第八話―旅は道連れ
一刀達は現在荊州入りを果たしたが、どうやら道に迷っている模様。
七乃「まずいですね~こっちが近道かと思ったんですが・・・」
美羽「七乃、向こうに見えるのは炊煙かえ?」
七乃「そのようですね~あの量ですと・・・陣に近いのではないでしょうか?」
一刀「陣?こんな場所に??」
七乃「む~~~~、あ!そう言えば近くに古い砦があった気がします。」
美羽「古い砦の炊煙?嫌な予感しかしないんじゃが・・・」
一刀「雨風がしのげるなら文句は言ってられないよ。ほら、向こうから明らかに雨雲みたいなのが近づいてるし。」
七乃「そうですね~。お嬢様、此処は我慢ですよ~」
美羽「仕方ないのじゃ」
一刀「よし、急ごう。・・・・・・・・・もし美羽と七乃に手を出すような屑どもなら・・・」
一刀は二人には聞こえないようにそうつぶやくと二人の前を早歩きで歩き出したのだった。
此処は廃砦。その内部。
悪漢「頭、土産ですぜ。」
頭「ん??おう、上物じゃねえか。でかした。」
悪漢「ま、俺好みのを逃がしちまいましたからね。」
頭「あん?しょうがねえな。牢から好きな奴一人持って行きやがれ。」
悪漢「へへへ、ありがとうごぜぇやす。」
頭「・・・さてと・・・お嬢ちゃん。おじちゃんと良い事しようね~」
関平「・・・下衆が・・・」
頭「おぉ、怖い怖い。だが、縛られてりゃ何もできねぇだろ?」
賊の頭がそのまま関平の縛られた足に手を伸ばそうとしたその時、砦の門を守っていた賊がボロボロになりながら慌てて入ってきた。
門番「か、頭ぁ!た、助けてください!!」
頭「あぁん?どうした!!俺はこれからいいとこなんだぞ!?」
門番「そ、それが、砦に今晩泊めてほしいってやつらが居たんで・・・一緒に居る女と一発やらせろって近づいたら・・・」
その門番の言葉はそこで途切れ地面に倒れて動かなくなってしまった。
頭「な!だ、誰だ!?」
一刀「・・・ああ、俺は通りすがりの旅人さ。ただ、連れの者に手を出そうとした馬鹿共を許せなくてね。ついでに予想通りの賊だったから殲滅ぐらいしておこうと思ってね。」
頭「こ、此処には俺の部下の八十人が居るんだ。お前ごときが・・・」
一刀「ん?此処まで来る間に襲ってきた奴らなら、連れが懲らしめてるけど・・・案外弱かったな。」
頭「なにぃ!?」
関平「・・・・・・・」
一刀「君は・・・捕まっているのかい?それなら助けないとね。」
一刀はそう言うと腰に差した木刀に手を添える。
一刀「さぁ、貴様も腕に自信があるなら掛かってきな。」
頭「ほざくんじゃねぇ!ガキがぁ!!」
一刀「あれ?本当に向かってくるの??」
頭「はぁ!?当然だろう・・・が!!」
スッ
頭「んなぁ!?」
一刀「ほいっと。」
ゴッ!
頭「がぁ!?」
どさ
一刀「いや~。人質ぐらいに使ってくると思ってたから拍子抜けだね。君、大丈夫かい?」
関平「は、はい。ありがとうございます。」
一刀「怪我もないよう・・・ん?頭から少し血が出てるね。」
関平「あ、街で殴られて・・・薄れる意識の中私を殴ったのは憲兵だと言う事が判ったのですが・・・」
一刀「憲兵が!?それは問題だな・・・」
七乃「この先の街を治めてるのは、確か黄祖だった筈ですね。」
一刀「ああ、七乃お疲れ様。黄祖・・・ねえ七乃、孫堅さんって・・・」
七乃「ご存知でしたか。黄祖によって殺されたんですよ。向こうはお嬢様の意向に従ったって言ってますけど・・・そんな事お願いした覚えがないんですよね。そこから孫家の方々から嫌~な目で見られるようになったんですよ。」
関平「???」
一刀「ひとまず落ち着いて話せる場所を見つけよう。さすがに死体の中で寝泊まりは出来ないよ。」
美羽「それなら奥の方に部屋を見つけたぞ?狭いが寝床もあったのじゃ。」
一刀「美羽もお疲れ。牢の方は片付いたようだね。さて、背に腹は代えられないか。君もいいかい?」
関平「は、はい。」
こうして一刀達は砦の一室にて話をする事になった。
関平「まずは助けていただいてありがとうございます。私は関平と申します。」
一刀「北郷一刀だ。」
七乃「張勲です。」
美羽「袁術じゃ。よろしくな、関平。」
関平「・・・袁術??」
