第3章 群雄淘汰・天下三分の計編 03話 『 長沙城包囲戦 其の壱 』
長沙城内の玉座の間では今、徹底交戦か和睦、停戦かという選択肢で、熱く議論を戦わせていた
というのも、長沙の誇った北・東・西の出城ともいうべき防衛拠点が落とされた時点で
最悪、降伏・放棄も止む無しという、当初はそういう結論であったのだ
ならば何故、押さえ込まれた状況となった劉琦軍に、数多くの徹底抗戦派の将兵がいたのだろうか?
それは新型『 焙烙玉 』がクセモノといえたのだ
前話で説明したように、新型『 焙烙玉 』はあくまでも”殺傷力 ”ではなく”火力 ”重視であった為
劉表側に死傷者が少なかったのが、逆にこのまま城を放棄する事を躊躇させ
徹底抗戦を主張する者が出てきた遠因ともなってしまっていた
劉琦・黄忠の主張は長沙の放棄にあり、荊南地方の放棄を意味していたが
徹底抗戦を主張する者達が数多くいる為、議論は白熱を帯びるものの・・・平行線
”小田原評定 ”、”堂々巡り ”という言葉がある通り、出口の見えない議論を延々と繰り返していたのだった
上の方針が決まらないのだから、下にいる兵士達もどうする事も出来なかった
ただ兵士達にとって、幸いにも孫呉側からの昼夜を問わない激しい攻撃がないだけマシなのかもしれなかった
そして長沙側の唯一の希望といえた江夏・江陵からの援軍はというと・・・
病の床に就き、明日をもしれぬ主のいない襄陽城の玉座に周囲の目を憚る様子もなく堂々と座る人物、その名は蔡瑁
視線を宙に漂わせ、1人思考に耽っている様子であったのだが・・・
1人の人物がツカツカと早足で近づいてくるのに気付き、その人物へと視線の焦点を合わせる
「蒯越 先程斥候が1人戻ってきたそうだが・・・ で? どうなのだ 長沙の方は?」
蔡瑁に蒯越と呼ばれた人物は、玉座に座る人物を一向に咎める様子もなく
蔡瑁の問い掛けに関する答えを発した
「芳しくありませんな 先程斥候が1名帰ってきましたが・・・
3砦が早々に落とされ、長沙城に篭城との報告でしたよ」
「なんだと!? 早すぎやしないか!?」
「それも気になる点なのですが、1名だけその情報を携えて、斥候が帰ってきたというのが曲者なのですよ」
「!? どういう事だ? 蒯越」
「斥候の諜報能力の高い呉がですよ?
我らの斥候1名であろうと、その目を逃れ情報を携えて帰ってこれるとは到底思えません」
「ふむ 前線に蟻の隙間もないくらいに、警戒の眼が光っておるだろうしの・・・・・・という事は」
「ええ おそらく孫呉側は、情報を聞いた我らが援軍を出すのかを試しておるのでしょう
援軍に来ようとする我らへの罠か計を張り巡らせ、準備を終えているという事でしょうなぁ~」
「ならば出すだけ無駄だな」
「でしょうなぁ~ はぁ~ 前回隙を突いた筈が、散々に打ちのめされた後だけにどうしようもありませんな
現状、我らの戦力から援軍を出し次負ければ、今後水軍の建て直しはほぼ不可能といえるでしょうな
そうでなくても熟達した者達の多くを先の戦で失いましたからなぁ~」
「その通りだろうな 董卓軍の軍師、賈駆とやらの口車に乗って派兵してみたが・・・」
「見事に周瑜に一杯喰わされましたしな」
眉間に皺を寄せつつ、苦々しい表情を浮かべ顔を顰める蔡瑁であった
「今更言っても詮無き事だ 忌々しい一事ではあるがな
なら・・・劉琦ごと棄てるしかあるまい どうせ邪魔な存在だ
黄忠の存在は惜しいが、あれは義兄の存在なくして操作は敵わん」
苦々しい表情を浮かべはするものの・・・
すでに長沙へと左遷させた黄忠を、納得させる理由で今更呼び戻す術もなかったのも事実であった
「ただそうなると、荊南地方全てを切り捨てる事になりますがよろしいのですかな?」
「仕方あるまいよ 元々生命線は長沙城だったのだ
援軍にも出せない、3砦も落ちたと知れた以上、守りきれる等とは到底思えん
袁術、陳登も我らの意に沿わん以上、背後も突けんしな
それより聞いた所によると、孫権が大将で前線に出張って来ているそうだな?」
蔡瑁は苦々しい表情だったのだが、蓮華の事を話すと途端に、口角を上げニヤニヤと不気味な笑みを浮かべ出す
「ええ お耳の早いことで・・・ 天の御遣いと共にだそうですよ」
