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真・恋姫†無双 異伝 ~最後の選択者~ 第二十九話

Jack Tlamさん

今回は一刀達と劉備軍の対決です。

あまりにも恋姫から離れた暗い展開になってきています。では、どうぞ。

※アンチ展開・残酷描写有

2014-01-14 19:28:57 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:9303   閲覧ユーザー数:6398

第二十九話、『悲嘆と憤怒と』

 

 

―その時、空間が鳴動した。二人の『天の御遣い』が、反董卓連合の前に立ち塞がったのだ。

 

今や大陸中にその影響力を拡大しているほどの英傑は連合を「反乱軍」と呼び、刃を向けたのである。そしてその衝撃は、

 

兵には衝撃と自らの主への疑念を与え、諸侯には恐怖を、或いは過ぎた欲望を与えるものであった。

 

そんな中、ただ一つ、反応が他とは違う勢力があった。それは劉備軍。かつて御遣い達が属していた勢力であった―

 

 

 

(side:雛里)

 

「―ど、どうして…どうしてなの、ご主人様ぁっ!?」

 

桃香様が悲痛な声をあげるのを横目に、私は汜水関の上に立つ二人の姿を見ていた。

 

「(始まった…!)」

 

作戦が第二段階に移行したんだ。今や大陸全土に知れ渡っていると言ってもいいお二人が、これまでは劉備軍にいたはずで、

 

連合にとっては一応は味方のはずだったお二人が連合の前に敵として現れ、偽りの大義を掲げる連合を糾弾する。これだけで

 

かなりの影響が出るはず。兵の士気はさらに下がることになる…少なくとも、劉備軍の兵の士気はガタ落ちだ。

 

もう、止められない。

 

「どうして…どうして、あのお二人が…!」

 

「…朱里ちゃん」

 

「どうして…」

 

「朱里ちゃん!」

 

「はえっ!?えっ、な、なに、雛里ちゃん!?」

 

「…まさか前線に出ようなんて思ってないよね?」

 

「はわ!?ど、どうして…」

 

…朱里ちゃんも…そうだったんだ。じゃあ、桃香様なんて言わずもがな。ここで止めないと…。

 

「今前線に出たら、皆を無駄死にさせるだけだよ。ただでさえ兵力の少ない私達が、これ以上無駄に消耗するわけにはいかない」

 

「で、でもご主人様と御前様が…!」

 

「私達は軍師。冷静に行動しなきゃ駄目。まして…主君が冷静さを失っている今この時に、私達が冷静にならないでどうするの?」

 

「っ…!」

 

桃香様が感情的になることはもうしょうがないと諦めているけど、朱里ちゃんまで感情的になってはいけない。まして朱里ちゃんは

 

戦略的視点では私の上を行く能力を持っているから、私以上に感情を排斥しなければならない立場。人としての感情を捨てる必要は

 

まったくないけど、私達はもう義勇軍じゃない、一つの地域を支配する候…それを言ったのは他でもない朱里ちゃんなんだから。

 

「私達は責任を持って動かなきゃいけない。それを桃香様に説いたのは朱里ちゃんでしょ?」

 

「う、うん…でも雛里ちゃん、どうして雛里ちゃんはそんなに落ち着いてるの?」

 

「私達が慌てたら兵の皆さんが動揺して、ますます士気が下がるから…この状況だと、もう士気は最低と言っていいけど…」

 

一刀さんや朱里さんは平原ではほとんど仕事をしていなかったから、兵の皆さんと語らって打ち解けていた。皆さん一様にお二人を

 

尊敬しているし、お二人も目線を合わせて接していたから、求心力では桃香様より上。お二人が敵として現れた今、もう士気は最低と

 

言っていい。桃香様はその求心力をお二人に依存していたんだけど…それが今、仇となった。

 

「―っ!」

 

「っ!?桃香様っ!?」

 

次の瞬間、桃香様はたった一人、前線に向かって駆け出していた―大変!

 

私は今までになく素早く反応し、体力の無さを言い訳にはしないで全力で桃香様に追いすがり、力いっぱい引いて引き留めた。

 

「っ!は、離して!ご主人様が、ご主人様がっ!」

 

「桃香様!あなたは総大将なんです、ここでのこのこ出て行って、あなたが命を落とされたら…私達の勢力は瓦解します!」

 

「離して雛里ちゃん!わたしは、わたしはご主人様をぉっ!」

 

桃香様は剣は握れるし、ある程度は戦える力もあるけど、根っからの武人ではないので桁外れの体力はない。だけど、年齢に比して

 

小柄な私と、私とそう変わらない齢で少し大柄なほうの桃香様では明らかに体力が違う。私は桃香様にじりじりと引っ張られていく。

 

「桃香様!だめですっ!」

 

「いやぁっ!離してぇっ!!」

 

―だめだ、もう私じゃ止められない…っ!

 

 

「―だめなのだ、お姉ちゃんっ!」

 

 

そこに、鈴々ちゃんが駆けつけてきた。

 

「鈴々ちゃんまで止めるのっ!?どうして!?ご主人様があそこにいるんだよっ!?」

 

「雛里の言うとおりなのだ!ここでお姉ちゃんが死んじゃったら、ぜんぶ終わっちゃうのだ!」

 

「でも…っ!」

 

そこで鈴々ちゃんと桃香様は言い争いをはじめてしまう。少しの間、これで足止め出来るはず。

 

でも、長くはもたない。

 

「雛里ちゃん…」

 

朱里ちゃんが歩み寄ってくる。少し険しい表情をして。まだ信じられないというような表情をして。

 

「どうしたの?」

 

「…こうなることを、雛里ちゃんは知ってたの?」

 

…朱里ちゃんは私を疑ってるんだ。胸が痛む…だけど、私は嘘をつき続けなければならない。

 

「…私も、驚いてる…でも、予兆が無かったかと訊かれたら、『あった』って言わざるを得ないよね…」

 

「予兆…?」

 

「…公孫賛さんのご指摘は、正しかったということだよ…」

 

「…!」

 

これで劉備軍の、桃香様の風評は地に落ちる。平原でもお二人は広く慕われていたし、劉備軍は帰る場所さえ失ってしまったのかも

 

しれない。そして、それを招いてしまったのは、他ならぬみんなの我儘なんだ。どうしたって、それは否定できない。自分達の想い

 

ばかり主張して、お二人のお気持ちなんて考えもしなかった。それこそが罪。

 

「(桃香様が求めている世界の姿…少しずつ、見えてきたかもしれない)」

 

私はかねてよりの懸念についての解答が少しずつ得られていることを実感するとともに、それに対して恐怖を感じていた。

 

「(一体、桃香様は何を求めているの?)」

 

基本的には思いやりのある人だとは思う。でも、私はずっと懸念していた。彼女の「思いやり」とは…

 

「雛里ちゃん…何を考えているの?」

 

朱里ちゃんの声はより大きな不安に押しつぶされそうな声音だった。

 

「…今は何も考えられない。でも、たった一つだけわかっていることがあるよ、朱里ちゃん」

 

「それは…?」

 

「…理由はわからないけど、お二人は私達の前に敵として現れた。今の私達は…お二人にとって、敵だということ…!」

 

「!!!」

 

朱里ちゃんが息を呑む。それを横目に、私はもう一度、関の上に立つお二人の姿を見る。

 

「(信じています…一刀さん、朱里さん。あなた方こそが、この世界に光を齎す存在だということを…!)」

 

そして、この…反董卓連合という、偽りの光を打ち破る存在であることを!

 

 

□反董卓連合軍・曹操軍本陣

 

「―『天の御使い』…!…そう、その道を選ぶのね…」

 

汜水関の上で名乗りを上げた二人の姿を遠くに見つめながら、曹操はひとりごちた。

 

曹操にとって、『天の御遣い』という存在は、象徴としても使えるし、何より有為な人材であるので、自身の覇道を達成させるために

 

有用な人材と映っていた。彼らがこの大陸に降り立った目的…乱世の平定という目的も、自分の許でなら果たせると語ってはいたが、

 

その実、彼らも曹操にとっては自身の覇道のための道具に過ぎず、御遣いの一人、北郷朱里に至っては、曹操は新たな愛玩の対象として

 

狙っていた。元々男嫌いな曹操は、北郷一刀には象徴としての価値や能力以上のものを見出さず、北郷朱里に注目していたのだ。

 

彼女にとっては部下も道具。それが正しい王の在り方だと言って憚らない彼女には、強い意志と優れた能力を以て戦うあの二人でさえ、

 

道具としてしか見えなかったのである。

 

「(あの時はまさか袖にされるなんて思っていなかったけど…だからこそ、欲しい)」

 

曹操の誘惑を、ああも冷たい目と言葉で拒絶したのは北郷朱里が初めてだった。以前、司馬家の司馬懿に声をかけた時も袖にされ、今も

 

承諾を得られず、司馬懿は行方をくらましたらしい。しかしその時は、司馬懿ははっきりとは拒絶せず、まともに取り合わなかっただけ。

 

北郷朱里のように、ああもはっきりと拒絶されたのは初めての経験だった。

 

曹操自身、自身の美貌には絶対の自信を持っている。実際、彼女ほどの美少女は見つけようと思って見つけられるものではない。

 

加えて能力にも自信を持ち、完璧とは言えないまでも自身の魅力は磨いてきたつもりであった。それに惹かれてやってきた人材もいる。

 

現在の筆頭軍師・荀彧がその好例だ。彼女の場合、元々いた袁紹軍での不遇も原因ではあるだろうが。

 

