No.653018

真恋姫無双~年老いてContinue~ 六章

2014-01-08 23:45:42 投稿 / 全27ページ    総閲覧数:5524   閲覧ユーザー数:3830

 

聞き覚えのある声だった。

紫苑は娘、璃々が刺されて正気を失ったように暴れるが、おそらくそれが奴らの挑発であろうことは間違いなかった。

誰かが攻撃を仕掛けたら、それを合図に誰かが、誰かを狙い矢を放つであろう。

それがもし同盟国の面々に当たろうものならば、関係は一気に悪化する。

それは頭では理解できていたから、ギリギリの理性で、今にも敵に向かって斬りかかりたいほどの感情を抑えこんで紫苑を止めた。

だが、あの声。

聞き間違いや記憶違いでなければ、三度自身を打ち負かし、それでもなお敵である自分を生かしたその声の主のものであるならば、本当に璃々を刺し殺したりするだろうか。

いや、あの方ならば絶対にそんなことはすまい。

璃々は無事なはずだ。

むしろ危険なのは、紫苑が怒りにまかせてあの方を射殺してしまうことのほうではないか。

舞台の上でどんなやり取りが行われているか、客席付近の自分には詳しくは聞こえなかった。

仮面を取った顔が見えた。

忘れもしない顔がそこにあった。

命のやり取りをしているにもかかわらず見せた落ち着き払ったあの顔。

間違いない。

「宴は中止になったのか?」

覚えがあった。

その内容とはなんだったか。

思い出せ。

たしか、なにかの合図だったはずだ。

愛紗の視界に青龍刀が見えた。

そうだ。

それは確か…

「パーッとやろうぜ!」

行動を開始する合図が出された。

・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

どうしても思春を止めなければならなかった。

今更帰ってきて、どうするつもりなのか。

しかし、帰ってくるにはなんといい日か。

ここで、戻ってくるか、うつけよ。

ただ、これはどうしたものか。おそらく璃々は死んでいないどころか、傷一つすらついていないだろう。

なればこそ、いよいよもって、小童どもを首根っこ押さえつけてでもとめなければ、あの男に傷一つでもつけようものならそれこそ我らが殺されてしまう。

それに、この黄公覆、我が命を助けられた礼も、我らが主君の命の礼も、すんではおらん。

「宴は中止になったのか?」

ここで、その命令か。

なるほど、理にかなっておる。

あ奴のことを知っている奴ならば、まず絶対に間違わん。

その命令、乗ってやろうぞ。

「パーッとやろうぜ!」

それでは、行動開始といこうかのう?

・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

「愛紗ちゃん、どういうつもりなの?」

 

仮面の男(といってもすでに仮面を脱いではいるのだが)の一言、それに反応するように、紫苑の前に猛然と、愛紗は立ちはだかった。

右手に構えるは丈八蛇矛。

蛇矛の本来の持ち主である鈴々は、愛紗に踏みつけられてじたばたともがいてる。

左手には靖王伝家。

愛紗の代名詞ともいえる青龍刀は、星の得物を弾き飛ばし、焔耶の目の前に突き刺さってその行動を静止していた。

蛇矛によって銀閃を跳ね上げられ翠も動けず、その切っ先は蒲公英を威圧する。

靖王伝家の切っ先は的確に桔梗の豪天砲を叩き落としていた。

愛紗から発せられる気当たりによって、朱里・雛里も桃香も、竦んでしまっている。

 

「紫苑、いまは私を信じて武器を武器を捨てるのだ。」

「何を言っているの?あいつは璃々を…。」

「いいから、早く!」

「でも…」

「えぇい、また戦争をしたいのか!」

 

状況を理解できない紫苑にとっては、いや、紫苑だけではない。

愛紗以外の全員にとって、それは愛紗が血迷っているようにしか思えなかった。

だが、どう見ても愛紗は本気だ。

 

「愛紗ちゃん、どうして…」

「姉上も、どうかそのまま動かないでください。見ていればわかります!」

 

