No.650388

訳あり一般人が幻想入り 第22話

VnoGさん

新年明けましておめでとうございます。今年も月か半月に一回投稿を続けてみたいです。
◆この作品は東方projectの二次創作です。嫌悪感を抱かれる方は速やかにブラウザの「戻る」などで避難してください。

2014-01-01 00:08:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:979   閲覧ユーザー数:971

「ぐぅっ! 離せくそっ!」

「余計な手間かけさせやがって、おとなしくしやがれ!」

 

 とある日本の平城に、夢の中で出ていた追われている忍者が手首を後ろに縄が巻かれ、その後ろに同じく夢の中と同じ二人の忍者に、大広間まで引きつられて歩かされる。

 

「さぁ座れ」

「フン、こんなコトしてただじゃ済まされないぞ」

 

 男は鼻で笑いながら反抗せずに素直に従い座った。

 俺は城主に命令を背くようなことはしていない。こいつらのでっち上げに言いくるめられただけだ。そう男は揺るぎない自身に満ちあふれて、背筋がピンと伸ばした凛とした正座だった。

 

「よくぞ捕らえた、此奴を捕らえるのにさぞ骨が折れたことだろう」

 

 奥の襖から、舟形烏帽子を頭に乗せ、煤竹(すすたけ)色の素襖(すおう)を着た無精髭の初老の男が現れた。この男がこの城の城主だろう。

 

「殿、何故私は捕らえられなければならないのでしょうか。私は命令を背いた覚えがありません」

「黙れ、貴様の喋る機会なぞない」

 

 座っている男が即座に初老の男に理由を尋ねるが、後ろにいる男がすぐに遮る。

 

「ふむ。そうだな、率直に言うとだ、お主を信用できんのだ」

 

 初老の男は座っている男に向かって言い放つ。その言葉に男は青ざめた。

 

「な、何故です!? 私は殿の言われたことだけやった、どんなつらいことも、命令ならば貴方の親族も(あや)めました! 私は貴方の犬と言ってもいい! それなのに何故ですか!?」

 

「おとなしくしろ貴様!」

 

 感極まって初老の男に歩み寄ろうと立った瞬間、後ろの二人の男達に取り押さえられる。

 

「ぐうっ! くそっ、何故ですか! 私の何がいけないのですか!」

「貴様の、その忠誠心だ。確かに貴様は犬のように忠誠し働いてくれた。だが、その行き過ぎが命取りだったな。信頼を得、油断したところで殺すなどと……飼い犬に噛まれる前に消えてもらう」

 初老の男は取り押さえられた男の前に立ち止まり、見下したまま言う。抑えられている男は理解できず、大声で何故だ、理解出来ないと叫び続ける。

 

「それは貴様が元居た軍の残党に、地獄で聞くんだな。牢に連れていけ」

「はっ」

 

 初老の男の命令により、押さえつけていた男を二人の男が牢へ連れて行く。その間押さえつけられた男は抵抗する。

 

「待ってください! 私にそのような企みは一切ない! 前の軍はあの時から関わりは一切ない! あの時から決別しました!」

 

 しかし初老の男は聞き入れず、すぐに大広間から出ていく。

 

「くそっ、くそっっ! ふざけるなあああああ!!」

 

 男は初老の男がいなくなった大広間で、城中に聞こえたのではと思う程、腹の底から叫ぶ。

 

 

 

 

 

第22話 The Selfish Princess for Fun~わがままお嬢様のお遊び

 

 

 

「……」

 

 横谷が目を開けると、完全遮光カーテンから漏れている多少の朝日の光線と、当たり前だが赤々しい天井が目に映る。

 起きた瞬間、こめかみ辺りになぜか頬にかゆみが訴えてくる。寝ている間に涙が流れて、流れた部分が乾燥してかゆみが出てきたのだろう。

 

(またあの夢……なんで……つか、何で涙が……)

 

