「さぁて、やって来ました氾水関!」
「ん?どうかしたのか、北郷?」
「…いや、なんでもないよ、刹那。」
「…??そうか?」
という訳で俺達は氾水関に到着した。
「ここ氾水関は両脇を崖に挟まれ、後ろには難攻不落とまで言われとる虎牢関。しかもそこの守将が天下の飛将軍といわれとる呂奉先とその参謀陳公台。そんでここ氾水関には…」
「…『驍騎校尉』と言われている刹那、『神速の張遼』と謳われている霞の二人の武人がいる、だろ?」
俺が霞の言葉を続けると、霞はチッチッチッと指を振った。
「それだけや無いで一刀。」
「え?他に何かあったか?」
俺がそう言うと、霞と刹那は呆れ気味にため息をついた。
「はぁ…あんな、一刀。一刀は今何者なんや?」
「何者って…あぁ、そういう意味か。」
「やっと理解したか。」
そう言って、やれやれと肩を竦める刹那。
「そ、それよりこれからどうするんだよっ!」
とりあえず話を逸らそうとする俺。
すると、霞と刹那が深刻な顔付きになった。
「まぁ基本方針は篭城戦やからなぁ…」
「これといっては無い。だが、だからといって鍛練を怠って良い訳ではないぞ、北郷?」
「わ、わかってるって、それくらい。」
信用ないなぁ…
「…ちょっとした冗談のつもりだったんだが、気を悪くしたなら謝る。」
「いや、いいよ。そのくらいで怒ったりしないから。」
俺がそう言うと、刹那は柔らかい笑みを浮かべてきた。
「ホントに優しい奴だな、北郷は。」
「女の子に優しくするのは当然だよ。それが刹那みたいに可愛い娘なら尚更ね。」
俺がそう言うと、
「―――ッ!?///」
少し驚きながら、頬を赤らめた。
「あ…///」
「ん?なに刹那?」
俺が尋ねると、刹那は可愛いらしく微笑んで、
「…ありがとう、一刀。///」
と、照れながら、呼び方を変えて言ってきた。
というか、そんなことされたら我慢できない訳で…
ガバッ!
「ひゃあ?!」
とりあえず抱きしめちゃいました♪
「か、かか一刀!?いきなり何を――「なぁ、刹那。」――…ふぇ!?」
俺は刹那の目を見て話す。
「あの時は、刹那がいきなりしてきたから…今度は俺からしても良いかな?」
そこまで言うと、刹那も理解したのか体の力を抜いた。
「一刀…」
「刹那…」
そして、俺の唇が刹那の唇に―――――
「オホン!ゴホン!」
「「ぉわっ!?」」
――――――重なる前に霞に憚れた…。
「し、霞!?貴様いつかr――「いつからもなにもあるかい!氾水関入った時からずっとおったわ、ボケェ!」――…そうだったな。」
やばっ…霞の存在、すっかり忘れてた。
確実に怒られることを予想し、覚悟していた俺と刹那だが…
「えぇよ、えぇよ…どうせウチみたいな男勝りな奴よりも、他のみんなみたいな女らしい娘の方が、一刀だってエェんやろ…」
そう言いながら、霞は隅っこの方で、彼女らしくもなくいじけていた。
何て言うか…いじらしいなぁ。
そう思い、俺は後ろからそっと霞に近づき…
ギュッ
包み込む様に背後から霞を抱きしめた。
「…なんのつもりや。///」
ぶっきらぼうに、でも、頬を少し朱く染めて、霞が聞いてきた。
「んー…なんか霞が可愛いかったから、つい…。」
「なんやねん、それ…でも、まぁ、なんちゅうか一刀らしいわ。」
「…??どういう意味だ?」
「一刀は董卓軍の種馬や、っちゅうことや。」
「…サラっと酷くないか?」
俺がそう言うと、霞は意地の悪い笑みを浮かべて、
「でも事実やろ?」
と言ってきた。
そう言った。
「うっ…。反論できない。」
「ククッ…けど、そこが一刀のエェとこでもあるんや。」
「…種馬なのが?」
俺がそう聞くと、霞は首を横に振った。
「そうやない。一刀は、老若男女問わずに、誰にでも手を差し延べとる。そこが一刀のエェとこなんや。」
そう言いながら、霞は俺の方に向き直った。
「霞…」
その時の瞳がとても真剣で…
「一刀…」
その少し怯えている表情が儚くて…
そのすべてが愛おしくて…
そうして、俺と霞の唇が徐々に近づき…
「ん゙、んー!」
「「…ッ!?///」」
…今度は刹那に憚れた。
「なぁ、一刀?それは私に見せ付けているのか?」
まったくそんなつもりはないのでその大斧を何処か見えないところにしまってください刹那さん?!
「なんや…やる気か刹那?」
どこから取り出したのか、飛龍裂空刀を構えて霞は刹那を見据えた。…って!