武神とよばれ、戦争中は最も頼りになった蜀の筆頭武将、関雲長。

共に肩を並べて闘っているあのころには、全身から吐き出す殺気を向けられることなどなかった。

それが今、蜀に向けられている。

 

「武器を捨てて、黙って見守りましょう。それこそが、いま示すべき華琳殿への信頼です。」

・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

「あら、祭。ずいぶんとふざけた真似をしてくれるじゃない。」

 

雪蓮の足元は、有りったけの弓によって縫い付けられていた。

南海覇王はいまや祭の手に握られている。

弓を打ち込まれた際に冥琳も亞莎も穏も手持ちの得物を撃ち落とされ、今できることは祭の奇行に怪訝そうな目を向けるのみだ。

今にも飛び出さんばかりであった思春に南海覇王を突きつけ、明命の魂切を踏みつけてその行動を制限し、空いた手には小蓮を抱えている。

そんな状態のまま、祭は蓮華の前に立ちはだかり、飛び出そうとした王を制止していた。

 

「ふん、老体に鞭打って国の危機を救わんとする上司がいたのでな。

 その指示に従ってこそ部下の鏡と思わんか?」

「公覆、あなた今自分がしていることの意味がわかっているのかしら?」

「脅しても無駄じゃ小童が。理は我等に有り、じゃ。

 もう一度あやつらと戦争がしたいなら止めはせんが、儂にも策殿にも権殿にも、あやつに返さねばならぬ恩があろう。

 じゃからこうしておるだけじゃ。」

「祭!あなたあの男がしでかしたことの意味がわからないの!?」

「わかっているからこうしておる!今回はもう儂らの出る幕はないという意味じゃ!

 武器を置き、黙って見守らんか!すぐに答えがわかるはずじゃ!」

 

浮足立つ若い力を一喝でねじ伏せて、祭は舞台の方に目をやる。

 

「そうじゃ、すぐにわかるはず。そうであろう、隊長殿。」

・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

警邏仮面。

国を大きく三つに分けて覇を競いあった時期に曹魏にいたとされる「街の守護者」。

曲刀二本に特徴的な手甲をつけ、螺旋の槍を背負った仮面の男。

曹魏で語られる英雄譚の主人公は、曹操がその兵を旗揚げした直後から魏対蜀呉連合の頃までずっと戦場で戦い続けていたとされる。

主要な戦いにはすべて名を連ね、腕っ節は弱く、頭脳も軍師に遠く及ばないはずなのに、最後には生きて帰ってくるボロボロの英雄。

警邏隊を現在の形にまとめあげた男。

その男の活躍の中でももっとも人気があるのが、最終決戦の時の「呉軍単騎駆け」だった。

上述の装備に偃月刀一本で敵陣に切り込み、ついに孫権を降参させて退散するその姿はいまも魏の子どもたちの羨望の的である。

そのため、警邏仮面が描かれるときには多くの場合、サラシに袴に上述の装備だった

そして、現在魏の警邏隊長である霞もこの格好をしていたため、他国の霞を知らなかった人々はこう考えた。

彼女は警邏仮面を真似しているのだと。

だが、その事実は、少々正しくない。

警邏仮面には元になった男がいた。

その男の名前は北郷一刀。

戦が終わった直後に姿を消し、死んだとまで言われた天の遣い。

魏にすむものならばほとんどのものが彼を知っているほどの男だ。

関羽の手から華琳を助け、赤壁において全軍を救い、蜀の罠から秋蘭を助け、孫呉を打ち破った勝利の立役者。

彼が最後に目撃された時の格好は、曲刀を一本持ち、右腕にのみ手甲をつけ、螺旋の飾りを首からかけていた。

それは彼が部下から借りた武器であり、魂を分けたが故であり、孫呉に攻め入る際に、作戦上必要であったため、霞と同じ格好をしていたからだ。

霞が警邏仮面を真似しているのではない。

警邏仮面は彼女の真似をした姿だ。

お伽話で語られられぬその格好は、最後に目撃された彼の姿そのままであった。

そして彼は、記憶の中の彼の声と全く変わらない声で、こう命令する。

 

