No.658261 ランドシン伝記 第7話 (アーカーシャ・ミソロジー)2014-01-28 01:02:16 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:323 閲覧ユーザー数:323 |
第7話 安らぎ-の終わり
剣聖シオンは森の中を散歩していた。
そして、泉に出ると、そこには裸のニアが-まさに泉に入ろうと立ち尽くしていた。
その横顔は美しく、神秘的であり、さながら泉の女神のよう
であった。
シオン「ニ、ニアッ?」
シオンは急いで後ろを向くも、胸の動悸(どうき)を抑えられなかった。
ニア「やぁ、シオン。こんな所で-どうしたのかな?」
シオン「い、いや・・・・・・。ちょっと散歩を、と思って・・・・・・」
ニア「ふぅん。まぁ、いいや。入っちゃうよ」
すると、チャポンと音がして、ニアは平然と冷たい泉の中に
入っていた。
シオン「寒く無いのか?」
ニア「別に。この程度なら問題ないよ」
シオン「そうか・・・・・・」
ニア「シオンも入る?」
シオン「い、いや・・・・・・流石(さすが)に、寒いからな」
ニア「そう。かつての剣聖達は、この程度の冷水、何も感じなかったけどね」
シオン「・・・・・・はぁ、入れば-いいんだろ。入れば」
そう言って、シオンは服を脱ぎ、泉に入った。
そして、体を一瞬、震わせるも、すぐに冷たさに慣れた。
ニア「結構、気持ち良いよね」
シオン「ま、まぁね・・・・・・」
ニア「やれやれ、修行が足りないね」
シオン「耳が痛いよ・・・・・・」
ニア「フフ、でも、才能は誰よりもある」
シオン「ニア?」
ニア「そして、誰よりも真っ直ぐだ。かつての剣聖の誰よりも。
だからこそ、君は選ばれたんだろうね」
シオン「選ばれた?」
ニア「こっちの話。しかし、その意味では、あのヴィル先輩も
剣聖になっても-おかしくは無い程の腕では-あった」
シオン「・・・・・・ニア。先輩はニアを本当に攻撃したのか?
あの人は女性には手を出さない人かと思ってた」
ニア「女性・・・・・・なら、そうだったかもね。でも、彼には
少し、正体が-ばれていたのかもね。そう、私がヒト
では無い事が」
シオン「・・・・・・ヒトでは無い」
ニア「あまり、詳しくは言えないけどね」
シオン「だとしても、ニアは俺達の仲間だよ」
ニア「フフ、照れるね」
そう言うと、ニアは泉から出た。
そして、ニアは首だけ後ろを向き、口を開いた。
ニア「でもね、シオン。剣聖は君なんだよ。
彼は、ヴィルは絶対に剣聖には-なれない。
何故なら、彼は-あまりに世俗的(せぞくてき)すぎるから。
剣を極める意思が無いから。
でもね、シオン。注意すると良い。
そういう手合(てあ)いのヒトの子は、時として、
選ばれしモノを越える力を発揮する事が
あるんだよ。
シオン。彼は君にとり天敵となる可能性が
あるんだよ」
シオン「天敵・・・・・・」
ニア「いつか、君と彼は戦うのかもしれない。
それぞれ、己の全霊を懸けて。
願わくば・・・・・・もし-それが起きたのなら、
私は-その戦いを見守りたいモノだよ。
でも、その時、きっと私は・・・・・・」
そう言い残し、ニアは服をつかみ去って行くのだった。
・・・・・・・・・・
ヴィルは剣の手入れをしていた。
トゥセ「・・・・・・団長」
ヴィル「ん?どした?」
トゥセ「すいません・・・・・・。多分、あのレイピア女との戦いも
団長の本当の剣があれば、もっと楽に-すんだかもしれないワケでして」
ヴィル「なんだ、いきなり?やけに、殊勝(しゅしょう)だな」
トゥセ「そりゃ、殊勝(しゅしょう)にもなりますって、何せ、これから、
苦難の連続でしょうし」
ヴィル「まぁ、気にするな。この剣も安物だけど、悪くない。
変に装飾品も付いてないし、重いけど、その分(ぶん)、
当たれば強いし、問題ないさ」
と言って、ヴィルは剣を何度か振って見せた。
トゥセ「俺、メッチャ、頑張って、戦いますから」
ヴィル「ああ。頼りにしてるよ」
トゥセ「はい。ただ・・・・・・」
ヴィル「ただ?」
トゥセ「ゴブリン語は頑張れません」
ヴィル「なんかさ、急に-いつものトゥセに戻ったな」
トゥセ「あ、そうですか?いやぁ、照れますねぇ」