 横谷は少し混乱する。まるで脳内に元々組み込まれているかのように、前の夢と同一人物が夢のなかに現れ、しかもまるで一つの話を再生しているかのように、夢の話がつながっている。そしてそれがはっきりとカラーで見えることだ。

 今までは何ら関連のない、ぼやけてセピアに近い色の夢しか見たことがなく、そのほとんどが起きた瞬間に殆ど内容を覚えていない。それが今回は全く真逆の夢を見たのだ。

 

「とにかくカーテン開けよう」

 

 横谷はまず日を浴びて脳を目覚めさせようと身体を起こす。すると、近くに小さい少女が横谷の腕の近くで寝ている姿を目で捉えた。

「え……ええぇぇぇ!? 何で、フランが……!?」

 

 フランが可愛らしい寝息をかきながら、横谷の腕を抱き枕のように抱いて寝ていた。そして横谷が動いたことで、フランもそれに気付いて目を覚ます。

 

「んん……あ、起きたんだ。オハヨー」

「あ、ああ……」

 

 にこやかな顔で挨拶するフランに、無理やり口角を上げて作り笑いを作りながら返事をする。

 

「えと、なんでフランが、ここに……?」

 

 なぜここにいるのかという疑問で頭がいっぱいにさせないように、横谷はフランに恐る恐る尋ねる。

 

「鼻水を垂らしちゃうほどひどかったから、心配してここにいたの。かなりうなされてたけど、もう大丈夫なの?」

「ん……ああ……そう、だな。大丈夫かな、多分」

 

 横谷は自分の体調を感じ取り、そう答える。汗は結構かいてはいたが、そのおかげなのか熱もほぼ取れて、身体もフワフワするくらい軽い。下半身の痛みもほぼない。

 

「よかったぁ。これでまた遊べるんだね」

「・・・・・・・」

 

 心配して看ていたのはそのためかよ、と横谷は最初の少し嬉しい感情が湧いたことに後悔する。

 

「フラン様、それはなりませんわ。またこの男が倒れてしまったら余計な仕事が増えてしまいますから」

 

 と、咲夜がお粥を運びながら部屋に入り会話に入り込む。

 

「どう? 体調は」

「……熱はまぁ、取れたが」

「そう、じゃあこのお粥食べたら片付けて、すぐに持ち場に戻って頂戴ね」

(……このメイドには労りという言葉はないのか)

 

 横谷は幻滅しながらも、お粥を受け取り無言で食べ始める。味付けは塩のみだった。おかずも梅さえもない。

 

(こんな病院食以下の献立で働けって、ブラック企業の食堂でもマシなのが出るだろ)

 心の中でそう吐露しながら、ふと出てきた疑問を咲夜に尋ねる。

 

「なぁ、俺いつまで寝てたんだ?」

「まだ一日も経っていないわ」

「えっ……そうか、ふむ」

 

 横谷は咲夜の返答を聞いて、少し驚きながらもその後何故か考えこんで黙りこんでしまう。

 

「ではフラン様。お部屋に戻りましょう」

「うんわかった。じゃーねスーちゃん」

 

 フランは手を振りながら部屋を出ていく。横谷も二度と目の前に現れんくれ、と込めながら手を振り返す。

 

「……せめてゆっくり動いて時間稼ぎ、か」

 

 横谷はお粥をちびちびと食べて、まだ体が浮くような感覚を直してから持ち場につこうと地味に時間を稼ぐ。

 それと同時に、また自分の身体の異常な治癒に疑問を感じる。

 フランに強烈な下半身への頭突き、美鈴に激烈な腰への拳打、そしてチルノに猛烈な全身への凍結。これだけのことを食らって、完治はしていないが一日も経たずに身体が動けるほど回復している。

