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機動戦士インフィニットOODESTINY

第二話 呪われし最強(制作者談)兵器と三匹の一角獣

2014-01-23 00:06:23 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4087   閲覧ユーザー数:3867

「諸君!」

 

明かりに照らされたホール。そのステージの上に、黒い髪をした少年が壇上にあがった。

 

「まずは集まってくれたことに、感謝しよう。諸君、私は━━妹キャラが好きだ」

 

その少年、シン・アスカは瞳からハイライトが消え失せた。所謂、ヤンデレと暴走時のシスコンを混ぜ合わせたような眼でさらりと宣言した。

 

「諸君、私は妹キャラが好きだ

諸君、私は妹キャラが大好きだ」

 

妹キャラ━━それはゲーム、アニメ、漫画、小説等創作物の中の存在。

実妹・義妹の他、主人公を「お兄ちゃん」や「お姉ちゃん」と呼ぶ従妹・幼馴染・後輩・生徒・親戚などが該当する。

大事なことなので三回ほど回言いました。その言葉に耳を傾けているのは、ほぼ全員メガネという驚異のメガネ率……そんな屈強な男たち(一部女あり)。ちなみにほとんどのメガネが、牛乳瓶の底のようなグルグルメガネである。

 

「実妹が好きだ。

義妹が好きだ。

ツンデレ妹が好きだ。

ヤンデレ妹が好きだ。

クーデレ妹が好きだ。

無口妹が好きだ。

無邪気妹が好きだ。

病弱妹が好きだ。

眼鏡妹が好きだ。

アニメで。

漫画で。

ラノベで。

空想で。

ゲームで。

CDで。

テレビで。

紙面で。

ネットで。

妄想で。

この世界に存在するありとあらゆる妹キャラが大好きだ。

羞恥に頬を染めた妹キャラの告白が妄想と共に理性を吹き飛ばすのが好きだ。

両親の告白で実妹だと思っていたのが義妹だったと分かった時など心が踊る。

イベントで着替え中の妹キャラと遭遇するのが好きだ。

悲鳴を上げてお兄ちゃんを追い出した妹キャラが「お兄ちゃんなら平気」と呟いた時など胸が好くような気持ちだった。

限界を超えた妹のヤキモチがお兄ちゃんを蹂躙するのが好きだ。

恐慌状態の妹が告白したお兄ちゃんに何度も何度も「夢じゃないよね?」と聞いている様など感動すら覚える。

ツンデレの妹達がツンからデレに変わっていく様などはもうたまらない。

クーデレの妹達がお兄ちゃんからの告白と共に感極まって泣き崩れずっと好きだったと告白されるのも最高だ。

病弱な妹が気力を振り絞って健気にも立ち上がってきたのをお兄ちゃんの両腕で優しく抱きとめた時など絶頂すら覚える。

ヤンデレの妹キャラに無茶苦茶にされるのが好きだ。

必死に守るはずだった秘密が暴露され妹が病んでいく様はとてもとても悲しいものだ。

常識と妹キャラの板ばさみで苦悩するのが好きだ。

奇異の視線に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ」

 

色々と一人の男子高校生軍人としてはアレな発言が一部あったが、集まった人たちは黙って聞いている。感情を込めて、時には淡々と、強弱のある演説。聞く者のテンションを上げては、下げる。そしてもう一度上げる。それか士気を上げるのに一番効果覿面なのである。

 

「諸君、私は妹キャラを、女神の様な妹キャラを望んでいる。

諸君、妹キャラを愛するお兄ちゃん諸君。君達は一体何を望んでいる?」

 

軍人たちが聞き入っているという事は、少なくともここに居る人間、総勢三千人の心は一つのようである。メガネを掛けていない少年、シンは再び口を開く。

 

「更なる妹キャラを望むか?情け容赦のない、天使の様な妹キャラを望むか?傍若無人の限りを尽くし、三千世界のお兄ちゃんを萌やす嵐の様な妹キャラを望むか?」

 

軍人たちは、手にしたケータイゲーム機やカード、イラスト集を手に地鳴りのように一斉に踵を慣らすと、彼の問いに応えて見せた。

 

『『『妹!!妹!!妹!!』』』

 

「よろしいならば妹キャラだ」

 

2900人のメガネと99人の非メガネに一人のシスコン(?)総勢3000人。全員の心は妹キャラという共通の神にも等しい対象を前に、固い絆で結ばれる。どんな言葉でも表しきれぬ感情。それを非メガネ(仮名)は代弁する。

 

「我々は妄想の果てに今まさに萌え上がらんとするお兄ちゃんだ。

だがこの妹暗黒時代に数年もの間、堪え続けてきた我々にただの妹キャラではもはや足りない!!」

 

