【黄巾賊殲滅戦の件 その弐 颯馬対凪戦】
〖黄巾賊大天幕にて〗
凪「……あなたが『伏竜の軍勢』の軍師、『天城颯馬』様ですか? 自分は先程も紹介しましたが、楽文謙と申します」
颯馬「董卓軍客将、天城颯馬です。……なんです?私の顔を見て楽しそうにしているのですか?」
後の『魏』で勇名を挙げる『退かずの楽進』が、もの凄い笑顔でこちらを見ている?
凪「…これは失礼。ですが、自分は嬉しいのですよ! あの董卓軍の名高き『神の拳』を持つ軍師に対峙出来るなんて、幸運ですよ!」
いや!!! 『神の拳』って何? そんな話初めて聞いた!!
颯馬「……御戯れを…。私にそのような大袈裟な武芸は…「存じています」…なら何故?!」
余程、この世界に素手の戦い方が珍しいらしく、俺の顔を見て瞳を輝かしている!! まぁ、武器対素手は珍しいには珍しいか……。
俺の疑問を解くため、楽進殿は熱く語る!
『 我らの間者より詳細の話は入っています。
簡略に言えば、あなたは完全装備の将を、鎧の上より打撃を喰らわし撃ち殺した。この事だけでも、あなたの力量は高見にありますよ。
自分も、かなりの腕があると自負していたのですが、天城様のように手甲も付けず、素手で対処など出来ません…………!
話を聞いた時は、驚き悩みました! 自分のように破壊するのではなく、威力を貫通させるその技量。 どうすれば会得できるか?
その憧れの将が、目の前に居る!!!
そんな高手(達人)の将と戦える事に、興奮しない方がおかしい!
そう思いませんか、天城颯馬様………?』
えーと、あの時は賊将が打撃を与えた後、俺に近づいて殺されかけたが………討ち取ったのは、火縄銃使用した光秀じゃないのか?
颯馬「………死因は、飛び道具による頭部損傷による即死では?」
凪「いえ、死因は、最初の打撃に因る内部破壊。五臓六腑が全て損傷していて、普通なら即死ですよ。 一部始終を見ていた間者が不思議に思い、遺体を回収後に医師の確認をしたところ、そんな回答をもらいました」
…補足を付けますと、人は興奮状態ですと五感が麻痺しまして、強烈な痛みを与えてても、気が付かず動く事が出来ます。
ですから、賊将は既に致命傷を受けたのに関わらず、気付かず動いていただけ。頭部の謎の損傷は、機能停止を早めただけです!
と、俺の知りたいとこまで教えてくれた。
颯馬「………わかりました。 ですが、私は補佐で体術を使うまでで、武器はこれですが…」
と、腰に差した刀を少し持ち上げる。
楽進殿は、笑顔で『日常茶飯事』だから、気にされないようにと宣い(のたまい)、構えを取る!
……おなごに、あんな可愛い笑顔で言われでば、刀の使用なんかできないじゃないかと、呟きながら外して少し遠くに置く。
さて、俺も『天地陰陽の構え』を構えようとすると、何故か、楽進殿が、顔を赤く染めて手の手甲を外す。 『?』を浮かばせる俺に、
凪「……さ、さ、流石に軍師、ですね。 じ、自分を動揺させるため、あの様な言葉、吐かれるとは。 それに、アナタは、武器を外した。 自分も武人ですので、武器を外して対等に戦わせていただきます!」
嘘を付いたつもりなんか、ないのに…………。
凪「準備完了です! …行きますよ!!」
颯馬「こちらも大丈夫! 天城颯馬、お相手仕る!!!」
タッタッタッ トッ! シュッ、シュッ!
楽進殿は、瞬時に俺の懐に入り、拳で腹、顔の二段の連撃を放つ!
ガッ! ガッ!