アーゼ「馬鹿トゥセ、褒(ほ)められてないからな」
トゥセ「はぁ?誰が馬鹿だ、誰が!」
アーゼ「お前だ、お前。お前以外-誰が居る」
トゥセ「お、お前、兄弟同然に育ってきたっちゅうのに、
なんちゅう事、言いやがる。この馬鹿アーゼ」
アーゼ「な、なにぃ」
そして、二人は口ゲンカを始めた。
カシム「やれやれ・・・・・・」
ヴィル「あいつら、腹が減ると良くケンカするんだよ」
すると、モロンが駆けてきた。
モロン「ご飯できたよー」
それに対し、トゥセとアーゼは-ケンカの事など忘れて、
一目散に食事に向かうのだった。
・・・・・・・・・・
シオンはギルド・メンバーの細身の男と食事をしていた。
細身「しかし、シオンはん-と食事かいな。珍しい事もあるもんや」
シオン「仕方無いさ。他のみんなは忙しくて、こんな遠くまで
食事には来れないんだから」
細身「まぁなぁ。でも、ここは-この街の名物店なんやで。まっ、
ベーコンとかソーセージとか-お土産(みやげ)に買って帰ろうや」
シオン「ああ」
そして、二人は食事を進めた。
細身「しっかし、二人きり-やから言える事やけど、ウチの
女性陣、ものごっつ、巨乳ばかりやと思わへんか?」
シオン「ん?あぁ、そうだな。確かに」
細身「なんや、その無関心-的なリアクションは。ショック
やわぁ。毎晩、エレナはん-の巨乳に包まれている癖に」
との言葉にシオンは苦笑した。
シオン「ま、まぁね。正直、大きい胸は好きだよ」
細身「おおッ、剣聖の本音が聞けたわ。いやぁ、嬉しいわぁ。
たまには、男同士の会話も楽しいわな」
シオン「ハハ、まぁな」
細身「とはいえ、やはり、ニアはん-の胸はピカいち-やわなぁ。
あれぞ、ロケット-おっぱいって言うんやないか?」
シオン「何だ、そのロケットって?」
細身「いや、ワイも詳しい事は知らんさかい、何かな、
サーゲニアの古代兵器や-そうやで」
シオン「物騒な話だな」
細身「せやなぁ。あの国も軍拡を異様に進めおるし、不安やな。
獣人相手に軍を使うならええけど、いつか、こっちまで
攻めてくるんやないかと思うとなぁ」
シオン「実際、サーゲニアと皇国が戦争をしたら、勝つのは
恐らくサーゲニアだろうしな」
細身「とはいえ、魔族の勢力が強いうちは、ヒト同士で戦って
いる余裕は無いやろうけどなぁ」
シオン「だろうな・・・・・・」
細身「あぁ、そんな戦争が起きる前に、ロケットおっぱいの
彼女が欲しいモンや・・・・・・」
シオン「ハハ、ニアに告白してみればどうだ?」
細身「シオンはん、それ本気で言ってるなら、結構、酷やで。
まぁ、ええわ。でも、ニアはん-のロケットおっぱいを
見慣れてると、眼福(がんぷく)では-あるんやけど、
その分、普通の胸が小さく見えて辛いわなぁ」
シオン「そんなモノかな?」
細身「そりゃ、あんたの彼女はん-もニアはんに負けず劣らず
やからなぁ・・・・・・」
シオン「いやいや、でも、ニアの胸は凄いと思うよ。特に
あれでも着やせする感じで」
細身「ちょっと待ってやぁッ!シオンはん、あ、あんたという
ヒトは、エレナはん-という彼女がおりながら」
シオン「ち、違う。誤解だ。俺は、エレナ以外を愛した事は
無いぞ」
細身「嘘やッ。あぁ、何て事やぁ、見損なったわぁ」
シオン「い、いや。実はな・・・・・・」
そう言って、シオンは事情を説明し出した。
それを聞いて、細身の男は少し、落ち着きを取り戻した。
細身「なる程。そういうワケやったんか、って、それでも
うらやましいわッ!クゥ、ワイには何で-そういう
イベントが回ってこんのや。やっぱ顔か?顔なんか?」
と言って、自らの顔をこねくり回し出した。
シオン「お、おい・・・・・・」
細身「すんまへん・・・・・・。少し、取り乱して-しもうたわ。
まぁ、ええわ。話、変えまひょ」
シオン「あ、ああ」
細身「それでな、ウチの女性陣の胸の話やけど」
シオン「あ、結局、そこに戻るんだ」
細身「だって、今くらいしか出来へんやろ?こんな話」
シオン「ま、まぁな。ど、どうぞ」
細身「まぁ、単純な大きさからしたら、ニアはん-とエレナはん
がツー・トップなワケや。でもな、個人的には、ユークはん-
の胸にもビックリなんや」
