No.657808

わんわんにゃーのおみくじ

小紋さん

わんわんにゃーがおみくじを引いてゴタゴタしてるだけの小説です。
あれ?でも十助君の結果ってたしか…

登場するここのつ者
遠山黒犬/猪狩十助/音澄寧子/魚住涼

2014-01-26 16:00:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:417   閲覧ユーザー数:408

 

「神様神様おみくじ様!今年の運勢何じゃらほい!……っと!!」

 

忍社に置かれた六角柱の形をした木箱。その中身を丹念に降り混ぜながら、寧子は細い棒を一本取り出した。

 

「涼ちゃーん!!十六番にゃ♪」

 

「はいはい、少し待ってくださいね。えっと……十六番…十六番…」

 

涼に番号の書かれた方を向けて手渡し、寧子はウキウキと結果を待つ。ピョコピョコと動く頭巾の耳も相まって、おやつを待つ動物のように見えなくもない。

 

…とそこに、バタバタと足音も荒く境内に新しい二つの影が現れた。

 

「よっし!俺の勝ちだな……ってあれ!?」

 

「何言ってんだ!俺に決まってんだろ…って、ねーこじゃねーか!ちくしょー!俺たちが一番乗りだと思ったのに!!」

 

黒犬と十助だ。……何故か息が切れているが。

 

「一番も何も、忍社に居候してる私が誰より早いに決まってるのにゃ。おみくじは私が一番駆けをもらったけども……もしかしてそれで走ってきたのにゃ?」

 

軽く息を整えて、黒犬が眉を下げて笑う。手を軽く横に振っているところをみる。少々違うらしい。

 

「十助とたまたま町でばったり会ってさ、どうせ行くなら一緒に行くかーって」

 

「で、どうせなら競争して勝った方が先におみくじ出来るって事にしたんだよ。あー疲れた!」

 

「もしかして町からここまで!?どれだけ走ってきたんですか…」

 

いつのまにか戻ってきた涼が苦笑いを浮かべる。手には細長い紙が収まっていて、お待たせしました、と言葉を添えてそれを寧子に手渡した。

 

「大吉です。良かったですね、一番良い運勢ですよ」

 

「やったー!これで今年も順風満帆な三味線生活なのにゃ♪」

 

黒犬が上から、十助が下から覗き混む。大きく『大吉』とあり、その下には細かい文字で運勢がつらつらと書かれていた。だがピョコピョコと動く猫耳に邪魔された黒犬はよく見えなかったようで、ぽすっ、と猫耳を手で覆い押さえた。

 

「にゃ?」

 

「ねーこ、ちょっと耳止めてくれ。見えない」

 

「巫女さん!俺も!俺もおみくじやる!」

 

「はい、どうぞ」

 

涼がおみくじの箱を手渡す。十助はじゃらじゃらと棒同士が当たる音が楽しいのか、念入りというにもやけに長く振り混ぜていた。

 

「あ、十助!競争勝ったの俺だろ?先越すなって」

 

「何言ってんだよ、どう見ても俺の勝ちだったって……二十番!!」

 

「そう喧嘩しないでください、黒犬さんも続けてどうぞ?結果は一緒に渡しますので」

 

猫耳から手を離して十助から箱を受け取り、黒犬も軽く中身を振り混ぜる。

 

「なーにーがーでーるーかーな!…お、切りよく十番!涼、頼むな」

 

「やった!俺のが数でかい!」

 

目をキラキラと輝かせる十助に、寧子は「おみくじはそういうものじゃないと思うにゃー…」と苦笑した。

 

「おい、ねーこは!?」

 

「私は十六ば…」

 

「じゃあ勝った!!」

 

「十助君、おみくじは勝負事ではありませんよ?…はい、結果です」

 

細長い紙を渡され、二人は楽しそうに文面を追った。黒犬は次々と読み進めていくが、十助は何故か固まっている。どうやら最初の一文字目から動いていないようだ。

 

突然硬直した十助を不思議に思った寧子が一歩近付き、内容を読み上げる。

 

「えっと…何々?『凶:このみくじに会う者は~』……って十助君凶なのにゃ!?」

 

「うっせえ!勝手に読むな猫にゃーこ!!」

 

涙目で叫び、十助はおみくじを後ろに隠す。後ろ歩きで寧子から距離をとると、こっそり近づいていた黒犬がするりと十助のおみくじを抜き取った。

 

「あー…こりゃあ……。俺より先におみくじを引いたバチが当たったか?」

 

「ほっとけ!そういうお前はどうだったんだよ!」

 

「ん?俺はこれ。大吉」

 

ピラリと黒犬が自分のおみくじを見せる。そこには大きく大吉と書かれ、勝負事、引っ越し、商売おおいに良しとあった。

 

「ついでに病気も早く治ってなくしものも出てくるってさ。凄いな大吉」

 

笑顔の黒犬とは逆に、十助は更に涙目になる。喧嘩っ早いが素直な十助のことだ。二人が大吉であったことも含めてショックを受けているのは用意に想像できた。

 

「えっと、十助くん?凶だからといって十助君が悪いんじゃないんですよ?」

 

「……へ?そうなのか?」

 

はい、と頷いて涼が続ける。

 

「おみくじは今年一年のことを占います。十助君には少々悪い結果が出てしまいましたが、予めそれがわかっていれば気を付けられるでしょう?」

 

「お、おう」

 

だから大丈夫ですよ、と涼が微笑むと、十助はわかったと言いたげに何度も頷いた。

 

「さ、皆さんおみくじは結んでいかれますか?あちらに結ぶところがありますけど…」

 

「一番高いところに結んだやつの勝ち!」

 

「あ!抜け駆けはずるいのにゃ!」

 

「十助にだけはまけられねーな…っと!!」

 

 

「…くれぐれも競争しないでください!!黒犬さん音澄さん十助君!その場に正座です!!」

 

あっという間に駆け出していった三人の背を、涼の声がぴしゃりと射抜いた。

 

 

 

 

 

 

「あれ?皆なにやってるの?」

 

「石畳に正座とは…何かの修行でござるか?」

 

「飾くん、狢君、その三人はそのままにしてくださいね?お説教中なんです」

 

 


 
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