No.65535

真・恋姫無双 呉ルート アフター10 「呉国の恋姫(Love Princess)」(2)

とにーさん

一応3部作で投稿する予定なので中編です

呉ルートエンドから10年。主人公は孫権の長女の孫登です。

なお、この作品では6人の娘に勝手に真名を付けてます。(ご容赦を)

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2009-03-27 19:06:27 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:10670   閲覧ユーザー数:8909

呂琮たちが来てから二日目の昼、準備の整った兵が城門前に整然と集まった。

関羽からの檄が飛ぶ。

「皆の者、この太平の世を危ぶまんとする者たちが居る。我らは速やかにそれをうち、平和を長く続けようではないか。」

「おー!」

歓声が沸き上がる。

「それでは一陣から出立する。」

さすがに関羽の率いる兵である。平和な世ではあるが一糸乱れぬ隊列で行軍していった。

関羽は脇に控えていた孫登、呂蒙に声を掛ける。

「呂蒙殿、後はお任せしました。それでは行ってきます。」

呂蒙の兵たちはすでに城外に陣を敷き駐屯していた。

 

一蓮は愛紗たちを見送った後、午後の修練をしていた。

しかし、あまり気が入らない。思うのは今回の出兵のことだ。

『なぜ突然全軍での出兵になったのだろう?』

『なぜ亞莎さんが突然訪ねてきて、兵まで連れてきたのだろう?』

関羽将軍率いる3000の軍。これはおそらく野党程度問題にもならないはず。例え後ろ盾が居ようとも。

『そう言えば敵の具体的な数とかは全然聞かせてもらえなかったですね・・・』

 

それと、さらに気になることは・・・

 

『なぜ、已莎を連れて行ったのだろう?』

 

いくら已莎が学問が出来るからと言って、実戦経験がないのだ。しかも、例え已莎が役に立つとしても野党程度の相手に已莎の知識が必要になるとも思えない。

考えれば考えるほど悩ましく思えてくる。しかし、彼女の一番の疑問はこのことだった。

 

『なぜ、私は連れて行ってもらえないのだろう?』

 

