「ず~る~い~!うちも一刀のかっこええところ見たかった~!」
「お姉ちゃんもだよぅ!も~!帰ってきてるなら教えてくれれば飛んで行ったのに!」
三国をあげての大宴会。
その宴の中心にいたのは、北郷一刀だった。
「しっかし、おっちゃんも相変わらず無茶するな~。璃々のことこれで刺したって…
殺されても文句言えんわ。」
刺そうとすると朱墨がでるとともに刃が引っ込む仕掛けの小刀で遊びながら、霞はカラカラと笑う。
その後、桂花や風の指示によって町の見回りをしていた中からも内通者のあぶり出しに成功し、霞も仕事を終えて帰還した。
璃々に傷一つなかったこと、詠や白蓮も無事であったことが確認され、改めて今回の騒動は解決、という運びを見せた。
また、ライターの一件から、裏で糸を引いていたのが戦争によって大金を得ようとしていた武器商人であることが判明し、すぐさま手配が掛けられ、怒りやら照れ隠しやらで張り切りまくりの春蘭と、祭りに乗り遅れた霞によって日が落ちるまでにはお縄を掛けられるに至った。
騒動直後には、武器を構えたままだった華雄を警邏隊員が取り押さえようとして一悶着あったのだが、結果的に被害らしい被害は白蓮のたんこぶと春蘭が破壊した門程度であり、華琳が他国に謝罪するも、蜀呉とも、「自分たちにも油断があった」ということでお互いこれ以上言いっこなしということになった。
そこに、ずっとほかの会場でライブをしていた数え役満☆姉妹も合流し、宵の口には同盟国を巻き込んでの大宴会が執り行われていた。
ひっきりなしに周りの面々が入れ替わり、一刀に会いにやってくる中、華琳は宴が始まって以来、ずっと一刀の膝の上から動こうとしなかった。
「ま!おっちゃんが帰ってきたっちゅーことは、うちもそろそろお役御免か?」
「馬鹿言え、霞にはちゃんと居場所があるっていったろ?
街道の整備と護衛の任務。霞にうってつけだと思うんだ。」
「あら、あなたを隊長に戻すなんて、誰が言ったのかしら?」
「手厳しいな。だが、たしかにそうだった。」
「ちょっと、ちーたちの方にも少しは一刀を貸しなさいよ!」
「そうですよ~、お姉ちゃんも一刀にずっと一刀に甘えたかったんだから。」
「そうね、せっかくらいぶも成功させて帰ってきたのだし、少しは一刀さんからのねぎらいの言葉があってもいいのでは?」
「だめよ。これはあたしのもの。もう絶対に手放さないんだから。」
「なんだ、華琳、酔ってんのか?」
「まぁ、北郷。今日だけはしかたない。華琳様もずっと無理をしておいでだったからな。」
「ぶーぶー!華琳ばっかりずるいじゃないの~。
そのおもしろそうなの、ちょっとこっちに渡しなさいな。」
「これ、策殿。邪魔立てするでないわ。」
「あによ~。祭だって会いたがってたくせに~。」
「儂はあとでいいんじゃ。ほれ、こっちにこんかこの酔っぱらいめ!」
「それ、祭にだけはいわれたくないわ…」
「ほんご~…はやくわらひのこともなでなでしるのら~」
「だめよ、春蘭でも今日はゆるさないわ。わたしが撫でてあげるからそれで我慢なさい。」
「これもか、秋蘭…」
「あぁ、姉者が一番無理をしていたな。
なんせ、あの姉者が髪を切り、ひとつも言いつけを忘れずにこなしていたのだぞ?」
「うわぁ…それちょっと見てみたかったな。」
「北郷、本当にすまなかった。」
「なんだ、秋蘭、藪から棒に。
あ、流琉とお前助けたせいで俺が消えたとか思ってんじゃないだろうな?違う違う。あれは俺のせいだって。
気にすんなよ。それより春蘭の話もっと聞かせてくれよ。」
「それそれ、すごかったんだから、春蘭様!