シオン「でも、彼女の胸、大きさは-そんなに大きくないぞ」
細身「確かに、純粋な大きさでは-そうや。だけどなぁ、体の
大きさを考えると、あれは凶器のレベルや。小人族の
ユークはん-の身長は、それこそ少女くらいの大きさしか
あらへんけど、それに対し、その胸はDは-あると思う
んや。いや、正確な大きさは良くわからへんのやけど」
シオン「そ、そうか」
細身「そんな感じや。いやぁ、今日は有意義な時間を過ごせたわぁ」
シオン「あ、ああ」
と、シオンは少し困りながら答えるのだった。
・・・・・・・・・
ヴィル「そう言えば、お二人は-どうして、あの迷宮に住んで
居たんですか?」
と、ヴィルは黒猫に尋ねた。
黒猫「フム、良い質問じゃな。まぁ、あまり詳しくは話せないんじゃが、
ともかく、十年前の大戦でワシとレククは
この大陸に取り残されてしまったのじゃ。
そんな時、たまたま-ここの地方領主さん-と出くわしての。
それで事情を話したら、迷宮に住む事を許して下(くだ)さった
のじゃよ」
トゥセ「って、マジかよ。地方領主って、一年前に亡くなられた?」
黒猫「そうみたいじゃのぅ・・・・・・。あの人間さん-は良い人じゃったよ、
本当に。レククも-なついて居たしのぅ」
アーゼ「しかし、その息子であるアチェスさん-が後を継がれて、
それで迷宮クエストを依頼して・・・・・・・。これって」
ヴィル「ああ。色々と繋がったな。アチェスさん-は父である
前-領主がゴブリンをかくまっている事を知っていた。
しかし、それを皇国に報告するワケには-いかなかった。
とはいえ、父の死後、何もしないワケにも-いかなかった。
だから、迷宮クエストという形で、冒険ギルドに
偶発的に見つけてもらうよう、仕向けた。そんな所
だろうな」
黒猫「世知辛(せちがら)い話ですじゃ」
アーゼ「まぁ、貴族の後継者に苦しめられる領民は多いですからね」
トゥセ「特に先代が優しい場合は-そうなんだろうなぁ」
ヴィル「何でか、跡継ぎってのは-大抵、劣化するからな」
そう言って、ヴィルは-ため息を吐(つ)いた。
・・・・・・・・・・
シオンは高級バーを訪れていた。
そこには客は-ほとんどおらず、一人のダーク・エルフの女性が
カウンターに座っていた。
彼女はシオンのパーティの一人だった。
シオン「やぁ」
と、シオンはダーク・エルフに声をかけた。
エルフ「あら、シオン。どうしたの?こんな所に。珍しい
じゃない」
シオン「少し、小腹が空(す)いちゃってさ。近くの店、ほとんど
閉まっちゃってて」
エルフ「だから、ここに?酒場なら-いくらでも有るでしょうに」
シオン「いや、あまり騒がしいのも苦手でさ」
エルフ「そう。でも、ここの料理は-おいしいわよ。マスター」
そう言って、ダーク・エルフは-マスターに対し、適当に
料理を注文した。
さらに、シオンは酒を注文した。
エルフ「珍しいわね。お酒、飲むなんて」
シオン「流石(さすが)に、料理だけ食べるワケには行かないだろ?」
エルフ「あら、ミルクとか可愛(かわい)いんじゃない?」
シオン「ミルクは苦手なんだ」
とのシオンの答えに、ダーク・エルフはフフッと笑い出した。
その笑い方一つにしてみても、彼女からは大人な女性の余裕さが
垣間(かいま)見えていた。
シオン「やれやれ、フォウンには敵(かな)わないな」
と、シオンは-そのダーク・エルフの女性に対し、言うのだった。
フォウン「ふふ、総じて男性は女性に口では敵わないモノよ」
シオン「違いない」
そして、二人は酒を少しずつ口にするのだった。
夜は深くなり、二人の酔いも回ってきた。
フォウン「エレナの所に居てあげなくて平気なの?」
シオン「今日は-お休みだよ」
フォウン「それは-お疲れ様」
シオン「正直、こういう疲れには慣れないな。戦場の疲れの
方が、しっくり来る」
フォウン「あらあら。エレナも可哀相(かわいそう)に」
シオン「いやいや、エレナと一緒に居ると、どうしても、
まぁ、やり過ぎてしまう-というかさ。
だから、こうして、自制してるんだよ」
フォウン「そう。うらやましい話ね。私なんて、相手が居なくて、
困ってるのよ」
シオン「はは。フォウンなら-すぐ相手が見つかるだろ?