俺は、瞬時にコメカミに備えていた右手で打ち払う。
まさか、義輝と道雪殿、紹運殿、ごく稀に恋が入り乱れ、稽古を付けていただいた件が、ここで役立つとは………。
…………後、たまに何だけど、貂蝉まで教えてくれた。
卑弥呼との戦いでみせた超人的戦いではなく、ごく普通の拳術。
八極? 八卦? 太極? よく、わからないが、輝宗殿の教えてくれた武術に良く似たもの。 姿勢も良く似ているが、拳や掌、果ては蹴りまで繰り出す日の本では見慣れない武術。
でも、似ているだけあって覚えやすかった。
俺は、楽進殿より距離を取り様子を窺う。 流石に将だけあり突きが重い! これは、密着戦に持ち込んだ方が有利か?
と、思っていたら……右足が輝き始めた! あれは、氣! 拙い拙い非常に拙いと、あたふたして左側に跳ぶ!
凪「『猛虎蹴撃』!!」
ズドーーーン!!
白い玉が足から蹴り出されたと思えば、俺がさっき居た場所に着弾する。 やはり、氣の塊か! 義輝の訓練で、よく避けた事を思い出し
身震いした…………。
☆☆☆
凪視点
なんだ…? この打撃は!
小手調べのために放った連続攻撃を易々避け、初見の筈の『猛虎蹴撃』も簡単に、しかも次の攻撃に刻が掛かる場所に避ける?!
自分の攻撃を弾いて避けたが、この打撃は防具を通って骨まで痛みが走った! 今まで受けた打撃は数多くあるが、この打撃は異質!
しかも、『猛虎蹴撃』を行った右足の外側に廻り込まれたので、右足が邪魔になり、次の動作に支障をきたす! 急いで体勢を直し、前を向くと、天城様が目の前に………!
しかも、自分の顔の前に掌が伸びてきて、慌てて顔を反らして避けると、胸の部分に強烈な打撃が!!
颯馬「『覇王頂門』!」
ドン! ガシャン!!
凪「ゲッホッ!!」
肺の空気が押し出され、胸の防具がメコリと凹む!
激しい痛みで、自分の意識が朦朧になり、薄れゆくなか、天城様の顔が見えた………。
勝利者の筈が、顔を歪め、悲しそうな、泣きそうな顔が、とても、とても、印象に残ったまま、自分の意識が途切れた…………。
★★★★
颯馬視点
俺は、楽進殿の氣弾?から逃げて、蹴り上げた足の外側へ移動する。
光秀が火縄銃で狙いを定めるときに、よく呟いていた言葉。
『狙いの外側に逃げられると、肘が開いて当たりにくくなる』
俺は、実行に移すと、楽進殿の体勢が崩れた!
早めの勝負を決しないと体力勝負じゃ俺が不利と考え、急いで近寄り
楽進殿の顔の前に右掌を伸ばし、意識をそちらに移させる。
案の定、楽進殿は顔の攻撃を嫌がり上体を反らして避けたので、右掌を伸ばした肘を下に曲げ、肘打ちを喰らわす! その際に腰を落とし中腰になり、左腕を後ろに伸ばす! 体重移動を急激に行うため、前方に力が入り、右足の踏み込みが大きな音となり響き渡る!!
颯馬「『覇王頂門』!」
右掌を囮にして相手の顔に出し、相手が反応したところで右掌を肘打ちに変化させ打ち込む!!
………楽進殿は、苦痛に満ちた顔で俺を見た。 対戦前に見せた輝く可愛い笑顔、俺を憧れの目で見てくれた武人。 そんなおなごを勝負とはいえ、倒してしまう……のは、とても悲しい。 いくら敵になろうとも、頬って置く訳には、いかなかった。
ーーーーーーーーーーーー
俺は、程遠志達を追いかける!