周囲を見渡しながら、非メガネはまるで演説かのように熱く叫ぶ。

 

「妹女神を!!純真無垢な妹女神を!!我らはわずかに一個大隊千人に満たぬお兄ちゃんにすぎない。

だが諸君は、一騎当千のお兄ちゃんだと私は信仰している。

ならば我らは諸君と私で総兵力100万と1人のお兄ちゃんとなる。

我々を、妹達を忘却の彼方へと追いやり、眠りこけている連中を叩き起こそう。

髪の毛をつかんで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう。

連中に妹キャラの良さを思い出させてやる。

連中に隠された妹属性を思い出させてやる。

理想と妄想の狭間には奴らの哲学では思いもよらない萌えがあることを思い出させてやる。

一千人のお兄ちゃんの妄想で世界を萌やし尽くしてやる」

 

非メガネ改め、シンは口元を三日月の形に歪める。

 

「妹ルネッサンス。

状況を開始せよ。

逝くぞ諸君」

 

「ウオオォォォォ!!」

 

高らかにケータイゲーム機やイラスト集を掲げたメガネたちは直ぐ様画面をタッチするなり、イラストを見せ合い始めた。

 

「あんた達何やってんのよこらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そんな中、壇上にいた少年が、突如乱入してきたルナマリア・ホークのドロップキックで仲良く吹き飛ばされる。

 

「「「「「「ア、アスカ殿オオオォォォォォ!!」」」」」」

 

「騒がしいぞボンクラ共、俺のことは少佐と呼べと言ったはずだ。

ああ、マユが呼んでいる。あのどうしようもない、寂しがり屋が。俺は彼女の元へ逝かなくちゃいけないんだ……」

 

グフッ、と口から赤い液体を垂らしながら、シン・アスカは軍人の腕の中でガクッと倒れた。

 

「「「「「しょ、少佐アアアァァァァァァァァ!!」」」」」

 

西暦2307年四月一日。

この日、一人のシスコン軍人が命という名の美しい華を散らした。その一瞬を見た者達は最期を終えるその時まで脳裏に焼き尽くしたという。

 

「どうでもいいけど任務中だって事を忘れないでね?」

 

『『『あ、すんませんタリア艦長』』』

三つに分かれた三大洋と七つに分かれた七大陸を持つ人類の故郷、地球。

その地球に存在する一つの国、日本のとある県の海鳴市と呼ばれる町から少し離れた巨大人工浮島(メガフロート)に建設されたIS操縦者育成機関《IS学園》。そこにエデンのザフト軍南基地サイドと北基地サイドのメンバーが世界初の男子IS搭乗者、織斑百春の護衛という任務の元、集結していた。

 

「ナカジマ家の格言、今夜は魚祭りだ!!」

 

IS学園の海沿いに位置する釣り名所にて弾・ナカジマが海に向かって叫んだ。

 

「突然どうしたんだ?ナカジマの奴」

 

「さぁな」

 

それを不思議そうに見てるのは弾とは反対側の基地に所属する赤服のザフト兵。一人は妹キャラについて熱く語っていた彼女持ちのシスコン、シン・アスカ。そしてもう一人は無口な金髪のレイ・ザ・バレルだ。

ちなみにこの場にはクロノとユーノのみならずヴィーノ、ヨウランもいる。アーサーも来たがっていたがタリアに呼び止められ、今頃は激務と死闘を繰り広げているところだろう。

 

「そういえばセイエイ兄妹はどうしたんだ?せっかく新たな同士が出来て妹キャラについて熱く語ろうと思ってたのに……」

 

「あの二人ならなのはとフェイトを連れて海鳴市に行ったよ。故郷らしいからね」

 

シンの呟きに答えてみせたのは意外なことにクロノであった。

 

「ところで妹キャラについてなんだが」

 

ここで読者諸君に訴えたい事はクロノ・ハラオウンは、フェイト・テスタロッサとアリシア・テスタロッサを妹も同然に扱い、これまでずっと愛でてきた。結婚して子供までいると言うのにである。

 

「弾は行かなくていいの?君も海鳴出身だろ?」

 

ふと思い出したようにユーノが弾に尋ねてみる。

 

「あ~、俺はいいよ。一夏たちと違って、俺は元の家族と絶縁しちまってるし」

 

