ここは劉備軍本陣。
そこでは、薄い黄色がかった髪をした少女と、鍔の広い帽子を被った少女が策を練っていた。
「どうしよう、朱里ちゃん?」
朱里と呼ばれた少女姓を諸葛、名を亮、字を孔明と言い、後に『臥龍』と謳われる存在である。
「う〜ん…やっぱりどうにかして敵に出て来てもらわないと…雛里ちゃんは?」
雛里と呼ばれた少女姓を鳳、名を統、字を士元と言い、後に『鳳雛』と謳われる存在である。
「私も同じ。でも、どうやって出て来てもらおう?」
「…そういえば、氾水関の守将をやってる華雄さんは、自分の武に高い誇りを持ってるって聞いたけど。」
「あ、じゃあそこに付け入るのは悪くないかも。」
…という訳で、連合軍(というより蜀呉)の作戦は、華雄の挑発に決定した。
「…ん?」
「どうかしたの、刹那?」
「いや、連合軍から二部隊出てきてな…。」
「ホンマや…城門でも落とすんか?」
「いや、あの人数じゃ無理だろ。」
そんなことを言い合っていると、その部隊が止まった。
その部隊の旗には、緑を基調とした布に『関』という字と、『趙』という字が書かれていた。
「緑の旗に『関』と『趙』って言うと…そうか、関羽と趙雲か!」
「なんや、知っとるんか一刀?」
「あぁ。二人ともかなりのやり手だ…」
そんなことを話していた時…
「――敵将華雄よ!そして張遼よ!我が名は関羽!」
「そして我が名は趙雲!」
「貴様らに武人としての誇りがあるというのならば神妙に相手をせい!」
「それとも…貴様らの武は、その辺の寡兵にしか通用しないものなのか?ならば仕方あるまい。」
それだけ言うと、関羽と趙雲は引き換えして行った。
「…あいつら!黙って聞いていれば好き勝手言いおって!その口すぐに塞いでくれる!」
そう言って、大斧を持って出陣しようとする刹那を俺と霞が慌てて止めた。
「アカンて刹那!今出てったらあいつらの思うツボやで!」
「悔しいのはわかるけどここは堪えてくれ!」
「ぐぬ…ぅあぁぁぁ!!」
そう言って、刹那は悔しそうに大斧を振るった。
―――半刻後―――
「動かぬな…」
「あぁ。恐らく出陣しようとした華雄を張遼が止めたのだろう。」
そんな会話をしていた関羽と趙雲に、
「でしょうね。」
と声をかけた人物。
「ほぉ…これは孫策殿、いかが致した?」
趙雲の問にその女性…後に『江東の小覇王』と謳われる存在孫策は、苦笑しながら、
「なんか時間かかってるからお手伝いにきたのよ♪」
「「手伝い?」」
「そっ♪まぁ見ててよ…」
氾水関より
「報告!敵部隊より孫策の部隊が突出してきます!」
「「ゲッ!?」」
「なにぃ?!」
「華雄よ!私が誰だかわかるか!荊州で貴様が大敗を喫した孫文台が娘、孫伯符である!ここまで言われてなおも亀の様に篭っているのか!それとも、私に敗れることを恐れているのか?そうか、恐れているのか!ならば仕方あるまい。親子二代に敗れたとあってはさぞかし惨めであろうからな!ここは退いてやるとしよう。せいぜい有り難く思えよ、華雄!」
それだけ言うと、孫策は勝ち誇った笑みを浮かべて、劉備軍に戻って行った。
「…己ぇ、孫策!許さん…絶対に許さんぞ!」
とうとう堪え切れなくなった刹那が激昂して大斧を持ち、今度こそ出陣しようとしていた。
「ちょっ、待ちぃや刹那!」
「離せ霞!あいつは…孫策だけは生かしておく訳にはいかんのだ!」
そう言って刹那は、力付くで、その場を突っ切ろうとした。
「刹那の気持ちもわかる。ウチかて刹那の立場やったらすぐにでもぶっ飛ばしたい。」
「ならば離してくれ霞!この身に代えてでも、孫策を――「パシィィン!」――…え?」