楽進殿の仲間が、程遠志を追っていたから俺も向かっているんだが…背中に楽進殿を乗せて…。
…賊軍の本拠地に寝かせて置けば、何かあったら申し訳ないため、こうして背負って連れて来ている。 将来、強敵になるのは間違いないのに…。
……………しばらくして、楽進殿が目を覚ます。
凪「………ん、ここは? え? 勝負…痛っ!!」
颯馬「お? 気がついたか? 今、張角の居る部屋を目指して行動しているんだけど、先に謝らせてもらう! 倒れた君を運ぶ方法がこれしか無くて……。 暫く我慢して貰えば助かる!!」
凪「じ、自分は、負け…たのですね……」
颯馬「 こちらもヒヤヒヤだった。 俺が力を抜けば、倒されていたのは、俺の方だったから……」
凪「いえ、これは命を懸けた死合でした。命を失ったとしても、後悔などありま「本当に、そう思う?」……なんで、そう思われます?」
颯馬「君と一緒に居た娘達は、君と三人で戻ろうと誓っていたのを見たよ。 君は、あの娘達の約束事を反古する気かい?」
凪「……………………………………………」
颯馬「それに、可愛いおなごに笑顔で礼儀正しく接しられたのに、
『勝負が着いた! じゃ、死んで♪』って、どこの鬼畜だよ?!」
冗談を言いながら、場を和ます努力をする俺は、どこまで人が良いんだ自分自身に苦笑する。
はて? 背中が熱くなった気がするが、大丈夫か? 体調もかなり悪い筈だがと気遣うが、部屋まで終始黙っていた………。
★☆★
【黄巾賊殲滅戦の件 その弐 宗茂対一刀戦】
一刀「貴女が『立花宗茂』ですが? 鎮西一と言われた………」
宗茂「人に名前を尋ねる前に、名乗りなさい!」
一刀「………北郷一刀。天の御遣いを名乗る胡散臭い奴だよ」
宗茂「…感心しませんね。貴方の名前は、誰が付けたかわかりませんが、大事にしてくれる方が付けたののでしょう! それなのに、自分自身を胡散臭いとは、何事です! 胡散臭いと思い卑下する度に貴方自身が本当に胡散臭くなりますよ?! 名乗ってその名に相応しい人物になる! それがその名を付けてくれた方の恩返しとなり、自分自身のためにもなるんです!!!」
一刀「……………愛紗に説教されている気分。ごめんなさい」
宗茂「分かればよろしい。 えーと、鎮西一とは大層な肩書きですが、言われたことも、その器だとも思っていません! 私なんてまだまだですから!」
一刀「そうですか。(鎮西一の話は、中年以降の話だったかな?まだ、そんな年齢じゃないからか…)」
宗茂「そんな無駄話は置いて、勝負です! 私は兄様の護衛を勤めなければならないのですから!!」
一刀「………こんな、短気な武将だった…か。よし、仕切り直し!
天の御遣い 北郷一刀! 押して参る!!」
宗茂「フフフ、その意気です。では、立花宗茂! 参ります!」
一足二足と間合いに入る双方。宗茂は愛刀『波切りの太刀』で中段の構えをとり、一刀の様子を窺う…………。
一刀は、『蜻蛉』と呼ばれる、刀を天に衝くような体勢を保ち、前に進み出る。
一刀「チェェェイィィィーーーーー!!!」
一刀の『猿叫』の掛け声。普通の人が見れば狂っていると思われるような狂気な叫び。 現に、ここへ入る前、黄巾賊に構えて叫ぶと怖がって逃げ出す。おかげで時間を短縮して中に入ることが出来たが、一刀の心がちょっぴり傷付いたのは秘密である。
宗茂「……………………」
その声に全く動ぜず、ただ機会を待つ宗茂。
……二声程叫んだ後、一刀が走るが如く宗茂に突っ込み!
一刀「キエェェェェィィィ!!!」
宗茂「!」
フシュ!! キン!! …シュ!!
一刀の刀が届く前に、宗茂が避ける! だが、一刀の刃は止まらず、刀を鞘に入れ体勢に直しつつ前に動き、刀を天に向け払うが如く振り上げて、抜刀を行う!
『敵、一度対峙すれば、百万地獄へ突き落としべし』と祖父より言われ続けた『意地』を刀に乗せ、瞬殺の抜刀を放つ!
