No.651586 真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第二十一話2014-01-04 09:26:34 投稿 / 全15ページ 総閲覧数:9436 閲覧ユーザー数:6359 |
「あ、あの…私の顔に何かついてますか?」
諸葛亮さんにそう問いかけられて俺はハッと我に返る。
「いえいえ、輝里の後輩にこんな所で会うとは不思議な話もあるものだと思って
いただけだよ」
「ふふ、確かに私もちょっと変な感じです。でも朱里、あなた何時からこの義勇
軍に?まだ女学院の卒業には早いわよね?」
輝里にそう聞かれた諸葛亮さんは少々言いにくそうに答える。
「あ、あの、本当はまだ正式に卒業をしたってわけじゃなくて…」
「卒業してない?まさか水鏡先生に何も言わずに飛び出してきたの!?」
「ちゃんと水鏡先生にはお話ししたよ。私も雛里ちゃんも大陸が今抱えているこ
の状況を何とかしたい、女学院で学んだ事を少しでも役に立てたいって…そう
したら先生はただ一言『分かった』とだけ…」
「そう、先生がそう言ったのならもう大丈夫って事なのでしょうけど…っていう
か雛里もいるのね。むしろ雛里の方が心配だわ…」
輝里はそう言って頭を抱える。雛里って誰だろう?輝里の後輩で諸葛亮さんの
友達っぽい感じだけど…あっ!
「まさか鳳統…?」
「えっ!?北郷さんは彼女の事を知っているんでしゅか?」
「いや、本人とはまったく面識は無いけどね」
そうか…劉備の下に既に伏龍と鳳雛がいるのか。本当に三国志の知識はあまり
役に立たなくなってきてるな…そもそも俺が言うなって話かもしれないが。
俺がそんな事を考えているのを知ってか知らずか、諸葛亮さんは俺の顔を不思
議そうに見上げていた。
「さて、その話はともかく…劉備さん、あなた方は一体何故此処に?俺の記憶が
正しければ、あなた方は幽州の方にいたはずですよね?」
「えっ!?…何で知ってるんですか?」
「それは…秘密です」
俺はそう言って右手の人差し指を立てるが…当然の事ながらそれに誰も反応す
るはずもなかった。ふん、どうせ分かってましたけど。
「と、まあ、それはともかく、そういう事ならあなた方はわざわざ向こうから此
処まで遠征してきたという事ですよね?何かこっちの方に目指す物があったの
ですか?」
俺のその問いに答えたのは諸葛亮さんだった。
「あの、私達は幽州からこっちに黄巾党と戦いながら来たのですが…これといっ
た後ろ盾があるわけでもないので、色々と問題が…」
彼女はそこまで言って言いにくそうに黙ってしまう…なるほど。
「つまり補給…特に兵糧の問題という事ですね?」
「………はい」
「で?つまり此処まで来たのは陛下…とまではいかなくとも洛陽の有力者の誰か
にそれをお願いしにという事でしょうか?」
「………………はい」
俺がそう聞くと諸葛亮さんは申し訳なさそうにそう言って縮こまる。対照的に
横に立っている劉備さんはあっけらかんとしたままだ。おそらく劉備さんには
事の重大さがいまいち伝わっていないのだろう…しかし主君がやりにくい事を
率先して行うのが軍師の役目とはいえ、諸葛亮さんもご苦労な事だ。
「まあ、そういう事でしたら私の方から話をしてみましょうか?」
「えっ、あの…北郷さんって、洛陽のお偉い方なのですか?」
「色々と申し遅れましたが、私は涼州・天水郡太守の董卓様の下で客将を務めて
いる者。今は董卓様の命にて洛陽周辺の警備の為に派遣されております。さす
がにいきなり陛下にというわけにもいきませんが、それなりなお方にご紹介さ
せていただく位は」
俺がそこまで言うと、
「そ、それは失礼しました!」
諸葛亮さんはそう言って何度も頭を下げる。その様子を見た劉備さんも慌てて
同じようにしていた。
「まあまあ、別に俺自身が何か役職にあるとかいうのではないのでそこまでして
いただかなくても大丈夫ですよ」
「は、はあ…ありがとうございます」
「では、参りましょう」
・・・・・・・
劉備さん達を伴って洛陽の城門前まで来ると、そこで待っていたのは…。
「おかえりなさい、一刀」
瑠菜さんだった。あれ?何でわざわざ?
