No.65831

思春の昔話 後編

komanariさん

「思春の昔話」の後編です。

前作にたくさんの支援・コメントをくださった方々、ありがとうございました。

続編ですので、まだ前編を読んでいらっしゃらない方は、前作をお読みになってから、閲覧してください。

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2009-03-29 12:53:27 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:13681   閲覧ユーザー数:9719

あのあと、私と一刀は楽しく暮らしていた。

 

毎日仕事を片付け、剣の稽古をして、時々二人で買い物に行ったりしていた。

一刀からもらい、いつも身につけていた鈴は、そんな楽しい時を過ごす度に、心地よく音色を響かせていた。

 

今にして思えば、この時の私は心から笑えていた。

 

 

そんなある日に、私に郡内の村への視察の仕事が回ってきた。

私の役職は視察を行うほど地位が高いものではなかったが、本来行くべき上司が他の仕事で都合が悪くなったらしく、私にその仕事が回ってきた。

 

視察と言っても形だけのもので、ただ村に行き、そこの役人から徴税の様子を聞き、その報告書を上に提出するだけという簡単なものだった。

 

上司曰く

「最近心を入れ替えて、きちんと仕事をするようになったお前への褒美だ。期限内に報告書さえ提出すれば、ゆっくりしてきてかまわん。と言っても、何もない村だがな。」

とのことだった。

 

一刀にそのことを話すと、自分も行くと言い出した。

「数字だけじゃなくて、実際の状況をこの目で見た方が、仕事のやる気につながるだろうし、それに・・・思春がいなくなっちゃったら、剣の稽古つけてもらえなくなっちゃうしさ。」

 

私はその言葉を聞いて、少しうれしかった。

その時は、なぜそう感じるのか分からなかったが・・・

 

 

数日の準備の後、私と一刀は村へ向かった。

その村は私たちのいる町から2日ほど行ったところにある村で、会計報告書では、最低限の税しか納められない、まずしい村だった。

 

2日の旅路を経て、その村に着くと、報告書の数字通り、村は貧しいようだった。

 

村の大通りには人通りがほとんどなかった。また、市には品物がほとんどなく、あったとしても並べられているものはどれも細く、貧相で、それを売る店主も、同じように痩せ細っていた。

 

一刀と、

「これだけ貧しいのに、税を納めなきゃならないなんて、この村の人たちは大変だ。」

とそんな話をしていた。

 

しかし、役場に行ってみると、この村には不釣り合いな太った男が出てきた。

最初は無愛想だったその男は、私たちが、郡の役場から来た者だと告げると急に態度を変えてきた。

 

「先ほどは失礼しました。何分物乞いが多いものでして・・・」

などとその男は釈明していたが、一刀は不機嫌になっていた。

 

「我々は税の徴収状況を視察しに来た。早速、資料を見せてほしいのだが。」

私は少し怒気をはらませて、その男に言った。

 

「は、はい。ただ今お持ちしますので、しばらくお待ちくださいっっ!」

 

男は慌てて資料を集めに行き、それを見ていた一刀が

「ありがとう思春。ちょっとすっきりした。」

と笑顔で私に言った。

 

しばらくして男が資料を持ってきた。

それに目を通すと、郡の役所に提出された報告書とほぼ一致していた。

 

「ふむ。問題はないようだな。」

 

細かな数値の違いはあったが、自分の村のことを少しでもよく書こうとするのは当たり前のことだ。この差異も許容範囲の内だった。

 

あとは、「問題なし」という報告書を作り提出すれば良いだけだが、提出期限まではまだあるし、「ゆっくりしてこい」と言われて来たので、私たちは役場を後にしようとした。

 

すると男が、何やら小包を持ち出してきた。

 

「?・・・なんだこれは?」

私は男に聞いた。

 

「何もない村ではございますが、わたくしからの、日頃激務をこなされている郡のお役人様への感謝の気持ちでございます。どうかお納めください。」

男は気味の悪い笑顔でそう言った。

 

私が受け取ろうとしないことに、しびれを切らしたのか、男は一刀にその小包を渡した。

一刀は、何かの許可を求めるように私の眼を見た。

 

「・・・。」

私はその問いを頷きで返した。

 

私の返答を見ると、一刀はその小包を開いた。

 

「っ!!」

一刀の顔が明らかに怒気を含んだものに変わった。

 

