No.656058

天馬†行空 四十二話目 白き閃光

赤糸さん

 真・恋姫†無双の二次創作小説で、処女作です。
 のんびりなペースで投稿しています。

 一話目からこちら、閲覧頂き有り難う御座います。 
 皆様から頂ける支援、コメントが作品の力となっております。

続きを表示

2014-01-19 22:32:51 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:7794   閲覧ユーザー数:5235

 

 

 袁術の本拠地、寿春の城に火の手が上がったのと時を同じくして。

 

「ええい、たかだか一客将が率いる残党如き、化けの皮が剥がれただけの事よ! 早々に叩き潰せい!」

 

『ははあっ!!』

 

 広陵攻めを指揮する袁術軍の将軍は劉協が追放した武官が占めており、参軍として元清流派の文官らが付き従っていた。

 彼等は今回の徐州侵攻作戦を一任されており、勝利すればその地の太守を任される事が決定している。

 だからこそ、零落した彼等にとってはこの侵攻作戦は自身の進退を賭けた乾坤一擲の一戦だったのだ。

 彼等は、孫策の裏切りをある意味好機と捉える――何故ならば、手柄争いの相手が自分から脱落してくれたのだから。

 彼等が率いる本隊と孫策軍との差は歴然であり、防壁もない野戦とあれば数の差で押し切れよう。

 後方に控える劉備軍が不安要素ではあるが、物見の報告では広陵城に詰めている兵は僅か三千、物の数ではない。

 

「孫策めの動きに釣られるな! 部隊ごとに固まって攻撃せよ!」

 

「中曲は左右より叛軍を囲め! 中央と動きを併せて包囲殲滅するのだ!」

 

 主君袁術より預かった、陽の光に煌く銀の鎧に身を固める兵団の姿は戦に疎い彼等の眼には勇ましく映る。

 その彼らの顔が青褪め、恐怖に引き攣るのはこの僅か三刻後の事であった。

 

 

 

 

 

 ◆――

 

 

 

 

 

 丘を吹く風に、黒曜石のような煌きを放つ長髪を靡かせて、愛紗は静かに眼下で繰り広げられる戦の趨勢を見定めていた。

 袁術軍は突然反旗を翻した孫策軍に慌てつつも軍勢を整え、前線の兵を密集させて孫策軍の突撃を受け止め、中曲を左右に迂回させて包囲せんとしている。

 大方、数に任せた殲滅戦をしようと言う腹なのだろうが――

 

(――遅い)

 

 愛紗が見ている内にも、左右に薄く広がり始めた袁術軍に孫策軍の部隊が二つ喰らい付き、押し返していく。

 中央もまた、『孫』の牙門旗を掲げる部隊に深く喰い込まれている。

 

(『よく戦う者は、これを勢いに求めて、人に(もと)めず』。袁術軍の将は勝負を焦り過ぎたな)

 

「関将軍! 城壁に旗が揚がりました!!」

 

「良し! 我等はこれより袁術軍の横腹を衝く! 全軍、突撃せよ!!」

 

『はっ!!!!!』

 

 広陵城の城壁にはためく青竜旗を金の瞳に映し、愛紗は号令を下した。

 

 

 

 

 

 ◆――

 

 

 

 

 

「袁術がいないですって!?」

 

「は、はい! 敵本陣に袁術、及び張勲の姿は確認できませんでしたっ!」

 

「――牙門旗は囮か。ならばヤツは寿春から動いていないか、或いは虎牢関の時のように――いや、別働隊が無い事は既に確認している。となると、やはり袁術は寿春に留まったか」

(しかし何故だ? 派兵した兵力は寿春に残った兵力の二倍は有る。しかも侵攻軍を率いるのはつい最近配下に加えた奸物共。もし徐州を得れば袁紹などに鞍替えしかねない連中だ…………張勲め、何を考えている!?)