どこから情報を得たのだろうと小首を傾げる蒯越であったのだが・・・
「長沙から逃げてきた商人達から情報を仕入れたのだよ
ならば荊南はやる代わりに、そろそろ孫権を戴くとしようか」
この男の妄執は止まることを知らないと、ある意味感心していた蒯越である
義兄である主・劉表を病の床に就かせる原因も、元はといえば彼が持ってきた薬の効果による所が大きい
蒯越としては、自身の軍師という地位さえ維持できれば
主が劉表であろうと蔡瑁であろうと、どちらでも関係なかったのである
「はぁ~~ また孫権ですか 天の御遣いと婚儀を行ったというのに
その妄執を棄て去れば、荊南の代わりとなる領土拡大も可能でしょうに」
軍師としてまともに助言するものの、目の前で不気味にニヤつく蔡瑁に聞き入れた様子はなく
「うるさいわい さっさと孫権を略奪する用意をせんか!!」
「もはや一蓮托生ですからな・・・ 指示に従いましょうぞ」
蔡瑁の妄執に呆れながら肩をすくめる仕草をみせるものの・・・
主のいない襄陽城の玉座に背を向け、蓮華を略奪するべく魔の手を忍ばせるべく
淡々と出口へと歩みをすすめていく蒯越であった
劉表側の対応を記述したので、それでは孫呉側の対応を紐解く事にしよう
長沙の誇った北・東・西の出城ともいうべき防衛拠点が、思春を始めとした者達により焼き尽くされた事によって
今や労せずして孫呉の長沙城包囲網形成に一役買っていたのである
防衛拠点を落とせない状態で抵抗されては、劉琦軍の士気向上のみならず
調子に乗って江夏・江陵から水軍の派遣、荊南地方の領主の援軍派兵という危険性が孕んでしまっては元も子もない
冥琳・紅を始めとした参謀達の目的は
この3つの防衛拠点を早期に孫呉側で押さえ劉表軍の反撃の芽を切り取る事にあった
長沙城包囲の態勢に早々に持ち込む必要性があったという訳なのだ
また、索敵に当っていた明命と瑠璃に、劉表軍の斥候を1人だけ逃がすという試みも同時に行っていた
囲んだのは良いが、江陵や江夏から度々水軍を出され突かれては
その対処に備えるという面において、将や兵を無駄にしなければならない
なので、援軍を派兵する意思が蔡瑁達、首脳陣があるのかを、早々の段階で見極めなければならなかったのだ
派遣してくるようならば、反転して先に潰してしまおうと、冥琳・紅を始めとする参謀達はそう考えていたのだが・・・
先の戦でこっぴどくやられた事が痛かったのだろう
明命の部下からの報告によると、水軍は平時のままであるとことだった
この様子ならば、斥候を数人残しておけば、報告が来てからの対応でどうとでも出来
今はこの包囲した長沙城を全力をあげて落とせば事足りる
そして強引ではあるが、新型『 焙烙玉 』の業火で危険性ごと一気に薙ぎ払ってしまった事であっさりと
当初の長沙城包囲という第1段階の目的を達成していた
孫呉としては、あとは建業ー柴桑からの食糧ルートさえ確保しておけば、仮に長沙城の包囲が長期化しようとも何とでもなる
華北は天候不順による不作で深刻さが増してきているが
南部に位置している孫呉では、多少日照りがキツイものの、作物への影響は限定的といえた
逆に気候が不順となると、蝗害の危険性も孕んでいたが、その兆候が今の所、各所でもみられないとの事で一安心といえた
そしてかねてからの一刀懸案による食糧備蓄状況などを鑑みても
孫呉が長沙から撤退する可能性は、もはや0に等しいといえる追い風が吹いている状況といえた
そしてこの長沙は街と城が別々という、大陸にしては珍しい構造であった事が幸いし
長沙城へと劉琦軍を押し込んで包囲してしまった現在、民間人の犠牲はほとんど考えられない
最悪城内にいる全員が死したとしても、孫呉の名声になんら傷がつく恐れもなかった
そしてこの長沙城では、通常の城ではありえない、民間人が備蓄しているであろう緊急時の食糧の徴収すら出来ない有様なのだ
すなわち5千もの兵を擁している劉琦軍は、遅かれ早かれ城内の備蓄されている食糧が枯渇する運命にあるといえた
陸地へと続く道程には3つの防衛拠点、その全てにおいて孫呉側に押さえられており、周りは湖面と逃げ場もなかったのである
劉琦軍はここにきて、橋を落とし進入路を絞った防衛が、逆に裏目となって自分達の首を締め付けていたのである