「(あの二人、劉備軍にいると聞いていたけれど…まあ、劉備なんかにはもったいない人材よね。私の許にあってこそ相応しい人材よ)」

 

御遣い達が連合の前に立ちふさがった理由について考えないでもなかったが、曹操はこの連合が欺瞞に満ちていることをはじめから承知の

 

上で参加しているため、さほど気にしなかった。劉備軍を抜けた理由については、完全な憶測ではあるものの、ある意味では的を射ていた。

 

劉備軍に、あの二人を留めておけるだけの器は無かった、ということなのだ。それについて、劉備を今後の大敵になり得る一人と見ていた

 

曹操は若干の失望を覚えないでもなかったが、二人の能力の高さを考えれば、仕方のないことではあるだろうとも考えていた。

 

「いいわ、必ず私の手中にしてあげるわ…ふふふ…」

 

野望に満ちた笑みを浮かべる曹操。その笑みのままに、愛する部下…道具たちに指示を出す。

 

「前に出るわよ!あの『天の御遣い』…私達で確保する!我が覇道のために!良いわね!?」

 

「「「「はっ!!」」」」

 

夏候惇、夏侯淵、荀彧、そして許緒が応じる。

 

実際、曹操は人材不足に頭を悩ませていた。司馬懿のこともあるが、どうにも思うように人材が集まってこない。兵力にしても、あの

 

黄巾党を率いていた張三姉妹を確保できなかったため、考えていた兵力の強化はできなかった。州牧となったため、手持ちの兵力を増強

 

することはできたが、有能な将の登用は遅々として進んでいない。荀彧の人脈を通じ、彼女が苦手としている荀一族の者にも声を掛け、

 

様々な方面に手を伸ばしたが、吉報はない。許緒の親友だという、典韋という少女を呼び寄せようという許緒の提案も許していたが、その

 

典韋は出立直前まで姿を現さなかった。今は州牧になったので、この戦いが終わったら許緒の故郷の村に足を運んでみようと曹操は考え、

 

取り敢えず気にしない事にはしていたが…ここにきて、一番欲しい人材が目の前に現れたのである。

 

人材集めが趣味とまで揶揄される曹操が、ここで食指を伸ばさないわけがなかった。

 

「天は私を見ている…いえ、振り向かせてみせるわ。天を掴むのはこの私…曹孟徳よ!」

 

高らかに宣言する曹操。しかし、彼女はこの時、重大な間違いを犯していた。

 

だが、いつになく強い昂奮に支配された今の彼女に、それに気づくだけの余裕はなかったのである。

 

 

 

□反董卓連合軍・孫策軍先鋒

 

「―あははっ、面白いわね、あの子達…」

 

前線で張遼と打ち合っていた孫策は、名乗りを上げた『天の御遣い』を目撃し、獰猛な笑い声をあげた。

 

先代の孫堅、つまり孫策を含む孫三姉妹の母が戦場で命を落として以来、呉の民は、孫策達は袁術に支配され、今まで苦しめられてきた。

 

孫策はなんとしても独立し、呉を復活させなければならぬと言う決意の下、戦ってきた。この反董卓連合に参加したのも、それが理由だ。

 

董卓が都で何をしていようが、孫策はそれに興味を抱かなかった。ここで名声を得ることこそ、孫呉復活の近道になると感じたからこそ

 

連合に参加することに前向きだったのだ。袁術軍の客将である以上、袁術が参加するとなれば拒否権はなかったのだが、その袁術を唆し、

 

連合への参加を決定させたのは、他ならぬ孫策である。袁術は所詮まだ子供。さばけた性格の孫策が呆れるほど、乗せるのは容易かった。

 

「自分の力で攫いに来いってことね?」

 

奇しくも曹操とは逆に、孫策は北郷一刀を狙っていた。北郷朱里については逆にそれほど注目はしていないが、家族の情には理解を示す

 

孫策には、二人を引き離そうなどという気は毛頭なかった。家族が引き離されるという悲しみをよく知る孫策に、そんなことはできない。

 

ただ、孫呉の繁栄のために、貴種である北郷一刀から胤を貰うことと、二人の象徴としての価値と能力を孫呉の繁栄と平和のために利用、

 

未来を作るという算段であった。二人を引き離すつもりはないものの、北郷一刀には妹の孫権をも妻として迎えてほしいと考えていた。

 

「(蓮華もきっと気に入る。彼のことはまだよくわかってないけど…いい男なのは間違いない。北郷朱里の能力も、いい刺激になる)」

 

孫権だけでなく、孫策は自身の部下…甘寧や周泰、陸遜といった将らにも胤を注いでもらおうと思っていた。『天の御遣い』の子を持つ

 

将たちが幾人もいるという風評が得られれば、孫呉の影響力は今後計り知れないものになっていくはずだからである。

 

二人が劉備軍から離れた理由について興味がわかないでもなかったが、それを考えることに、孫策は価値を見出すことはなかった。

 

しかし、今は孫策は別の意味でそれに感謝していた。あの二人は武にも優れ、その武は一騎当千とも言われている。そういう武人の噂は

 

孫策も何度か聞いたことがあるし、何より母・孫堅がそうであった。連合に属することで一応は味方になるだろうと思っていた二人が今、

 

敵として現れたことで、孫策は新たな強敵との戦いを予感し、心を震わせていた。

 

「いいわ、付き合ったげる!」

 

そう言って、また高笑いしながら張遼と打ち合う。しかし張遼は孫策を完全に抑え込んでおり、突破できない。他の二人の将も、甘寧や

 

周泰を上手く抑え、孫策軍はこれ以上前に出ることができずにいる。それに、下手に出過ぎればこちらが余計な損害を食うのだ。

 

それがわからない孫策ではなかったが…。

 

「いい加減道を開けたらどう、張遼!?」

 

「ふん、そんなこと言われて、はいそうですか、なんて言うタマに見えるんか、ウチが?」

 

「見えないわね」

 

「あいにく、ウチはしつこい女やで。酒癖悪いし、たまに妙な絡みをしてくるゆうて、色々言われとるわ」

 

「…酒癖に関しては、私も他人のことは言えないわね…」

 

どことなく締まりのないやりとりを交わす両者。その間にも、互いの得物はぶつかり合っている。

 

孫策はひとまず、目の前の戦いを解決することに集中する。あの二人がどれほどの強敵なのかはわからない。しかし、この張遼と同格、

 

或いはそれ以上に強いだろう。それだけの力を感じさせる名乗りを、あの二人は上げたのだから。

 

あの時―黄巾党との決戦を前にしたときは、北郷朱里との関係を理由に、北郷一刀は孫策の誘いを蹴っている。孫策はその理由自体には

 

不満はない。むしろ、その愛の形を美しいとさえ思っている。それを自分達のために引き裂くつもりはないし、それは許されない事だと

 

思ってもいる。しかしそれは別にしても、孫策にはもう手段を選んでいられる余裕はなかった。

 

「(悪いわね、公孫賛…あなたの言うこともわかるけど、私達は手段を選んでいられないの)」

 

正しい、正しくないという、行為の是非を問う余裕は、孫策にも、呉という国にもない。なんとしても独立しなければならないのだ。

 

いつも余裕綽々と言った態度で周囲と接する孫策にしては、珍しく余裕のない心境だった。

 

普段なら鋭く働く勘が一切働かないことで、少々不安に思っていることもあり、孫策は内心では余裕を失っていた。

 

そして、その余裕の無さこそが、今この時に至っても勘が働かない遠因になっていることに、彼女は気付くことができなかった。

 

それによってもたらされる、読み違えという過ちを犯す可能性にも。

 

 

(side:白蓮)

 

「―始まったか」

 

「そうですね…これでいよいよ、私達の出番ですね」

 

「うむ」

 

優雨の言葉に、私は頷きを返す。そう…いよいよ始まったのだ。作戦の第二段階…『第二幕』が。

 

随分と外連味のある登場の仕方だと思うが、目立たなければ始まらないし、何よりも連合全体に動揺を与えるのが目的なので、全体に

 

存在を誇示するためにあのようなことをやったという事情は理解している。いささか、内容が単純すぎるとは思うが…

 

「単純な方が、より効果的に伝わる…そして、理解されやすいし、乗せられやすい」

 

「桃香の理想がそうですね…非常に単純に語られていますから」

 

「あれはまた別の話になりそうだがな…だが、そういう事になる。扇動の基本は単純かつ激烈な効果を持つ言葉から始まるからな」

 

「理想を語る指導者よりも、戦っている兵に向けての言葉とも取れますね」

 

「ああ。いくら権威を失墜させているとはいえ、まだ漢王朝の皇帝という肩書に威力はある。兵卒に中央に逆らうだけの気概を期待しても

 

 それは酷な話というものだ。それに、主君の理想のための駒となっていても、生活のために軍にいる兵も数多い…そう言った兵たちには

 

 効果的な威力を持っていると言えるな」

 

「なるほど。まず基本的な支持基盤から揺るがすわけですね…」

 

「そういうことだ。生活のために居る者は軍を離れたりはしないだろうが…上に対する不信感を植え付けることはできる」

 

実際、どれほどの効果があるのかは疑問ではある。求心力の強い曹操軍や孫策軍を対象にしたらば、もしかすると効果は薄いかもしれない。

 

だが、言葉だけではその効果を十分に発揮させることができないのはあいつらも重々承知の筈だ。その上でこんなことをしたのだろうしな。

 

だからこそ、たった一人で一軍を相手にできる戦闘能力という「力」を見せつけるのだろうが…それだけで大丈夫なのか?