宗茂「じ、示現流……じゃない…?」
一刀「ハァー ハァー ハァーー! 薬丸どんの流れを汲む薬丸自
顕流北郷派! 技は示現流より少ないが、その分、集中が出来るんだ!! 人を傷つけ殺しても、何も感じない程………!!」
一刀は息を整え間合いを開け、再び対峙する!
一刀「俺は、人を傷つける事は、はっきり言って嫌だ!! そんなモノに慣れたくなんかない!! …だが、俺が動いて実行に起こせば、救える人達がいる! それが分かるから、ただ刀を振る! 後悔なんか、人を救った後でも出来るからな!!!」
宗茂「………少し、思い違いをしていました」
一刀「?」
思わず、一刀の動きが止まり、宗茂の顔を見る。無論、止まったといえど蜻蛉の体勢を取り続ける。
余談だが、薬丸自顕流は、防御不要の攻撃の武芸。『構え』は防御の型を表すため、『蜻蛉の構え』とは言わないらしい。
宗茂「私は、貴方を軟弱者だと思っていました。 奉じられて、いい気になったお調子者。 今の貴方は、そんな気は微塵もしません!
正に天の御遣いに相応しい態度です」
そして、宗茂は愛刀を鞘に入れて、左手で持つ。
宗茂「では、敬意を評して、私の秘技をお見せしましょう!!」
一刀「その前に、貴女を倒す!!」
一刀が先程より早く宗茂に近づき、蜻蛉の体勢より真っ直ぐ刀を切り落とす!!
キィーーーンン! ザックッ!!
辺りに砂塵が舞い散る! 何かしら銀色の物が、くるくると回りながら、天幕の外に出ていく!
宗茂が居たところの地面がに、刀が斬り込まれる!!
一刀の刀が切っ先より約20㌢程で地面に辛うじて止まる。
……が、宗茂はバックステップの要領で既に後ろへ下がり、居合いの構えをとる。 思わず、刀を盾にしてしまう一刀!
宗茂「いきますよ! フッ!!」
シュッ!
宗茂の刀が、水平に薙いだ! と、同時に鞘にしまう。
一刀「どういう………ガハッ?!」
宗茂の鞘に入れた瞬間、一刀の顔が苦悶の表情で歪む……。
宗茂「私の愛刀『波切りの太刀』の名の云われは、貴方なら存じているんじゃないですか? ………天の御遣い殿?」
一刀「で、伝承が、正しければ、泳ぐ人が、き、斬られた事も、気付かず、泳ぎ切ったところで、真っ二つ、だっけ?」
宗茂「そうです! 本当は、泳いでる時に斬ったのですよ。『波切りの太刀』の力と私の氣で、バッサリ!」
一刀「どこかの………南斗○拳…かよ…」
宗茂「将星、落ちるべし! です!」
一刀「…なんで、それを…。 ハハ…でも、残念。 俺も…外しては、いないんだ……」
宗茂「え? …………………え!、えーーー!!!」
一刀「こ、これが、や、薬丸、自顕の『意地』っ、て、もん……だ」
バタン!!!
一刀は倒れたが、命に別状は無し。 気絶で済ましたのだが…。
宗茂「義母様や義姉上に、叱られます! ど、どうしましょう?!」
と、怯えていた。
最後の攻撃は、完璧に避けたと思っていた宗茂だったが、愛刀「波切りの太刀」の切っ先20㌢部分が………鞘も含め飛ばされていた。
◇◆◇
【黄巾賊殲滅戦の件 その弐 義清対関雲長戦】
義清「………あの関雲長と、こうして刃を交える事が出来るとは、この『村上義清』光栄の至り! 末代までの名誉になろう!!」
愛紗「…………わ、私は、ただの義勇軍の将だ…! そんな輩に何故涙を流さんばかりに、喜ばれる? 」
義清「…む、流石、関雲長! そこまで自分を卑下する高潔たる精神、ますます頭が下がるの! 是非、未熟な私なれど勝負を願う!」
愛紗「………これ以上聞くと、褒め殺しにされる。いざ! 尋常に勝負だ!」
シュッ、シュッ、シュッ!