こうした状況を加味した現在、孫呉首脳陣がとった行動は、もちろん相手が出てこない限り、厚く包囲しておく事が
当初より予定していた被害を最小限に抑え最大の利を得る事に繋がるという考えに到っていた
長沙城を陥落させた後に控える荊南地方をも視野に入れ、繋がる利を着実なものにするべく取捨選択を行っていたのである
「・・・といった状況となってます~~」
穏の間延びした緊張感のない暢気な声が、孫呉本陣に居並ぶ諸将へと響き渡る
「長沙城の包囲の方ですが、無事完了したそうですぞ」
穏の報告が終わるのを待っていたかのように、タイミング良く楓が報告を挟んだ
「うむ 報告ご苦労だ 穏、楓 さて陛下 蓮華様」
楓の報告を労った冥琳は、一刀と隣に座っている蓮華へと、首と視線を向け発言を開始する
「・・・」
「なぁに? 冥琳」
冥琳は一刀が天皇という位に就いてからは、こうして他人の目が多くある会議などでは
一刀の事を”陛下”と呼ぶようになっていた
筆頭軍師である冥琳がこうして敬っている以上、皆は右に倣え状態で”陛下”と呼んでいるが
一刀はどうもそう呼ばれる事に慣れておらず、つい背中がムズ痒くなってしまい苦笑を浮かべてしまう
「陛下 如何なされましたか?」
一刀としては、今までと同じ様に、気楽に”一刀”と呼んで欲しかったのだが
さすがに天皇という位に就いてしまったので、公の場ではしょうがないと受け入れてもしたが・・・
こうした時にまだ慣れない故に、まごついてしまう事が多々あったりする
自分の事だったなと思いつき、誤魔化すように急いで思考をフル回転させ始めた一刀であった
「コホン いや なに 俺に気を使わなくても構わない 話を進めてくれ」
本来、朕という言葉を使うべきなのだろうが、色々と慣れない点が出てきたりしている現状なのであった
それは当分の間、追々改める、臣は諌めるというより”見てみぬ振り”をするという事のようであった
「ハッ それでは・・・
現在、長沙城の周囲にある防衛拠点の全てを押さえ橋頭堡とする、第1段階の作戦は皆の活躍もあり大成功に終った
次は第2段階、長沙城の奪取となる訳なのだが・・・」
「次の問題は長沙城へと追い込んだ劉琦・黄忠側の人数なのよね」
冥琳の言葉を受けて、紅が冥琳の説明に問題点を追加する
「なんじゃ? そんなものいつものように寄せて減らせば良かろう?」
紅の問題点の提議に対し祭は、いつもの如くそう言い放ったのである
「祭様 そう物事は単純かつ明快にはいきません」
本来ならば問題を提議した紅が答えるのだろうが、祭の言い放った答えに対して亞莎が異議を唱えた
「どういうことじゃ 亞莎?」
亞莎に説明せいとばかりに声を張る祭に対し
「相手の人数が多いということは、私達が押し寄せれば必ずこちらの被害も多くなり、防衛側の優位に事を運べるということです」
そんな常識的な事は猿でも判っておるわ 儂を馬鹿にするでないわと
自分が発した内容を即忘却せしめた祭は、鼻息も荒く亞莎の言葉に対し、矢継ぎ早に言葉を発する
「なれば兵糧攻めでよかろう? 人数も多いのじゃから」
と祭は堂々と大きな胸を張ってみせた
「祭さま・・・ それですと時間がかかって、援軍の心配もしなくてはいけなくなります」
祭のドヤ顔に対して、そう亞莎は答えつつどうするのですか?と溜息をついながら言葉を紡いでいたのだった
「とっところで明命よ 相手の兵糧は今のままじゃと、どれくらいもちそうなのじゃ?」
祭さん このままだと自身が不利だと悟ったな?と一刀は噴出しそうになるを堪えつつ・・・
皆が白い目でみつめられる前に、先手を打ったようである
「えっ? 私ですか!? えっええと~~ 人数が多いですが3ヶ月から4ヶ月はもつ位、備蓄してあると報告にあった筈です」
急に祭から話を振られた明命は、ちょっとアタフタしながらも急場をしのいだようである
「長いのう・・・」
祭の感想は最もなことで、この場に控えている皆を代弁した呟きでもあった
「はい 以上の状況から、早急に長沙城を制圧したいけれど、抜くには被害が大きくなる可能性があるという訳なのです」
亞莎は眼鏡の位置を直しつつ、長沙城の置かれている現状の課題点の指摘を終えたようである
「冥琳、紅よ お前達のことじゃ そんな事は百も承知じゃろう?
