No.656506 機動戦士ガンダム異聞~旭日の旗の下に~序章1ピカリーノ55号さん 2014-01-21 19:10:28 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1475 閲覧ユーザー数:1457 |
U.C.(宇宙世紀)0079、1月3日。ジオン公国とプラントは、地球連邦政府に対し宣戦を布告。後に、ジオン独立戦争と呼ばれる戦いが始まったのである。
ジオン公国とザフト軍は、巨大人型兵器、モビルスーツを戦いに投入、数で勝る連邦のを圧倒し、開戦から僅か数時間で2つのサイドは壊滅し、28億の人命が失われたのである。だがそれも、ジオンの真の目的の前には、単なる序曲でしかなかった。
「これは、愚劣なる地球市民に対する裁きの鉄槌である!神の放ったメギドの火に、必ずや彼らは屈するであろう!」
ジオンは、空前絶後の計画を実行した。巨大なスペースコロニーを巨大な弾頭にし、地球に落下させようというのだ。目標は北米、連邦軍本部アラスカ。
落下するコロニーは連邦の激しい抵抗により、大気圏突入後に崩壊、コースを大きく外れて、オーストラリアのシドニーに落着する。これによりシドニーは直径60キロのクレーターをかし、地球の総人口の約半数を死にいたらしめた。
この1週間に起きた出来事は、後に一週間戦争と呼ばれる事となる。
*
U.C.0079 1月11日 ズム・シティ 公王府
この時、ザビ家一党による会合が開かれていた。
「当面の最大の課題はサイド5「ルウム」の処置です」
ギレンが、地球圏の航路図をモニターに出し、今後の課題を説明していた。
「以前ルウムは割れています。我々につくか、それとも連邦につくか。ただしハッテと違うのは、彼らは連邦の強力な支援があるからです。現在ルウムに駐留しているハルバートン准将の艦隊は、連邦宇宙軍の中ではティアンム艦隊と同等の実力を持つ艦隊です。これによりルウムの世論は大きく変わりました。敵対的勢力が、優勢になったのです」
ここまで説明を終えると、ギレンは強い口調で主張した。
「ルウムのまたっ掃討されなけばなりません!この戦争に勝利せんとするならば!ルウムこそ重要なキーストーンになります。ここで立ち停まることは許されません!」
ギレンの説明が終わると、デギンは重ぐるしい口調でギレンに問いかけた。
「何十億人もの人を殺して、それでもお前は、まだ犠牲が足りないというのか?」
この言葉に、部屋は沈黙した。
「何人殺すか、否!何人死ぬかの問題ではございません!アラスカが存在する以上、我々は戦わねばなりません。要は、勝てば良いのです」
この発言を聞いたデギンは、末弟のガルマと共に退室した。
結局、この日の会合の結果、ルウム侵攻が決定されたのである。
*
同日、プラント首都 アプリリウス 最高評議会場
同じ頃、プラント最高評議会でも、ルウムの処置について強硬派と穏健派の議論が白熱していた。
「ルウムが連邦側につく以上、我々は戦わねばならない!。あの鉄槌を受けても抵抗を続けるナチュラル共に我等コーディネイターの力を見せつけるのだ!」
「だがルウムには連邦でも随一の実力を持つハルバートンの艦隊だぞ!ここは戦略的優勢のまま連邦に講和を持ち掛けるべきだ!」
この議論の中、ただ一人、沈黙を貫く男がいた。強硬派の筆頭である国防委員長のパトリック・ザラである。この時、パトリックはある疑念を抱いていた。この戦争の原因となった血のクリスマスイブの事である。パトリックはあの惨劇で妻のレノアを失った。それ故に彼のナチュラルへの恨みは深い。だが同時にジオンの動向に疑問を抱いていた。何故ジオンはあの時連邦が核を発射する瞬間を撮影できたのか。これに対してジオン側は国営テレビの取材班が偶々撮影したと発表したが、それでも疑念は晴れない。何故ならあの時ユニウス市へのジオン国営テレビの取材の報告は無かった事が後の調査で分かったのである。では撮影したのは誰か。そんな事を考えている時、評議会議長であるシーゲル・クラインがパトリックに意見を求めた。
「国防委員長のお考えは?」
パトリックは考えるのをやめると、立ち上がり、口を開いた。
「ルウムの世論が連邦側につくとなれば、見過ごすわけにはいきますまい。ジオンと共にルウム侵攻をする事が最善の策です。ルウムでの作戦に関しては、ジオン軍のドズル・ザビ中将と協議した上で作成します」
「やはり、戦は避けられないか…」
シーゲルが肩を竦めながら呟くが、パトリックの意見は正論である事は確かである。
これにより、ジオン・ザフトのルウム侵攻が決定されたのである。
*
サイド5「ルウム」。5番目に作られた宇宙都市である。現在、ここの首都であるミランダのドッキングベイ周辺には、ハルバートン准将麾下の第8艦隊が駐留していた。
「すると提督は、ジオンとザフトがルウムに侵攻すると仰るのですか?」
旗艦「アガメムノン」の艦長室で、ハルバートンはアルテミスのレビル中将と通信をしていた。それは、ジオンとザフトがルウムに侵攻する可能性が濃厚になったからである。
『そうだ。恐らくジオンとザフトは残された艦隊戦力を全て投入するはずだ。そこで私も、麾下の艦隊を率いて、そちらと合流する』
「総力戦になりますな。こんな時にティアンム中将の第2艦隊が健在なら…」
本来、ルウムに駐留する役目はティアンム中将の第2艦隊のはずだった。しかし、ジオンのコロニー落とし阻止の為に、艦隊を総動員して迎え撃ったのである。結果、コロニーの落下は阻止できず、第2艦隊も戦力の7割を失ってしまい、現在はジャブローで再建中である。
『過ぎたことを言っても仕方あるまい。アラスカに落ちなかったことだけが唯一の救いだ。それに、この戦いで勝たねばアズラエルの発言力が強くなるからな』
「同感です」
この当時、連邦は二つの派閥に分かれていた。ブルーコスモス派と反ブルーコスモス派の二つである。ブルーコスモス派は連邦産業理事であり現ブルーコスモス盟主であるムルタ・アズラエルの子飼いの将校が多く、軍の官僚化も遠因にもなっている。
『兎も角、ハルバートン君。今は目の前の事を考えよう』
「わかりました。では私は、艦隊編成を調整します」
ハルバートンはそう言うと、通信を切り、机からあるファイルを取り出した。そこには、「最高機密事項第75号 G計画」と書かれていた。
今まさに、ルウムを戦場とし、連邦とジオン、ザフトがぶつかりあおうとしていた。
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序章では主にTHE ORIGINを元にしております。