No.657534

真・恋姫†無双 裏√ 第五十一話 悠里編其二

桐生キラさん

こんにちは
悠里編の二つ目、戦闘メインです

2014-01-25 18:43:56 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1895   閲覧ユーザー数:1666

 

 

 

 

 

 

悠里編其二

 

 

 

 

 

 

咲夜視点

 

 

 

 

 

 

私は、店を飛び出して行った悠里を探し、街中を走り回っていた。

悠里が行きそうな場所をくまなく探し、時に高台に登って辺りを見回したが、

見つからなかった

 

咲夜「チッ。今ほど悠里の速さを恨んだ事はないな」

 

あいつはうちの最速だ。まともにやれば、絶対に追いつけない

 

しばらくすると、空が暗くなり、雨が降り始めた

 

咲夜「チッ。降ってきやがったか」

 

さっさと見つけないと、風邪引いちまう

 

「司馬懿さーん」

 

私がもう一度街中をよく探していると、突然私を呼ぶ声が聞こえた。あれは…

 

咲夜「李儒さん?」

 

声の主は、元董卓軍軍師、現劉協配下で洛陽の政治に携わっている李儒さんだった

 

李儒「お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

 

咲夜「久しぶりだな。でもどうして李儒さんがここへ?」

 

李儒「はい。実は洛陽で、妖刀の盗難がありまして。

その調査依頼を曹操様にお願いしに来たのですよ」

 

咲夜「あぁ。その話なら、私も噂で聞いたな。確か巨大な肉切り包丁だって?」

 

李儒「はい。十三年前、世間を恐怖に陥れた殺人鬼が使っていたとされる妖刀です。

私もその事件の資料を見たのですが、文面であるにも拘らず、吐き気を催すような内容でした。

村を何個も潰すほどの大量虐殺。そしてどういうわけか、必ず一人は生存者がいる。

それもだいたい五歳くらいの、自我を持ち始める頃の子ども達が」

 

殺人鬼…十三年前…五歳…

 

咲夜「その生存者の名前はわかるか?」

 

李儒「はい。曹操様にも伝えるべく、事件の資料は全て持ってきています。

確か生存者の名簿も…はい、こちらです」

 

私は李儒さんから手渡された資料を見ていく。

予想通りなら、あるはずだ。あいつの名前………

 

咲夜「あった。やはり…」

 

李儒「どうかなさいましたか?」

 

咲夜「あぁ。この生存者にある名簿の、張郃ってやつ。こいつはうちの従業員だ。

そして今、私はそいつを探しているとこでな」

 

李儒「何かあったのですか?」

 

咲夜「わからない。でも妙な男を見てから、悠里の態度は激変した。

恐らくあの男が、その殺人鬼なんだろう」

 

李儒「そ、そんな…あの殺人鬼はとうに…いえ、まさか…」

 

咲夜「どうかしたか?」

 

李儒「その殺人鬼は、十三年前に既に討伐されています。

なのであり得ない、と言いたいのですが…」

 

李儒さんは突然表情を変え、冷や汗を流し始めた

 

李儒「これは、確定事項ではないのですが、その盗難があった前後、

張譲らしき人物を見たとの情報が入っています」

 

な!張譲だと?あいつが絡んでいるのか

 

李儒「今回、その報告もあって、私を始めとした元董卓軍と劉協様は、

この事態を大事に取り、こうして調査依頼をしに来たと言う事もあります」

 

また張譲か。すると太平要術も絡んできているな。しかし、死者を蘇らすだと?