夕食の際一蓮は呂蒙と一緒になった。

がらにもなく悩んでかなりくしゃくしゃな顔をしていた一蓮に亞莎はにこやかに話しかけた。

「一蓮さん、色々疑問があるようですね。」

「あ、解ります?さすが亞莎さん」

「そんな顔をしていれば誰でも解りますよ。今回の出兵の件ですね。」

「・・・・・・はい。」

「私からはさして言うことはありませんが・・・已莎なら私が推薦したんです。」

「え、そうなんですか。」

「あの子も少し外を見させたいと思って。貴女みたいに他国の指揮にはいるのも勉強になると思ったのです。」

「でも、私は連れて行ってもらえませんでした。」

「貴女には・・・・・他にやるべき事が有るみたいですよ。」

その言葉にはどきっとさせられた。「有るみたい」という曖昧な言い方だがそれはこの場では明確にしない内容だというように思えた。

そして一蓮はその言葉に驚くと言うより、理由があったという安心感の方が大きかった。

「え、それは何でしょう?」

聞き返すと、亞莎は微笑みながら一通の手紙を懐から出した。

「これを已莎から預かっています。明日の朝読んで欲しいそうです。」

「くれぐれも明日の朝ですよ。」

『なるほど、用意は有ったと言うことなのね。』

先ほどまでの悩みはどこに行ったのやら一蓮は急にワクワクしてきた。

『明日の朝が楽しみだわ。今日は早く寝てしまいましょう。』

そう思うと早々と床についた。

床について1分もしないうちに眠りについてしまう。この早さは一蓮の特技とも言えるものだった。

しかも、怪しい気配にすぐに対応出来る。それも一蓮の特技だがそのおかげで真夜中に目が覚めることになる。

「あれ、何か場内が騒がしいですね。」

場内の不穏な雰囲気を感じた一蓮は部屋にある稽古用の矛を持つ。朝の修練や夜の素振り用にと用意してある物だ。

こんな物でも一蓮が使えば大抵の賊は討ち賦せられる。

そして、部屋を出るとそこに見た風景に目を疑うこととなった。

一蓮は部屋から出て中庭の方に目をやる。

中庭には大勢の兵が流れ込んでいた。

倒れている衛兵も見える。

明らかに敵襲だ。

しかし・・・・・・

おかしい・・・・敵襲なら騒ぎはもう少し大きくなるはずだ。

いくら全軍で出陣したと言っても20や30の衛兵はいるはずだしこの城の作りからそう簡単に落とされるわけもない。

それに、外にいる呉軍は?突破されたというのならそれこそ大騒ぎである。

昨日から頭を使うことばかり。あまり得意ではない一蓮だがそこは切り替えた。

『ともかく何とかしないと。あの程度の兵、私一人でも・・・』

50人は見える兵だが狭い城内なら一蓮には倒せる自信があった。

実際、愛紗とも互角に打ち合える実力である。

と、そこで一蓮は思い出す。

『そうだ亞莎さんは無事かしら?たしか城内に残っていたはず。』

急いで客間の方に向かう。

どうやらここまではまだ兵は来ていないようだ。

「亞莎さん、敵襲です!大丈夫ですか?」

一蓮は叫びながら部屋の扉を開けた。

扉の中にいたのは、呂蒙と後一人・・・・・

呂蒙の腕をねじり上げて喉に短刀を突きつけている。

「騒ぐな。こいつがどうなっても良いのか?」

鋭い声で一蓮に向かって言い放った

「亞莎さんを放しなさい!」

一蓮がキッと睨み付けるとその女性は怯むことなく答える。

「大人しくすれば放してやろう。武器から手を放せ。」

その賊に隙が見られない事に感づくと、大人しく武器を放った。

「これで良いの?」

そう言うと後ろから何人かの兵がこの部屋に入ってきた。

「抵抗はするなよ。」

「人質を取られていてはね・・・・えっ!」

一通り周りを見回した後、賊の方を振り向いて一蓮は驚きの声を上げる。

賊はすでに呂蒙から手を放していた。

そして、呂蒙は平然とした顔で一蓮に向かって話しかけた。

「一蓮さん、そろそろ私から説明しましょう。」

一蓮には呂蒙の元々鋭い目つきが、その日はさらに冷たく感じられた。

 

「この土地、荊州はもともと呉の土地なのです。」

 

呂蒙は淡々と話し始めた。

 

「15年前の赤壁の戦いの後、蜀と呉で大陸を分割して統治するようになりました。」

「その時に孫権様は孫策様や孫堅様が眠る寿春の周辺を安定させるために許昌、洛陽を呉の土地と選択し、その代わり荊州は江夏だけとなったのです。」

「しかし、もともと荊州の出である私や、その他にも納得の行っていない人たちがそれを承諾出来なかったのです。」

「私たちはこの地を取り戻すためにじっと時を待っていました。」

「そして今日ここに本城を取り戻すことが出来ました。荊州から蜀を追い出し、呉の物とします。」

その声は、冷静だが語尾には力強さがかいま見えた。

「でも、こんな事をすればまた戦乱の世になっちゃうわ。」

黙って聞いていた一蓮だが呂蒙の言葉が途切れるのを待って想いを叫ぶ。

「こんな事をしたら・・・お母様やお父様達が悲しんじゃう。」

呂蒙はそんな一蓮を見て少し自嘲気味に笑みながら諭すように話す。

「私たちの我が儘だと言うことは解っています。」

「でもね、もう賽は投げられたのよ。私たちはともかく荊州を占拠するわ。後のことはそれから。」

「うまく事が進めば、再度蜀と取引をして領地を変更出来るかもしれないし・・・・。」

「ともかく今日は部屋でお休みなさい。ただし、部屋には見張りを付けます。勝手な行動はしないように、お願いしますね。」

そう言った呂蒙だがそんなことはあり得ないと解っていた。

このまま荊州を占拠すれば蜀は必ず取り返しに来るだろう。

呉も交えて死闘が繰り返されるかもしれない。

だが、覚悟の上である・・・・・

『あのお方は、怒ってらっしゃるかしら。』

亞莎の瞳からひとすじの涙が流れる。

それは先ほども出てきた、愛する人の事を想って流れた物だった。

チュンチュンチュン

 

