配しますし、シュバルツァー伯爵家の方達の方にも説明しておきますわよ?」

「ええッ!?」

「シャロン!!」

からかいの表情で言ったシャロンの言葉を聞いたリィンは驚き、アリサは真っ赤にした顔で怒鳴り

「に・い・さ・ま~?」

「な、何でそこで俺を見るんだよ、エリゼ!?」

膨大な威圧に加え、さらに背後には魔力によって発生した電撃がバチバチと迸るほどの魔力を全身に纏って極上の微笑みを浮かべるエリゼに見つめられたリィンは大量の冷や汗をかきながら慌てて尋ねたが

「ギロッ。」

「う”……………」

絶対零度の目をしたエリゼに睨まれ、黙り込んだ。

「もう、この娘ったら……………私達も行くわよ、エリゼ。」

「……………はい。――――それでは失礼します。お二人ともどうぞ”ごゆっくり”。」

そして呆れたルシア夫人に促されたエリゼは魔力や威圧を引っ込めて頷いた後ジト目で2人を見つめて会釈をし、シュバルツァー伯爵達と共にその場から去って行った。

 

「「………………………」」

シュバルツァー伯爵達が去ると二人は黙り込んだ。

「そ、その……本当にごめんね……?家の事情で貴方達を巻き込んでしまって………そのせいでエリゼさん、かなり怒っているようだし………」

やがてアリサは申し訳なさそうな表情で口を開いてリィンを見つめ

「いや……気にしないでくれ。断る事はできたのに、実際に見合いをする事を決めたのは俺だし。」

リィンは首を横に振って答えた。

「そ、そう……でもどうして……?婚約しているエリゼさんがいるのに……」

「そちらもある程度予想できていると思うけど、今回の見合いをしただけでも、ラインフォルトグループ側も二大国に対して信用できる”証”を示した事になるし、リフィア殿下からも命令があったからな。」

「そう…………………(って、何で残念がっているのよ!?)」

リィンの答えを聞いたアリサは心の中で自分に突っ込みながら肩を落とし

「??………俺の方からも聞きたいけど……何で今回の見合いを受けたんだ?俺にエリゼがいる事も知っているのに。」

アリサの様子を見たリィンは首を傾げた後気を取り直してアリサを見つめて尋ねた。

「その…………やっぱりラインフォルトグループの為……ね。知り合いやそのご家族の方達が実家のせいで路頭に迷うなんてこと、見逃せないわ。」

「へ~………やっぱりラインフォルトグループのお嬢様だから、ラインフォルトグループの社員の知り合いが多いのか?」

「………ええ。みんな、私が母様の娘だからと言って距離を取らず優しく接してくれたし、色々な事を教えてくれたわ。…………それは決して母様に対して媚を売る為じゃないってわかっているわ。………………」

リィンに尋ねられたアリサは静かな表情で答えた後黙り込んだ。

「……………その、一端外に出ないか?ここだと話しにくい事があるかもしれないし……」

「……そうね。」

そして二人はレストランから出て、別荘街を歩いて、湖の傍にあるベンチに座った…………………

 

 

 


 
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