 

 既に全身を返り血に染めながら剣を振るう雪蓮は、先行していた明命から齎された情報に眉を吊り上げる。

 冥琳もまた、不可解な袁術――いや、彼女の参謀たる張勲の真意を読めずにいた。

 

「――ってことは本命は蓮華のトコか。尚の事、ここで道草食ってる訳には行かなくなったわね、冥琳?」

 

「ああ、手早く済ませて蓮華様の下へ駆けつけねばなるまい――――む」

 

 敵の魂胆は解らずとも、急がねばならない事は解る。

 二人が頷きあったその時、冥琳の緑色の瞳が丘陵を駆け下りてくる『関』と『陳』の旗印を捉えた。

 

「どうやら劉備軍も動くようだな。雪蓮、グズグズしていると奴等に戦果を持って行かれるぞ?」

 

「そうはいくもんですか、遅れて出て来た連中に良い格好はさせないわ――祭!」

 

「心得た! ――皆の者! 我等で敵の牙門旗を落とすぞ!!」

 

『応っ!!!!!』

 

 袁術軍の側面に切り込む緑色の甲冑の群れを横目に、雪蓮は南海覇王を振るう腕に力を籠める。

 

 

 

 

 

「火だと! くそっ、張勲のクソアマめ! 奪われるくらいなら何もかも灰にしやがる気か!!」

 

陳蘭(ちんらん)! 予想以上に火の回りが速い! 長居は出来ねえ!」

 

「クソが! ――雷薄(らいはく)! 取れるだけ取って逃げるぞ、うかうかしてると孫策軍に囲まれる!」

 

「解った!」

 

 ――寿春城。

 炎が席巻する宮殿内を十数人の男達が走り回っている。

 その中心にいるのは陳蘭、雷薄と呼ばれる二人の男達だった。

 二人は美羽に仕える将軍ではあったが、生来からの性根の卑しさを七乃に見抜かれており、重要な位に就け無かった事を恨みに思っていたのだ。

 そして今、滅亡の瀬戸際に立たされた城と主に見切りをつけた二人は部下と共に金品を略奪して逃走せんと計っていた。

 だが、辿り着いた宝物庫はその半分が炎に巻かれており、略奪するのも困難な状況。

 彼等は、かろうじて手が届きそうな場所にある宝物だけでもと煙で涙を流しながら装飾品などを掻き集める。

 

「お頭! もう無理だ!」

 

「これ以上はヤバイですぜ!」

 

 吹き上がる火の粉と上昇する温度に耐え兼ね、男達は頭領に向かって悲鳴を上げた。

 

「ちっ! しゃあねぇ、野郎共! ずらかるぞ!」

 

『へいっ!!!』

 

 ぼさぼさの頭に金の冠を被り、首には銀で出来た首飾りを掛けた陳蘭が怒鳴ると、部下達はめいめいに略奪品を抱えると宝物庫の入り口に殺到する。

 

「良し、まだこっちには孫策軍は――」

 

「――貴様等、何をしている」

 

「――うおっ!? だ、誰だ!?」

 

 煙が充満し始めた建物から避難した賊徒集団がほっと一息吐いた時に、その少女は音も無く現れた。

 

「――貴様等如き外道共に名乗る名など無い」

 

「な、なんだとこのアマ!」

 

「行き掛けの駄賃だ! 野郎共、このアマを血祭りに上げろ!」

 

『おうっ!!!』

 

 雷薄の号令と共に、血走った目の男達が五人、自分達よりも小柄な少女に殺到し――

 

「黄泉路へと逝くがいい――!」

 

 リン、と。鈴の音が一つ響き渡ると同時に全員の首から紅の飛沫が噴き出し、倒れ伏した。

 

「――な!? て、手前ェ!!?」

 

「鈴の音? …………陳蘭、やべぇぞ! コイツ、鈴の甘寧だ!!」

 

 糸の切れた人形のように崩れ落ちる部下を呆気に取られて見遣る陳蘭に、雷薄は少女の正体に思い至り注意を促す。

 

「な、なんだ――――と?」

 

 ――だが、もう遅い。

 

「――ぐ、あ……っ。ち、畜生、こんな……ところで……!」

 

 鈴の音がもう一つ。

 続けて重い物が地面に落ちる音が複数響き、後には炎が上げるごうごうという咆哮だけが木霊していた。

 

 

 

 

 

 ギン、と甲高い音が戦場に響き渡る。

 片や深い藍の髪と同色の纓(穂先の下のところにつける紐の束)が着いた直槍を繰り出す凛とした空気を纏った武人。

 片や金の鎧に身を包み、艶やかな黒髪を肩口で切り揃え、穂先以外は白く塗られた直槍を繰り出す真摯な光を瞳に宿した武人。

 二人が同時に描いた点と点は、中空の、全く同じ位置でぶつかっていた。

 重い手応えを感じ、二人はこれまた同時に距離を取る。

 