窓から光が差してくる。

外から小鳥のさえずる声が聞こえてくる。

朝だ

 

・・・・・・・・・

 

昨日の出来事を反芻する

こんな状況でもすぐ寝られるって、私の神経は自分でもどうかしてるんじゃないかと思うわね。

 

でもね・・・・

 

体を休めないと良い動きが出来ないわ。

 

朝になれば・・・・

 

朝になれば・・・・・・・

 

朝になれば・・・・・・・・・・・・・・・・・何だったっけ?

「そう、已莎!」

「大変、裏切りがばれたら已莎が大変なことに・・・・・・。」

そういいながら寝間着から普段着に着替える

『さすがに関羽先生がいきなり切り捨てることはないと思うけど、人質扱いにはなるでしょうね。』

そんなことを考えていると着物から一枚の封筒が落ちる。

「あ・・・・これ・・・・已莎の手紙・・・そう言えば朝に見てって・・・」

思い立つと一蓮は早速手紙を開いた。

そこには短く、こう書かれていた。

 

「おはようごさいますイーレンちゃん。私は大丈夫だから貴女は何とかそこを出て江夏の諸葛瑾様を訪ねてください。」

 

「うん。」

少し考えていた一蓮だが相変わらず切り替えは早い。

小さく頷くとこの短い文章から呂琮の意図を読んだ。

『大丈夫って事は心配しないで良いのね。』

懸案事項が一つ減った。

『何とかそこを出てってことは無理矢理脱出しろと・・・。それは亞莎さんとかに相談するのではなくてということね。』

まぁ無理矢理なのは結構慣れているから問題なし。

扉の外には二人見張りがいて少し離れたところに5人・・・楽勝ね・・・

障害となるとしたら昨日のお姉さんだけど・・・まぁその時はその時で・・・

江夏までは少し距離があるわね。馬が調達出来れば・・・

そう思いながら部屋から外を見る。

すでに兵は引いていて城内は閑散としていた。

制圧は夜の内に済んでしまっていたようだ。

『まぁ守るべき人が起こした物だし、亞莎さんだからかなり念入りに手筈を整えていたのでしょうねぇ。』

愛紗さんがここまで油断をしていた事が若干気にはかかるが、基本的には根のいい人である。あり得ない話ではない。

『で、馬小屋は・・・・』

もう一度今度は馬小屋の方角をじっと凝らして見る。

見張りはいるみたいだけど殺されたりはされていないみたい。

うちの子なら江夏まででもそんなにはかからない。

「じゃぁ、ちゃっちゃとやっちゃいますか。」

旅着に着替えると寝所の床に隠してあった棍を持つ。

「作戦とか、必要ないよね。」

一応自分は姫様だと言うことも自覚している。

多分本気ではかかってこない。

おもむろにドアを開けると気が付いた見張りの兵に向かって棍を繰り出す。

一閃

倒れる見張りの兵

『多分致命傷じゃないから、ごめんね。』

若干そんなことも思いつつ、素早く、それでも最大の注意を払って馬小屋まで全力で走り出した。

 