 

「…白蓮様の懸念については、おそらくここにいる皆も同じものを抱いているでしょう」

 

「気付いていたか。我が軍が全力を出して立ち向かったところで、あいつらのどちらか一人に四半刻で全滅させられるのはわかっている。

 

 だが、こちらは連合軍…総戦力十五万はくだらない大軍だ。いくらあいつらが優れた戦闘能力を持っているとしても…無理があるだろ」

 

「ええ…ですが、一つ推論を述べさせていただいてよろしいでしょうか?」

 

「構わんが…」

 

「ありがとうございます。…彼らの力を、私達がすべて知っているとは思えないのです。まだ何か、隠されたものがある気がします」

 

優雨の推論は、ともすれば突拍子もない推論だった。いくらなんでもそれは無い気がする。自分の軍の精強ぶりを殊更に誇示するつもりは

 

無いが、それでも三万を誇る我が軍を、たった一人で、しかも四半刻で全滅させるなど有り得ない話なのだ。たとえ恋でも、黄巾党相手に

 

一師団壊滅なんて芸当をやったにせよ、皆殺しにしたわけではないし、なにより相手は数だけ多い連中だ。高度に組織化された軍を相手に

 

そこまでの芸当ができるとは思えない。あいつを常識で量ること自体が間違っているかもしれないが。

 

「ふむ…しかしだ、優雨。仮にお前の推論が当たっていたとして、まさかたった二人で連合を壊滅させる力はないだろう?」

 

「…何があるかはわかりません。ですが一つだけ言えるのは…」

 

「言えるのは?」

 

優雨はしばし間を置いてから、関のほうに目をやって答えた。

 

「…現実は、往々にして人の想像を凌駕するものです」

 

…それは確かに言えることだとは思う。しかしながら、もう十分凌駕されている気がするが、これ以上まだ何かあるというのか?

 

「私達の想像を凌駕する…だと?」

 

「はい。そしておそらく…その力を持っているからこそ、このようなわかりやすい警告を行ったのでしょう」

 

私達が知る限りでも、二人の力は凄まじいものだ。恋ですら簡単に圧倒できるに違いない二人の力がそれ以上だと想像することになんら

 

不自然なことはない。私は良くも悪くも凡人だ…そういった領域にまで想像力を到達させることは難しい。それこそ、夢物語だなんだと

 

言って頭ごなしに否定してしまうのは、現実主義者の悪い癖だ。だが同時に、その想像を否定するだけの材料を持っていないのも確かだ。

 

『人間が想像できることは、必ず人間が実現できる』…天界の、ある高名な小説家の言葉だが、つまりそれは、人間が想像できることは

 

全て現実になり得るということではないか?そして、人間では想像しきれないものこそが、優雨の言う『現実』というものではないか?

 

「なるほどな…」

 

そう考えれば納得がいく。現実とは、どうなるかわからないものだ。未来を予測することはできても、あらかじめ知ることはできない。

 

誰がどう行動するか、何が起きるかで未来は変わってしまう。この外史においては一定の『規定された事象』が起きることからある程度

 

『未来予知』はできるのだが、そこで何が起こるか、その結果何がもたらされるかは一切わからない。

 

それが、現実。

 

「…思えば、あいつら…いや、一刀には驚かされてばかりだった。何の経験も無く乱世に放り出されただけのごく普通の青年が、見事に

 

 治政を行い、その名声も相俟っていつの間にか私以上の勢力を築いた。私は途中で死んでしまったから、あいつが建国し、乱世を収め

 

 大陸を平和にするのを見届けたわけではないが…元は一介の学生であるあいつが、国まで作ってしまうのだからな。驚くべきことだ」

 

天の国では政治や経済について、ある程度のことは万人が学んでいる。それに、この時代とは積み重ねられてきたものの質も、量も違う。

 

それらを学んだ学生である一刀ならば、ある意味では当然の成果とも言えた。しかしながら、確かにそれは驚くべきことであったのだ。

 

いくら一刀の知識が広く万人が学ぶ程度のものであったとして、それを活かすだけの能力と機転があるかどうかという問題は別だ。そして

 

一刀は学んだことを活かしたのだ。生きるため…そして仲間を守るため。それは十分、驚くべきことだと言えるだろう。

 

「白蓮様は『始まりの外史』から彼を見続けているのでしたね」

 

「ああ。天界の知識や技術、そういったものも驚くべきものばかりだったが…何にせよ、あいつにはさんざん驚かされてきたからな」

 

「では白蓮様も、二人がまだ何かを隠しているとお思いで?」

 

「お前がそう思わせたんだろう。正直、私は知っている以上のことが想像できん。できることはできるが、それが果たして現実になるのか

 

 はたまた単なる想像で終わるのか…自信が無い。所詮、人間は自身の常識や尺度を、自身の想像に適用してしまうものさ。それを越えて

 

 壮大な夢や想像を描けるのはごく一部の人間だけだ…そういう人間を、人は王、あるいは英傑と呼ぶ」

 

「一刀は寧ろ、白蓮様に近いような気がするのですが」

 

「…いささか不本意なことを言われた気がするが、確かにそうだな。あいつは基本、現実主義者だ。だがそれだけでなく、理想を掲げて

 

 戦うだけの器量を持つ男だ。何よりあいつはこれから人間という生物が数多繰り返す悲しい戦いの歴史を知っている。だからこそ他の

 

 王にはない理想を、他の王にはできないやり方で実現していこうとするんだ。戦いは、あいつにとってはあくまで最終手段なんだよ」

 

そうだ…この時代は乱世だ。昨日も今日も、そして明日も、きっとどこかで戦いが起きる。そこで生きる者達の姿は、さまざまだ。生活の

 

糧を得るために戦う者。信念を以て戦う者…本当に様々だ。だが、きっと世の中はそれに疲れている。誰も彼もが、戦いに疲れているのだ。

 

そしてそれはこの世を蝕む病となって、何事も戦うことが前提となってきてしまっているように思える。はっきり言うが、曹操や孫策達は

 

戦うことで己の理想や目的を実現させようとしている。桃香は積極的に争いを仕掛けるわけではないが…結局は同じなのかもしれないな。

 

しかし、一刀は違う。やっていること自体はそう変わらないだろう…だが、その本質が明らかに違う。

 

「『兵は国の大事にして、死生の地、存亡の地なり。察せざるべからず』…あいつは孫子の教えをよく心得ている」

 

「無闇に争わないのは曹操殿や孫策殿とて同じではないでしょうか?」

 

「…そうかもしれん。だが、私にはそうは思えない…かつての外史で、曹操が涼州に攻め入ったことが原因で馬騰は服毒死している」

 

「曹操殿の手に落ちることを拒んだというわけですね」

 

「そうだ。あいつは大陸を制覇するその時まで、刃を収めることはしないだろう…孫策はまあ、お前が言うように無闇に争いをしないが…

 

 どちらにせよ、最後の最後まで対話で解決しようとするあいつの姿勢は、この乱世においては特異なんだ。だからこその求心力がある」

 

私の個人的な意見だということは承知している。私とてあいつを…好きだった、愛していた。息ができなくなるほどにこの胸を痛め、己の

 

すべてを曝け出し、全身全霊で愛した男なのだ。それを抜きにしたとしても、一刀はきっと、どこまでも人を信じられる奴なんだと思う。

 

そして、そんな奴だからこそ、皆があいつを好きになり…愛したのだ。年月を経ても変わってなどいない。あいつは超がつくお人よしだ。

 

だからこそ…許せない。そんな優しい男が、剣を握らなければならない世界が!

 

「…行きましょう、白蓮様。私も、こんな世界は許せません。私達の戦いを、今ここに始めるのです!」

 

「応!総員に告ぐ!これより我が軍も舞台に上がるぞ!公孫の勇者達よ!今こそお前達の力を天に示せ!未来を切り開くのだ!!」

 

「「「「「「「「「「オオォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」」」」」」」」」」

 

兵達に檄を飛ばすと、待ってましたとばかりに兵達の鬨の声があがる。まったく頼もしい兵達だ。

 

「お見事です、白蓮様」

 

「ふっ…白馬長史の異名は伊達ではないということさ。さあ、我らも往こう。ただ、誇りとともに」

 

優雨の称賛に微笑みを返してから、私は愛馬に跨り、戦場へと踏み出した。

 

 

(side:一刀)

 

俺達の名乗りが響き渡ってからというもの連合側にかなり動揺が広がっているのがわかる。

 

それを見ながら、俺は続ける。

 

「洛陽は至って平和だ!確かに、先帝がおわした頃は荒れ果て、華やかさなどない場所だった!しかし!今上の皇帝・劉協陛下及び、

 

 その信任を受けた相国・董卓の手により、洛陽は賑わいを取り戻し、今や華やかな街となった!民は笑顔で暮らし、陛下の御心もまた

 

 安んじられている!だが、貴様らはそれを、つまらぬ言いがかりで壊そうとしている!」

 

さらに動揺が広がっていく。

 

「情報の行き違いは往々にしてある!それは仕方のないことだ!だが、我が言を聞いてなお、刃を向けると言うのなら…容赦はしない!