あり得ない、と思いたいが、あの悠里の表情は、まさに仇を見る目だった

 

咲夜「わかった。私の方でも探ってみる。

李儒さん、悪いがその話、零士にもしてやってくれないか?」

 

李儒「もともとそのおつもりでした。それよりも、気をつけてください。

もしその殺人鬼であれば、相当な化け物らしいです。

武将級の精鋭百人を用意してやっと討てたとありますので」

 

咲夜「わかった。ありがとうな李儒さん」

 

京「京<みやこ>とお呼び下さい。あなたは私たちを救ってくださった恩人です。

遅れましたが、お預かり下さい」

 

咲夜「じゃあ私の事も咲夜と呼んでくれ。『晋』には月と詠と恋もいる。

京さんもゆっくりしてってくれ」

 

そして私は駆け出した。悠里は強い。

それは疑っていないが、相手が化け物だと話は別だ。

蘇るなんて、バカげている

 

咲夜「間に合うといいが…」

 

私はかなり焦り始めていた

 

 

 

 

悠里視点

 

 

 

 

 

悠里「見つけましたよ。どこに行くんですか?」

 

殺人鬼「あぁ?」

 

店を出たあたしは、あの男を見つけるために走り回った。

途中雨が降ってきたけど、そんな事気にしてられなかった

 

街中は全て調べた。そして私は街を飛び出す。

すると程なくして、見つかった。大きな肉切り包丁を担いだ、あの男を…

 

殺人鬼「なんだてめぇ」

 

悠里「覚えていませんか?

十三年前、あなたに全てを殺され、そしてあなたに生かされた子どもの一人ですよ」

 

殺人鬼「……あぁ。覚えてるぜ。

自分の両親が死んだ事も分かってなさそうな、あの乳臭ぇガキか。

へっ、随分いい女になったじゃねぇか。えぇ?」

 

男は突然こちらに殺気を剥き出しにする。それに触発され、あたしは咄嗟に武器を構えた

 

悠里「何故、あたしだけ殺さなかったんですか」

 

ずっと聞きたかった理由。何故あの夜、あたしだけが生き残ったのだろう。

残されたくらいなら、死んだ方がマシだと考えた時期もあった

大河さん、それに椎名さんがあたしを保護してくれなかったら、きっとあたしは死んでいた

 

殺人鬼「フッ。この時の為だ。ああして残しときゃ、俺を殺しに来るだろ?

俺はな、闘って死にたいんだ。より強い奴と殺しあって、その中で、死ぬ」

 

悠里「その為だけに、私を生かしたと」

 

殺人鬼「あぁ。心地いいぜぇ。てめぇのその殺気、憎しみ、そして恐怖!

何ビビってんだよ、殺しに来たんだろ?この俺をよ!」

 

私は震えていた。それが許せないからの怒りなのか、

それとも相対している男の邪気による恐怖なのか、わからなかった。

あたしは、こいつにとってただの道具。こいつを殺すためだけに生かされた人形。

認めたくなかった。だけど!

 

悠里「お前は、お前だけは!ここで討つ!みんなの、あたしのおとうとおかあの仇!許さない!」

 

殺人鬼「!!」

 

あたしは一気に距離を詰め、相手の背後をとった。そして思い切り頭目掛けて振り抜く

 

 

キィンッ

 

 

悠里「な!」

 

あたしの攻撃は、その大きな肉切り包丁に止められた。

完全に背後をとったつもりだったのに、反応された…

 

殺人鬼「速ぇじゃねか。少し危なかったぜ」

 

 

ブォンッ

 

 

男は肉切り包丁を振り回し、あたしの頭上に振り下ろす。

あたしはそれを避けるも、その威力と速さに驚愕した。

一撃で、地面が割れていた。あれを食らえば、真っ二つは免れない

 

悠里「クッ…アァァー!」

 

あたしはさらに速度を上げ、猛攻を仕掛ける。

一撃入れて距離を取り、また一撃入れて距離を取る。だが全て受け止められてしまう。

それならばと、今度は連撃で追い詰めて行く。

相手に攻撃をする隙を与えないように、速く、より速く動く

 

殺人鬼「いいねぇ!いいねぇ!最高だよ、お前!強ぇじゃねか!」

 

男は笑っていた。追い込んでいるのは私の方なのに、それすら愉しんでいるようだった。

その邪悪な笑みに震えたあたしは、一瞬隙を作ってしまう

 

 

ガキンッ

 

 

悠里「あうっ!」

 

少しの隙も見逃さなかった男は、一気にあたしを押し返し、

その衝撃に耐えきれず、あたしは吹き飛ばされてしまった

 