何が包んであったのかと思い、一刀の持っている小包の中をのぞいてみると、そこには、この村には不釣り合いな金子が入っていた。

 

「足りなかったでしょうか?」

男が不安げに訪ねてきた。

 

「・・・」

一刀は無言でその小包を男につき返すと、足早に役場から出て行った。

 

「あ、あの!足りない分はすぐにご用意いたしますので・・・」

男は私にすがるようにそう言った。

 

「・・・そちらの資料にも不備はなかったのだ。そんなものはいらん!!!」

私は声に先ほどの比ではない怒気を込めてそう言い捨て、一刀のあとを追った。

 

 

役場を出てすぐの所に一刀はいた。

「ごめん思春。勝手なことしちゃって・・・」

一刀の顔は明らかに暗かった。

 

「でも俺、許せなかったんだ。こんなまずしい村であんな大金を渡そうとするなんて・・・村の人たちはあんなに痩せ細って、それでも頑張って生きてるのに・・・」

 

一刀の言おうとしていることはわかった。

この村であれだけの金子を用意できる理由。それは、村人から必要以上の税を徴収し、余剰分を自分の私腹の肥しにしていたということ。

 

町で仕事をしているときにも、存在が分かっていた役人の搾取。

今まで数字でしか見たことのなかったその存在を、搾取する側・される側の実情を、その目で見てしまったのだ。

 

「とりあえず、町に帰るぞ。一刀。」

 

こんないやな思いをした村で、ゆっくりする気にはならないだろう。

もともと役人をやっていた私ですら嫌悪感を抱いているのに、一刀はもっとそれを強く感じているだろうと思った。

 

「・・・」

一刀は無言でうなずいた。

 

 

 

 

 

町までの道中、一刀は何かずっと考えている様子だった。

私は何度か話しかけようと思ったが、結局話かけることはできなかった。

 

町についてから、一刀は家へ、私は道中で作成した報告書を上司に提出しにいった。

「早かったな。もっとゆっくりしてきてもかまわなかったのに。」

上司がそう言っていたが、私は生返事を返して、すぐに家に帰った。

 

 

家に帰ると、一刀は剣の素振りをしていた。

その姿は何かを振り払うようで、ただ一心不乱に剣を振っていた。

 

 

「・・・・ふう。」

どれくらいの時間が過ぎたのだろうか、いつも間にか月明かりになっていた裏庭で、一刀は素振りをやめ、ひとつ息をついた。

 

「思春。俺、がんばってみようと思うんだ。今の役人に何を言ったって駄目だと思うけど・・・それでも、苦しんでる人たちを見て、それを何もしないでほっとくなんて、俺にはできないよ。」

一刀は、真剣な目で私を見つめて言った。

 

「・・・そうか。なら、私も協力しよう。」

一刀の言うとおり無駄かもしれないが、やるだけやってみようと、私はそう思った。

 

 

次の日から、一刀は郡の上層部の役人や州の役人などに手紙を書きはじめた。

 

今農村で起こっていること。それによって苦しめられている民がいること。

一刀は、民を救ってほしいと必死にその手紙に書いていた。

 

手紙の差出人は、私にしてよいと言ったが、一刀は

「俺が書いてるんだから、俺の名前にしなきゃ変だろう?」

と自分の名前を書いていた。

 

 

これは一刀が私に害が及ばないようにとしたことであるとわかったのは、もう失ってしまってからだった。

 

 

しばらくして、突然私に州の役所から視察の指令が来た。

 

場所は近く、一日で帰って来られるようなところだったが、

『従者を連れず、一人で視察せよ』

とのことだったので、一刀は家で留守番をすることになった。

 

私の中で、何かが引っ掛かったが、その時はあまり気にしていなかった。

 

 

「頑張ってね。思春。」

と一刀に見送られ、私は町を出た。

 

しばらくして、急に胸騒ぎがしてきた。

何か大切なものが無くなってしまうような感じがした。

 

(・・・一刀。)

 

どうしてか、一刀のことが頭に浮かび、それが頭から離れなくなった。

そのまま視察場所に行くこともできず、私は来た道を引き返した。

 

 

「・・・!?何者だ!!?」

家に帰ってくると、中から数人の人影が飛び出して行くところだった。

 

「っチィ!」

そのうち一人が舌打ちをしたが、すぐにどこかに逃げ去って行った。

 