もったいぶらずにさっさと策を明かさんか!」
未だに参謀の者達からは、何の打開策の説明も示されない事に苛立ち、我慢の限界がきたのであろう
祭は声をより漲らせ周囲の者達を一喝する
「祭様 結論から言えば兵糧攻めですよ」
紅は祭の一喝など動じた風もみせず、皆に向けて笑顔を絶やす事無く、いつもの調子でそうスンナリと答えていた
「ちょっ! ちょっと待たんか! 紅!!
先程備蓄量を明命が言ったじゃろう? それに兵糧攻めは儂が先に言ったじゃろうが!
お主 儂の言を聞いておらんかったのか?」
そう不満げに祭は、今にも勢い良く、紅へと詰め寄っていきそうな程の大声を張り上げつつ反論する
「ふふ 祭様こそ 兵糧攻めと言っても、何も座して待つ・・・という訳ではありませんよ?」
兵糧攻めは兵糧攻めでも祭と紅の戦い方に違いがあったということなのだろう
「ふむ なるほどのう」
祭は先程までの不満声は影を潜め、紅の発言に対し納得がいったようであった
「祭殿はお解かりになられたようだが・・・他に判らん者はおるか? 子虎どうだ?」
祭の納得した様子をみて、周囲の諸将を見回し視線を泳がせる冥琳であったが・・・
視線を子虎に合った途端に視線を止め、子虎へと問いただしたのであった
「げっ!! なんでボク?」
いつもならば自身に注意をひく筈がないと思い込んでいた
それはそうだろう 将としての地位、経験などは、珊瑚や瑠璃を含めて三羽烏の呉内部の将の中では下っ端と言えたからだ
こうした軍議で当てられたり、発言する事などなかった
まぁこうした面倒くさいのは苦手なので、発言したくもない子虎なのではあるが・・・
そうした油断もあったのだろうが、冥琳に突然問いかけられた事につい本音を発してしまったのだった
「それは決まっているだろう? 全てが適当で流れのままだろうがお前は」
「それは決まっとるじゃろう 部下に丸投げじゃしのう」
筆頭参謀である冥琳と宿将である祭に、間髪入れずにそう言われてはぐうの音も出ない子虎であった
「わっわかってますよ?」
誤魔化すように冥琳へと視線を送ってみるものの・・・
「なら子虎 先程の兵糧攻めの作戦概要の説明を頼むとしよう」
こう筆頭軍師様から言われては・・・理解してませんでしたと今更逃げる事も出来よう筈もなく・・・
「・・・・・・なぁ 珊瑚?」
と助けを求め横に居並んでいる珊瑚と瑠璃へと視線を向けてみるものの・・・
「あたいや瑠璃に聞こうとするな? 今や我らは陛下直属の将となったんだぞ? そんな事では困る」
「因果応報」
とあっけなく撃沈
「・・・(チラ)」
「うちに聞くなや? わかっとるやろうな?」
と三白眼で霞姉さんに睨まれては、子虎はもはや借りてきた猫状態
「(え~~~~)こくこく」
逆に作戦よりその場の勢いに任せる、判っていない仲間なので聞くなという所なのだろう
霞の三白眼がこっちに振って巻き込むなと語っていた
祭様と楓様は論外・・・となると、最後は隊長か蓮華様の選択!!