 

 心ある者よ、聞け!退くというなら追いはしない!洛陽を見たいと言うならば見せよう!しかし、まずは刃を収めてもらいたい!その

 

 刃は、洛陽の平和を乱すものだ!平和のためにと、その鎧を纏い、その剣を帯びた誇りがその胸にあるならば…ここから立ち去れ!」

 

話し合いの用意はあると、諸侯にも兵にも示す。無論、これが全て事実として伝わるなどとは期待していない。上の求心力が強い軍には

 

効かないだろう。後ろの方にいる勝ち馬乗りの有象無象共はともかく…まだ義勇軍的な性格が強い劉備軍には効果絶大だと思う。

 

なにより、劉備軍の求心力のほとんどは俺達に依存したものだ…つまり、この状況では劉備軍の兵は俺達の方に目を向けることになる。

 

桃香に求心力が無いとは言わない。しかしながら、どちらが慕われているかと云えば…残念ながら、俺達なのである。

 

これは第三者の評価であり、俺達の自己評価ではないことは特筆しておく。

 

「当然ながら、向こうが交渉に応じることはないだろうけどな」

 

「退くに退けない状況になるって、まさにこういうことなんでしょうね…」

 

「引っ込みがつかなくなっているっていうのもあるし、勝てば官軍、負ければ賊軍…所詮勝者が正義だ。皇帝が真実を知っていても、

 

 諸侯がこうして連合を組んで来ている以上、国を維持するために辛い決断をしなければならなくなる。これまでがそうだったはずだ」

 

「ええ…連合との戦いの後、ちゃんと恩賞が与えられたのはそういう理由ということで間違いはないでしょう」

 

「月は身分を隠し、名を捨てて劉備軍の保護下に入るか、姿をくらましたからな。居もしない人間をかばうことはできないか」

 

国家元首とは辛い仕事だ。常に公益に適う選択をしなければならない。あの時、皇帝…才華が月をあくまで庇いだてしたならば、それは

 

より酷い乱世への前奏曲となってしまっただろう。だからあの時皇帝が董卓を切り捨てたのは正しい判断だったとしか言いようがない。

 

尤も、その時には既に死んだことになっていたから、切り捨てるもなにもないのだが。

 

「さて、どう出る…?」

 

連合の方を見やる。動きが止まっているわけではない。向こうから曹操軍がこちらに向かって来ているのがわかる。前線では変わらずに

 

戦いが続いているが、兵同士の戦いは無く、将同士の戦いのみになっている。霞が孫策と激しく切り結び、凪は甘寧と向かい合い、沙和は

 

周泰と対峙している。星は状況を見定めるためを装ってか少し後方に下がり、華雄は愛紗を牽制している。鈴々は出てきていないが、本陣

 

護衛に回されているのだろう。雛里も本陣で桃香を引き留めているはずだ。もちろん、桃香はこちらに来ようと必死だろうが。

 

公孫賛軍にも動きが見える。予定通りだ…さて。

 

「…退く様子が無いな」

 

「はい…予想通りではありますが、むしろ戦いはさらに激しくなりそうです」

 

しばらく観察していたが、どこも戦うのに必死だ。こちらは向こうが撤退するなら追撃はしないよう、全軍に徹底させている。そのため、

 

連合側が退く意志を見せれば戦闘を中止することはいつでもできる。にも関わらず戦闘を続行しているということは、俺達を信じないか、

 

或いはもう退くに退けない状況だから、俺達を叩き潰そうとしているのか。

 

おそらく、どちらもなのだろうが。

 

そして曹操軍と孫策軍は、間違いなく俺達の確保に動いている。これまで沈黙していた曹操軍が急に前に出てきたのがいい証拠だ。

 

劉備軍の方は…兵は呆然としているな。それを見て、こちら側もそこを突いたりはしていない。相変わらず華雄の見事な手際により愛紗は

 

完全に抑え込まれてしまい、こちらに来ようとはしているようだが、来ることができないでいる。

 

しかし…動きが止まらず、退かないということは…それが連合の答えと言っていいだろう。

 

「…朱里、行くぞ」

 

「はい」

 

そして何回か大きく息を吸い、呼吸を整えてから再び『拡声術』を使って連合に向かって宣言した。

 

「退こうとせずに戦うのならば、それが貴様ら連合の答えだと受け取ろう!最早、容赦はしない!あくまでも戦ったことを悔いろ!!」

 

言い終わってから、俺は『拡声術』を解除し、朱里と一瞬顔を見合わせる。朱里は俺に小さく頷いて見せた。

 

俺達の間には余計な会話は必要ない。これだけでも十分に伝わる。相手に言葉にしてほしいと望む時も、ちゃんとそれがわかるだけの強い

 

絆は持っている。普段は言葉にしなくても、お互いが考えていることがはっきりとわかる。それは戦場においても変わらない。それぞれが

 

率いる部隊があの風をして「これ以上ないくらいの連携」と言わしめるほどの連携行動を取れるのは、俺達が常に通じ合っているからだ。

 

そして、その絆は『対話』によって得たものだ。何度となく対話を重ね、やがては心も身体も深く交わり、この絆を得たんだ。

 

だからこそ…俺達は許せないんだ。あっさりと『対話』という手段を捨ててしまう、そんな世界が。

 

 

「「―はッ!!」」

 

 

俺と朱里は示し合わせたように、汜水関から飛び降りる。その瞬間に銅鑼が打ち鳴らされ、再び部隊が出動する。

 

俺達が率いる、白と黒、二つの十字を掲げた部隊―北郷白十字隊と北郷黒十字隊だ。素質のある者達を集めた最精鋭の部隊が、満を持して

 

連合の前に姿を現す。俺達はその部隊が出て来る場所に降り立ち、部隊の先頭に立つ格好となる。そして、二つの隊の標的は…劉備軍だ。

 

孫策軍側に兵を多く割いたのは、劉備軍と比べても精強な軍であること、そして俺達の作戦上、確実に足止めしておかなければならないと

 

いう都合があったからだ。華雄には大変な思いをさせてしまったかもしれないが、彼女ならその程度のことは笑い飛ばしてくれるだろう。

 

問題は曹操軍だ。連中の進軍速度は速い。さっさと劉備軍との片を付け、そちらに対応しなければならないだろう。

 

もっとも、それほど時間はかからないだろうが…華雄に言って、曹操軍への対応に回ってもらうか。本来なら俺達が当たるべきなのだが、

 

華雄からは何かあれば自分の隊を差し向けてほしいと頼まれているので、構わないだろう。見たところ、華雄隊に特段の被害は出ていない。

 

負傷した者は見受けられるが、ごく少数だ。そういった兵は治療のため関に戻し、補充兵と交替させれば良いだろう。

 

話は決まった。

 

「白十字隊、ついてこい!」

 

「黒十字隊も続きます!」

 

俺達の掛け声を受け、二つの隊の兵達は劉備軍に向かって進んでいく。見ると、劉備軍本陣の方から『張』の旗が進んでくるのが見えた。

 

鈴々が来たのだろう。代わりに本陣には『趙』の旗がある。つまり星が桃香の抑えに回ったのだ。今頃、桃香は必死で雛里や星の制止を

 

振り切ろうとしているだろう。だが、星がいれば大丈夫だ。いざとなれば主君を殴りつけることくらいは厭わない、そういう人間だから。

 

愛紗と激戦を繰り広げている華雄の許に向かう。すると鈴々も兵を引き連れて到着した。しかし、こちらの兵が十分以上に睨みを利かせ、

 

しかも俺達までいるので動揺して戦えないでいる。連中には可哀そうだが…仕方のないことだ。

 

「閣下!」

 

愛紗を大振りの一撃で大きく後退させた華雄が、自分も少し下がりながら声をかけてきた。

 

「華雄、期待以上の働き、見事だった。ただ状況が悪化している。君の隊には曹操軍の対応に回ってもらいたい」

 

「なるほど…またも私を侮っている連中が来たわけですな」

 

「そういうことだ。生まれ変わった君の力を見せてやれ。夏候姉妹は強敵だ、気をつけてくれよ。負傷兵を下げ、補充兵を回してくれ」

 

「はっ!では、こちらはお任せしますぞ!」

 

そう言って華雄は自身の隊を集め、指示を飛ばし、関に戻る者達と曹操軍への対応に向かう者達に分かれ、伝令は素早く関に向かった。

 

指揮官としての素養は高かったのだから、軍略を身に着け、冷静さを獲得した今の華雄に隙はなかった。これからも良い将として活躍

 

してくれるだろう…遠ざかる漆黒の『華』の旗を見送りながら、俺はそんなことを思っていた。

 

だが…こちらもこちらで物語を進めなければなるまい。ちょうど鈴々も来ている。俺達は驚愕の表情を浮かべる二人に向き直った。

 

 

「…さて、何から話したものかな?」

 

二人に問いかけたつもりはなかったが、間をおかずに愛紗から反応が返ってきた。

 

「ご主人様!御前様も!一体何をしていらっしゃるのです!?何故董卓軍などに居るのです!?」

 

「そうなのだ!お兄ちゃんに朱里お姉ちゃん、なんで平原に帰ってこなかったのだ!?」

 

愛紗は泣き出しそうな表情で俺達に問うていたが、鈴々は同じ内容で問いながらも、どこかでわかっていたという複雑な表情だった。

 

あるいは、鈴々は気付いているのか、若しくは記憶が戻りつつあるのかもしれない。月が本当は暴政など敷いていないことは、彼女も

 

知っているのだから。それに、俺達の承諾を得ないまま祭り上げることに反対していたこともある。鈴々なりに推理しているのだろう。

 

愛紗は推理しようともしていないようだが。決めつけるのは良くないが、董卓軍を悪だと決めつけてしまっている愛紗には、それ以上の

 

推理は必要ないとしか思えないのかもしれない。これは愛紗の悪い癖だと言える。

 

「理由を話す必要があるのですか?」

 

朱里が冷たく問いかける。その声は、曹操に向かって発したあの絶対零度の声だった。なまじ元々鈴の音のように耳に心地よい朱里の

 