それに今はナカジマ家が俺の家だ。とユーノの問いに笑って答える弾。その手に持つ竿に当たりが来るのはそれから僅か数秒後のことであった。

一夏は海沿いの道を一人歩いていた。海から吹き付けてくる風は、記憶よりも重い。地球に降りてからリンディ艦長に最初に言われたのは自由行動だった。IS学園の入学式は明日。今日は特にすることもない一夏たちはそれぞれ自由に行動をとることになったのだ。まず、弾とシン、レイにクロノ、ユーノがIS学園側の海沿いで釣りを、なのはは地球に残った両親の経営する喫茶店にフェイトと十秋を連れて行き、俺はこうして行く宛もなくただふらふらと歩くだけで、残りは学園の警備体勢や織斑百春への対応について教師たちと話し合っている。そうして歩いているうちに一夏はふと思った。

━━俺は、この町に……海鳴市に戻ってきたんだ……。

そう考えると意志に関わりなく、体の奥がざわつくような感じになる。

こんな形で帰ることになるとは思ってもいなかった。二度とその土を踏まないと誓った祖国━━だがこうして戻ってみると、郷愁としかいいようのない勘定がわき上がり、一夏は自分の気持ちを扱いかねていた。

あの日、爆撃を受けた軍港は、すっかり趣が変わっていた。アスファルトは石畳の遊歩道に変わり、港への斜面は芝生に覆われ、規則的に花が植えられた公園になっている。一夏はなんだか肩すかしを食らったような気分で、綺麗に整備された一帯を見回す。しばらく見るうち、今はなだらかな丘に変わったそこが、あの日自分と十秋が転がり落ちた斜面だと解った。あそこに楓の……両親の、無惨な遺体が転がっていたのだ。一夏の胸にどうしようもない怒りと憎しみがこみ上げ、ふつふつと煮えたぎる。

あいつら(・・・・)は、この場所までも綺麗な仮面を被せ、まるで無かった事のように覆い隠してしまったのだ……!

一夏はうずくまり、握り締めてきたピンク色の携帯電話を開いた。

 

『はい、楓です!でもごめんなさい。今楓はお話が出来ません。あとで連絡をしますので……』

 

あどけない少女の声が、誰もいない公園に流れ、風に運び去られる。胸の痛みは今もあの時と変わりなく強い。この痛みを忘れる日がいつか来るのだろうか?

 

「あっ」

 

誰いないはずの公園に、風に混じってかき消されそうな程小さな声が届いた。声のした方に振り向いてみると、そこには一夏の見知っている人物がいた。そこまで親しい間柄ではない。しかし、何故か印象に残っていた人物がそこにいた。

 

「あんたは……」

 

「また、会いましたね」

 

それは数日前の両親と楓の墓参りの時に来ていたあの少女だった。しかし、その服装はかなり変わっていた。それは一般市民であり続ける限り決して着ることなど永遠にない代物だ。

 

「君も……軍人だったのか」

 

「はい、一応……」

 

赤を基調としたザフト軍の軍服。それが今彼女が身に纏っている服である。理由を尋ねてみると、慌てて出掛けてたせいで着替える暇がなかったらしい。今度は何故慌ててたのかを聞いたら、なぜだか誤魔化された。

 

「自己紹介、してませんでしたよね。私はメイプル、メイプル・リスティです」

 

「一夏・F・セイエイだ。よろしく」

 

互いに自己紹介を終えた後、一夏はメイプルを連れてなのはの両親が経営しているという『翠屋』に向かった。十秋を迎えに行くというのもあるが、同じガンダムに乗る仲間の家族関係というものに一夏は自然と興味を寄せていたのだ。そもそも、一夏も十秋も、六年前の白騎士事件で両親を同時に失っている。期間で言えば人生の中でたったの十年間。それが一夏たちと両親が共に歩んできた時間だ。

隣でチラチラとこちらに何度も視線を向けようとしてはすぐそらすメイプルを変な奴。と思いながら進んでいくとかなり立派な木造の建物が見えてきた。なのはから貰っていた地図の通りならここがその翠屋なのだろう。

正面に立つと看板には『翠屋』と描かれていた。

 

「あ、お兄ちゃん」

 

店に入ろうと一歩を踏み込んだ一夏の目の前に扉を開けて出てくる妹の姿が現れた。その後ろにはなのはたちの姿も確認できた。

 

「用は済んだのか?」

 

一夏はなのはに対してそう尋ねた。

 

「うん、大丈夫。それにこれ以上いたら帰りたくなくなりそうだし」

 

彼女がどういった経緯でエデンに来たのか、一夏は知らない。だが彼女の様子からそれはとても大きな理由なのだと理解した。おそらくフェイトもそんな所なんだろうと思いながら一夏はメイプルを紹介する。

 

「彼女はメイプル・リスティ。さっきそこで出会った北基地のザフト兵なんだ」

 