おじちゃんがいなくなってからはむしろ秋蘭様の方が春蘭様みたいで…」
「こら、季衣。それはいわないでくれ。」
「それをいったら季衣だって変だったじゃない。ずっと元気がないから大変だったんですよ!?」
「嘘だよ!流琉が無理に元気にふるまおうとしてたからボクが止めてたんじゃないか!」
「そんなことないよ!」
「いえいえ、それはもう大変なものでしたよ。」
「稟さままで…」
「実際、あんたたち二人の喧嘩ほど大変なものはないでしょう…」
「あ、桂花様までひどい!」
「ほんと桂花ちゃんはひどいひとですね~。これはもう桂花ちゃんたちなど放っておいてお兄さんに甘えるしかないのです。」
「でもボクたちの特等席には華琳様が座ってるし…」
「あらあら。じゃあ風は背中に寄りかからせてもらうだけで満足するとしましょう。愛人にはそのくらいの慎ましさがなければ勤まりませんからね。」
「ったく、風も相変わらずだな…」
「ねーねー、お兄さんってほんとに愛紗ちゃんのこと倒しちゃったの?」
「あれ…えっと、たしか劉備さんだっけ?」
「も~、真名でいいよぉ。桃香。ほら、愛紗ちゃんも真名を交換したいんでしょ?」
「いえ、私は別に…」
「ガルルルル!」
「華琳…すっかりキャラが崩れてしまって…」
「とって食べたりしないから大丈夫だってば!ほら、愛紗ちゃん!」
「はい…。関雲長、真名を愛紗と申します。」
「あぁ、覚えてる覚えてる!かれこれ2回?か?そのくらい殺されかかってるもんね!」
「ですが、あの時は…!」
「あぁ、戦争中だった。でももうそれも終わったんだね。」
「はい。ですから、お願いがあってきました。私をあなたの部隊に…」
「ガルルルルルルルルルル!」
「こら、華琳!やめなさい!」
「あっはっはっはっ!愛紗ちゃん華琳さんに邪魔されちゃったね!」
「もう、姉上!からかわないでください!」
「ふふふ、愛紗ちゃんも今日は退散したほうがいいわね。」
「くっ…しかたない。」
「ごめんなさいね、御使い様。
あれでいて、愛紗ちゃんず~っとあなたのことが気になっていたらしいの。」
「え~っと、黄忠さんだっけ?娘さんの件はほんと驚かせて悪かった。」
「いえいえ、助けていただいたのはこちらのほうです。
それと、紫苑、とお呼びください。
確かに最初は驚きました。あれで本当に死んでいたらあなたのことを殺していたでしょうけど…
今となっては、あそこで愛紗ちゃんが止めてくれなければまた戦争となるところでしたわ。」
「でも俺もあんまり深く考えてなかったな。愛紗があのときの与太話覚えてなかったらと思うと…」
「それだったら私がお前を守っていたから問題あるまい。」
「お、華雄。月との話はもういいのか?」
「はい、ゆっくりお話しできました。
やはり、大会の登録名が泥師で『ドロシー』に杜々で『トト』だったのですね。
もっとはやく気が付くべきでした。」
「ほんと、あんたたちまっすぐ帰ってくればよかったのに。」
「いやー、なんか賞金首みたいな張り紙になっててさ。」
「あ、それねねが作ったのです。お前が前に作っていた華雄の張り紙を真似して作らせたのです!」
「そうだったんだよね…何を考えてあんなのつくったんだろう。
生死を問わずって書いたらそりゃ殺しに来るわ。」
「…たいちょうらしい。」
「こら、一刀。私の相手がおろそかになっているわよ。」
「はいはい…。
ところで、これのために手柄が欲しかったようなところもあるんだけど、俺ってまた華琳のところで働かせてもらえるのかな?」
「当たり前です!
いまでこそ隊長は霞隊長ですが、我々の隊長はやはり隊長でなければなりません!」
「凪、隊長が帰ってきたことによってとうとう頭が…」
「でも真桜ちゃんだってうれしいんでしょ~?」
「当たり前やん!」
「まぁまぁ、私の一刀はおモテになりますこと。」
「なぁ、華琳…ほんと勘弁してくれよ…」
「そうね。ところであなた、さっき手柄を欲しがった理由を話していたけれど、本当に私のもとで働きたかったからなの?」
「…いいたくない。」
「いいなさい。」
「いいたくない。」
「いいなさい!」
「うぅ…もう今日はだめだな。わかったよ。いうよ。
お前に釣り合う男になりたかったからだよ。」
「…よろしい。」
「くそぉ…恥ずかしいなぁ。」
「ヒューヒュー!隊長のおっとこまえー!」
「こら、真桜!年上をからかうんじゃない!」
「大丈夫です!隊長!私とは釣り合います!」
「うわ~…凪ちゃん、それはゴリ押しが過ぎるの…。」
「ふふふ。いいでしょう。
今日の手柄を認めて、あなたにはまた警邏隊の隊長をやってもらいます。」
「よかった。無職にならずにすんだ…。」
「でも、あなたにはまだ私たちに黙っていなくなった罰が残っています。これは…そうね。
あの日、あなたが消えたあの日に最後にいった台詞。あれをもう一度言いなさい。」
「…ここで?」
「ここで。」
「…どうしても?」
「許されたくなければ別にいいわ。」
「…。もぅ、わかったよ!いうよ!」
「よろしい。」
「愛しているよ、華琳。」
「私もよ。」
「も~、だめだ…恥ずかしすぎる…」
「それも含めての罰でしょう。それから、これ。」
「…ん?これは?」
「あなた、まさか私との約束を忘れているなんてことはないのでしょうね?」
「ん、あ、あ~!これ、あの時渡したタバコか!
こんなにして取っといてくれたのか。ありがとうな。」
「吸わないの?」
「まだ終わってないだろう。」
「…そうね。これからだものね。」
「だろう?だから、これは死ぬ直前にでも吸わせてもらうよ。
華琳の覇道の終わりまで、一緒に行かせてほしいんだ。」
「もう二度と、いなくなってはダメよ。」
「あぁ、もう勝手に消えたりはしないよ。
「それでよろしい。」
「あ、そうだ。せっかくだしさ、華琳。」
「なにかしら?」
「一曲踊ってくれないか?」
………………………
………………
………
作られた外史──。
それは新しい物語の始まり。
これは終端を迎えた物語。
この外史はこれにて御終い。
しかし、物語は己の世界の中では無限大──。
行き先は、ひとえに貴方の心次第。
さぁ。
今度はあなたが。
外史の突端を開きましょう──。
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最後までお付き合いくださってありがとうございました。