声がそのような冷たさを帯びると、心の底にまで響く、綺麗だがあまりに寒々としたものになった。空気が凍りつくような擬音が生じた

 

気がするくらい、その声は冷たかった。心なしか耳鳴りがしているような気がする。昔の朱里は、こんな声は絶対出さなかった。

 

そして、こんな声を愛紗達の前で出したことも無い。朱里のあまりに冷たい声に、二人も驚いているようだったが、愛紗は一瞬怯んでも

 

なお言葉を続けた。

 

「すぐにこちらにお戻りください!桃香様がどれほど心配されていたか…もちろん、私達も心配しておりました!さあ、お早く!」

 

…頑固だなぁ、愛紗も。そこがかわいいところではあるんだけど、悪いが今となってはそれが煩わしい。

 

俺はあくまで冷たく、感情を排して言葉を紡いでいく。

 

「戻る必要は無い。そして、もう二度とそちらには戻らないよ、愛紗」

 

「何故です!?あなた方は私達の―」

 

「―君達の主人になった覚えはないと言ったはずだ!まだそんなことを言っているのか!忠義の士が聞いてあきれるな、関雲長!」

 

冷静に話すつもりだったが、愛紗のともすれば傲慢な言い方に怒りの念が瞬時に沸騰し、思わず怒声が出る。何度も言うが、俺は怒りで

 

ヒートアップするクチだ。自分の性質は十分承知している。俺は一度怒り出すと止まらないから、抑制していたが…もうそれも限界だ。

 

愛紗は俺の怒声に怯んだ様子だったが、尚も言い募る。

 

「いいえ聞きませぬ!あなた方は私達の…桃香様の許に居るべき方々だ!都の民を苦しめる董卓などに加担してはなりません!」

 

「主人になった覚えはないと言った!そして董卓は民を苦しめてなどいない!平和に暮らす都の民を苦しめているのは君達の方だ!」

 

「何故です!?私達は都の民を救うために!」

 

「それ以上言うなぁッ!!!」

 

腹に溜めた空気を全部使い、愛紗の必死の訴えを退ける。震えながらこちらを見る愛紗に、俺達は告げる。

 

「俺達がどこにいるべきなのか、それは君達が決めることではない。俺達は董卓…いや、皇帝の許で戦うことを選んだんだ」

 

「あなた方には期待していたのですが…涿で出会った時から何も変わっていない。むしろ酷くなっている。だから見限ったのです」

 

「もう連れ戻そうと思っても聞かんぞ。理由など話す必要は無い…それがわからない時点で、世を治めるには不適格だ」

 

俺達が紡ぐ冷たい言葉の数々に愛紗は呆然としていたが、すぐに自分を取り戻し、しかし涙を流しつつ問うてくる。

 

「何故、あなた方が董卓軍などに…桃香様の理想を実現させるべく共に戦うと仰られたのはあなた方ではないですか…」

 

「…何度も言うが、それがわからないなら、なおさらもう君達の許に戻るなんてことは拒否させてもらおう」

 

「何故です!?」

 

「少しは自分で考えろ。与えられた答えのみで満足か?そんなものでは君は絶対に満足しない。だが、与えられるのを待ってばかりか。

 

 まあ、君に少しでもそんな気概があれば、今よりも状況はずっと良かっただろうけどね。考えもしない人間は、俺達には必要ないのさ」

 

「私達はあなた方を必要としているのです!それなのに…!」

 

「だから?君達が俺達を必要としているのはわかっている。そして、俺達を欲しがっているのは君達だけじゃない。曹操や孫策もまた、

 

 己の理想や野望のために俺達を欲している。それがどういう意味なのか、それすらわからないか?ここまで言って、まだわからんか?」

 

「そんなこと…!曹操や孫策などにお二人を渡すわけには!」

 

「もちろん、俺達はあの二人にも加担するつもりはない。なぜならば、俺達を道具扱いしようとしているからだ」

 

「道具扱いですって!?」

 

「そうだ。詳しくは本人達に訊いてみれば良いさ。だが、ここまで言って俺達が君達の許を離れた理由がまだわからないか?」

 

「…私にはわかりません。この大陸を覆う乱世を収めるべく降り立ったというあなた方が、なぜ桃香様の許を離れられたのか…」

 

ここにきて、まだそんなことを言うのか。気持ちはわからないでもないが…まるで桃香以外では乱世を収められないとでも言わんばかり

 

じゃないか。まあ、自分の主君こそがっていうのは理解できるけど、なら俺達はなんだ?桃香が乱世を収める手助けとなる道具なのか?

 

もちろん本人達は「違う」と言うのだろうが…こっちや第三者からすれば実態は結局、そういうことにしかならないんだよ。

 

「…そうか。ならばもういい。最早君に問うことはすまい」

 

それだけ言って、俺は『五行流星』をゆっくりと抜き放つ。刃鳴りが静かに、しかしはっきりと戦場に響く。

 

「理解されることは望まない。許されることも望まない。ただ、生きとし生けるすべての命のために…それが私達です」

 

朱里もまた、『陽虎』と『月狼』をゆっくりと引き抜く。刃に反射した陽光が、朱里の冷たい目に恐ろしい光を与える。

 

「たとえすべてを失おうとも、どのような苦難が待ち受けようとも、俺達は突き進む。それこそが未来に繋がると信じて」

 

「手段は択ばない。決して迷わない。たとえその選択が、その決意が誰かを傷付けようとも。私達は決して歩みを止めることはない」

 

それこそが『計画』の基本骨子。誰も傷付けない、誰もが笑顔になれる…そんな理想などあり得ない。これは夢物語ではないのだ。

 

「そう、私達は…」

 

「乱世を収め、その先にある未来を守る―」

 

 

 

「「―『天の御遣い』だ!!」」

 

 

 

俺達は宣言する。敢えてこういう形で宣言したのは、桃香だけが乱世を救えると信じきっている愛紗に動揺を与えるためだ。

 

今の桃香では乱世は収められない。乱世を収め得る力は他にもある。そして―

 

 

―その力は、決して桃香とは相容れないものであるということ。

 

 

刀を蜻蛉に構える。俺は鈴々の前に進み出、朱里は愛紗の前に進み出る。

 

 

「―後漢王朝第十四代皇帝・劉協が配下…大将軍、北郷一刀」

 

 

「―同じく、後漢王朝第十四代皇帝・劉協が配下…驃騎将軍、北郷朱里」

 

 

こうやって役職を含めて名乗るのは久しぶりだ…そして、それこそがもう二度と劉備軍に戻らず、また劉備軍では及びもつかないような

 

地位に俺達が在るのだと告げる最後通告だ。もうこれで、何もかもが止まらない。だが、俺達はその流れを操って見せる。未来のために。

 

そして、二つの世界に生きるすべての命を守るために!

 

 

「「―参るッ!!」」

 

 

俺達はそれぞれの敵に向かって足を踏み出した。

 

 

(side:朱里)

 

私は愛紗…いえ、関羽の目前に立ち、彼女を睥睨する。当然、彼女はまだ理解できずに問いかけてくる。

 

「何故です!何故、あなたが董卓軍などに!悪政を敷く董卓などに肩入れするのですか!」

 

…それは思い込みでしかない。知らないことを一概に罪と断じることはできないけど、知ろうとしないことは間違いなく罪だ。

 

「深く考えもせずに人を悪と断じる劉備に付和雷同し、刃を振るうあなたなどに教えることではありませんよ、関雲長!」

 

知らないが故の正義に浸っていられるのも今のうちだということを、教えなければならない。

 

「何故、刃を向けられるのですか!私達は敵ではないのですよ!」

 

まだ必死の訴えを繰り返す関羽。心は痛むけど、今は正直怒りの方が勝っている。何故、この人は考えようとしないのだろう。

 

「理由を話す必要などないと言ったはずです!」

 

言いながら体内の氣を操り、高めていく。今までにない氣の高まり…感情が高ぶっているせいもあるのかもしれない。

 

関羽はまだ偃月刀を構えない。この期に及んでまだ甘えたことを言うつもりなのかもしれない。勿論、申し訳ないことをしているとは

 

思っている。多大な心配をかけたし、なにより彼女は『始まりの外史』からずっと共に戦ってきた戦友なのだから。

 

でも、だからこそ失望も大きい。いつから彼女はこんな風になってしまったんだろう。己の理想を抱き、自律していた彼女はいったい、

 

どこに行ってしまったのだろうか。あの頃の彼女なら一刀様のご意志を尊重していたはずなのに。いつからこんなことに…一刀様の許、

 

自分達を信じてくれる人々のために戦っていたあの頃は…今にしてみれば、なんて遠い記憶なのだろう…本当に、あの頃が遠い…!

