No.652358

Need For Speed TOHO Most Wanted 第8話 vsフリーズ

レミ「ロックポート警察全署員?私を捕まえたくばその3倍は持ってきなさい!!」



 あけましておめでとうございますヽ(0w0)ノ8話になります。いよいよブラックリストランカー初戦です。

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2014-01-06 21:15:27 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:927   閲覧ユーザー数:926

 この前の騒ぎから数日。フリーズとのバトル条件をすべてクリアした私は彼女が指定した大学の正面ゲート前で待っていた。

「・・・そろそろかな」

 携帯の時間を確認すると約束の時間5分前。その直後、後方からエキゾーストノートが私の耳を刺激した。

 データベースでも確認した水色のゴルフGTI。直前まで猛スピードで突っ込み、フロントタイヤをロックさせて私のベンツの隣に急停車した。・・・焼けたタイヤが臭いんだが。

「待たせたわねっ!」

 運転席の窓を開け、フリーズが自信満々な顔で叫ぶ。助手席に乗っている黄緑のセミロングをサイドポニーで結っている少女がオドオドした表情で何か言いたげに身振り手振りで慌てている。

「あんたが挑戦者ね。面白いクルマに乗ってるじゃない、さいきょーのあたいとこのゴルフに相応しい相手ねっ!」

 べらべらと喋るフリーズのマシンガントークを聞き流しながら私はゴルフを見る。

(・・・すごいな)

 極太のセミスリックタイヤ、18インチの大径ホイールに収まるAPレーシングのビッグキャリパー、しかもホイールは最近どこかが出したカーボン製の試作品じゃないか。内装はどんがら状態でジャングルジムのように張り巡らされているロールケージは強固にボディに溶接されている。薄く目を凝らすとボディにはかすかにカーボンの地が浮き出ている。

 クルマの戦闘力は計り知れないが、この⑨女の実力が期待できないだけに私のテンションも上がらない。

「それじゃー大ちゃん、スターターをお願いね」

「う、うん・・・。あんまり無理しないでね、チルノちゃん」

 ダイちゃんと呼ばれた助手席の少女がゆっくりとクルマを降りる。イケイケのフリーズに対してずいぶん臆病だな・・・。

「コースマップはナビに表示されてるわね?」

「ああ、大丈夫だ」

 大学からハイウェイを抜け、ゴルフ場を通った大きく回る3周の周回コース。

「す、スタート合図、いきます!」

 少女の両手が真っ直ぐに上がる。私とフリーズはその手に視線を集中する。

「レディ、&ゴーッ!!」

 勢いよく振り下ろされた少女の手を見て一気に加速する二台。その風圧を浴びて驚いたのか少女が腰を抜かして転んでしまった。

「っと・・・!」

 ゼロ発進の加速でゴルフが前に出る。出だしでホイルスピンをしてないあたり、ローンチコントロールを搭載しているんだろう。軽量な車体と相まって私のベンツを加速で引き離す。

 最初のヘアピンに入る。フリーズのテクニックは正直言って下手ではないが話にならない。見た目に派手な豪快なドリフト走行であらゆるコーナーを抜ける。ギャラリーを喜ばすには向いているだろうが、これはレースだ。

(って待てよ、ゴルフってFFじゃなかったか?)

 そこで私はハッと気が付く。ゴルフはまごうことなく前輪駆動のクルマだ。どこぞのルノーのFFラリーの先生でもあるまいに、なぜここまで派手なドリフトが出来るんだ?

 しかし、その疑問もハイウェイの入り口で消えた。

「え・・・?」

 私は見逃さなかった。ゴルフのリアタイヤがフロントタイヤと同時に動き出したのを。あのゴルフ、ボディこそGTIだが中身はグレード最強の「R32」と同じ仕様だ。本来R32にはないハズの5ドアハッチバックのボディであるがために分かりにくかったが、四駆を用いているところを見れば、間違いないだろう。

(どんだけの魔改造を施してるんだよ・・・)

 軽い車体の加速に少し遅れながら、私とフリーズはハイウェイに入る。

(ストレートでブチ抜くのは不本意だが、これはレースなんだ。遠慮はしないぜ)

 ベンツのパワーにモノを言わせ、あっさりと私はフリーズの前に出る。

「ん!?」

 私はバックミラーを見て驚く。抜かれたゴルフがさらに加速を強めたのだ。抜かれはしないが、私のベンツとほぼ同じスピードでついてきている。

(NOS・・・?いや違うな。スクランブル・ブーストでターボの吸気圧を一時的に上げてるんだ。あんなシステムまで搭載してるとは・・・)