「メイプル・リスティです。よろしく」

 

「そうなんだ。私はフェイト・テスタロッサ。よろしくねリスティ」

 

「高町なのはです。リスティさん、三年間よろしくお願いします」

 

「私は十秋・F・セイエイ。お兄ちゃんの妹です」

 

それから立ち話もなんだから、という理由で翠屋に引き返すことになった俺たち。店に入って俺が最初に驚いたのは店主とその奥さん、つまりなのはの両親が二十代にしか見えなかったこと。次に喋るフェレットがいたこと(また、フェイトの家には喋る上に変身する狼がいるらしい)。そして知られざる運動オンチだった小学生時代のなのはがスプーンを剣に見立ててコップに穴を開けた過去があることだった。

ちなみに女性陣はものの数分でまるで幼い頃からの親友かのように楽しく会話をしていた。その中で俺は完全にいない人扱いだったことに泣きかけたりはしなかった。代わりに疎外感を感じて拗ねたりはしたがな。内容?聞く訳ないだろ。女子の話だぞ

 

「うわ~、もうこんな時間なんですね」

 

女性陣の長い会話が終わり、そろそろ学園に帰ろうという事になった頃には真っ赤に染まりだしており、それを見てメイプルがそう呟く。

 

「そりゃあ三時間も延々と長話してれば日も落ちてくるだろ」

 

「もう、お兄ちゃんったらいつまで拗ねてるの?」

 

逆に三時間も会話の中に入れさせて貰えず放置プレイされてたら嫌でも拗ねたくなるものだ。しかも誰も救いの手を伸ばしてくれなかったのだからよけいにそう思っても仕方ない。

 

「ところでメイプルちゃんはどんな機体に乗るの?」

 

既にパイロットであることを知っているなのははどんな機体に乗っているのか興味を抱いたらしくメイプルに問い掛けてきた。

 

「フリーダムっていう殲滅型対兵器戦用MSだよ。北基地のフェイズシフト装甲を採用していて、実弾による攻撃ほぼ無力化出来るんだ」

 

「へえ、まるでGNフィールドの逆だね」

 

「GNフィールド?」

 

「放出したGN粒子を球状の形にして攻撃を防ぐ防御フィールドの事だよ」

 

フェイズシフトが実弾の無力化、そしては太陽炉搭載機にのみ搭載されているGN粒子による防御フィールド【GNフィールド】は攻撃そのものを無力化出来るが実体兵器の場合、無力化そのものは出来るがある程度の攻撃を受けると突破されてしまうという特徴があるが、なるほど……確かに長所と短所が真逆になっているな。ちなみに東基地では、ドリル状に回転させたビームが【DODS効果】を発揮して、対象を共振粒子の渦に巻き込んで消滅(原子崩壊)させるという【Drill-Orbital Discharge System(機械穿孔電子軌道放出システム)】が新たに開発され、西基地ではモビルスーツの骨格である、ムーバブルフレームをすべてサイコフレームで構築したフルサイコフレームと呼ばれている、パイロットの脳波を拾い上げ、それをダイレクトに機体のモーションに反映させる【インテンション・オートマチック・システム】を実現している。

こういったモビルスーツの発展は、兵器としての運用のみならず、宇宙で暮らす人々の生活の為にもなっていた。

例えば数年前までは問題視されていたデブリや小惑星による衝突事故等も、今ではモビルスーツの活躍による対応のおかげで事故率は大幅に減少している。

しかも宇宙に限らず、地球上でも運用が可能なため、災害地での救助活動や未知の領域への探索に特化したモビルスーツも造られているのでぶっちゃけ女性にしか乗れず、尚且つ本来の目的であるはずの宇宙進出を叶えられず、スポーツに落ち着いたISでは知名度の差は年々開いていくばかりである。

 

(造った本人は今頃歯軋りでもしてるのかね)

 

もしそうだったらどれほど滑稽なことだろうか。自身が造った飛行パワードスーツの性能を見せつけるためだけに両親に本人にとっての妹であり、一夏の愛した人物を含む大勢の人の人生を奪ったにも関わらず、それ以上に性能の高いパワードスーツの存在によりただのスポーツにされているのだから。

夕日に照らされ輝きを増す四人の美少女たちの後ろで、一夏はこの世界のどこかにいるであろう天災の顔を思い浮かべながら、憎悪と殺意と、嘲笑の顔で空を仰いだ。

「むーん……」

 

そこは奇妙な部屋であった。

部屋の至る所には機械の備品が散りばめられ、ケーブルがさながら樹海のように広がっている。その金属の根の上を歩いていくのは、機械仕掛けのリスだ。時折床に転がっているボルトを、ドングリよろしくかじっている。