義清の三段突きが関羽に迫るが、青竜偃月刀を持って弾き出し、そのまま青竜偃月刀の刃を返し、一刀両断にせんと打ち据える。
義清「おおっ! そうくるか? ならば、こうしてやれば……と」
愛槍を斜めにして、威力を殺して受けた後、槍を翻して頭上より打ち込む! 難なく青竜偃月刀で受ける関羽。
愛紗「………どうした? これが貴様の力か?」
義清「まだまだじゃ! よっ! やっ! とっ!」
今度も三段突きを行うが、二つは虚(フェイント)、一つ実を混ざして攻撃するが、簡単に避け、皮肉にも義清と同じ攻撃を仕掛けてくる。 勿論、義清も避けて攻撃を外す!
愛紗「……いい加減にしろ!!」
どんな思いもよらない攻撃を仕掛けるかと、警戒していた関羽だが、義清の攻撃は技としては、初歩の初歩。
これなら警戒無用とばかり青竜偃月刀を振り回し、義清の頭上に攻撃を仕掛ける関羽!
義清「…ふむ」
義清は、その攻撃を確認し、自分の愛槍をすぐに当てて相殺する。
攻撃が受けられば、即座に反撃をするのが当然の事だが、ここで意外な事が起きた…。
ガタン!
義清が、愛槍から手を離すと同時に、関羽の懐に入り込む!
愛紗「なっ!」
反撃しようとも、先の応酬で間合いは長物の感覚しかなく、ここまで入り込まれると、自分の得物では対応が出来ない!
義清は、右足を踏み込み右半身となり、関羽の胸に右の腕を曲げて押し込むように体当たりを行う!
愛紗「ゲホッ! ゲホッ!」
義清「う~ん、兄者が教えてもらっていた技を真似したが、やはりイマイチだったの……。 それに、関羽殿の胸が、あまりに大きくて弾力があるから、威力が半減してしまった………」
愛紗「………う、うぅぅぅ、うるさい! 恥ずかしい事を言うな!」
義清は、傍に落ちていた愛槍を拾うと、関羽に話掛ける。
義清「さて、続きもしたいが兄者と宗茂の決着が着いたようじゃ! そのため、ここでの戦いは引き分けでいいかの?」
愛紗「まだだ! 私はまだ戦える!」
義清「関羽殿、臣下が己を見失ってどうする! 現に見よ、あそこに倒れているのは、お主の主君である北郷一刀殿だろう?」
愛紗「ご、ご主人様!!!!」
パーン!
すぐにその場に行こうとする関羽に、平手打ちを喰らわす義清。
関羽「何をするか、貴様は?! ご主人様が!!」
義清「馬鹿者!!! 落ち着かんか!!!!」
義清が覇気を全開にして怒ると、ようやく関羽は静まる。
義清「全く、ここまで猪とは………北郷殿の苦労も偲ばれるの…」
義清は、固まる関羽に説明する。
北郷一刀は無事である事。我らの仲間が、介抱しているようだから一声かけてから近寄るように。
張角達の事情も知っていて、程遠志からも頼まれている。 しかし、
いくら知らぬ事とは言えど、罪は罪。殺すつもりは無いが、それなりに償ってもらう。 張角達の姿は、数年間はこの大陸より見えないが、間違いなく生きているから、信用するように。
納得出来なければ、この戦いが終わって双方都合が良い時に、いつでも相手をしてやる。 ただし、私より強い将は董卓軍に沢山いるし、この話を聞きつければ、必ず相手をする事になるだろうから、覚悟するように!
一番大事な事だが、我らの主君『董仲穎』に刃を向ければ、『伏竜の軍勢』が全力を持って阻止する。特に兄者、『天城颯馬』に手をかければ、『伏竜の軍勢』が報復のため、大陸全土を敵に廻し最後まで戦い抜くから心しておけ!!