と子虎が正面をみつめる視線の先はというと、どんどん蓮華からは遠ざかり・・・
「たっ隊長?」
と子虎の絶対防衛線である一刀へと瞳をうるうるさせて見つめていたのだった
「頼られましたね 兄様」
隣に座る蓮華から、よかったですねと微笑を投げかけられては無碍に断る事もできず
一刀はコホンと1つ軽く咳を入れつつ、言葉を発するのでした
「しょうがない奴だなぁ 次はないぞ? 冥琳 作戦概要の説明を頼む」
ぶんぶん首を大きく縦へと振り、調子良く瞳を輝かせ手を合わせ拝みたおしている子虎に
しょうがないな~と溜息をつく一刀でありました
「ハッ 陛下 それでは作戦概要の説明をする」
「この度の作戦の肝は?・・・は補助に回ってもらい、??に黄忠を常に引き付けてもらう事になる
その間に・・・・・・もらう よいな?」
「「ハッ お任せを(ください)」」
「ふっ ド派手な作戦となりそうじゃのう」
祭の言葉を聞き、本陣にいる将兵達の意気高く、作戦の時が来るのを今か今かと待ちわびる将の面々であった
護衛を1人もつけず、こんな場面で冥琳に出くわそうものなら
数時間の間お小言をもらいそうな場面でもあったのだが・・・
幸いにも一刀は、ふと誰かに誘われたかの如く
自然と長沙城を見渡せる湖面へと足を運んで物思いに耽っていたのだった
「兄様・・・ 綺麗な月夜ですね」
1人になっていた事を咎める風もなく、蓮華は極力邪魔しないようそう呟きながら一刀の傍へと寄ってきた
「今更口調を変えないの?とは五月蝿く言うつもりはないけれど
・・・本当にその呼び方でいいのかい?」
一刀は、これで何度目か判らない同じ事を蓮華へと尋ねていた
「私にとって、結婚した今でも・・・兄様は兄様です その事に変わりはありませんから
それに・・・この世でたった1人だけの大切な私の・・・ぼそぼそ(ご主人様です!!!) 」
「うん? 最後の方聞き取れなかったんだが? 蓮華もう一度・・・」
途中までは聞き取れていたのだが、蓮華が顔を赤らめた辺りから
声が湖面から聞こえる水の音などにかき消され、最後の部分が聞き取れなかったので聞き返してみるものの・・・
「いっいえ! なっなんにも言っておりません兄様!」
「そっそう? まぁ 蓮華に問題がないのならそのままでも構わないよ」
「そうだ! 兄様 おっお酒をお注ぎいたします」
と慌てて誤魔化す姿は、結婚した今であろうと以前と変わらぬ蓮華であり
つい微笑ましく見つめてしまう事になる一刀でありました
「ありがとう蓮華 蓮華も一緒にどうだい? 飲みすぎは・・・その困るけど・・・(酒乱の気が出ては困るし)」
「では 少しだけ・・・」
頬を赤く染めながらも、一刀の誘いを受け杯を蓮華へと手渡し酒を注ぎ
準備を終えると、杯を静かに重ねていく一刀と蓮華
「兄様 何か杞憂となる事でも?」
蓮華のそうした指摘は中々に鋭い事が多かった 常日頃から一刀をよく観ていた故なのであろう
「いやな 先の戦の折に黄忠にこう言われたのさ
その立派な大義とやらを掲げ・・・ 一体どれほどの謂れなき人々が亡くなり、嘆き悲しんだとお思いですか!