「ふふ、及川殿から話を聞いてね。おそらく一刀の事だから連れてくるだろうと
思って待ってたのよ」
連れてくる?待つ?誰を…って、そういう事か。
「だから隠れているのは分かってるの。出てきなさい、桃香」
瑠菜さんのその声に劉備さんは観念した様子で出てくる。
「久しぶり、元気そうで何よりね」
「は、はい…せ、先生もお変わりなく」
瑠菜さんがにこやかに挨拶したのに対して劉備さんはビクビクしながらそう返
答する。
「ええ、私はいたって元気よ。それはそうと…」
「はい!?」
「桃香…あなたが私の私塾を卒業してから早や三年余り、他の教え子達は皆頑張
って働いて定期的に便りもくれているのに…あなたは一体今の今まで何をして
いたのか・な!?」
「ひっ!?…あ、あの…私は…その、色々と」
「人助けをしていたというのは白蓮からの手紙に書かれていたから知っています。
そして他には何もしてなかったという話もね」
瑠菜さんが話せば話す程、にこやかな笑顔の裏からの怒気があふれ出て、劉備
さんは今にも腰を抜かさんばかりの状態になっている。
「あなたって子は…まだ分かっていないようね。確かに自分の眼で見ないと本当
に困っている人の姿は分からないというあなたの言い分も十分理解出来ます!
でもあなたが私の私塾に来た理由は『学問を身につけて皆を助けられる人にな
りたい』って事じゃなかったの!?それじゃあなたがやってきたのは何?ただ
の人助けで皆を助けられる人とやらになれたの!?何も偉い役職につく事だけ
があなたの言う理想を叶える手段だとは言いません。ですけどね、人を救うの
にも力という物は必要だと教えたでしょう!正義無き力はただの暴力なれど力
無き正義はただ単なる理想論の振りかざしにしか過ぎないと!それをあなたと
いう人は…」
「あ、あの~、瑠菜さん?」
「一刀は黙ってて!私は彼女と話を…」
「それは重々分かっているのですが、せめて場所を変えましょう」
俺がそう言うと、ようやく瑠菜さんは此処が城門前だった事を思い出したよう
だった。
「…ゴホン!そ、そうね…まあ、とりあえず話の続きは後ほどとして、此処まで
来たのだから皆様には中に。あまり高級な物は用意出来ていませんが、休む場
所を用意してありますので」
瑠菜さんはそう言って劉備さん達を案内する。まあ、後は瑠菜さんに任せてお
けば良いか。俺がどうこう言うよりも将軍である瑠菜さんの方が色々と便宜は
図ってくれるだろうし。
・・・・・・・
そして次の日。
「朝早くからすまぬな、一刀」
俺は命に呼び出されていた。
「いや、朝早いのは慣れてるから別に問題は無いけど」
「そうか、それはそうと呼び出したのは他でもない。昨日お主が連れてきたとい
う義勇軍の事なのじゃが…」
「…劉備さんの事ですか?」
「うむ、その劉備なのじゃが…何処からの流れか知っておるか?」
「流れとは?」
「その者も劉姓である以上、妾と同じ高祖の血を引く者じゃろう?でも宮中の誰
も劉備の事を知らぬでな」
「えっ…瑠菜さんからは何も聞いてないのですか?」
「聞くも何も瑠菜は昨日の夜から『劉備をもう一度鍛えなおす』とか言って何処
かへ行ってしまったままなのじゃ。今日中には戻ってくるとは言っておったの
じゃが。ちなみに劉備が連れていた者達は宿舎で休んでおるようじゃがな」
これはまた…劉備さんの泣き顔が眼に浮かぶようだ。
「それで俺に?」
「お主なら何か知っておらんかと思ってな」
「まあ、知識程度の事なら…」
「おお、そうか。なら教えてくれ」
「確か…幽州の生まれで、中山靖王・劉勝の子孫とかいう話だったかと」
俺がそう言うと命の顔はがっかりしたような感じになる。
「中山靖王の子孫だと何かまずいのか?」
「一刀でも知らん事はあるのじゃな。中山靖王という人はな、子は五十人・孫は
百二十人はいると言われている人でな、それももう三百年近くも前の事、今と
なっては幽州の生まれで劉姓ならば皆そう名乗ってると言われておる位のもの
なのじゃ」
ほう、それはまた…まあ、率いているのが義勇軍だし、確か劉備って蓆を織っ
