No.651125

アルコール・ラブコール・シュプレヒコール

理緒さん

さて、今回はクリスマスイベントで幸運な体験をした鬼月さんを、今度は針のむしろに乗せてみようという、まさに外道なギャグなお話です。ツイッターでもこのネタがたまに出ていたので、多分許されるだろうと……え?ダメですか!?
登場するここのつ者:蒼海鬼月・黄詠鶯花・熊染・砥草鶸・野槻狢・猪狩十助・鳶代飾・雨合鶏・遠山黒犬
登場するいつわりびと:企鵝・蚕女鴇・鴉目悠
名前だけちょっと登場:魚住涼・小鳥遊命・秋津茜

2014-01-02 19:59:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:673   閲覧ユーザー数:660

赤や緑が基調として飾られた温かい室内。見慣れない異国の料理の数々。

そこで店主から聞かされたルールに面くらったが、それなりに楽しく過ごしていた。

日付が変わった瞬間に自分の隣にいる人にキスをするというルールで……まぁ、俺は予想違わず男、しかもいつわりびとの企鵝にする羽目になった。向こうも災難だっただろうがそれも

しかし、今日の俺はいつもと違っていた。

まず、指定された相手を間違えたらしいが、祝福、と言って涼からキスを贈られ、命からもキスを受け、秋津からも、何だか嫌な予感はしたが受けた。

気恥ずかしくはあるが

普段ついてない俺にしては運の良い一日だった。

……いや、はずだった。

 

「ハーレム!!」

「ここのつ者は!!」

「撲滅!!」

「撲滅!!」

 

「ハーレム!!」

「ここのつ者は!!」

「殲滅!!」

「殲滅!!」

 

「月の夜!!」

「ばかりと!!」

「思うなよ!!」

 

「ハーレム!!」

「ここのつ者は!!」

「巣に!!」

「帰れ!!」

 

なんだこの盛大なシュプレヒコールは…。

しかも唐突に始まって、終わったら勝手にイエーイと盛り上がっている。おい、なんだこの疎外感。

「……何やってんだお前ら…」

呆れた声と一緒に、その場から一歩引く。良く見なくても相手は見知った顔ばかり。他人のふりをしたい気持ちでいっぱいだ。

「何って」

「シュプレヒコール?」

十助と飾が互いに首をかしげながら答える。良く分かってないが面白そうだったから一緒に騒ぎに来た、と顔に書いてあるから首謀者ではないだろう。

「……何に対してだよ」

「そりゃあ…まぁ」

「決まってんだろ?女性三人に口付けをもらった鬼月君」

ちょっと酔っぱらって楽しそうな黒犬が二カッと笑っていえば、言葉を引き継いだ雨合が鬼月の肩をポンと、叩く。

今回のルールとして存在していた「日付が変わったときに隣にいた人にキスをする」というルール。やはり、確立としてはだれからもされないこともあり得、同性同士でもキスもあり得るという色々とすごいものだったが、鬼月は人違いを含めても三人、女性からキスを受けた。これは決して高い確率ではない。

「……たまには俺が良い思いしたっていいだろうが……」

「いいや!兄ちゃん…この世にはな…分かっていても妬まずにはいられないものがあるんだよ!」

それに同意するように、シュプレヒコール参加者は一様に頷いた。……何人かはよく分からないまま頷いている気がする。

意図的にそれを無視して視線を巡らす。鬼月とてバカではない。酔っぱらいを扇動し、良く分かっていないような子供二人を言いくるめられて、かつ個人的にこういうことをやりそうな奴には心当たりがある。

そう、さっきもちょっと言い合いをした…奴だ。

目的の人物は隠れもせずにこのシュプレヒコールに参加していたため、すぐに見つかった。鬼月の視線が鋭くなり、人相が三割増しで悪くなる。

「鴇!!てめぇの提案だろ!!」

「お、良く気付いたな~偉いぞ~」

鬼月の大声にもひるまず、むしろ小馬鹿にしたような態度で拍手をしてみせる。この理不尽極まりないシュプレヒコールの首謀者、蚕女鴇はしてやったりと笑って見せた。不敵な態度はいつもと変わらない……が、その格好は毛布でも着こんだかのようにもこもこだ。そこまで着込むならいっそ三田とやらの格好でもしてろ。

「他の奴らまでそそのかすなんて、暇人かよてめぇは」

「うるせぇ。俺の朔夜の唇を奪ったんだからな。これくらいの報復で済むと思ってねぇよな?」

そこまで言って鴇は一つくしゃみをした。そのうち絶対体壊すから部屋の中に居れば良いのに。

しばらく見ていたら体の芯まで冷えて来たのか、顔色が悪くなり出した。

「……大丈夫…か……?」

「顔色が悪いですね……熊染さん、鴇さんを中へ運びましょうか。中の方が温かいですし。」

熊染と鶯花が鴇を担いで室内へと運んで行ったのを見ていっそ拍手をしたかった。よしよし、そのまま部屋で寝てろ、起きてくるんじゃない。

それを見送った後、残りの連中へと視線を巡らす。

「で、なんで他の奴等までノリノリなんだよ!」

「ノリです」

「ノリですね。私も誰にもされていないので、僻み妬みくらいは受けてください。男でしょう?」

酔っぱらっているのか、いつもよりも純粋さの強い笑顔で悪びれもせずに言い切る企鵝と、堂々と僻み妬みだと言い切る鴉目悠。ここまで言い切られると、怒る気力が削がれてくる。

眉間に寄ったしわが深くなった気がする。

「これでいいのでござるか?」

「はい、バッチリですよ?」

良く分からずに参加したのであろう野槻狢と、ほめている砥草。おい、お前子供に何拭きこんでんだ、お前は常識人枠の人間だろうが。

一日のうちで地獄と天国と混沌を順に体験するはめになるとは、さすが俺というか、明日記憶があったらお前ら覚えていろよというか……

……言われるだけならさほど害はない……ということにしよう。もう諦めた。

「…勝手にやってろ」

「おーし、皆もう一回いくぞー」

「リア充野郎はー?」

 

「やっぱやめろ近所迷惑だ!!!」

 


 
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