道を歩いてたって、男達に良く見られてるだろ?」
フォウン「まぁ、高望みし過ぎなのかも-しれないわねぇ。
それに、恋愛は以前、こりてるから、中々、
そう簡単に手を出せないのよね」
シオン「あぁ・・・・・・ごめん」
フォウン「いいのよ」
シオン「・・・・・・フォウン、君は本当に、今度の戦いに付いてく
るのかい?」
フォウン「あら?返事は-したつもりだったけど」
シオン「君に万一があれば、フィナちゃん-は、どうなる?」
フォウン「・・・・・・あの子は強いわ。私が居なくても十分、やって
いけるわ。それに、あの子も、もう16よ。
成人してるわ」
シオン「俺は、元々、君にはフィナちゃん-の傍に居て欲しかっ
たんだ。フィナちゃん-は、君のかけがえのない一人娘
なんだから」
フォウン「ええ。そうよ。かけがえのない・・・・・・私の最愛の娘」
シオン「一緒に居れなくて寂しくないのか?」
フォウン「・・・・・・時々、ね。寂しくなるわ。でも、元々、私の
部族は、こんなモノよ。女は村の外に出て、外の男の
子種をもらって、帰って来て、子供を産む。
そして、また外に出る。その繰り返し」
シオン「フォウンのお母さんが、フィナちゃんを育ててるんだ
ったよな」
フォウン「ええ。母さんには、頭が上がらないわ・・・・・・」
そう言って、フォウンは酒を一気に-あおった。
フォウン「ねぇ、シオン。あまり、私を責めないでよ。確かに
私は母親失格だけどね。それでも、私は・・・・・・」
シオン「ごめん。確かに、フォウンは毎月、かなりの額を
フィナちゃん-のために送ってるモンな。ぜいたくも
たまに-こうして飲むくらいにしか使ってないんだ
もんな」
フォウン「まぁ、そんな所ね。フフ、でも、奇妙なモノよね。
昔の私が今の私を見たら、驚くでしょうよ」
シオン「どうしてだ?」
フォウン「だって、私はね。昔は、普通の-お嫁さんに、
なりたかったのよ。それで、人間の男と結婚
して、村のはずれにフィナと三人で住んで。
でも、駄目ね。あのヒトは暴力ばかり。
結婚して変わってしまったわ」
シオン「そうだったのか」
フォウン「まぁ、私が家事とかダメダメだったのも理由なん
でしょうけどね。まぁ、そのせいかな。私は、
自分に母親としての自信が持てないのよね。
どうしても」
シオン「・・・・・・そっか。ごめん、何も知らずに適当な事、
言っちゃって」
フォウン「いいのよ・・・・・・。でもね、私には夢が-あるの」
シオン「夢?」
フォウン「そう。今度の戦争を無事に切り抜けたら、フィナを
このギルドに呼ぼうと思って。あの子、もう16で
しょ。しかも、母さんからの手紙だと、かなりの
弓の使い手に育ってるみたい」
シオン「そうか。それも-いいかもな。親子で同じギルドなんて、
なんか、いいな」
フォウン「ええ。でも、あの子、面食(めんく)いだから、きっと
シオンに惚(ほ)れちゃうわよ」
シオン「冗談だろ?」
フォウン「さぁ、どうかしら?でも、きっと-そうなるわ。
だって、あの子は私の娘ですもの・・・・・・」
シオン「・・・・・・フォウン、酔ってるだろ」
フォウン「そうね。少し、酔ってるんでしょうね」
そう言って、フォウンはグラスを置いた。
フォウン「ねぇ、シオン。私は強い男が好き。でも、強いだけの男は嫌い。
だって、力で私を支配して来ようとしてくるから。だから、
強さと優しさを-かねそなえた、そんな人が好きなの。
そう、あなたのような」
シオン「・・・・・・俺は-そんなんじゃ無いよ」
フォウン「そうかしら?ねぇ、シオン。私は-あなたの子供なら