て生計を立てていたとかいう話だったし…仮に本当に血筋でもとっくに落ちぶ
れた所なのだろうけど。
「むう…うまくいけば心強い味方を増やせるかと思ったが、少々難しいかもしれ
んの~」
「えっ、劉備さんも味方に引き入れるつもりなのか?」
「うむ、やはりまだまだ人手は足りなくての。特に禁軍の方はなかなかうまくい
かんのじゃ。月がどうしても一刀達を手放したがらんしな」
命にそう言われ、俺は苦笑いをするしかなかった。
そう、命の言う通りで俺が董卓さんの客将という身分がそのままなのは、董卓
さんがそれを願ったからだ。洛陽を取り戻した後で行われた話し合いで、命は
俺達北郷組を禁軍に組み入れたいと言い出し、馬騰さんはそれを承諾したのだ
が(蒲公英はもともと連絡役として天水にいたので馬騰さんの許しも必要であ
った)、董卓さんは何故か俺を自分の手許から離すのを頑として断り、話し合
いが平行線になったので、王允さんの提案で俺は出向という形になったという
経緯があったのである。最初は輝里を手放すのが嫌なのかと思っていたのだが、
あくまでも董卓さんが拒んだのは俺についてという事で正直驚きを隠せなかっ
たのだが。本人に理由を聞いても何だかはぐらかしたような答えしか返ってこ
ないし、それならばと賈駆さんに聞いたら険しい顔で『そんなの自分の胸に聞
けば良いでしょ!』と怒鳴られたのでそれ以上聞く事も出来なかったのであっ
た…でも本当に何故なのだろう?良く分からん。それはともかく、さすがの命
もお世話になった董卓さんに対して強制的に命令する事が憚られるようで、結
局現状のままなのであった。
なるほど…だからこそ命はもっと自分の手足になるような者が欲しいという事
なのか。確かに遠い血筋とはいえ、同じ劉氏の出の者ならばという考えは分か
る。だが劉備さん本人を見る限りあまりお勧めは出来なさそうだけどね。
俺がそんな事を考えていると、
「申し上げます!城外に陳留の曹操様が参られて陛下への拝謁を願っておられま
すが…」
突然の報告に俺は驚く。
「ああ…来たか、通せ。但し供の者は二人まで、他の者達は予定の宿舎の方に入
るよう指示せよ」
しかし命はまったく驚く事無く指示した所を見ると、事前に予定されていたと
いう事か。
「一昨日に話は来ての、そういえば一刀にはまだ言うておらんかったな。すまん」
「いえ、それじゃ俺はこれで『待つのじゃ』…えっ?」
お客人か来るならとその場を辞そうとした俺を命は呼び止める。
「一刀も此処にいよ。曹操とは顔見知りなのじゃろう?なら別に何の問題も無か
ろうて」
命はにやにやしながらそう言う。それが分かってて俺に曹操さんの事を言わな
かったって事か…はぁ。
・・・・・・・
「お初にお眼にかかります。突然の申し出を受けていただいた事、恐悦至極にご
ざいます」
「お主の父上には幼い頃に世話になったでな。妾も一度お主には会ってみたかっ
たのじゃ」
「そう言っていただいていただき父も草葉の陰で喜んでおりましょう…ところで」
「どうした?」
「何故北郷殿がそちらに?」
「お主とは面識があるから是非挨拶したいとこやつが申しての~」
白々しい事を白々しい口調で言いやがって…曹操さんもそれが分かってる顔し
てるし。はぁ、仕方ない。
「ご無沙汰しております、曹操様。何時ぞやは混乱のまま挨拶もせずに申し訳あ
りませんでした」
「あの状況ではどうしようもない事、気にしなくて良いわ」
「ありがとうございます」
と、営業スマイル同士での白々しい挨拶をかわす。
「ところで…北郷殿に聞きたい事があるんだけど?」
「しかし陛下の御前でございますれば…」
「妾は気にせんから安心せい」
くそっ…命の奴、俺が困ってるの見て楽しんでやがる。
「わ、分かりました。私でお答え出来る事であれば…」
「本当は色々聞きたいのだけど…一つだけ、何故あなたは私と袁紹が同じ私塾の
出身だって知ってたの?」
何かと思えばそれか…あれから大分経つっていうのに、まだ覚えていたとは。
「ほう…お主と袁紹は学友じゃったのか?」
「はい、橋玄先生の下で」