 

「はぁぁぁぁぁぁあああッ…!」

 

私は心に満ちる失望の念をも怒りの炎にくべて、氣を高めていく。燐光が全身から湧き出てくる。

 

「くっ…なんという気迫…!何故だ…何故、あなたはそれほどまでの氣を私に向けるのです!」

 

「もう一度言います。理由を話す必要などないのです。それはあなた方が考えるべきことであり、私達が教えることではないのです」

 

「何度、言われても…くっ…わかりま、せぬ…何故…何故…っ!」

 

「…どうしても槍を構えないとあらば、私にも相応の用意があります…はあッ!!」

 

言うが早いか、私は剣を収めながら地面を蹴って一瞬で関羽に肉薄し、いきなりその脇腹に全力の蹴りを入れる。

 

「ぐはっ!?」

 

空を蹴って跳躍し、背中を足の裏で思い切り踏みつける。前につんのめって態勢を完全に崩した関羽の、今度は逆の脇腹を蹴る。

 

「あ゛っ!?ぐっ!?」

 

そして、横に向かって倒れ込みそうになる関羽に追いつき、倒れていく側の頬を殴りつける。その衝撃で逆戻りする関羽の顎を狙って

 

アッパーを決め、一瞬の間もおかずに鳩尾に全力の正拳を叩きつけ、利き足の向う脛を蹴飛ばし、足払いをして今度こそ地面に倒す。

 

「あぅ…っく…うぐぅ…っ……がはっ!」

 

全てが氣を込めた肉弾攻撃。内臓にダメージがいったのだろうか、関羽は口から血を吐き出した。大量ではないけど、かなり辛そうだ。

 

誰であろうと私達の道を阻むなら倒すしかない。まして戦おうとせずに邪魔立てするなら、もう立ちはだかれないようにするしかない。

 

どうにか立ち上がろうともがく関羽を見下ろしながら、私は静かに語りかける。

 

「どうです?少しは自分の無力さを思い知りましたか?」

 

「くはっ…ぐっ…な…む、無力…?わ、私は決して…!」

 

「…そうでしょうとも。確かにあなたは強い。ですがその刃に確固たる信念は宿っていない。その刃に宿っているのは借り物の理想。

 

 その心を満たしているのは実現し得ない夢想。あなたが立っている大地は、非常に危うい…空に浮かぶ雲のように、茫洋としている」

 

「くっ…私は…私は、桃香様の理想を実現するべく戦っているのです…御前様、あなたはそうではなかったのですか…この大陸に安寧を

 

 もたらすために舞い降りるという『天の御遣い』であるあなた方が、なぜ同じ理想を持つ桃香様に刃を向けられるのです…あまりにも

 

 残酷ではないですか。桃香様がどれほど、あなた方を信頼し、また強い想いを抱かれているか…それはご存じの筈でしょう…!」

 

 

―私の中で、何かが音を立てて崩れた。

 

 

「…残酷?残酷ですって?…ふっ…ふふふっ…あははははははははははっ!!」

 

私の口から乾いた哄笑が漏れる。これほど残酷な笑い声は無いというくらい、そう自分でも思ってしまうくらいの、冷たい笑い声。

 

「な…なにがおかしいのですか!」

 

関羽は当然、私の哄笑を前に当惑する。心底、その表情が可笑しい。笑いが止まらなかった。まるで気が狂ったかのように笑い続ける

 

私を、周囲の兵も困惑気味に見ているけど…今の私には、そんなことは気にならなかった。ただ、どうしようもなく可笑しかった。

 

「ええそうでしょうとも!残酷?確かにそうでしょうとも!信頼を寄せ、自身の想いを訴えた相手に裏切られるというのは!」

 

「そう思われるならば何故、桃香様の許を離れられたのです!」

 

「あはははははははっ!!本当にあなたは愚かですね!そんなこともわからないなんて!考えようともしないだけなんでしょうけど!

 

 そうやって自分の想いを訴えてばかり!そうやって押しつけがましい信頼を抱くばかり!これが笑わずにいられますか!あははっ!

 

 想いを裏切ったですって?では、私達の想いはどこにいってしまったのです?そうやって私達の想いは劉備のそれと同じだと勝手に

 

 決めつけた挙句、それを裏切られたと言って、その理由がわからない?私達の言葉は、一つとしてあなた達には届いていなかった!

 

 自分達への信頼を集めると言っていても、それは口だけ!結局は私達を、自分達の売名や正当性の証明のために使った!あなた達は

 

 私達の想いを無視した挙句、『天の御遣い』として祭り上げ、形だけの主君にした!永きにわたる戦いの果て、やっと掴んだ平穏を

 

 捨てて再び戦いに身を投じた私達を待っていたのは、誰かの理想を実現するための道具扱い!残酷?ええそうでしょうとも!曹操や

 

 孫策と何も変わらない!あなた達がなんと言おうが、事実は変わらない!戦う理由を私物化され、勝手に主として祭り上げられて!

 

 互いに合意して約束したことさえ破られて!そちらの想いを一方的に押し付けられて!挙句の果てには人間扱いすらされなかった!

 

 それを残酷と言わずに何だと言うのですか!それであなた達の言い分はなんです?押し付けた想いを拒絶されただけで、よくもまあ

 

 『残酷』だなんてのたまいましたね!自分達のやっていることの残酷さからは目を背け!自分達は想いを拒絶されただけで残酷だと

 

 のたまうだなんて!これが可笑しくなくて何が可笑しいの!?あはははははははははははははははははははははははははははっ!!」

 

狂ったように次々と言葉が吐き出される。そんな自分の姿すら、滑稽だった。可笑しかった。笑いが、止まらなかった。

 

「ご、御前様…!」

 

関羽の当惑した声が聞こえる。その瞬間、私は笑うのをやめ、急に冷えた視界に彼女の姿を捉える。何故そんなことを言うのかとでも

 

言いたげな表情を浮かべている。立ち上がってはいるけど、まだ偃月刀を構えない。そしてこの期に及んで『御前様』呼ばわりをする。

 

私達の想いを理解してもらいたいとは思っていない。でも、それを都合良くこうだと決めつけ、自分達と同じだと言って憚らないとは。

 

それのどこに『義』が…『情』があるのだろう。正義の味方が求めるべきは何?私は『結果』だと思う。でも、彼女達は明らかに別の

 

ものも求めている…『承認』だ。自分達の想いが拒絶されただけで、それを「残酷」だなんて。自分達の在り方を省みず、知ろうとも

 

しないで戦って、正義を為したと悦に入っている…それは『正義』なんかじゃない…単なる『憂さ晴らし』だ!

 

 

―私の中で憤怒の炎が燃え上がるのに、刹那の時さえも必要なかった。

 

 

「…その名で…っ…呼ぶなぁぁぁぁぁあああッ!!」

 

私の口から絶叫が迸った瞬間、関羽の全身からぱっと鮮血が飛び散る。私が蛇腹剣を解放し、目にも留まらぬ攻撃を繰り出したからだ。

 

「うぐっ!?あ、が、あぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁあぁああぁぁぁああぁぁぁああっ!!??」

 

関羽の苦痛に満ちた絶叫が、戦場に響き渡る。しかしその絶叫は、妙に冷えた私の頭の中では響くことなく消えていった。

 

右手の『陽虎』からは凄まじい熱が、左手の『月狼』からは凍えるほどの冷気が生じているように感じる。それは私の中で絡み合う

 

二つの感情…彼女達に対する烈火の如き怒りと、それとは対照的な冷然とした失望。それらが具現化したような感覚だった。

 

今にも崩れ落ちそうな体を偃月刀で支え、震えながらも未だにこちらに目で問いかけてくる関羽に剣の切っ先を向け、私は宣告する。

 

「戦いなさい、関羽!戦わなければ死ぬだけです!さあ、槍を構えるのです!この私の刃に、命を奪われたくなければね!!」

 

無数の傷を負い、鮮血に塗れた関羽の姿は、如何にも弱々しかった。しかし今の私に、それを気遣うほどの優しさは残っていなかった。

 

私は生まれて初めて、怒りのままに戦っていた。

 

 

(side:一刀)

 

「どうしてなのだ!?お兄ちゃん、なんで鈴々たちの前に立ち塞がってるのだ!?」

 

俺の目前に立つ鈴々は悲痛な声でそう訴えてくる。今にも泣き出しそうな鈴々を見ていて、心が痛まないわけはなかったが…

 

「知りたいなら、俺を倒して見せろ!すべての答えは、自分で戦って勝ち取らなければならないんだ、鈴々…いや、張翼徳!」

 

そう冷たく告げる。敢えて真名では呼ばない。今となっては敵同士だ。彼女は燕人張飛…決して油断していい相手ではないのだから。

 

刀を蜻蛉に構えたまま、鈴々の出方を見るつもりで、俺は動かなかった。鈴々の方は「どうして?」とでも言いたげな目でこちらを

 

見ていたが、やがて頭をぶんぶんと振ると、それで色々なことを振り切ったようで、『丈八蛇矛』を肩に担ぎ、一歩踏み込んでくる。

 

「(そうだ…鈴々。それでいい…)」

 

良い覚悟だ。戦って俺達の真意を見定めようと言うのだろう。難しいことはわからないと鈴々はよくぼやいているが、考えなしでは

 

決してない。ただ、余計なことを考えないだけだ。そうであるが故に、桃園三姉妹ではおそらく精神的には最もタフなのであろう。

 

「…お兄ちゃんがそう言うなら、鈴々はそうするのだ。答えは戦って勝ち取ってやるのだ!」

 

「それでいい!さあ来い、燕人張飛!北郷流剣術正当伝承者、北郷一刀…この名に懸けて、いざ尋常に勝負だ!」

 

涿で出会った時よりも確実に強くなっているはずだ―俺の予想を裏付けるかのように、鈴々の蛇矛は凄まじい速度と質量を持って、

 

しかし鈴々の真っ直ぐさを忠実に反映した一撃を繰り出してくる。俺は恐れ気も無く踏み込み、柄と穂先の接合部分を片手で受け止め、

 

そのまま固定する。押し込もうとする鈴々の矛は、しかしそれ以上押し込まれることはなかった。

 

「まさか手で受け止められるなんて思ってなかったのだ!」

 

「そうだな!しかし良い攻撃だ!だが間合いに入られ過ぎるな、でなければ負けるぞ!」

 