カリカリカリカリ……と響くその音は、昔一般的に使われていた磁気式記憶装置(ハードディスク)の書き込み音によく似ていた。

不要な部品を識別、その構成素材を分解して吸収、別の形へ再構成するリスなど、地球上を探してもここにしかない。

そう、ここは━━ISの生みの親である篠ノ之束、その秘密ラボである。

 

「あー、終わっちゃった」

 

最新式の空中ディスプレイで束が行っていたのはゲーム。しかしただのゲームなんかではない。これは一週間前束が作り出したISとモビルスーツによる戦争ゲーム。タイトルは【インフィニット・ストラトス~モビルスーツの鎮魂歌(レクイエム)~】

内容はタイトルから大体想像できるだろうが、突如地球の侵略を目論むモビルスーツの猛攻にISが立ち向かい、最終的にはボスであるデビルガンダムを倒すのが目的のまさしくISこそが最強と信じて疑わない束らしいゲームである。余談だがこのゲームに存在するモビルスーツは世間的に出てる作業用量産機のみで中ボス以上は完全オリジナル。独特の武器もなければパイロットも顔無しのモブ。制作者()の意図的な悪意が見える。さらにストーリーがかなり短いときた。

元々飽き性な束が暇つぶしのために敵は適当に、しかし味方は徹底的に組み込んだゲームなので仕方ないと言えば仕方ないのだが、もしこれが全世界に販売されたらネットはクソゲーの嵐となるだろう。さらにエデンから苦情がきそうだがそんなもの知ったことではない。彼女にとってモビルスーツは自身の最高傑作のパクリ、または邪魔物としか見てないのだから

 

「んー……、暇、暇ぁ」

 

立ち上がれ 気高く舞え 天命(さだめ)を受けた戦士よ 明日の平和への 礎となれ 熱くなれ 大きく咲け 天に捧げし命よ 弱き者の盾となれ そして 世界を 導け

 

マブ○ヴ オ○タネイ○ィヴどころかマブ○ヴすらやったことのない作者が唯一好きな曲である。しかし束もそれを気に入っていたとすると……なんか嫌である。

 

「こ、この着信音はぁ!トウッ!ヘアッ!」

 

大ジャンプ。もとい、携帯電話にダイブである。がっしゃーんとマグカップにツールキットが激しく散らばるが、束にとってはどうでもいい。すぐさま携帯電話を耳に当てる。

 

「も、もすもす?終日(ひねもす)?」

 

『━━。束さん』

 

折れていた機械の兎耳がビーン、十真っ直ぐに立ち、その反応の大きさを雄弁に物語っていた。なにせこの電話が鳴るのは実に六年ぶりなのだから

 

「うんうん、用件はわかってるよ。欲しいんだよね?君だけのオンリーワン、代用無きもの(オルタナティヴ・ゼロ)、ハル君の専用機が」

 

『え?いや、そんな事よりも……』

 

ハル君と呼ばれた少年が何か言いたげだが束はそれを無視してさらに話を進める。

 

「モチロン用意してあるよ、最高性能(ハイエンド)にして規格外仕様(オーバースペック)

 

『あの、何を言って━━』

 

「そして、ガラクタのモビルスーツなんてのはもちろん、最強のISの頂点に立つその機体の名前は━━」

 

『お願いだから話を』

 

━━ヴァルヴレイヴ零号機火之鳥(ヒノトリ)

 

ハル君とやらの必死の声は、束の満足げな声に掻き消されてしまった。

結局、ハル君は束に肝心の聞かせたい話を聞かせられぬまま、電話を切らざるを得なくなってしまった。

 

ヴァルヴレイヴ零号機火之鳥。

 

不死鳥の名を冠するその機体は、果たしてハル君にどのような未来へ誘ってゆくのだろうか……

 

同時刻、エデン西基地周辺にて

三機のモビルスーツが地球へと降り立つこととなり、西基地カタパルトから射出された。

それは純白と漆黒、そして黄金のモビルスーツだった。そしてそれを目撃したコロニーの住民は口々にこう呟いた。

 

『三匹の一角獣が地球に向かって走っていった』と

 

可能性の獣と自称最強の兵器、そして変革と運命。

これらが交わりしとき、世界は新たな段階(ステージ)へと足を踏み入れることとなる。

キャッチコピー案

『人類は今、新たな段階(ステージ)へと足を踏み入れる』

 

『偽りの真実を、打ち砕け』

 

『今、人類が、世界が、変革する』

 

どれが一番きましたか?


 
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