「宴は中止。」

 

これは、警邏隊にはいるとかならず習う暗号の一つ。

警邏隊を作り上げた男が冗談半分で作った暗号である。

戦場において、隊長がこの号令をかけたなら、それは文脈にかかわらず、武器を捨てるという合図だった。

そして、「パーッとやろうぜ。」

如何なる状況でも、この言葉をきっかけに行動を開始すること。

その後の判断は各自に任せる。

警邏隊に入隊して一週間、これは必ず隊長本人から教えられていた。

教えていた人間がいなくなり、実際の戦場でそんな暗号を迂闊に口にしないように気を使って命令を出せる人間も同時にいなくなり、そしてそもそも戦がなくなったせいで次第に廃れていったその暗号であったが、一度あの地獄のような新兵訓練を受けたものの魂には深く、深く刻み込まれていた。

その命令が、くだされた。

それを行うものがいなくなったというのに。

偽物の警邏仮面から。

警邏仮面の本物から。

たった一つだけ。

命令がくだされた。

今の状態で、武器を捨てる命令。

それはつまり、武器を手放したものは、味方であることを示している。

その後の判断が自由にしていい。

だったら、一度捨てたあとの武器を拾っても、なんの問題もないということ。

頭が理解するより先に、心が、体が反応した。

北郷一刀は、言葉と同時に木剣を放り投げ、走り出していた。

その号令に最初に反応したのは三羽烏。

北郷は身につけていた閻王を凪に、腰にしていた二天を沙和に、首から下げていた螺旋の首飾りを真桜に投げ渡した。

それに応ずるかのように、凪は真桜に、真桜は沙和に、沙和は凪に、それぞれ武器を投げ渡す。

一番手は沙和だった。

両手に二天を構え、華琳に向かって走りこんでいく北郷とすれ違う。

 

「ずっとずっと、待ってたの!」

「待たせてごめんな。帰ってきたよ。」

 

すれ違いざま、言葉をかわし、沙和は踊るようにチンピラ三人組をすり抜けていった。

逆手に持った二天を交差させ、回転するように走り抜ける。

 

あの日、教えてもらった技をいまこそ!

 

「隊長直伝、回転剣舞なの!」

 

人質を縛っていた縄はバラバラに斬り刻まれ、チンピラの身につけていた防具には六つの傷が付けられていた。

次いで、凪。

北郷は凪と背中を合わせるように体を密着させ、位置を入れ替える。

北郷を支えるように体重を預け、凪はいう。

 

「帰ってきてくださると、信じていました。」

「ありがとう、凪。ただいま。」

 

気は充実している。

支えてくれる人もいる。

体全身から気を放出し、ありったけの力で氣を撃ちだした。

 

「極限流、覇王翔吼拳!」

 

舞台をえぐりながら直進する特大の気弾を何とか交わすチンピラどもだったが、不幸にそれは乗ってきた馬車に直撃し、半壊状態となった。

間髪入れず、真桜が飛んだ。

 

凪を支えるように立っていた北郷の膝と肩を発射口にし、高く天に飛び上がる。

 

「隊長のいけず!格好つけ!」

「返す言葉もないな。」

 

真桜は、持てるすべての気合いを螺旋槍に込める。

最大出力で回転する螺旋は、真桜の気を受けて次第に大きくなっていくように見える。

 

「食らえ!戯画!怒理流無礼駆!!!」

 

高速回転する螺旋槍を全身のバネを使って投げ下ろす。

悪漢たちの退路を塞ぐように打ち出されたそれは、半壊だった馬車を粉微塵に吹き飛ばし、地面に大きな風穴をあけた。

それとは別に、二つ。

会場内に轟音が響いた。

舞台の左右の地面が大きくえぐれ、退路を狭めるかのように左右に二つ、巨大な影が落ちている。

その正体は伝磁葉々と岩打武反魔。

流琉と、季衣の仕業だった。

 