言うが早いか、俺は掴んでいた蛇矛ごと鈴々を投げ飛ばす。まあ鈴々の身体能力なら空中で姿勢を立て直すくらい簡単にできるだろう。

 

実際、鈴々は苦も無く体勢を立て直し、着地して再び蛇矛を構える。天下一品武道会での思春との対決でも華陀が言っていたことだが、

 

鈴々の蛇矛は長すぎるため、超接近戦には弱い。あまりに取り回しが悪すぎる。中距離から打撃を加えるのが、あの矛の基本的な使用

 

方法だろう。その長さ故に、全力で振り回される穂先に宿る破壊力は凄まじいが…ハイリスクな武器であることに変わりはない。

 

今度は構えたまま動かない鈴々に対し、俺の方から声をかける。

 

「どうした?もう終わりか?」

 

「違うのだ。ただ、どうしてもお兄ちゃんに聞いておきたいことがあるのだ。だから一旦手を止めるのだ」

 

「…いいだろう。一つだけなら答えてやる。聞きたいことも、一つだろう?」

 

「うん…」

 

鈴々は少し躊躇いがちに、しかしはっきりとした口調で問いかけてきた。

 

 

「…お兄ちゃんたちを、信じてもいいんだよね?」

 

 

…なんという問いだろう。では、先程までの悲痛な問いは何だったのだろうか。

 

あるいは、鈴々にはわかったのか?『計画』のことはわからないまでも、俺達が平原を離れ、こうして敵対することになった理由が?

 

「…信じたいなら、信じてくれていい。だが、何を以て信じるかはお前自身で決めろ。それだけだ…」

 

俺は鈴々の問いにそう答え、再び刀を蜻蛉に構える。鈴々は数瞬の間、目を閉じて何かを考えていた様子だったが、すぐに目を開けると

 

構えを変えた…あれは余程のことが無ければ見られない、鈴々が本気になった時の構えだ…そういうことか。

 

「…わかったのだ。それだけでもう鈴々には十分なのだ。じゃあ、ここから本気なのだ」

 

「今まで数度は仕合をやっただろう?そこでは本気じゃなかったのか?」

 

「仕合での本気と、戦いでの本気は違うのだ。鈴々は、まだ一度も本気を出したことが無いのだ」

 

「そうか。ならばかかってくるがいい…!」

 

数瞬の睨み合いの後、俺達は激突する。刀と穂先が擦り合い、そのまま互いの背後に抜ける。そして再び激突。

 

「てやぁぁぁぁぁあああああっ!!」

 

鈴々は変わらない。どちらにせよ、大切な仲間…ひいては『家族』を守ると言う点において、『始まりの外史』から変わってはいない。

 

守る対象にも、特段の変化はない。『始まりの外史』から共に戦ってきた仲間達、『閉じた輪廻の外史』からの仲間達。そして、俺。

 

そして今、鈴々は間違いなく成長している。甘ったれたことは言わず、余計なことは問わず、そして戦う覚悟さえもちゃんと決めていた。

 

純粋さは時に残酷だが…今の鈴々の純粋さは、大切にしなければならないものだ。難しく考えすぎるから、人は迷う。鈴々はその点で

 

他の人間よりも強い。子どもの心を忘れた大人は碌なものじゃないとか何とかってどこかのドラマで聞いたことがあるような気がするが、

 

子どもの純粋さというのはそれだけ大切なものなのだろう。尤も、鈴々自身は疑いようも無く子どもなのだが。

 

「はッ!」

 

鈴々の足元に向かって氣弾を放つ。しかし、鈴々は野生の勘でそれを躱し、凄まじい威力の薙ぎを繰り出してくる。

 

「てやーーーーーーーーーーっ!!」

 

常人ならばほぼ確実に避けられない一撃。今度は穂先だ…あんまり避けているのもあれだし、今まで使わなかったあれを試すか。

 

 

『―護光壁(ごこうへき)!!』

 

 

迫り来る蛇矛の穂先に向かって無造作に掌を向け、氣を高める。途端、何もなかったはずの空間によって穂先はそれ以上俺に近づけなく

 

なった。穂先は淡く光る半透明の壁によって遮られ、不可思議な音を奏でて拮抗する。そう…これこそが、今まで使っていなかった技。

 

「(項籍羽が直伝、『護光壁』…高めた氣を体外に放出・制御し、収束させて盾とする技だ…!)」

 

淋漓さんから教わった技の一つだ。これを破るには武器に氣を纏わせるしか方法は無く、それでもまだ『護光壁』を生成している者の

 

氣の出力を上回らなければ絶対に破ることはできない。大して範囲が広くないのが難点だけど…相手の意表を突くことはできる。実際、

 

鈴々は矛を戻しながら当惑していた。

 

「な、なんなのだ!?」

 

しかし、良い攻撃だった…鈴々は本当に成長した。ここまで成長してくれるとは思っていなかった。そしてその矛先には彼女の想いが

 

乗り、それが俺に伝わってくる…桃香のことも、俺達のことも、どちらも信じたいと思う気持ち。でも、俺達の想いがわからないという

 

気持ち。それを知りたいという気持ち。桃香を悲しませたのは許せないが、俺達の気持ちもわかるという気持ち。

 

様々な気持ちが、矛先に乗って俺に叩きつけられたのだ。彼女の想いは、熱かった。ならばこちらも、熱い想いで応えねばなるまい。

 

「今度はこちらが攻撃する番だ!うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおッ…!!」

 

氣を高め、『五行流星』に流し込んでいく。俺の氣を吸った『五行流星』に、激烈な熱が宿るのを感じる。

 

鈴々が俺の斬撃を防ごうとする―

 

 

―しかし、それは意味をなさなかった。

 

 

「な、なんでっ!?」

 

鈴々の『丈八蛇矛』は俺の斬撃を防ごうとした場所から真っ二つに「溶断」されていた。鈴々は当然ながら驚愕する。

 

『丈八蛇矛』は俺が知る限り、最高峰の強度を誇る武器だ。それをこうもあっさりと破壊…しかも「切断」ではなく「溶断」するなんて。

 

俺もまた、驚きを隠すのが難しくなっていた。しかし、俺は冷静に問いかける。

 

「どうする?退くか?」

 

「…まだ戦えるけど、もう退くのだ。よくわかんないけど、お兄ちゃんの気持ちがわかったから…」

 

「そうか…」

 

そう言った次の瞬間、すぐ近くで戦っている愛紗の苦痛に満ちた絶叫と、朱里の怒りに満ち満ちた絶叫が辺りに響き渡った。

 

「(朱里…!?)」

 

「愛紗っ!?」

 

俺と鈴々はどちらからともなく顔を見合わせ、一瞬の合意の後、朱里達のところに駆け寄っていった。

 

 

「朱里!」

 

駆け寄った俺達を待っていたのは、最早憎悪と言ってもいいほどの激烈な怒りに支配された朱里と…全身血塗れの愛紗だった。

 

「愛紗ぁっ!」

 

鈴々が今にも倒れそうな愛紗の許に駆け寄っていく。それを横目に、俺は朱里の目を見る―その眼の光は、狂気を孕んでいた。

 

「(…やはり…愛紗には俺が当たるべきだったか!)」

 

鈴々には大きな成長が見られたため、俺も熱い感情で戦っていたが、心中は穏やかでいられたと思う。しかし、朱里は…まったく成長の

 

無い愛紗と当たった朱里は、おそらくは愛紗の勝手極まりない言動を受けて怒りを抑えきれなくなったのだろう。いや、確実にそうだ。

 

「(ただでさえ朱里は自分を抑制し続けていた…朱里から言いだしたこととはいえ、やはり止めるべきだったんだ…!)」

 

後悔の念が心に広がり、俺は奥歯を噛み締める。

 

そうだ…朱里は外史に降り立ってからというもの、自分の感情を表に出すことはあまり無く、ずっと仮面の奥に表情を隠したままだった。

 

顔の上半分だけを覆う仮面なので口元の表情はわかるが、それでも朱里の顔からは、確実に笑顔が失われつつあった。かつてはあれほど、

 

コロコロと表情を変えながらたおやかに笑っていた朱里。しかし、今は…どこまでも透き通って遠い表情をしていることが多くなった。

 

だがそれは、朱里が無意識に作りだしたもう一つの仮面だったのだ。

 

「(事ここに至って、とうとう抑えきれなくなったのか…あるいは、抑制を破壊されたか…いずれにせよ…これは…)」

 

憎悪とも取れるほどに燃え盛る怒りの炎は、いつからか…いや、桃香と再会して朱里が改めてかつての自分を見つめ直していた時から、

 

朱里の心の中で燃え始めていたように思う。物語の『規定』故に、仕方のないことだったと俺は言ったが、朱里はそうは思わなかった

 

ようだ。俺と引き離されたこと。互いのことを思いだせないまま、出会いと別れを繰り返したこと。そして、幾度も敵対したこと…。

 

こうして再び外史に降り立ってからも、色々なことがあった。朱里の心を癒してくれるであろう出来事も、多々あった。しかしながら、

 

桃香との再会から決別までのくだり…良いこともあった。だが、人はよくないことばかりが印象に残るものだ…裏切られたこと。意志を

 

無視されて神輿に祭り上げられたこと。なにより、想いを私物化されたこと…。

 

「(不条理な運命を受け入れることはできても…それに対する怒りは別…朱里は、呑み込み切れていなかったんだ…!)」

 

朱里は確実に…今までずっと、少しずつ…少しずつ、(こわ)れてきていたのだ。

 