 全開区間の長いハイウェイでは低速トルクは必要ない。二台の一番の差であるエンジンパワーを補うための秘密兵器ともいえる物だろう。

 私の優位のまま二周目に入る。前に出てしまえばもうこっちのモノだ。派手に真横を向くドリフト走行で進路をふさがれて思うように前に出れなかった憂さを晴らすように大学区間を駆け抜ける。

(このまま一気に離してジ・エンドだぜ)

 確実に差を広げながら二周目のハイウェイ区間。だいぶフリーズとの差が広がった。

「!?」

 しかしそうは問屋が下ろさなかった。突然一周目を上回る加速で背後に迫ったゴルフ。そしてあっという間に私の横に並びかける。

「NOSか・・・!」

 スクランブル・ブーストに合わせNOSを吹いたゴルフは爆発的な加速で追いついたのだ。しかし・・・。

「悪いな、こっちも隠し玉はある」

 シフトノブに仕込んだ赤いボタンを押すと、ベンツが尻を蹴飛ばされたように急加速。NOSはこちらも搭載しているんだ。パワー負けすることは有り得ない。

 そしてその直後、ゴルフのエンジンから白煙が上がる。

(それだけ負荷をかけたんだ、どんなに金かかったエンジンでもそこまでは耐えられんだろう)

 オーバーブーストの連続使用に加えNOSという麻薬を打たれたエンジンは悲鳴を上げ、息絶える。

 この瞬間私の勝利が決まった。

 

「くっそー!」

 悔しそうにフリーズはゴルフのキーを私に渡す。

「悪いな、いただくぜ」

 正直エンジンブローしたゴルフなど必要ないのだが、少しこのクルマで調べたいこともある。

「覚えてなさい!今度はもっとすごいクルマ造ってあんたにリベンジしてやるからー!!」

 ひたすら吠えた後、フリーズともう一人の黄緑髪の少女は迎えに呼んでいたらしい緑色のショートカットの女が乗ってきたアウディに乗って去って行った。

「いやー、さすがだね、魔理沙。いくらヘタクソが乗ってたとはいえこのゴルフに勝っちゃうんだもん」

 ゴルフを持って帰るべく呼んでおいた萃香が満足げに言う。自分がクルマを手掛けただけに、嬉しさもあるんだろう。

「ま、これも実力だぜ。とりあえず萃香」

「なんだい?」

「こいつのことで少し調べてほしいことがある。見といて欲しいパーツがあるんだ」

 萃香は私の頼みを快く引き受け、乗ってきたローダーにゴルフを乗せて帰って行った。

 数日後。

「よう萃香、お疲れさん」

「お、来たかい魔理沙。ちょうどいいところだったよ」

 勇儀のコルベットの下からぬっと出てきた萃香。どうやらオイル交換のようだ。

「おう、魔理沙!初勝利、おめでとうさん」

 私の訪問に気付いてやってきた勇儀。差し入れにコーラをよこした。

「おう、サンキュー勇儀。で、萃香。どうだった?例のホイール」

 さっそく私は本題を切り出す。

「ああ。全く問題なさそうだね。見てみるともう1万キロ以上は走ってるみたいだったけど、ハブのブレも全くない。これは使えると思うよ」

「マジか!導入決定だな」

 私が萃香に頼んでおいたのはフリーズが履いていたカーボンホイールの耐久度。ベイビュー時代にここのホイールメーカーからスポンサーを受けていた私はこのカーボンホイールの試作第一号をテストしたことがあったのだ。

 マグネシウムやアルミ鍛造よりさらに軽量だったため、確かに運動性能は非常に向上した。しかし一番負荷の大きいハブ部分の耐久度が低く、とても市販化できる物ではなかったのだ。

「大部分をカーボンで成形してハブ部分だけアルミ鍛造の2ピース構造とは考えたよね。試作一号は私も触ったことあるけど、若干重くなったとはいえ耐久性能はかなり上がったみたいだね。ここのメーカーとはコネもあるからベンツのサイズで造ってくれないか頼んでみるよ」

「おう、頼んだぜ」

 萃香が再びコルベットの下に潜るのを見て私は休憩所へ足を運ぶ。

「お」

 休憩所のテーブルに見慣れた人物が座っていた。

「久しぶり、魔理沙」

「アリスじゃないか。私が釈放されて以来か?」

 誘われるままに私たちはアリスのテーブルに座る。

「調子いいみたいね。もうブラックリストに入るなんて、これからミスがどう焦り出すのかすっごい楽しみ」

 黒い笑いを浮かべるアリス。怖いんだが・・・。

「この調子でいけば、あいつとの勝負はそう長くはないね。これからが楽しみだ」

 勇儀も私の初勝利にご機嫌なようだ。

 その後も三人で長く雑談をしながらこの日を過ごした。


 
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