「もう、季衣ったら!おじ様にあたったらどうするつもりだったのよ!」

「大丈夫だって、おじちゃんならよけられるだろうしね!だいたいそれをいうなら流琉だって一緒じゃん!」

真桜の足場の役目も終わるなり、北郷はまた走り出す。

事情を知らない者から見れば、それは曹操に危害を加えるために距離を詰めているようにしか見えないが、会場を警備する兵たちは誰一人として彼に向かって弓を番えてはいなかった。

それを理解した者は全員、号令と同時に弓をおろし、周りを見渡して武器を構えたままのものを取り押さえた。

誰がいいだしたのかはわからない。

警備の者だけではない。観客でさえも彼を知らぬ者はいない。

その声は次第に大歓声となり、会場を覆っていった。

 

「隊長だ!隊長のご帰還だ!」

中には、取り押さえるのが間に合わず、何本か、矢は放たれてしまった。

しかし、それは終ぞ客人に当たることはなかった。

 

「・・・やっぱりたいちょうだった。恋の仕事はたいちょうとたいちょうのいいつけをまもること。」

 

恋は、蜀の前に立ちはだかった愛紗をすり抜け、桃香たちを狙った矢をすべて素手で撃ち落とす。

 

逆を見れば、祭が立ちふさがる孫呉の頭上に襲い来る矢は、すべて空中で叩き落される。

秋蘭の足下には餓狼爪が突き刺さっており、それによって破壊された石畳の破片をつかってひとつ残らず撃ち落とされていく。

 

「うむ。できれば我が弓を使い決めてやりたいところだが、命令ならば仕方あるまい。

 ここは同僚の顔を立てねばならないところだろう、北郷。」

 

当然、舞台中央に向かっても数本、矢は放たれていた。

しかし、これも誰一人として傷つけることは出来なかった。

 

「まさか、本当にもう一度、董卓様をお守りできる日が来るとは…」

 

もう、仮面に用はなかった。

蝶をあしらった仮面を外し、金剛爆斧を振るって人質達を狙った矢をはたき落とす。

 

「華雄さん、無事だったのですね。」

 

人質の手当を終えていた月は、その背中を見つめる。

董卓を名乗り、覇を唱えんとしていたあのときの将達が、全員揃った。

 

「華蝶仮面というのは、華雄さんだったんですか。」

「いえ、これは町でたまたま見かけた面をつけたにすぎません。ずっと、董卓様を探しておりました…。」

「ずっと心配してました。無事で、なによりです。」

「董卓様。不肖、華雄、恥ずかしながら生きながらえておりました。

 また、お会いできる日が来ようとは、夢にも思いませんでした。」

 

これもすべて、あの一人の男のおかげ…、と考えると、華雄はまっすぐに走っていく男に向かって自然と頭を下げていた。

号令と同時に七星餓狼を地面につきたて、春蘭は時が来るのを待っていた。

次第に退路を塞がれ、作戦をたった一人の男によって台無しにされてしまった哀れな賊どもを腕組みしてみている。

まだだ。

つい先程までの余裕を失った男どもには、もはやこの場から逃げることしか頭にない。

その連中にはこれみよがしに開かれている門に向かって走る他、もう助かるすべはないだろう。

もうすこし。

逃げ惑う男達とは対称的に、真っ直ぐ走ってくる男がいる。

もう、髪留めを付ける理由がなくなった。

 

春蘭は髪留めをはずし、走ってくる北郷に。

 

「よくもまぁ、おめおめと帰ってこれたものだな。」

 

代わりをする必要など、もはやない。

なぜならば。

 

「俺の家はここしかないからな。また面倒見てくれよ。」

 

彼が帰ってきたのだから。

 

「ふん、まぁいい。二度と華琳様の前から消えるなよ。次にやったら…」

 