「……ふむ。意外だな、顔良殿」

 

 そして双方無言で槍を構え…………先に口を開いたのは藍の武人――斎姫――だった。

 

「……意外とは、私が槍を遣える事がですか? 陳到さん」

 

 鏡に映したように、斎姫と同じ構えを取った斗詩はただ静かに見詰め返す。

 

「ああそうだ。正直、今の貴殿はあの鉄鎚を遣っていた時よりも強く感じる」

 

「手合わせもした事が無いのに、何故そうと?」

 

「汜水関と虎牢関で見た。――それだけで充分だろう?」

 

「…………大したものですね」

 

 ――静かな口調。しかし、構えを取る二人の瞳に宿る光は言葉を発する度に輝きを増していく。

 

「隠していたわけじゃありません…………それに私はあの鉄槌が得手な訳でもありません」

 

 そう言った斗詩は一瞬だけ視線を逸らす。

 その先にあった、地面に呆然とへたり込む猪々子の姿を見て斎姫は眉を顰めた。

 

「……まさかとは思うが顔良殿、貴殿は」

 

「はい。貴女の想像通りです、陳到さん」

 

「――生死を賭ける戦場(いくさば)に於いて、貴殿は遊んでいた、と?」

 

「そう思われても仕方ありません――――ですから」

 

 ――静かな口調。だが、そこに混じる怒りの色を感じ取り、斗詩は目を閉じ一歩踏み出す。

 

 

 

 

 

「ここからは、本気でお相手します――!」

 

 

 

 

 

 紫色の双眸をカッ、と見開き、斗詩は大地を蹴る。

 

「――抜かせっ!!」

 

 ふざけるな、と、斎姫は赫怒し大地を蹴る。

 直後、鋼が打ち合う音二つ。

 

「――ぬ……っ!?」

 

 高く、鈍く、響き渡る調べに斎姫が漏らす驚愕の声が混じった。

 

「怒りで軌道が単純になってますよ? それで私と()るつもりですか?」

 

 穂先が絡み合う。白が藍を掻き乱す。

 激昂した頭が急速に冷える――――斎姫は、閃光の如く繰り出された二撃を辛くも受け止め、自身の驕りを叱責する。

 

(侮った――!)

 

 平坦な、冷めた斗詩の声が斎姫の心を冷やしていく。

 

 ――この敵は、強い。

 

 怒りに身を任せたまま勝てる相手ではない。

 飛び退いた斎姫は再び構えを取った。

 

「――今度は、私が詫びねばならんか」

 

 藍い湖面が限りなく凪ぎ、それを見て取った斗詩は微笑を浮かべる。

 

「次は、私から行きますよ」

 

「ああ」

 

 蹴り出す、またも同じ。

 打ち合う音は三度、蒼い火花を散らして鋼が吠える。

 

「す――っげぇ…………!」

 

 未だ地にへたり込んだままの猪々子の目に映る二人は、まるで息の合った剣舞を舞っているかのよう。

 

 鏡合わせの剣舞。

 打ち合う音は高く――速く。

 白と藍が交差する度に、舞う火花の鮮やかな色が見る物全てを魅了する。

 

 それは――――不意に斗詩が飛び退いて反転するまでの間、三十合と続いた。

 

「文ちゃん、逃げて」

 

「…………へっ?」

 

「二度は言わないよ――今すぐ部隊を連れて退却して」

 

 呆然と二人の剣舞を眺めていた猪々子は、擦れ違いざまに斗詩が放った言葉の意味を遅れて理解する。

 

(――――っ!? 囲まれる!)

 

 気が付けば、周りの丘にちらほらと敵軍の姿が見えた。

 わざと旗は立てていないようだが…………恐らく四方に展開している。

 

「――撤退だ!!」

 

『は、はっ!!!!』

 

 頭を振った猪々子は馬に飛び乗り、彼女と同様に呆然としていた部下達に号令を掛けた。

 踵を返し、馬を走らせる先――――先行した斗詩が今まさに殺到する敵軍を突き倒している。

 

「斗詩! 掴まれ――――!!?」

 

 親友の隣を過ぎる一瞬、伸ばした手は空を切り、

 

「――殿無しで撤退する気? 文ちゃん、もっと学ばなきゃ」

 

 ――今度は、ホントに死んじゃうよ。

 