関羽はコクコクと頷き、義清から解放されると急ぎ向かう。
義清「………関羽殿を見ていると、昔の自分を見ているようで赤面ものじゃな。信玄殿と対峙し謙信殿を頼り、最後に兄者に出会いていろいろ教わった。関羽殿も北郷殿で何かしら変わればいいのだが……」
プニプニ、プニ、プニ………。
義清「はぁー、関羽殿の胸は大きかったな…。私も普通より大きいと思うが、アレ程あれば、兄者の気を引く事が出来るのに………」
宗茂「それは、私に対する嫌みですか? 義清殿?!」
義清「おぉ?! い、今の事聞いていたの…か?」
宗茂「えぇ! 関羽殿が来られたので替わって、こちらに来たのですが………何を羨ましがっていやがるのですか!! 私だって、私だって! 好きでこういう体型しているんじゃないんですよ!!」
義清「すまん、すまん。 じゃがな、兄者の周りには私より大きいおなごが沢山いるではないか。義輝様、信長殿、謙信殿、島津義久殿、小太郎殿と。そんな中で居ると私が小さく見えてな?」
宗茂「………………………(怒)」
義清「すまん! 許してくれ! この通りじゃ!!」
宗茂「…これは、鬼島津と一緒にお説教ですね。まさか共闘を願う事になるとは思いもしませんでしたが…………」
義清「……おっと、兄者の姿が見えないが、張角の所へ向かったのか? ならば私達も向かわなければ!」
宗茂「うぅー、話を逸らされましたが、そちらの方が重要です!
急いで向かいましょう!! 後、この戦が終了後にお説教確定ですから! …武田姉妹、島津姉妹(長女除く)も呼びましょう!」
義清「勘弁して欲しいのじゃ!!!」
◇◆◇
【愛紗と一刀、一時の語らいの件】
愛紗「ご主人様ーーーーーーーー!!」
一刀「あ、愛紗? 無事だっ、ウップ!」
愛紗が俺を見つけて駆け寄って来た!
愛紗「ご主人様! よくぞ、ご無事で!!」
愛紗が俺を抱きしめて、涙を流してくれる。 俺も愛紗が無事で嬉しいのだが…………………!!
俺は寝ていて上半身だけ起こし、その状態のままで愛紗に抱きしめられれば、その豊満な胸に顔を埋める状態に………!
一刀「は、はな………し…」
無我夢中だったけど、愛紗の肩に掌でポンポンと叩き、この技?を解除してもらう。 いくら男の夢とはいえ窒息死は勘弁だ!!
愛紗「すいません、負けてしまいました………」
一刀「命が二人ともあって良かった…ゲッホ! ゲッホ!」
愛紗「ご主人様!!」
一刀「し、心配ない。まだ体の中に宗茂殿の闘氣が残っているんだろう。 一度食らうと『同質の闘氣を反対に打ちこんで消すか自然消滅を待つしかない』と、爺さんと同じ事を宗茂殿が言っていたから、間違いないと思うよ…。 全く、爺さんと似た技を使うなんて、なんて出鱈目な……」
愛紗「その処置を…施してないんですか?」
一刀「処置したんだけど、俺がその武器を中途半端に切ったもんだから、不完全な闘氣の刃になって、まだ体内に残留しているんだって。そのまま置いておけば、一日中には消えるらしいけど…」
愛紗「そうでしたか………良かった!」
泣きながら花が綻ぶような笑顔を見て、命が助かりホッと息を吐くと同時に、朱里の様子が気にかかる!
一刀「愛紗! 朱里達の所に向かうぞ! 董卓軍や曹操軍も向かっているんだ! 何かあったら皆に顔向け出来ない!!」
愛紗「わかりました! ただし、ご主人様もまだ怪我人なのですから忘れないでください! あなたは大事な導き手なんですから!!」
俺は、笑顔でその言葉に応えながら、ふと思う。
一刀(董仲穎様は、何を言たかったのだろう? 愛紗と義清殿の会話は聞こえていた。 張角達の命を救いたいと同じ気持ちだったのに関わらず、俺達の共闘を強気で拒絶した。 天水に寄った時に話を聞いた時は、儚げな優しい人柄だと聞いていたんだけど。
これは……ぜひ、もう一度お会いしなければ……… )
愛紗と俺は、朱里達を追いかけて張角の部屋へ向かった!