霞の説得を聞かずに出陣しようとする刹那の頬に俺は平手を食らわした。
「か…ずと…?」
突然の出来事に軽く放心状態の刹那。
けど、そんなことはどうだって良い。
「刹那…刹那は俺と約束してくれたのに…それを破っちまうのか?」
俺がそう言うと、刹那はハッとした表情をした後、うろたえた。
「ち、ちがっ…そういう訳じゃ…!」
「じゃあ、おとなしくしてくれるか、刹那?」
「…わかった。おとなしくしていよう。だが、次に何か言われたら…私は自分を抑えられんぞ?」
「あぁ、その時は存分に暴れて良いよ?」
「「………は?」」
俺の答えに、霞と刹那が呆けた。
その時――――――
「報告!兵の配置整いました。」
「ん、ご苦労様。下がって良いよ。」
「御意ッ!」
タッタッタッ…
「お、おい、一刀?今のは…」
ん?あぁ、そういえば二人には話してなかったな。
「まぁ見ててよ。」
そう言って俺は城壁から連合軍を見下ろした。
「ん?なぁ愛紗、それと孫策殿。何者か城壁に上りでたが…」
「ふむ、確かに。」
「ホントだ。もしかして降参とか?」
「よく来たな、連合軍馬鹿共よ!我が名は北郷一刀!時に、関羽、趙雲、孫策よ!貴様らの幼稚な舌弁、笑いが止まらなかったわ!しかし、そんな幼稚な作戦しかできぬ程に手詰まりなのだろう。いやそもそも弱小勢力でしかない劉備軍に、袁術如きの客将をやっている孫呉など我ら董卓軍の敵ではなかったな!だが、いくら敵で無いとはいえ、やはり裁きは必要である。よって、これより貴様らに裁きを下す!心して受けよ!」
そう言って俺は、右手を挙げた。…と、
ゴォオン!!
銅羅の音が高らかに鳴り響いた。
瞬間―――――ッ!
「「「「オォォォ!」」」」
両脇の崖を駆け下り董卓軍の将兵が袁紹軍になだれ込んでいた。
しかも、向かわせたのは華雄隊、張遼隊の精兵達である。
「なんや、どうなっとるんや?」
「一刀、これは一体…?」
「うん。俺が居た世界の歴史に今みたいな攻め方をした武将が居てそれを真似たんだ。…尤も博打的要素が強かったけどね。…と、敵は結構混乱してるな。」
「うむ。火計をやるなら今だろう。」
「かましたれ、一刀!」
「あぁ!伝令さん!投擲部隊に行動を開始させて!」
「御意ッ!」
タッタッタッ…
「霞、刹那。」
「ん?」
「なんや、一刀?」
「いや、火計が上手くいったら二人とも出陣を――「良いのか!?(えぇんか!?)」――…あぁ。」
二人とも凄い張り切っているな…
余程頭にきていたのだろう。
…と。
「投擲準備、完了致しました!」
「よし!全弓兵構え!」
チャキ!
弓兵が一斉に火矢を構える。
「放てぇーーー!」
ヒュン!ヒュン!
ヒュヒュヒュン!
放たれた火矢の火が投擲された油に燃え移った。
そして、目の前に広がる光景。
それは地獄と呼ぶに相応しかった。
「それじゃあ任せたよ霞、刹那!」
「応ッ!任せときや!」
「必ず期待に応えてみせるさ。」
そう言って二人は出陣した。
地獄と呼べるこの世界のなかに…
かくして、一刀の策(?)により、戦況は確かに一刀達に傾いた。
一刀達はこのまま勝利を収めるのか――
それとも連合軍が阻止をするのか―――
――すべては外史と天のみぞ知る―――
次回に続きますか?
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さぁて、遂に氾水関戦です!
稚文・乱文で申し訳ありませんが、読んで頂ければ幸です。
…あぁそれと、一刀の策についてなのですが、作者が凡人なのでこの程度のものしか思い付きませんでしたがご容赦を…