No.658564 リングにあがる少女まなさん 2014-01-29 12:08:41 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:867 閲覧ユーザー数:865 |
強くなりたい。そういつも思う。
強くなれば誰にも負けない自分になればどんな困難にも打ち勝てる。
自分を否定するすべてから抗っていける。そう、私は考えていた。私はいじめられっこだったし、父親から虐待もうけていた。それでも、私は抗うことをやめなかった。
私は馬鹿だから諦めるなんて選択肢はもとからなかった。
いつも誰かとぶつかって怒られる日々。そんなのは慣れっこだった。
あるとき学校内で聞かれた噂、アマチュアで「女子プロレス」ができる場所があるらしい。
私は喜び勇んだ。…いつも私を殴る父親には殺意しかなかったし、ケンカして勝っても先生に怒られるのにも嫌気がさしていた。
公然と拳を奮える場所。それは私にとっては願ってもない居場所だった。
「先生。ちょっとお願いがあるんですけど・・・」
家庭科の先生にお願いしてリングにあがる衣装を作ってもらった。
「地下プロレス」のリングにあがることはいっていない。だだ、「女子プロレスラー」になりきってみたいと言っただけだ。
ハイレグを基準にした動きやすさを重視した衣装。
前に被服のモデルをしたこともあって先生は快く受けてくれた。
…このころからかな?左右にリボンをつけるようになったのは?
ピンクと赤のチュープトップのハイレグ水着、肘パット、赤いロングブーツ。
「強くなるために」なんでもやった。中国拳法の道場に通って独学で技を学んだり、柔道場にいったり、
でもそのすべては「自分の心を強くする」というよりかはいかに相手を倒すかに重点をおいたものだったけど
かくして桜庭愛(わたし)は女子レスラーになった。
地下プロレスと聞いてはいたが…近くの城跡公園で行われているそれはなんだかクラブ活動のような感じ。
携帯電話でサイトに登録、プロフィールは自己申請。会場は薄暗く観客からは控室は見えないつくりになっている様子で、試合会場のホールと、更衣室は左右に通路が延びて、対戦相手と顔合わせになるのはリングのうえといった趣。
控室に案内され、ロッカーに着ている制服を脱ぎ、用意してた「水着」に着替える。
試合に対する不安。緊張感は時間と共に大きくなっていたが、それ以上に期待感が勝って、
勝ってもいい、試合に対するわくわくした気持ち。高揚感がさきにあった私は自分が指定した入場曲とともに気がついたらリングにあがっていた。
スポットライトに照らされたリング。
よく思い出せない。私の蹴りが相手の後頭部をなぎ払い、悲鳴をあげて倒れた相手の足をとって逆エビ固め。
悲鳴が聞こえる。反り返った水着。ぐいぐいと腿を掴み後ろにそらすと、相手がさらに泣き叫んだ。
会場がわっと沸くのがわかる。もっと、もっとと技をかけたくなる衝動。相手が失神するまでさほど時間はかからなかった…。
「勝った!」
実感できる勝利に私は笑顔で観衆に応えていた。ぐったりとリングに倒れた相手を見ながら
強くなれたと思った。そしてもっと強くなりたいと思った。
それが・・・私の物語のはじまりだったんだ。これが桜庭愛(わたし)の動機だった。
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父親からの家庭内暴力、同級生たちからのいじめ。
それに抗う不良少女「桜庭愛」はあるとき、女子プロレスの存在を知る。
ケンカで勝っても誇ることではない。
だが、「女子プロレス」で勝てば誇れる。
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