◇◆◇
【意外な来客達の凶宴の件】
程遠志は、張角の部屋から漂う血の匂いに動けないでいた。
程遠志「なんスッか! くそ! 体が動かないスッよ!!」
戦場を何度かくぐり抜けて来た程遠志が、これくらいで怯える訳などない。どちらかと言えば、寧ろ喜んで先陣を切る戦馬鹿。
程遠志「……もし、開けたら天和ちゃん達が殺されていたら……」
その想像で動けないでいた…。 意外と肝が小さいようだ。
真桜「コラッ! そこの奴、さっさっと退かんかい!」
沙和「そこの蛆虫以下の虫ケラ共、早く蛆虫共に道を開くの!」
真桜「沙和……、他の軍の部隊まで、その口調は通用せんよ?」
程遠志一同「サー、イエッサー!!」
ザッザッザッザ、ザッザ!
真桜「通じるんかい?!」
程遠志「いえ、従わなければいけないスかなと思って…」
沙和「ノリがいい人は、大好きなの!」
真桜「沙和、止めとき! こんな男に変な事言うとくと、容易く信じるから。 おい! お前ら、コイツ見張っとき!」
曹兵「ハッ!」
朱里「ハァ~ハァ~ハァ~。 間に合いましたか~?!」
真桜「あちゃー、劉備軍の兵もきよったじゃないか……って、何、この血の匂い!!」
沙和「蛆虫共、この扉を開けるのぉーー!」
曹兵「サー、イエッサー!!」
程遠志「お、おい! まだ、心の準備が!!!」
叫ぶ程遠志を無視して、天幕の扉が開かれる!!
ドン!!!
★★★
程遠志達「……………?!?!」
張三姉妹の部屋。
天幕内とは思えない程、立派な部屋。
天井、壁があり触ると木の板で出来ている。 三人が生活しても、まだ余りそうな程の空間。どうも四角い箱の状態で天幕内に入っていると考えればいいかもしれない。
窓は、外を見る事が出来るところが一カ所のみ。ここで、外の様子を見たり、空気の入れ替えを行ったと思って間違いないだろう。
張三姉妹の力が必要な時は、ここから出して士気を挙げさせ、用が済めば中に入れる。 愛玩動物を入れるが如く……。
程遠志達の話では、他の信者達の暴動や犯罪から身を守る防御策と編み出した『部屋』だという。
だが、感が良い人なら、お気付きだろう。
これは『座敷牢』に過ぎないではないか? と…………。
そんな場所に、誰が張三姉妹を入れたのかは、今は問う状況ではない。 それどころではない緊迫感に満ちた状況なのだから………。
ーーーーーーーーー
信奉者からの贈り物が並べられる、多数の机の下に、非常に不釣り合いな…………………多数の黄巾賊の死体。
部屋の隅に張三姉妹とそれを庇う劉備軍の将『趙 子龍』と孫策軍の将『周 幼平』が荒い息を吐きながら、敵と対峙している。
そして対峙するは、元『日の本』の将であった『筒井順慶』。
両手を真っ赤に血で染め、ニッコリと笑いつつ程遠志達を見る。
順慶「あら、また邪魔者が入りましたの? それも、若いおなごの多い事。 颯馬様が気に入る前に、アナタ達を始末しなくちゃ♪ ウフフ……」
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あとがき
明けまして おめでとうございます!
また、読んでいただきありがとうございます!
1対1の戦いという物を書くのは、相変わらずよくわかりません。
これで一応勘弁を。
後、颯馬や義清が使います技の門派(日本の流派)は、多分わかると思いますので、伏せときます。
因みに漫画『拳児』には、颯馬の技は載っていません。
賛否両論(否が圧倒的に多いでしょうが)のこの物語、また、よろしければ読んで下さい。
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明けましておめでとうございます!
義輝記の続編です。また、よろしければ読んで下さい。