 呟かれた言葉が耳の奥に木霊し、猪々子は大きく目を見開く。

 彼女が駆る愛馬は(斗詩が槍で尻を叩いた所為もあるが)主の危機を救うべく速度をぐんぐんと上げ、戦場を離れる。

 

「と、斗詩!? 斗詩いぃーーーーっ!!!」

 

「い、いけません文醜将軍! 今戻られれば敵に包囲されます!!」

 

「離せ! 離せよっ!! 斗詩っ!! 斗詩ィィィーーーーーッ!!!!!」

 

 見る間に点になり、見えなくなる親友の姿に手を伸ばしたまま。

 猪々子は半ば部下に押さえ付けられる形で撤退したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寿春から南へと続く街道の外れを、がたごとと音を立てながら荷馬車が走っている。

 

「な、なんとか逃げ切れたのじゃ……」

 

「う~ん、思った通り! お嬢様、やりましたよっ!」

 

「何がやったのじゃ七乃!? 城も土地も全部孫策に取られたではないか!」

 

「いやですよぅお嬢様。あのままあそこに居たら孫策さんが攻めてこなくても、後でもっと怖いお方に攻められるんですよ?」

 

「な――!?」

 

 ぐらぐらと揺れる馬車の乗り心地の酷さも手伝って、美羽は何時にない剣幕で七乃に詰め寄るが当の本人は涼しい顔でさらりと受け流した。

 

「まあ、これで世間的には私とお嬢様は死んだことになりますし――――それに、これで孫策さんを檻に閉じ込められましたから」

 

 上下左右の揺れなどなんのその、といった風情で七乃はくるくると指を回しながら弾んだ口調で言葉を続ける。

 

(うふふふふ~、では後は勝手にしてくださいね、”皆さん”? 私達はお先に抜けさせて頂きますよ~)

 

 絶句する主を他所に、北――中原の方角――を見遣りながら七乃は満面に笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四方全てを十重二十重に取り囲む公孫の軍勢を前にしても、斗詩は取り乱す事無く槍を構えている。

 その余りに自然な様子に、彼女を囲んでいる兵士達は畏怖を感じて遠巻きに様子を窺っていた。

 やがて軍がざわめき、割れ、斗詩の前に二人の人物が姿を見せる。

 

 一人は月白色の服を纏い、藍色のズボンを穿いた男性のような少女――沮授こと著莪。

 もう一人は斗詩も良く知る人物。

 白を基調とした戦装束に身を包む、赤髪の少女。

 

「――総大将ともあろう御方が、敵将の側に来られるものではありませんよ? 白蓮さま」

 

「何だ、まだ戦うつもりなのか斗詩?」

 

 白馬を進めて来た旧知の少女は、心底不思議そうに小首を傾げた。

 

「そちらが、そう望むのならば」

 

「じゃあやめだ。斗詩、降伏してくれ」

 

 白い槍を構え、真っ直ぐに自分を見詰めて言い放つ斗詩に白蓮は肩を竦める。

 

「降伏しろ、じゃないんですね。ふふっ、白蓮さまらしい言い方です」

 

「う~ん……なあ著莪? 私も曹操みたいな物言いにした方が良いのかなぁ?」

 

「似合わないので止められた方が宜しいかと」

 

「うっ、断言された……」

 

 気さくな降伏勧告に微笑を浮かべた斗詩を見て、もっと威厳を身に付けるべきか悩む白蓮の言をばっさりと切り捨てる著莪。

 がっくりと肩を落とす白蓮の姿を見て、クスリと笑った斗詩は目を閉じ、一呼吸してから見開いて、こちらを見る琥珀色の瞳に目を合わせる。

 

「ふふっ――――解りました白蓮さま。私の力、なんなりとお使い下さいませ」

 

「うん、頼むよ斗詩。……早速で悪いけど、今は麗羽を止めるのにお前の武を貸してくれ」

 

「御意」

 

 

 

 

 

 江陵を進発し、南下する軍中にあって王威(おうい)は武者震いしていた。

 敵は幼き天子を誑かした天の御遣いとやらを擁する董卓。

 恐れ多くも、奴等は王朝の政にも口を出して儒教を貶めようとしているらしい。

 そのような不届きな連中を許すわけにはいかぬ、と憤慨した主君劉表は天下に檄を飛ばして、再び反董卓連合を作り上げようとしている。

 檄は四海に飛び(恐らくは)旧き善き漢の名族袁紹を始め、連合に参加していた諸侯に届くだろう。

 そして再び正義の徒が集い、今度こそ巨悪を打ち倒すに違いない。

 王威は、その尖兵に成れる栄誉を与えられたのだと感動に打ち震えていた。

 