馬小屋までは順調にたどり着いた。途中で倒した兵は二人である。

多分大けがはしていないだろう・・・・多分。

馬小屋まで付いた一蓮は自分の馬に話しかける。

「白天、無事でしたか。」

茶地の額に白い斑点が有ることから名付けられた。一蓮の愛馬である。

無事たどり着いたことには安堵したがまだまだ問題がある。

それは城門だ。

これは自分だけの方が楽だが、この子無しで江夏まで早くたどり着くのは至難の業である。

『まぁ、いざとなったら強行突破ね。』

割と短絡な思考は叔母の孫策ににているのだろう。素早く馬具を付けると、馬の上に乗った。

「行くわよ!」

そして城内だというのに馬をいきなり走り出させた。

「もうそろそろ程普様が到着する時間だな。」

城門にいる呉兵が日の位置を確認する

「うむ、そろそろ城門を開けておけ。まだ慣れていないのだからな。」

隊長らしき人物が部下に指示を出す。

荊城の城門は少し凝ったからくり式で歯車などが使われている。

捕虜とした番兵と、理屈が解っている呂蒙から指示は受けているが開けるのには若干の時間を有した。

「えーと、この取っ手をこの穴に入れて。この棒を押し込んで。」

「あっ、馬鹿!棒を押し込む方が先だ!」

取っ手はこの扉のからくりの解除鍵で棒は安全装置である。

解除鍵を押したまま安全装置をはずすとどうなるか。

バタン!と言う音とともに扉が急激に開く

「うわっ。」

扉の外に人は居なかったので被害はなかったのだが誰かいたら大惨事である。

「おいおい。まぁ開いたのなら良いか。」

隊長は結構のんきだ。

「あっ、でも。取っ手が今の勢いで折れてしまいました。」

「あちゃぁ。これでは城門の開閉が出来ないな。あとで予備の部品がないか捕虜の城兵に聞いておいてくれ。」

「今は取りあえず程普様の到着をお待ちしよう。」

 

「あれ、城門が開いてる。」

少し走って城門に近づくと一蓮は城門が開いていることに気が付く。

「運が良いわね、このまま突っ切っちゃいましょう。」

一蓮が白天に加速を命じると呼応したかのように白天が駆け出す。

 

「隊長、城内から馬が一頭走ってきます。」

「なに、そんな報告は受けてないが?」

城門まで急いでくる者には伝令係があるが、城内で伝令に馬を使うなどと言うことはあり得ない。

「あ、あれは・・・」

隊長はその正体に気が付くが、声には出せない。

「捕まえますか?」

部下が聞く

「いや、やめておけ。そのまま通すんだ。」

「応。」

 

一蓮は難なく城門を抜け、街境の検問も突破して江夏に向かう。

理由は一通の書状だけだ。

でも信じるに値はするし一蓮の勘がそうしろと言っている。

 

『私の勘はあまり外れたことがないし・・・・』

 

特にここ一番の勘はほぼ100%であった。

『やっぱり叔母様似なのかなぁ・・・・有ったこと無いけど。』

自分が生まれる前年に亡くなった叔母、孫策のことを考えながら一蓮は馬を走らせる。江夏に向かって。

荊州城を出てから3日、そろそろ目的の場所だ。

斥候からは砦にこもっているのは500程度との情報が入った。

『先の情報より少ないな。』

関羽はそれでも予定通りという表情で陣を張るように命ずる。

『さて、あまり長引かせたくはないな。』

数が少ないとはいえ山砦にこもっているのだ、無理強いすればそれなりの損害が出るであろう。

出来ればなるべく被害が出ないようにしたいところだ。

「軍議を行う。将軍、軍師は陣幕に来て欲しい。」

「さて、なるべく損害が出ないようにあの砦を落とすにはどうしたらいいと思う?」

その問いに軍師の伊籍が答える。

「被害を避けるのであれば間道を抑えて兵糧責めが一番かと。」

「ふむ、しかしその案はあまりに消極的だな。時間は余り掛けたくないのだ。」

「ならば間道を抑えた後、周りから威嚇をしてみたらいかがでしょう。不安を募らせ士気を削ぐのです。」

「ふむ、所詮は野党ども。効果は高いかもしれんな。」

「ではその手で行くか。動揺が見えたら一気に攻める。」

「応!」

関羽は素早く間道に兵を出すと関を作らせ、陣太鼓等で威嚇を始めた。

 


 
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