・・・とな」
「兄様・・・」
「正直、最初この地へ降り立った時には、元いた世界へと戻れず絶望しかなかった
そして孫呉の為、自身の為に人を殺す事も是として
彼女の言うように多くの者達の希望を切り捨てて来た部分もあったんだ」
「お言葉ですが兄様! それは!」
蓮華が反論しようとするのを制する一刀
一刀のその表情には、蓮華も経験し竦んだ、上に立つ者の憂いが垣間見る事が出来たのだった
「・・・ああ 判っている 判っているんだ 蓮華
天の御遣いや天皇となった今でも、俺の出来ることに限界はある事は承知の上だ
それでも更に・・・今より良く出来たのでは?と思うことはあるんだよ」
その言葉は蓮華へか? それとも自身へ納得させるための呟きだったのだろうか
判別できない蓮華であった 想いは共有出来たとしても、解決方法など初めからないに等しいのだ
そこには千差万別の答えを自身のみで導き出すしかないのだ
そこには夫婦である雪蓮や蓮華であろうと立ち入ること等できないのだ
一刀がこの世界で行き続ける限り、問い続けなければならない
そう察した蓮華は、それから声を発する事無く、一刀の肩へとしだれかかり
何人たりとも、例え神仏・天という存在であろうとも、兄様の歩みを止める者あらば許すまじ
そう決意をし、一刀と共に水面に映る月を肴に、同じ刻を生きた証を心へと刻みつけるのであった
冥琳が説明した作戦に沿った長沙城包囲戦が、前半戦の電撃戦の喧騒とはうって変わり
参謀達は数日の間、長沙城を囲む湖面に浮かび静かに揺れる月影を
暫しの休息を蓮華と共に、優雅に楽しむ一時の安らぎを2人に与えてくれたようである
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●『真・恋姫†無双 - 真月譚・魏志倭人伝 -』を執筆中
※本作品は【お気に入り登録者様限定】【きまぐれ更新】となっておりますので、ご注意を
人物設定などのサンプル、詳細を http://www.tinami.com/view/604916 にて用意致しております
上記を御参照になられ御納得された上で、右上部にありますお気に入り追加ボタンを押し、御登録のお手続きを完了してくださいませ
お手数をおかけ致しまして申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします<(_ _)>
■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン)
春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し
『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた
優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた
容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である
祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか
○張紘 子綱 真名は紅(コウ)
呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる
張昭と共に『江東の二張』と称される賢人
※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。
呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です
容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである
髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが
その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである
服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている
○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)
普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う
発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する
このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される
※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです
容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている
背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている
○張昭 子布 真名は王林(オウリン)
呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる
張紘と共に『江東の二張』と称される賢人
妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか
容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである
眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から
姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている
○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)
緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名
祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする
部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている
真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・
容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている
均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである
○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ)
荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると
知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる
以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま
呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている
容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女
(背丈は朱里や雛里と同じくらい) 真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます
○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族
槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人
部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす
容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ
胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている
○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)
弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人
『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが
一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で徐々に頭角を現し