「く…っ…り…んり…ん………はやく、お二人…を…あぐっ!?」

 

「愛紗!?もう喋らないで!すぐに本陣に帰るのだ!」

 

偃月刀で身体を支えた愛紗は、それでもまだ朱里に…俺達に目を向けている。外傷だけでなく内臓にも相当なダメージがいっている…。

 

血を吐いているのがその証拠だ。昔から血の気が多く、貧血になどなったことが無いという愛紗でも、このままでは失血死してしまう。

 

しかし鈴々の言葉も虚しく、愛紗は俺達の方に手を伸ばそうとする。

 

「私…のこと…は、いい…はやく、はや…く…お二人を…!」

 

「馬鹿愛紗!ダメなのだっ!死んじゃったら何もかもおしまいなのだ!ここは退くのだ!」

 

「くぁ…あああ………っ!」

 

そこで限界が来たのだろう、愛紗が鈴々の腕の中に倒れ込む。

 

「…!?愛紗!?愛紗!返事しろなのだ!」

 

今にも泣きそうな鈴々の悲痛な声があがるが、愛紗はもう答えなかった。しかし生命の氣は消えていない。まだ生きている。

 

「…」

 

正直な話、想定はしていたが…実際に見ると、やはり惨たらしい。全身を血に染めて、尚も何かを求めるように手を伸ばしてから気を

 

失った愛紗の姿は、あまりにも悲しいものに見えた。求め過ぎたが故の、あまりにも痛ましい報い。その手が求めるのは、何なのか。

 

「(…裏切りは戦争の常だ…だが、これは…!)」

 

俺達は「裏切り」というものを経験したことが無い。誰かが裏切ったなどという経験は、俺達にはない。少なくとも、俺が三国の外史を

 

渡る中ではそういったことは起こらなかった。『始まりの外史』では周瑜は裏切りをやったが…あれは果たして本当に裏切りだったか?

 

于吉が関わってる時点でかなり怪しいが…そもそもあれは「謀反」だ。「裏切り」ではあるが…要するに内輪もめだ。

 

だが、今の俺達がやっていることはまさに「裏切り」なのではないだろうか。

 

それは、俺達にしてみても色々と裏切られてきたが…「裏切り」という表現がこの場合は範囲が広いので適切ではないかもしれない。

 

言葉にするならば、「寝返り」という表現が適切かもしれない。「鞍替え」と言ってしまえばそれまでなのだが、傍から見れば、俺達は

 

董卓軍に寝返ったと見られても仕方のないことだ。その理由が如何なるものにせよ、寝返ったという事実は変わらない。

 

見ている間に劉備軍の兵が駆け寄ってきて、愛紗を引き取っていく。鈴々もその兵に「お願いするのだ」と言って愛紗を託した。

 

「…退きなさい」

 

急に、朱里が言葉を発した。ぞっとするほど冷たい声…曹操に向けた声よりも、なお冷たい声だ。

 

「…朱里お姉ちゃん…」

 

「兵が動揺していますよ。これ以上は戦えないでしょう…早く退きなさい」

 

「…」

 

「…罵声の一つでも浴びせられるかと思いましたが、何も言わないのですね」

 

「…だって、戦争なのだ。誰だっていつかはこうなるかもしれないのだ」

 

「…」

 

「戦争に関わって、誰かを傷付けないままいるなんて無理なのだ。だから、お姉ちゃんのことは責めないのだ」

 

「…そうですか」

 

どういうつもりなのか、鈴々は何かを訊きたいという風でもなく、かといってこちらを非難するような風でもない。ただそこにいる。

 

放り出した蛇矛を拾いながら、鈴々は辛そうに言った。だがほとんど瀕死の重傷を負った愛紗の許に急がないのは何故なのだろうか。

 

何か言いたいことでもあるのだろうか。

 

「お兄ちゃんに言われたのだ。何を以て信じるかは鈴々が決めろって」

 

「…」

 

「たぶん、それは近いうちにわかる気がするのだ」

 

「…そうでしょうね。あなたは聡明です。その予感はきっと正しいでしょう」

 

少し落ち着いたのか、朱里は冷たく張り詰めた空気をほんの少し和らげて鈴々の言葉に応じる。俺も全く同感だ。この戦いはこちらは

 

撤退戦を行っているだけなのだから、連合が洛陽に到達すればわかることだ。そして、準備が整えばこちらは長安まで引き上げるので、

 

その時が来れば戦いは終わり、連合は洛陽に至るだろう。そして、そこで真実が目の前に突き付けられるのだ。

 

「うん…でもね。いつかは、お兄ちゃんたちの口からちゃんと話してほしいのだ」

 

「…それを知りたければ、乱世が果てるその時まで生き残りなさい」

 

「…わかったのだ。鈴々からのお願いはそれだけなのだ。じゃあ、鈴々たちは退くから…またね」

 

そう言って、鈴々は自分の隊と関羽隊を引き連れて撤退していった。こちらは追うつもりはないし、おそらく鈴々もそれに気付いては

 

いるだろうが、何らかの思惑を持って殿を自分で務めながら撤退していく。俺も兵に指示を飛ばし、負傷者の確認をしたところ、なんと

 

負傷者は誰一人としていなかった。これは個人や部隊の練度ではない、向こうが戦意を失ったことによるものだろう。

 

「…朱里」

 

「今は声を掛けないでください」

 

「…」

 

「…こんな私を、一刀様に見せたくなんてなかった…私は、私はなんて…弱いの…!」

 

肩を震わせ、嗚咽を漏らす朱里。その姿はあまりに弱々しかった。しかしここは戦場。いつまでもそうしているわけにもいかないことは

 

朱里もわかっているので、ほとんどすぐに元の冷静さを取り戻していった。今は俺が何かを訊くべき時ではない。そう思って、迫り来る

 

曹操軍に対峙する華雄隊の方に目を向ける。

 

「…今は何も訊かないでおく。作戦を第三段階に移行させるぞ。いいな?」

 

「…はい」

 

「よし…総員に告ぐ!これより白十字隊は孫策軍に当たる!黒十字隊は曹操軍だ!強敵だぞ!覚悟はいいか、勇者たちよ!?」

 

「「「「「「「「「「応ッ!!!!!」」」」」」」」」」

 

兵が力強く答え、隊列を整える中、朱里が声をかけてきた。

 

「…一刀様、孫策軍に当たっている部隊の中から最も被害の少ない部隊をこちらに回してください」

 

「なるほど。戦力バランスの問題か…部隊のダメージコントロール能力に優れているのは沙和の隊だ。おそらく沙和の隊が最も…」

 

「ええ」

 

「…華琳に挑発されても、さっきみたく血塗れにするなんてことはしないでくれよ。後々、大変なことになるからな」

 

「…お約束はできそうにありません」

 

「…わかった…君の判断に任せる」

 

俺達は簡単な打ち合わせだけ済ませると、それぞれの敵へと向かっていった。

 

「(…この戦い…いや、きっと俺達が今まで見てきた戦いは綺麗過ぎたんだ。戦いはこうも醜いものなんだな…)」

 

欲望、悲嘆、そして憤怒。確かに今まで俺達が見てきた戦いは、あまりに素直すぎた。綺麗過ぎた。

 

これが…本当の、戦争なのだろう。人類が数多繰り返す、戦いの歴史の一部分。それはいとも簡単に人の心を壊していくものだ。

 

だが、そういった手段を必要とはいえ容認する俺も―

 

 

 

―俺もまた、壊れてきているのかもしれないな…。

 

 

 

 

あとがき(という名の言い訳)

 

 

あけましておめでとうございます。Jack Tlamです。

 

本年もよろしくお願いします。

 

 

前回の投稿から半月以上が経過してしまいました。大変お待たせして申し訳ありません。

 

弁明をさせていただくならば、今回はそれだけ難産であったのです。

 

 

今回はまあ、ここまで読んでいただけたならお分かりになるかと思いますが、一刀達と

 

劉備軍が対峙する中、他の勢力の動向や思惑も示される内容となりました。

 

 

今回はちょっと…コメントがし辛いです。

 

ストーリーを進めていく中では必要不可欠な話なのですが、あまりにも暗いお話になってしまいました。

 

特に朱里が愛紗を傷だらけの血塗れにするシーンですが…愛紗押しの方には本当に申し訳ないです。

 

そして、朱里押しの方にも…申し訳ない。

 

 

鈴々はまだまだ成長していますね。

 

でも愛紗はまるで変わっていないどころか、さらに酷くなっている…

 

書いていて辛かったですが、これも物語のためです。これからも続きます。

 

 

次回は曹操軍や孫策軍との戦いと、その他いろいろお送りする予定です。

 

 

 

次回もお楽しみに。

 

 

 

追伸

 

 

第十八話が総閲覧数3000を超えるまで二か月以上、序章ノ一が総閲覧数3000を超えるまで三か月程度かかっていますが、

 

反董卓連合篇が始まって一か月、二十八話までの三話全てが総閲覧数3000を超えました。

 

やはり、反董卓連合篇と言うのは人気なのでしょうかね…

 

皆様、ご愛読いただき誠にありがとうございます。

 

今後もクセの強い展開になっていくかと思いますが、よろしくお願いします。

 

 

次回予告

 

 

 

乱世の英雄たる、曹操と孫策。理想と悲願を抱く英傑達は、何のために二人を求めるのか。

 

 

次回、『野望の輩』。

 

 

強欲が人に齎すは即ち、その欲に見合わぬ破滅。乱世に起った英傑達に、破滅の影が忍び寄る。

 

 

 


 
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