殺人鬼「おい、それで終わりかぁ?もっと愉しませろよ!」

 

悠里「ウッ…」

 

たった一撃もらっただけで、震えが止まらなかった。怖い。目の前の男が純粋に怖かった

 

殺人鬼「なにブルってんだよ。…はぁ。お前、あの店にいた奴だよな?」

 

悠里「…え?」

 

殺人鬼「お前には期待してるんだ。だからよぉ、殺してくるわ。

あの店の奴らも、街の奴らもよぉ」

 

殺される?お父さんも、お母さんも、咲夜姉さんも、東おじさんも、

ここで出会った人たちが殺される?

 

悠里「な…だ、だめ…それだけは、絶対にだめ!」

 

あたしはまた失うの?この人はまたあたしから大切なものを奪っていくの?

 

殺人鬼「聞けねぇなぁ、そんな頼み。

じゃなきゃお前は俺に挑まねぇ……あぁ、いい事を教えてやるよ。

俺が肉片にしてやったお前の両親もなぁ、そうして頼んでたよ。

この子だけは、この子だけはってな。今のお前、そいつらにそっくりだ」

 

男はそう言うと、声に出して笑い始めた

 

許せない。この男だけは、ここで殺さなくちゃいけない。

おとうとおかあは私を守って死んだ。今度は私が、大切な皆を守らなきゃいけない

 

悠里「ハァァーッ!」

 

あたしは恐怖を吹き飛ばすように叫び、男に向かって行った。

あいつは一瞬驚いた表情を見せるも、すぐに笑みを漏らし、あたしの攻撃を止めた

 

殺人鬼「そぉだ!それでいい!もっと憎め!もっと殺気を出せ!

俺をやらなきゃ街の奴らが死ぬぞ!」

 

悠里「やらせない!もう二度と!あたしの大切なものを壊させはしない!」

 

思い出すのは、街のみんなの、お父さんとお母さんの、『晋』の人たちの笑顔。

みんなを思うと、不思議と力が湧いてくる

 

殺人鬼「これだ。この力こそが!最高だぁ!あの時殺さなくて正解だった!

さぁ、俺を殺してみせろ!」

 

悠里「ハァッ!」

 

極限の命のやり取り。少しでも気を緩めたら死ぬ。そんな打ち合いが何合も続く。

高速での打ち合いがさらに続き、やがて…

 

 

ドカッ

 

 

殺人鬼「クッ…」

 

攻撃が入った!あたしはこの好機を見逃さず、体勢の崩れた敵に猛攻をかける

 

殺人鬼「ぐぉぉ…」

 

頭、胴体、脚と、あたしは次々に鉄棍での攻撃を当てて行く

 

悠里「トドメ!」

 

最後に大振りの攻撃を当て、あいつを吹き飛ばす。

男は武器を手放し、大きな音を立てて倒れる。私は男の武器を拾い、そして…

 

 

グサッ

 

 

殺人鬼「ガフッ…」

 

それを心臓に突き刺した

 

 

 

 

悠里「はぁ…はぁ…」

 

男は、その周囲に大きな血だまりを作り動かなくなった

 

悠里「やった…やったよ…おとお…おかあ…みんなの仇、とれたよ…みんなを、守ったよ…」

 

気づけば、あたしは膝を地につけ泣いていた。

 

それが嬉しさからくるものなのか、

悲しさからくるものなのか、

何故かはわからないけど、涙が止まらなかった

 

悠里「う…ぐす…」

 

 

 

脅威は去った

 

 

 

みんなのところに帰らなきゃ

 

 

 

あたしの大切な人たちに会いに行かなきゃ

 

 

 

あたしは安心しきっていた

 

 

 

だから反応することが出来なかった

 

 

 

まさか、男が立ち上がるなんて

 

 

 

そして男が武器を心臓から引き抜き、私に振り下ろすなんて

 

 

 

そしてあたしの世界は、闇に包まれた

 

 

 

あぁ

 

 

 

やっぱり今日のあたしは

 

 

 

調子悪かったんだ…

 

 

 

 


 
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