美羽「なんじゃ?」
関平「いえ・・・寿春の太守だった袁術ですか?」
美羽「・・・うむ。」
関平「・・・・・・」
関平は何やらあんぐりと口を開けて呆けている。
一刀「どうしたんだ?」
関平「い、いえ。風のうわさで袁術はそれは尊大な態度の悪い太守と聞いてたので・・・」
美羽「わ、妾はそう見えてたのかえ!?」
七乃「あ~。孫策さんから見たらそうかもですね~」
美羽「んなぁ!?七乃。わ、妾は言われた通りにしていただけじゃぞ!」
一刀「それが問題だったんだよ?」
美羽「そ!?それはそうじゃが・・・なんか納得できん・・・」
七乃「は~、落ち込むお嬢様可愛いですね~」
一刀「七乃。自重しなさい。」
七乃「はっ!いけない、いけない。それでどうしますか?この先に行けば黄祖の街に入りますが。」
一刀「どうにかして黄祖を排斥出来ないかな?」
七乃「ん~私達は全然力の無い人間ですからね。」
美羽「悲しい事じゃが・・・それでも見て見ぬふりは出来んの。」
七乃「お嬢様・・・」
関平「あの・・・」
一刀「ん?」
関平「まさか、どうにかしようとお考えなのですか?」
一刀「ま、そうだね。俺達の主が見て見ぬふり出来ないって言ってるし。」
七乃「そうですね~」
関平「・・・本当に噂とは違うのですね。」
一刀「ま、こうなったのはつい最近だよ。」
美羽「関平、妾は主の言う通りの人間じゃった。何も知らず、言われた通りの事をして、結局このありさまじゃ。じゃが妾は変わると決めた。道中に立ち寄った村が賊に襲われるのを見て、こんな世の中を何とかして変えて行きたいと思ったのじゃ。」
関平「・・・」
七乃「それも一刀さんのおかげですからね~」
関平「北郷さんの?」
七乃「はい。何せ、天の御使い様ですから。」
関平「えぇ!?天の御使い!?!?」
七乃「はい~」
美羽「妾の元に降り立ったのは天の意思じゃと言っておったの。」
関平「そ、そうなんですか・・・」
一刀「さて、ひとまず寝ようか。俺は一通り見回りながら賊の遺体を整理して来るよ。」
関平「あ、手伝います。手伝わせてください。」
一刀「え?でも君は・・・」
関平「これでも武人のはしくれです。それぐらい出来ます。」
一刀「そうか、分かったよ。七乃、俺と関平は見回りながらめぼしい物漁ってくるよ。」
関平「・・・あれ?何やら賊まがいの事言ってません?」
七乃「気のせいですよ~私達も旅をしながら生活しなければなりませんからね~」
関平「・・・わ、分かりました。」
こうして一刀と関平は部屋を後にし砦内の見回りを開始させた。
砦内の賊の死体を中庭に山にして燃やす準備をしていた。
関平「なぜ燃やすのですか?」
一刀「肉は腐ると疫病の原因になりかねないからね。」
関平「そうなのですか?」
一刀「ま、天の知識ってやつだよ。」
関平「そうなんですか。」
一刀「気持ちのいいものじゃないけどね。燃え残りが無いようにしないと・・・」
死体の山で火を放った一刀の後ろで関平は一刀に聞きたい事があったので話しかけていた。
関平「それで、北郷さん。」
一刀「何?」
関平「本当に袁術殿の所で天下太平を成すのですか?」
誰もが思う事。袁術は尊大な我が儘太守と言うのが世の中の認識なのだから。
一刀「ああ、もう大まかな流れは頭の中に出来上がってる。」
関平「そうですか・・・」
一刀「関平は美羽が信用できない?」
関平「それは、噂が噂ですから。」
一刀「確かにね。でも・・・あの子を見てどう感じた?」
関平「それは・・・」
関平は言葉を濁した。自身でも分かっているのだ。噂は噂。本人を見て噂が誇張されていることぐらいは彼女にも分かっていた。
一刀「あんな子供に今までしてきた事の罪をすべて背負わせていいはずがない。それこそあの子にそうさせてきた老人共がイケないんだ。」
“老人共”。一刀は七乃から袁家と言う家の裏の実態を聞かされていた。だからこそそんな古い風習の中で美羽を利用しようとした輩を許せなかった。
関平「・・・」
一刀「俺は新しい国を作らせる。そうして初めて別の袁術の名声を立てるのさ。」
関平「その前準備がこの旅ですか?」
一刀「それもあるけど、美羽の成長の為なら旅は必要だったよ。」
