No.657776

【獣機特警K-9ⅡG】勇気の意味【RS隊・交流】

タカヤ君 http://www.tinami.com/view/657057
ラウル署長 http://www.tinami.com/view/654333
マリア http://www.tinami.com/view/656879


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2014-01-26 13:53:31 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1003   閲覧ユーザー数:980

 ラミナ市郊外、20:00。

 アパートの住人の火の不始末により、火災が発生。火は、瞬く間に木造の建物全体を飲み込んだ。

 駆けつけた消防隊が懸命の消火活動に当たっているが、火は燃え盛るばかりだった。

「マリア隊長! 逃げ遅れた人を救助してきます!」

 RS隊の纏 孝也[まとい・たかや]が叫ぶ。

「ダメよ! 火の勢いが強すぎる! もう少し待機!」

 隊長のマリア・アインリヒトの言葉に、孝也は食い下がった。

「でも! 要救助者は助けを待ってるんです! オレ、行きます!!」

「あっ!? 待ちなさい!!」

 マリアの制止も聞かず、孝也は走りだした。そして、燃え上がる建物の中に消えていく。

 1分、2分、3分……。孝也たちは戻ってこない。

 と、その時!

  ガラガラグシャアァーンッ!!

 建物が耐え切れず崩落した!

「孝也君!!」

 悲鳴のようなマリアの絶叫。

 そして、辺りを沈黙が支配した。

 永遠のような時間。と、がれきの下から、這い出してきた人影があった。

「要救助者確保……。救助を完了しました」

 それは、幼い少女を抱きかかえた孝也だった。彼の耐火服の背中は大きく裂けていた。左腕は肘から先がちぎれ、骨格フレームがむき出しになっている。崩れ落ちてくる建物から、身を挺して少女をかばったのだろう。

 少女を救急隊に引き渡してから、孝也はマリアに歩み寄った。

「先輩、オレはちゃんと要救助者を助けだしましたよ。人の命と比べたら、腕の一本や二本なんか安いもんで……」

  パンッ!

 乾いた音が響いた。マリアが、孝也の頬を平手で打ったのだ。

「……勇気の意味を履き違えてもらっちゃ困るんだ。キミのはただの向こう見ずだよ。死にたがりは、あたしのRS隊には必要ない」

「せんぱ……」

 孝也の言葉を、マリアは遮った。

「隊長命令を無視した罰として、一週間の自宅謹慎を命じる。以上」

 そして、振り返ることもなく立ち去った。

 立ち尽くす孝也。

「……リカルド・マルタン」」

 その声に、孝也は振り返った。

「ラウル署長!?」

「リカルド・マルタン。かつて、2年間だけRS隊に所属していた男だ。私が一般の救助隊からスカウトしたんだ。マリアも彼にはよく懐いていたよ」

「その人がいったい……?」

「熱いヤツだったよ。『自分の命を引き換えにしてでも、人を救いたい』……それが口癖のような男だった」

 ラウルは言葉を紡ぐ。

「そして、2年前のアクアアイルコンビナート大規模火災で……殉職した。隊長の制止を振りきって、燃える工場内に突入して、な」

 ラウルの瞳が微かに揺らいだように見えた。

「マリアは、目の前でリカルドの最期を見た。だから、彼と君が重なって見えてしまうのだろう。君に、リカルドと同じ道をたどってほしくはないんだ」

「……」

  カン、カン、カン……・

 消防車の鳴らす鐘が、響いた。

 


 
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