 間も無くだ――間も無く大義の旗が襄陽に掲げられる筈。

 

「だが! それを待つまでも無い! ――悪賊董卓! そして天を誑かす北郷一刀よ!! この王威が必ず貴様等を正しき天道の下に引き出し、断罪してくれよう!!」

 

 勝手に口から溢れ出てくる衝動――それを後方で付き従う兵士達は誇らし気に胸を反らして聞き惚れていた。

 

『然り! 然り!! 然り!!!』

 

 王威の激情が伝わったらしく、自然と兵士達が追従し始める。

 なんと心強く! 正しき(ともがら)達よ! と感極まった王威は――

 

 

 

 

 

「――て……う! …………です! ……敵襲です!!」

 

 

 

 

 

 ――玉よりも貴重なその報告を、致命的なまでに聞き逃した。

 

 

 

 

 

 ◆――

 

 

 

 

 

「さて、じゃあ行こうか皆の衆?」

 

「ハク先輩! ご武運をッス!」

 

「後方支援は任せてくれ、ハク君」

 

「いよいよわちき達の出番だね! 行くよ刑道栄!」

 

「へい、お嬢! 張り切り過ぎて出過ぎんで下せえよ!」

 

「よっしゃぁ! 行くよアンタ!」

 

「…………ああ。陳応、無理は、するな」

 

「郝昭殿、馬鈞殿、薛綜殿、ご助力感謝いたします。劉賢殿、刑道栄殿、陳応殿、鮑隆殿、頼みました。――承明殿?」

 

「はい公達様、準備は滞りなく――」

 

「宜しい。――詠殿」

 

「ええ――――始めるわよ! 月、お願い!!」

 

「うん、詠ちゃん。――天に叛く国賊劉表! その尖兵共に民を、土地を穢させる訳には行かぬ! 全軍、出撃!!」

 

『――雄雄雄ォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 ――出陣。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき

 お待たせしました、天馬†行空 四十二話の更新です。

 という訳で対袁術があっさりと終了。

 原作で月たちが”世間では死者という扱い”になったのと同じ手を使って、七乃たちが逃げおおせました。

 さて、次回はいよいよ火蓋を切る劉表vs月、そして新たな戦局を迎える白蓮vs麗羽をお送りします。

 

 

 では、次回四十三話でお会いしましょう。

 それでは、また。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 超絶小話:オーバーテクノロジー発生源

 

 

「む、無念ッ!!」

 

「……はぁ……はぁ……っ! やっと観念したわねこの妖怪! というかなんで腕組みながらあんな速さで走れるのよ……?」

 

「何というか芸術的にすら思える走りでしたね、鷹様」

 

「張翼、何で貴女は息一つ乱してないのよ……?」

 

 ぜーぜーと息を切らした張任こと鷹がよろよろと戻ってくる一方、張翼は簀巻きにされた韓玄を担いで平然と歩いている。

 大蓑虫と化した変集ちょ――もとい編集長は既に着替え終えた一刀の前に引き出された。

 

「――で、韓玄さん?」

 

「何ですかな御遣い様?」

 

「何でカメラなんか持ってるんです? っていうか誰に貰ったんですかそんなシロモノ」

 

「ふふふふこれには長江より深く泰山より高い理由があり語るも長い――」

 

「――あ、短めでお願いします」

 

「御遣い様の姿をそのまま絵に出来ないかと思案していたところ、『じゃあオイラが作って見るッス!』と張り切った瓶底少女が一晩で作ってくれた次第」

 

「コウちゃーーん!!? なにさらっとスゴイ事しちゃってんのーーー!!!?」

 

 交趾の方角を向いて絶叫する天の御遣い。

 

「お蔭で少ない労力で精巧な絵姿を四海の乙女達に広められる次第ふふふふふいつかは御遣い様の絵姿のみを収めた本も発刊する野望が」

 

『発売したら一部下さい』

 

「ちょーーーーい!!?」

 

 ぐるぐる巻きで胸を張る編集長の一言に、居並ぶ乙女(一部年齢的にそぐわな――※ここでコメントが中断されました)達が頭を下げ、一刀の突っ込みが天に木霊した。

 

 

 

 


 
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