私は後を追おうか少し迷ったが、一刀が心配だったので、家の中へと急いだ。

 

「一刀!どこにいる!?」

私は、叫んだ。

 

「おい!一刀!!返事をしろ!」

いつもならあるはずの返事がなかった。

・・・・私は焦った。

この時間なら一刀は部屋にいるはず、それなのにこれだけの大声を出しても返事をしない・・・

 

悪い予感しかしなかった。

 

「おい!返事を・・・・・・かず、と?」

一刀がいるであろう扉を開けた私の眼に飛び込んで来たものは、床一面の血の海と、そこに倒れる一刀の姿だった。

 

「一刀!!」

私は一刀に駆け寄り、その体を抱き上げた。

 

「どうした!?何があったのだ!しっかりしろ!!」

一刀の体には幾つもの刺し傷があった。

 

「・・・・し、思春。ごめん・・・せっかく稽古つけてもらってたのに活かせなかったよ・・・」

一刀はもう焦点の定まっていない瞳で私を見た。

 

「なんか、手紙を送った役人も同じようなことをしてて、煙たがられたみたい・・・俺、一応頑張ったんだけど・・・」

そう言い終わると、一刀の口から大量の血があふれてきた。

 

「わかった!もうしゃべらなくていい!!待っていろ!すぐに医者を呼んでくる!!」

 

「・・・いや。自分の体だから、もうだめだってわかってるよ。もうよく見えないけど・・・たぶん出血が致死量の超えちゃってるし・・・・・」

一刀は少し笑いながらそう言った。

 

「それより、最後ぐらい好きな女の子と一緒にいたいよ・・・」

そう言うと、一刀は私の手を握った。

・・・もう力があまり入っていなかった。

 

「だから、ここにいて・・・思春・・・」

そういう一刀を、私は見ていることしかできなかった。

 

涙があふれてきた。

 

(なんで、こんな時にそんなことを言うのだ・・・)

 

「・・・もうしゃべるな・・・本当に、もう・・・」

 

私の頬を濡らした涙が、一刀の顔に落ちた。

 

「思春・・・もしかして泣いてくれてるの?」

一刀は私の手を握っていた手で、私の顔を探っているようだった。

 

(本当にもう、目が見えていない・・・)

私は、空中を漂うその手をとって自分の顔にあてた。

 

「せっかく・・・思春の顔に触れたのに、もうあんまり感覚ないや・・・」

一刀は残念そうにそう言った。

 

言葉が出てこなかった。

 

「・・・思春。君はいずれ、この大陸に名を轟かすだろうけど・・・」

一刀の体が光に包まれだした。

 

「・・・俺は、今の思春を忘れないよ。サボリ魔で、強引で、自分勝手で・・・」

 

「待て!!行くな!一刀!!」

一刀がどこかに消えてしまう気がした。

死んでしまうのではなく、消えてしまう気が・・・

 

「でも・・・・・・・実は頑張り屋で、すごくやさしくて、可愛い・・・そんな思春を、俺は忘れない・・・」

光が強くなり、私は眼を開けていることができなくなった。

 

「一刀!!」

私が抱いていた一刀の重みが無くなっていった。

 

「待て!一刀!!私はまだお前に言っていない!お前に返事を言っていない!!!」

光が収まると、確かに抱いていた一刀の姿は消えてしまっていた。

 

「一刀!どこにいる!?」

もう、ここにはいないということを頭で理解していても、心がそれを認めなかった・・・

 

「どこに・・・・どこに・・・」

涙が止まらなかった。

 

 

 

 

その後、私は役人をやめた。

民を思って必死になっていた一刀を殺すようなところに、これ以上いようとは思わなかった。

 

一刀を殺したであろう州の役人は、そいつの私邸にもぐりこみ、実行犯の名を吐かせた後、首を取った。

実行犯たちは、一人ひとり探し回って、その首を狩った。

 

私はもう、官に対して恨みしか持てなくなっていた。

 

私は、漢の役人を・・・特に悪い噂がある役人を狩って回った。

気がつくと、私は同じく官に恨みをもつ者たちを率いていた。

 

私は荊州、江東で、それらの者たちと賊まがいのことをしていた。

気づけば周りの者から『鈴の甘寧』などと呼ばれ恐れられるようになっていた。

 

そんな日々を過ごしているとき、私は蓮華様と出会った。

 