「なるほど…あの橋玄のか。もう死んでから二年近くが経つのぉ…生きておれば
漢の為の力になってくれただろうに、惜しい事じゃ。で、北郷はそれを知って
おったという事か。妾も知らんかったのに凄いのぉ~」
命はそれはそれは楽しそうに話をふってくる。むぅ、何と答えれば良いのか…
此処で『実は千年以上未来の世界から来たんですよ~てへっ♪』とでも答えれ
ば良いのかもしれないけど…絶対信用してくれないだろうしなぁ。
「どうした?答えにくい話なのか?ほれ、曹操を待たせてはならんぞ?」
命はますますにやにやした顔で聞いてくる…ううっ、他人事だと思って…。
「ゴホン!ええっと…実はですね、私は有力と思われる方々の事を少々調べてお
りまして、それで曹操様と袁紹様がご学友だという事を知ったのです。あの時
はついそれが出てしまいました次第で」
俺はとりあえず今頭の中で作ったストーリーを言う。
「へぇ…何故そのような調べ事をしていたのかしら?」
「それは妾も気になるのぉ~」
しかし曹操さんはますます疑いの眼差しを強めて質問を重ね、命はますます楽
しそうな顔でそれに乗っかってくる。ふぅ…仕方ない。
「実は私はこの国の人間ではありません」
「へぇ…そうなの?それで?」
「この国に来て身を立てんと欲したわけですが…何処に行けば良いか、誰に仕え
るのが良いかをまず調べようと。その調べた中に曹操様と袁紹様の繋がりの事
もありました次第です」
「ふ~ん、なるほどねぇ…とりあえず一つだけ聞くとしか言わなかったし、それ
だけにしておくわ」
曹操さんはそう言ってようやく引き下がってくれたが…その眼は『それだけで
納得なんかしてないわよ』という言葉が明らかに聞こえてくるように感じた。
「なるほどのぉ…その話は妾も初めて聞いたがなかなか興味深かったぞ?」
命も頷きながらそう言っていたが…間違いなくその眼は『なかなか面白い作り
話じゃったぞ』と言っているように見えた。まったく、結局一人楽しみやがっ
て少しはフォローしようとか思わないのか…期待するだけ無理か。
「さて、北郷の話はそれまでとして…曹操、洛陽に来た理由をまだ聞いておらん
かったな」
命はそれまでとはうってかわった厳しい表情で曹操さんに問いかける。
「はっ、実は私達が追っておりました黄巾党の軍の一部が司州の方にも入ったよ
うでして、討伐に向かいたいのですが、陛下のお膝元で勝手に軍を動かす事は
憚られます故、その許しを願いに参りました次第で」
「ほぉ…しかしそんな悠長な事をしていて賊に逃げられたりはしないのか?」
「これ以上逃げられないようにはしてありますのでご心配なく」
「そうか、それは重畳。ならば良し、その賊の討伐を許可する。但しこれ以上洛
陽には近付けぬようにな」
「かしこまりました。これからも陛下のご期待に沿えるよう努めてまいります所
存です」
曹操さんはその場を辞そうとするが、
「ああ、そうじゃ。少し待て」
命が呼び止める。
「何でしょう?」
「お主に渡したいものがある。何、邪魔にはならんはずじゃ」
命はそう言って手を叩いて侍女さんを呼ぶ。
「これ、盧植を呼んでまいれ」
瑠菜さんを…なるほど、そういう事か。
それからおよそ小半刻後。
「お召しにより参上しました。遅くなりまして申し訳ございません」
「良いのじゃ、妾が急に呼んだのじゃからな。それとお主は既に知っておったとは
思うが…」
「はい、聞いております。曹操殿、ご無沙汰を」
「盧植様もお元気そうで、何でも罪を被せられて捕縛されていたとか…ご無念、お
察し申し上げます」
曹操さんはそう言って頭を下げると瑠菜さんは頷きを以て返す。
「時に陛下、ご用件は何でございましょう?」
「うむ、昨日北郷が連れてきた者の事じゃが」
「と…劉備の事で?」
「うむ、その者とその義勇軍をしばらく曹操に預けたらどうかと思っての」
「曹操殿に…ですか?」
「曹操は司州に入り込んだ賊の討伐の許可を得に来たのじゃが、わざわざ来てくれ
た曹操に対して今の妾達の状況では何も贈ってやる事が出来ぬ。そこで…勇猛な
る者と知に優れた者がいるその義勇軍を曹操と同道させようとな。本当は正式に