関平「・・・」
関平の言葉が途切れた事で一刀はこの問答も終わりと判断し、死体の山に目を向けた。どうやら火力が弱いらしくこのままでは僅かながらに肉が残る。少し考えた一刀は関平に指示を出す事にした。
一刀「さて、火力が弱いからある程度燃えたら、外側から埋めていこう。」
関平「あ、はい。」
一刀と関平はそれ以降は適度な世間話をしながら死体を埋める穴を掘り少しずつ埋めて行った。
関平「これで最後ですね。」
一刀「そう言えば・・・あの人達は?」
関平「ああ、賊に囚われていた近隣の村の娘たちです。」
一刀「彼女達も帰してあげなきゃね。」
関平「それが・・・少し話を聞いたのですが、皆村を全滅させられたらしく・・・」
一刀「なんだって?そんな・・・村を全滅なんて効率の悪い事を・・・」
関平「効率の悪い?どう言う事ですか??」
一刀「う~ん、例えは悪いけど畑は何で畑として効力を持つと思う?」
関平「それは作物が取れるからでは?」
一刀「それじゃ、全部収穫したら畑は潰す?」
関平「・・・ああ!そう言う事ですか!」
一刀「そゆこと。」
関平「・・・本当に例えが悪ですね。」
一刀「それを賊がやった。どう言う訳か・・・」
関平「どう言う訳でしょう?」
一刀「情報が少ないな。今は黄祖が治めると言う街に行ってみるか。」
関平「どうにかするんですか?」
一刀「・・・美羽がのし上がる為の踏み台になってもらおうかな。」
関平「ふ、踏み台・・・」
一刀「そう、美羽は寿春を治めていたころから大きく変わった。それを証明するためにもね・・・」
関平「私もお手伝いさせてもらえませんか?」
一刀「え、いいの?」
関平「はい、北郷さんは命の恩人ですし、私も見届けたいと思いました。」
一刀「ありがとう。それじゃあこれからよろしくね。」
関平「はい。私の事は双葉とお呼びください。」
一刀「俺は真名が無いから、一刀でいいよ。親しい人は名前で呼ぶからさ。」
双葉「はい、一刀兄様。」
一刀「兄様!?」
双葉「だめ、ですか?」
一刀「あ、いや・・・別に駄目じゃないよ。それじゃ、よろしくね双葉」
双葉「はい、一刀兄様。」
一刀と双葉は捕まっていた女性たちをどうするか彼女たちを交えて話したが、どうも付いてきたいそうで困り果てた一刀は七乃に相談を持ちかけた。七乃は兵力が増えるのはいいことだと言っていたので、それならもう小規模の傭兵団として動こうと決めたのだった。
あとがき(と言う名の一部設定紹介)
袁術傭兵団(仮)名前変更有
団長を袁術とし、副団長一刀、軍師七乃、武官筆頭を双葉とする。
戦力は砦で保護した女性陣二十名。初期装備は賊の使っていた装備(黄祖軍に通じてだけあって良い装備)
孫策軍
拠点 建業
王の孫策、その親族孫権、孫尚香を筆頭とした軍(現在はまだ呉と名乗っていない。当然だけど・・・)
黄巾党の蜂起の直前に美羽を追い払い揚州を取り返す。すぐに黄巾党があらわれた事もあり、美羽の追撃をそこそこにして人心の安定に努めている。
羽生「・・・書き終わったのです。」
結璃「だねぇ・・・」
羽生「・・・何も言わないのですね?」
結璃「ま、私も同じだからね・・・」
二人「ラブライ○やりすぎた~~~」
結璃「ところで羽生。遅れたのは良いんだけど、一刀君に女が増えてるのはいただけないよ?」
羽生「えっと・・・そう、このルートは家族をテーマにしてるのです!兄妹ですよ。」
結璃「・・・張勲は?」
羽生「お母さん。」
結璃「一刀君は?」
羽生「お父さん」
結璃「袁術は?」
羽生「娘」
結璃「結璃は?」
羽生「赤の他人」
結璃「フシャー!」
羽生「あうあぅあぅあぅ。」
結璃「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ」
羽生「起こり方が本気なのです!?」
結璃「ガァァァ!!」
羽生「っあーーーーーーーーーーーーー!!」
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第八話になります
ちょっと遅れましたが無事八話。
それでもクオリティに変化はありません。
では本編どうぞ。