先ほど北郷が投げた木剣が春蘭の目の前に降ってくる。

それを右手一本で、空中で掴み、そのまま大上段に構えた。

 

「この剣でどこにいようと、貴様から聞いたこの技で刀の錆にしてくれる!」

 

満面に獰猛な笑みを浮かべ、遂に春蘭が動く。

魏武の大剣、それはどこまでも真っすぐ届く剣と化していた。

構えた木剣はそのまま虚空を切り裂く。

空振りか、と誰しもが思った。

しかし異常に張り詰めた空気が、その考えが間違えていたことを示していた。

振り切られた木剣を肩に担ぎ直し、春蘭が叫んだ。

 

「次元斬!」

 

その言葉が合図となった。

目に入るものすべてが斬られてズレたかのような錯覚が襲う。

しかし、それもほんの一瞬。

まばたきをすれば世界は元通りに見える、只一箇所を除いて。

チビデブノッポの三人組が目指した門が、轟音とともに倒されていた。

明らかに『斬られた痕』とともに、門が崩れ落ちる。

それは、やつらの退路が絶たれたことを示していた。

 

北郷の足は、次第にゆっくりになっていた。

目の前にはあの日顔を見ることも出来ずに別れた少女の姿があった。

ゆったりとした歩みが止まる。

「………。」

 

なにか言おうとして、でも、言葉が出てこない。

「……。」

 

言いたいことはたくさんあった。

格好つけた言葉、気障な台詞。

いろいろ考えて帰っては来た。

だが、言葉にならない。

思いが渋滞して声にならない。

「…。」

 

ただいまの一言すらでてこない。

涙があふれて止まらなかった。

 

「か…。」

 

やっとの思いで振り絞った言葉は、不意に感じた体重でさえぎられてしまった。

華琳に抱き着かれたとわかるまで、ちょっとだけ時間がかかった。

「馬鹿!」

華琳の声が聞こえる。

 

「…ごめんな、華琳。」

ずっと、聞きたかったこの声。

 

「なにがごめんよ、馬鹿。泣くほど寂しかったら、消えてしまわなければよかったのに。

 あなたはいつも格好ばかりつけて。」

 

迷った。

抱きしめていいのだろうか。

「…ごめん。」

 

自分は、もう二度とこの人を離さずにいられるのだろうか。

「どうしてあの時消えてしまったのよ。

 最後までそばにいるっていったじゃない。

 それに卑怯よ…本当に消えちゃうなんて。

 一人で消えるのがそんなに辛かったのなら、ずっと私の傍にいればいいじゃないの。」

 

そうだった。

俺は、そのために帰ってきたのだった。

できるかできないかじゃない。

やるために。

力強く、華琳を抱きしめる。

「ただいま、華琳。」

 

それに応じるように、華琳の腕にも力が入る。

 

「おかえりなさい。」

 

「愛しているよ、華琳。」

「私もよ。」

 

会場は、その日一番の歓喜に包まれた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そんな中、会場を後にする影があった。

 

「はいは~い、稟ちゃんも桂花ちゃんもお仕事の時間ですよ~。」

 

桂花と稟が風に引きずられていく。

 

「ちょっと、風ふざけないでよ!あの陰茎直列バカ男に一言どころか死ぬまで文句言ってやらなきゃならないのよ!

 離しなさいってば!」

「だめですよ、桂花ちゃん。あんなに武官に活躍されてしまっては我ら文官がお兄さんに可愛がってもらえなくなってしまうじゃないですか。

 くふふ。風もちょっとやる気が出てきたのですよ。

 はい稟ちゃんも鼻血吹いてないでとんとんしますよ。とんとーん。」

「はっ!そして二人は熱い接吻を交わし皆が見守る中でもかまわず体を求めあって…」

「そこまでですよ稟ちゃん。さぁ霞ちゃんと協力して残党狩りですよ~。」

 

皆、うれしさを隠そうともせずにいた。

長かった曹魏の一日が、終わりを告げようとしていた。

 

 


 
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