援軍でも出せれば良いのじゃが…どうじゃな、曹操?」
「陛下の思し召しとあれば」
「良し、なら決定じゃ。盧植、すまぬがそれを劉備に伝えてくれぬか?」
「分かりました…確かにそれは良い経験になるでしょう」
瑠菜さんはそう言ってその場を辞し、曹操さんもそれに同行する形でその場を辞
していった。
「どういう事だ?さっき命は劉備さん達を禁軍に引き入れようと考えていたのでは
なかったのか?」
二人の気配が離れた事を感じた俺は命にそう質問をぶつける。
「そうなのじゃがな…曹操の顔を見て少し考えが変わった。事実、妾は劉備の事は
何も知らぬ。まさか無位無官の者とほいほい会うわけにもいかんしの。そこで…」
「曹操殿に預けてどれだけ活躍するかを見極めようと?」
「そう、じゃがそれだけではないぞ?」
「義勇軍の兵糧の件も曹操殿に丸投げという事か?」
「大正解。もし妾と劉備が会ったなら向こうは中山靖王の末裔という話をし始めて
同族の誼で補給を…などと言い始めるじゃろうしな。そうなったら妾も無下には
断れん。しかし正直な話、今の洛陽にそんなに余裕は無いでな」
なるほど…劉備さん達の力を見極めるのと義勇軍への補給とをまとめて片付ける
機会となるってわけか。
「まあ、後はお手並み拝見という所じゃな」
命はそう言って笑っていた。
・・・・・・・
「ほぉ…命もなかなかずるくなってきたな。それでこその皇帝よ」
裏で密かに一部始終を聞いていた空はそう言ってほくそ笑んでいた。
・・・・・・・
(まったく、本当に喰えない親子だな)
俺は目の前の命と裏に潜んでいる空様の事を考えながらため息をついていた。
「というわけで、あなた方の事は私が預かる事になったのでよろしく。兵糧の手配
もすぐに行うわ」
「はい、よろしくお願いします、曹操さん」
曹操と劉備がそう挨拶をかわしていた後方で…。
「朱里、これはどういう事だ?何故我々は曹操軍と同行するのだ?」
そう諸葛亮に聞いていたのは劉備の義妹の関羽である。
「そうなのだ、確か鈴々達は洛陽の人にお願いしに来たはずなのだ!」
そう聞いてくるのは同じく劉備の義妹である張飛だ。
「それはその…」
さすがに諸葛亮も言いよどんでいたが、
「朱里ちゃん…多分私達、陛下に試されている?」
鳳統にそう言われるに及び、さすがに観念した様子で頷く。
「なっ!?何故だ!」
「おそらく理由は二つ…まず今の洛陽には義勇軍に補給をする程の余裕が無いとい
う事。そして本当に役に立つ程の力があるのかを知る為かと」
「それを分かってて黙って受けたのか?」
「理由がどうあれ陛下の思し召しである以上それを断る事は無理です。それに結果
的には私達の補給の問題も解決するのですから。それに…」
「それに?」
「桃香様が今は一刻も早く洛陽を離れたいようでして…」
それを聞いた関羽はさすがに反論出来なかった。
「確か…盧植様、だったな?桃香様の先生だったという…」
「はい、丸一日何があったのか分からないのですが、桃香様の怯えぶりといったら
…曹操さんとの同行を命じられたら二つ返事での即答でしたし」
「まあ、そういう事なら致し方の無い事。ならば我々の力を見せてやるだけだな」
そう言っていた関羽の眼には力強い光が籠っていたのであった。
続く。
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
今回は劉備軍との出会いだけでなく曹操との
再会もお送りしました。
とりあえずこれで劉備軍の片付き先も決まっ
たので、次回からは黄巾党討伐も佳境へと向
かっていきます。
それでは次回、第二十二話にてお会いいたしましょう。
追伸 さすがにもう休みも明けるので更新速度は落ちると思いますので。
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お待たせしました!
一刀達が助けた義勇軍を率いていた
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