「ちょっ、二人とも待った!戦の前に味方武将同士が争ったら兵の士気に関わるし、なにより部隊に混乱が――「も、申し上げます!」――ッ!?」
慌てた様子で一人の兵士が俺達のもとに駆け込んできた。
「なんや!」
「何事だ!」
「ヒィッ…!?」
はい、二人とも落ち着いて。兵が怖がってるから!
「えっと…何かあったの?」
とりあえず、改めて兵に尋ねてみた。
「え?あ、はい!実は…」
駆け込んできた兵の話によると、既に連合軍があと十里程で氾水関に到着するらしい。
「そうか…」
「とうとう来るんやな…」
「あぁ…なぁ刹那。一つだけ、俺と約束してくれ。」
「…約束だと?」
「うん。なにがあっても…例え、自分の武を侮辱されても、決して野戦に持ち込まない。これを守ってほしいんだ。」
「なに?!」
俺がそう言った途端刹那は驚いていた。
「一刀!貴様は私に自分の武を侮辱されてもなお亀の様に篭っていろというのか!?」
「あぁ、そうだ。」
そんな俺の返事が不満なのか、刹那は怒りを露にした。
「ふざけるな!そんなこと、私の武人としての誇りが――「ふざけてるのはそっちじゃないか!」――なっ!?」
突然語気を荒げた俺に、刹那が一瞬怯んだ。
「確かに自分の武を侮辱されたら、刹那じゃなくても悔しいよ。それが、誇りを持ってることなら尚更だ。でも…命よりも誇りをとるのは間違ってると俺は思うんだ。」
「一刀…だが!」
パァアン!
なおも続けようとする刹那に、霞がビンタをかました。
「このド阿保!なにごちゃごちゃぬかしとんねん!アンタが惚れた男が生きろ言うてんのやから黙って頷いときゃえぇねん!」
霞の言い分に、反論しようとした刹那だったが…
「それも、そうだな…。」
と、何かふっ切れた様に落ち着いていった。
そして、刹那は俺の方に向き直り、
「一刀。お前との約束、必ず守ってみせる。」
そう言って真剣な瞳で笑った。
「報告!連合軍の氾水関到着まで、残り二里程!」
「わかった、ご苦労様。休んでて。」
「御意!」
タッタッタッ…
「さぁて、敵さんのおでましや。」
「フン!連合軍など所詮烏合の衆。我が武で打ち砕いて…と行きたいが、約束したからな。おとなしくしていよう。」
「ありがとう、刹那。でも、まったく攻撃しない訳にもいかないから、城壁に弓兵を集めて攻撃しようと思うんだけど…」
「お、えぇんとちゃう。」
「私も否はない。」
「ありがとう。あと油あるかな?あったら、火矢を放って火攻めができると思うんだけど…」
「んー…でも、火計って敵が混乱してた方が効果を発揮するんちゃう?」
「そう。だから…」
――――所変わって連合軍天幕――――
今、連合軍は軍議の真っ最中である…のだが。
「「「「「…………」」」」」
一向に軍議が進まない。
何故なら、この連合軍の総大将を誰がやるか、ということで揉めていた…いや、正確に言うと、総大将は『ほぼ』決まっている。
あとは、その者が自分がやるという明確な意思表示をすれば万事解決なのだが…
その者・・・袁紹は決して自ら立候補しようとしない。
彼女は待っているのだ。名族である自分こそ、総大将に相応しいと推薦する者が出ることを…
ならば、周りが推薦すれば良いのでは?
誰しもがそう思うだろう。現にこの場にいる諸侯のほぼ全員も思っている。
では、何故そうしないのか。それは――
――袁紹があまりに無能で、そんな奴を総大将に選んだ責任を誰もとりたくないからである。
その後軍議に劉備が登場(乱入?)し、劉備の発言により袁紹が総大将、発言者である劉備がその責任者となり、軍議は円く(?)収まった。
それと、氾水関戦の作戦だが…
『雄々しく、美しく華麗に突撃』
とのこと。
尤も、諸侯はそれを『各軍、自由にやってよい』という意味だと見たのだが…仕方ないことだろう。
それから、軍の配置だが…
―――――――――
氾水関
―――――――――
凸
(劉)
凸
(公孫)
凸 凸 凸
(曹) (袁)(孫)
凸
(袁)
という感じである。
ついでに、真ん中の『袁』が袁紹、後方のが、袁術である。
読者の皆さんは気づいておられると思うが、袁紹の配置がとても中途半端で邪魔である。
かくして、氾水関の戦いが幕を開けた。
一刀達は氾水関を守り抜けるのか―――
なにも知らない連合軍に、真実を告げられるのか―――――
これから待ち受ける出来事とは――――
―――すべては外史と天のみぞ知る――
次回を待てぃ!
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氾水関での話です。
稚文・乱文になってる及びキャラ崩壊している気がしますが、ご容赦を…