産んでも良いと思っているのよ。本気で言っているの。
エレナに聞いた事が-あるの。でも、エレナは
許可してくれたわ」
シオン「嘘だろ?」
フォウン「エレナは-こう言ってたわ。『彼が私の傍(そば)に居てくれる
のなら、それだけで良い』って」
シオン「そんな・・・・・・」
フォウン「もちろん、正妻はエレナよ。でも、私は側室(そくしつ)で良い。
体だけの関係でも良い。シオン、私も-それで良いのよ」
シオン「・・・・・・フォウン。君は悪酔いし過ぎだよ。俺も、少し
酔っちゃったみたいだ。会計、これで済ませておいて
くれ」
そう言って、シオンは銀貨の入った袋を置いて、去って行くのだっ
た。
フォウン「・・・・・・やれやれ、逃げられちゃったか」
と、呟(つぶや)き、酒を口に含むのだった。
・・・・・・・・・・
シオンは-モヤモヤとした気持ちの中、ベッドに倒れこんだ。
そして、そのまま眠りに-ついたのだった。
シオンは夢の中に居た。
そこでは、裸の女性がベッドでシオンと居た。
彼女はパーティの一人、治癒(ちゆ)術士のリーシャだった。
『シオンさん、シオンさんッ』
とのリーシャの叫びが木霊(こだま)した。
情景は変化していた。
そこには、ダーク・エルフのフォウンが半裸で居た。
その胸にシオンは甘えており、フォウンは愛おしそうに
シオンを受け入れていた。
さらに夢は変化していった。
そこにはパーティの一人、魔導士のユークがベットに座っていた。
彼女は小人族ではあったが、服を脱ぐと、意外に肉付きが
良く、全体の大きさ以外は-人間の大人の女性と大差無かった。
ユークの透き通るような美声が、徐々に淫らな喘(あえ)ぎに
染まる中、夢は移り変わっていった。
そこには裸のニアが居た。
しかし、ニアは寂しげにシオンを見つめていた。
ニア『シオン、私は君と体を重ねないよ。少なくとも、今の君
とは・・・・・・』
そう告げ、ニアは背を向けて去って行った。
それをシオンは必死に追うも、決して追いつく事は出来なかった。
夢の中、シオンは再び、ベッドの上に戻って居た。
声が聞こえた。
『シオン・イリヒムよ。お前の運命は完全に閉じられた。
だが・・・・・・』
すると、次の瞬間、シオンは背中に熱を感じた。
そこにはエレナが居た。
シオンの背には、ナイフが突き刺さっていた、
エレナ『シオン、ごめんなさい。この運命じゃ駄目なの。
運命を戻すために、一度、あなたを殺すわね』
との言葉が、暗転する視界の中、シオンには聞こえた。
シオンの魂にノイズが走り、それは次第に強まっていった。
『これで、この地域に観測者は消え、この領域は波動と化した。
街道が閉鎖されていたのが、幸い-だったか・・・・・・。
今、アカシック・レコードに接続を開始する』
との女の声が聞こえた気がした。
そして、シオンは目を覚ました。
そこはベッドの上だった。
しかし、部屋にはシオン一人しか居なかった。
シオン「夢・・・・・・か。変な夢だったな。ッ・・・・・・」
すると、シオンは背中に痛みを感じた。
シオンは部屋に備え付けられている小さな鏡で、背中を
見ると、刺し傷のようなアザが、そこには有った。
シオン「本当に・・・・・・夢・・・・・・だったのか?」
と、シオンは呟(つぶや)くのだった。
・・・・・・・・・・
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剣聖シオンは-ヴィル達とは対照的に、
女性達に囲まれ、充実した時間を
過ごしていた。
しかし、その安らぎも奇妙に歪み
つつあったのだった。