蓮華様は私が悪名のある役人を誅していたことを知っていらっしゃった。

そして、私に言った。

「民のことを思い、悪き官を討たんという考えは立派だ。しかし、いつまでも賊のようなことをしていては、真に民は救えまい。甘寧、私たち・・・孫呉のもとで働かないか?私たちは呉の民のために、この身をとして働く。お前も思いを私と同じくするのなら、力を貸してほしい。」

 

私は蓮華様の瞳の中に、一刀と同じ暖かさを感じた。

それまで、恨みのままに動いてきた。

けれど、あの時失ったものを私は見つけることができた気がした。

 

「はっ。この甘興覇。孫権様に下り、微力なれど孫権様の力になることをお誓いします。」

 

「・・・ありがとう。私の真名は蓮華。甘寧、これからは私の部下として、そして友として、力を貸してくれ。」

 

「!?真名までお預けくださるのですか?」

 

「それが信頼というものでしょう?私は自分の信じた物を疑わないようにしているの。そして私はあなたを信じる。それことの証のようなものだ。」

 

(やはり、このお方は一刀に似ている。)

私は、なぜか分からないが、改めてそう思った。

 

「我が真名は思春。蓮華様のご信頼を裏切らぬよう。心して仕えさせていただきます。」

 

「よろしく。思春。」

 

あの時失ったものを、もう2度と失わない。

あの時守り切れなかった大切なものを、今度は絶対に守ってみせる。

 

私は、そう心に誓った。

 

 

 

蓮華様につき従い、いくらかの時が過ぎた。

 

孫呉は袁術に取り込まれ、私は蓮華様とともに2年ほど軟禁状態に置かれていた。

 

 

 

そんなある時、私はまたあいつに出会った。

 

 

 

雪蓮様が拾ったという「天の御使い」

その服、姿、声、そして名、すべてがあの時失った「北郷一刀」と同じだった。

 

本当にすべてがあの一刀と同じで、私は注意深く「天の御使い」を見ていた。

 

すると周瑜殿が

「こいつはおまえたちの夫になるかもしれん人物だ。」

と言った。

 

驚いた。会っていきなりそんなことを言われたのだから。

 

「とにかく、真名を預けなさい。」

雪蓮様がそう言うと、明命が自己紹介をし始めた。

 

それを受けて、「天の御使い」は手を差し伸べた。

 

(何をデレデレと手を差し伸べているのだ!一刀!!)

 

私は心の中で、少しイラついていた。

 

「・・・・・・我が名は甘寧。字は興覇。・・・・・・王の命令により真名を教えよう。思春と言う。」

 

少しのイラつきと、もしかしたら私を覚えているかもしれない、もしかしたらあの一刀なのかもしれない、という期待を胸に、私は挨拶をした。

 

「よろしくお願いします。」

そいつはそう言った。

 

(それだけか!?おまえはあの時・・・あの時、忘れないと言ったではないか!!)

 

まだ、あいつだと決まったわけではないのに、私は心でそう叫んでいた。

 

「よろしくするかどうかは蓮華様次第だな・・・・・・。」

私は、何とかその言葉を絞り出し、蓮華様の後ろへ退いた。

 

その後、私はあいつの言動、行動を観察した。

そして、あいつが一刀を同一人物であるという結論を出した。

 

ただ、私と過ごしていたときのことを覚えてはいないようだった。

 

すこし、悲しくなったが、永遠に失ったと思っていたものが、再び現れたことの喜びの方が、勝っていた。

 

ただ、昔のように「一刀」とは呼ばなかった。

あの時の「一刀」とは違うから。

 

昔のように、一緒になって笑ったりはしなかった。

私はもう、あの時の「思春」ではなかったから。

 

そう。私にはもう一刀以外に大切な人がいた。

絶対に守ると誓った、蓮華様がいらっしゃった。

 

その蓮華様は、どうやら北郷に恋をしたようだった。

 

私は、複雑な気持ちになったが、私を官への恨みから救ってくださった蓮華様を応援しようと決心した。

 

しかし、あいつは私や蓮華様だけでなく、他の女にも手を出していた。

 

そんな姿を見るたびに、私はイライラした。

 

 

 

紆余曲折を経て、蓮華様は北郷と結ばれた。

それ以来、蓮華様は上機嫌だった。

 

それとは対照的に私にはイライラが募っていた。

 