後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる
容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである
二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える
○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)
朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される
その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される
天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為
未熟であった一刀の補佐にと転属させられる
初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に
一刀に絶大な信頼を寄せるようになる
後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している
容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである
服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・
と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)
○太史慈 子義 真名を桜(サクラ)
能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者 桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し
騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)
本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という
両者の良い処をとった万能型である
武器:弓 不惜身命
特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く
隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった
容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子
眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める
一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる
真剣に話している時にはござる口調であるが、時折噛んだりして、ごじゃる口調が混ざるようである
一時期噛む頻度が多く、話すのを控えてしまったのを不憫に思った為
仲間内で口調を指摘したり笑ったりする者は、自然といなくなったようである
○高順
「陥陣営」の異名をもつ無口で実直、百戦錬磨の青年
以前は恋の副将であったのだが、恋の虎牢関撤退の折、霞との友誼、命を慮って副将の高順を霞に付けた
高順は恋の言いつけを堅く守り続け、以後昇進の話も全て断り、その生涯を通し霞の副将格に拘り続けた
○馬騰 寿成 真名を翡翠(ヒスイ)
緋蓮と因縁浅からぬ仲 それもその筈で過去に韓遂の乱で応援に駆けつけた呉公に一目惚れし
緋蓮から奪おうと迫り殺りあった経緯がある
この時、緋蓮は韓遂の傭兵だった華雄にも、何度と絡まれる因縁もオマケで洩れなくついて回ることとなるのだが・・・
正直な処、緋蓮としては馬騰との事が気がかりで、ムシャクシャした気持ちを華雄を散々に打ちのめして
気分を晴らしていた経緯もあったのだが・・・当の本人は、当時の気持ちをすっかり忘れてしまっているが
この事情を孫呉の皆が仮に知っていたのならば、きっと華雄に絡まれる緋蓮の事を自業自得と言いきったことだろう・・・
○孫紹 伯畿 真名を偲蓮(しれん
一刀と雪蓮の間に生まれた長女で、真名の由来は、心を強く持つ=折れない心という意味あいを持つ『偲』
”人”を”思”いやる心を常に持ち続けて欲しい、持つ大人へと成長して欲しいと2人が強く願い名付けられた
また、偲という漢字には、1に倦まず休まず努力すること、2に賢い、思慮深い、才知があるという意味もある
緋蓮、珊瑚、狼をお供に従え?呉中を旅した各地で、大陸版・水戸黄門ならぬ
”偲”が変じて”江東の獅子姫様”と呼ばれる
○青(アオ)
白蓮から譲り受けた青鹿毛の牝馬の名前
白蓮から譲られる前から非常に気位が高いので、一刀以外の騎乗を誰1人として認めない
他人が乗ろうとしたりすれば、容赦なく暴れ振り落とすし蹴飛ばす、手綱を引っ張ろうとも梃子でも動かない
食事ですら・・・一刀が用意したモノでないと、いつまで経っても食事をしようとすらしないほどの一刀好き
雪蓮とは馬と人という種族を超え、一刀を巡るライバル同士の関係にある模様
○狼(ラン)
珊瑚の相棒の狼 銀色の毛並みと狼と思えぬ大きな体躯であるが
子供が大好きでお腹を見せたり乗せたりする狼犬と化す
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【あとがき】
常連の読者の皆様、お初の皆様 明けましておめでとうございます 本年もよろしくお願いいたします
こんばんは 雪月でございます いつも大変お世話になっております
新年の挨拶をするのには、すでに半月も過ぎている訳で、ちょっと恥かしくもあります
1ヶ月ぶりの更新となりましたこの度の話いかがでしたでしょうか?
この1ヶ月の間、創作活動に関しましては、やる気があった時だけで書き進めていただけで
書き溜めるというまでには至っておりません アハハ・・・(滝汗
忘年会などリアルでも多忙に見舞われておりましたが、今年の序盤は忙しい1年となりそうです
またお休みを戴いている際に、戦国恋姫が出ました事もあり楽しんで遊べました
・・・というのは嘘でして、酔っ払って帰ってきてテキスト読んでたので
半分以上テキスト読んだ事を覚えてなかったり、記憶が飛んだりして・・・(滝汗
そんな状況ではありましたが、このお休みの間に積みゲーにならずに終える事が出来ました
気に入ったキャラとして、個人的には一葉>双葉>烏>幽=鞠>光璃辺りでしょうか
お家流に関しては、突っ込み所満載なので今更いう事もないでしょう
ただ出来れば、足利ルートは欲しかったかなとは個人的に思えましたけれど(笑
ないなら制作してしまうのも有り?なのかもしれませんが(苦笑
孫呉千年の大計、魏志倭人伝の完結もしてないので、制作など夢のまた夢でありますが・・・
最大の不満はなんと言っても葵の存在でしょう
途中最後の敵かと思ってた(僧正繋がり→葵・悠季)のですが
そうじゃなければ、あんなに邪険にする必要なかったと思うのですが。。。
期待していただけに、ただただ残念でした あと鬼必要?
そんな中でも、桐琴さんと小夜叉はPLAYする前の想像より良くて
特に小夜叉と犬子との絡みは可愛く、ほのぼのと笑え楽しめた点でありました
まだまだあるのですが、戦国恋姫の話はこれくらいにして
この度の話へと話題を移しますと・・・
作戦内容に関して明かしてしまうのも有りかと思ったのですが
次回更新時まで持ち越し、引っ張ってみました
残した文章から、簡単に想像は出来ると思います
紫苑との本格的な戦いの模様は、次回からとなる訳なのですが
どんな作戦となりましたのかは、次回更新時にお確かめくださいませ
孫呉千年の大計、並びに魏志倭人伝を完結に導くべく
決意を新たにして、今後とも更新をして参りたいと思っている所存です
今年1年、皆様どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>
これからも皆様の忌憚のない御意見・御感想、ご要望、なんでしたらご批判でもと何でも結構です
今後の制作の糧にすべく、コメント等でお聞かせ下さいませ
それでは次回更新まで(*´∇`)ノシ マタネ~♪
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常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております
この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶、一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を! ※オリキャラ紹介は本文下記参照のこと
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