なぜそんな気持ちになるかなんて、私には分からなかった。わかりたくなかった。

 

イライラのあまり、北郷が蓮華様の執務室行こうとするのを邪魔しようともした。

しかし、運悪く蓮華様に見つかってしまい、その日、私は蓮華様とともに北郷と結ばれてしまった。

 

悔しかった。私にあれだけの悲しみを与えておきながら、あいつに触れられることをうれしく感じてしまう自分が。

そんなことができるのに、私のことを覚えていなかった北郷を恨めしく思った。

 

 

その後、天下分け目の赤壁の戦いで勝利し、我々孫呉は蜀漢とともに天下を治めるようになった。

 

そして、甘述が生まれた・・・。

 

 

 

私は、長い記憶の旅から意識を戻すと、隣で寝息を立てている甘述の頭をなでた。

 

「・・・うみゅ・・・」

甘述のかわいらしい声に、心を満たされながら、私は布団にもぐりこんだ。

 

 

 

 

北郷は私のことを覚えていなかった。でも、再び私の前に現れ、私にかけがえのないものを与えてくれた・・・

 

(・・・・・・そろそろ、一刀と呼んでやるか・・・)

 

私は、隣で眠る小さな温もりの父親を、私が愛した者の名で呼ぼうと思った。

 

(しかし、それもあいつの心がけ次第か・・・)

 

そう思いながら、私は瞳を閉じた。

 

 

 

蛇足

 

 

 

「それでね。そのお役人さんと異国の人は、けっこんして幸せになったんだって。」

 

俺の娘はそう楽しそうに話した。

 

「私は、その二人が父上と母上に似てるって言ったんだけど、母上はそうは思わないって。」

同意を得られなかったことが不満だったのか、すこし頬を膨らませてそう俺に言った。

 

「父上は似てると思いますよね?」

少し目を潤ませながら、甘述は俺に聞いてきた。

 

(ヤバイ・・・なんか色々壊れそう・・・)

こんなに可愛い愛娘のお願いに逆らえるわけなんてなかった。

 

「あぁ。すこし似ているかもな。」

 

「やっぱり!私もそう思います!!」

甘述はとてもうれしそうな笑顔で、はしゃぎだした。

 

(この笑顔は、あの頃に思春にそっくりだな。)

 

俺は、心の中でそう思った。

 

(そろそろ、本当のこと、話さなきゃな・・・。)

 

再会した時に、思春の眼光が鋭すぎて言い出せなかった昔の話。

 

(今更覚えてるなんて言ったら、俺思春に殺されるかも・・・)

 

ただ、この世界の思春が、あの思春と同じ思春かはわからないけど、

 

(あの時聞き忘れた返事も聞かなきゃだしな)

 

俺の気持ちを伝えたときに、聞きそびれた彼女の答え。

 

「もう。父上なにを考えているんですか。もう寝る時間ですから、早くお話をしてください。」

隣で布団にくるまっている甘述がそう願った。

 

「・・・よ~し。それじゃあ今日は、素直になれない女の子と、その女の子を好きになった男の子の話をしてあげよう。」

 

「わぁ~い。」

 

俺の話を今か今かと待っている可愛い俺の娘。

 

(君のお母さんに俺の昔話をする前に、君にお話してあげよう・・・)

 

 

「昔々あるところに、役人をしているけど、いつもそのお仕事を一緒に住んでいる男の子にやらせている、可愛い女の子がいました・・・・・」

 

(思春・・・そろそろ君にもこの話をしなきゃだな・・・)

 

そう思いながら、俺は話を続けた。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

どうもkomanariです。

 

なんとか、後編を書き終えることができました。

 

 

まず、前作は誤字が多くてすみませんでした。

自分でもびっくりするぐらい、誤字がありました。

指摘してくださった方々ありがとうございます。

 

 

さて、後編ですが、ちょっぴり切なめにしてみました。

 

でも、やっぱり救いがほしくて、蛇足も足しておきました。

 

 

一応、頑張って書いたのですが、皆様のご期待に添えることを願っています。

 

 

 

これで、とりあえず思春のお話を一区切りできました。

 

なにか、ご意見・ご要望がありましたら、コメントしていただけると嬉しいです。

 

 

それでは、今回も閲覧していただきありがとうございました。

 

また次の作品でお会いしましょう。


 
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