 どう考えてもこれらを食らって、死ぬどころか一日以内で動ける者は人外と思わざるをえない。まさに今の自分がその思っている人外に適合しているわけだが。

 ここ幻想郷に来てから、嫌な目に遭うと同時に自分自身の心身がおかしくなっていることに横谷は戸惑う。八雲家屋敷での一時的な驚異の足の速さに、そこから始まった驚異的回復力。紅魔館でも図書館での一件、そして今回二度目の異常な回復。もちろん外の世界でこんな事が起きたことは一切ない。

 咲夜が言っていたような、自分がなにか能力を持っているとも考えるが、確証するものがない。驚異的な回復力を持ったのか、肉体を強化するものなのか。

 むしろ不運を呼び寄せる能力のほうが当たっているかも知れない。

 

「死なないのは、いいのかもだが……常に嫌な事がセットってのは勘弁してくれよ。このお粥だけにセットを付けてくれよ」

 

 横谷は溜息をつきながら、食べ終えたお粥を流し台に持っていく。

 

 

 その後は、お粥が入っていた食器を洗い終えてから門番の仕事につく。まだふらついている足元を見た美鈴が心配して休んだほうがいいのでは、と声をかけたが、

 

「その気持ちは受け取るけど、休んだらまたひどい事が起きそうだ」

 

 と言い、仕事を離れることはなかった。その後も何事も無く門番の仕事を果たし、今日の仕事と昨日の寝汗とともにシャワーで洗い流し夕食を食って一日を終える。

 

 その、はずだった。

 

「あん? なんだこの手紙」

 

 やや不機嫌な気分で部屋に入ってきた横谷は、ベッドの上にあった手紙に目がつき手紙をとる。

 

「えーっと、『中庭に一人で来なさい』……なんだこれ、一体何が始まるんですか?」

 

 横谷はなにかやらかしてしまったか、と首をかしげ不安に駆られるが、手紙の内容に従い中庭に向かう。

 

 半月が映え、まるで嵐の前の静けさのように珍しく冷たい秋風は吹いていない深淵な夜の下、非常に広い中庭の中央に紅い紅魔館をバックにして、レミリアが椅子に座りながら、丸いテーブルの上の紅茶を嗜んでいる。

 非常に落ち着いている様子だが、今のレミリアの心の中では今か今かと待ちわびて、はやる気持ちを抑えている。今まさに、レミリアが計画した「お遊び」が始まろうとしている。

 

「なんでしょうか、お嬢様。私に何が御用で?」

 

 そこに横谷がレミリアの後ろに付いて現れ、鼻につくような丁寧語で問いかける。

 

「別に用なんかないけど、ここの仕事に慣れたかしら?」

 

 レミリアは振り向きもせず話す。横谷はこちらを見てないことをいいことに顔をしかめ面にして、声なき暴言を吐いたあと質問に答える。

 

「まぁ、コロコロと場所は変わりましたが、今は門番の仕事に落ち着いています。毎日充実して働いております」

 

 横谷は事務的な感じに受け答える。まだ紅魔館に来てから二日間にして充実などと言えたものではないと思うが、実際のところ外の世界では絶対味わえない濃い経験が培われるので、そういう意味では嘘をついてはいない。

 

「あらそう、それは良かったわ」

「あの、少し尋ねたいことがあるのですが」

「何かしら?」

「ここの食事のことなんですが……」

 

 横谷は料理のことについて問いただす。働く際の一番の期待と言ってもいい食事に、今回疑念を持ったのでどうしても聞きたかったのだ。

 

「ここの料理の食材は、ほぼ人里から買ったですよね?」

「ええ、ほとんどがそうね」

「この世界に、肉はちゃんとしたのを揃えていますか?」

「何が言いたいのかしら?」

「……今日の夕食に使われた肉が、あまり美味しくなかったので。味付けは塩味が効いていて悪くはなかったんですが」

「ふぅん、それで?」

「悪い肉の処理係までしたくないので、料理だけはまともなものを作って欲しい、と咲夜に言ってもらいたいのですが」

 

 横谷は今日の夕食の事を思い出しながら、顔が徐々に険しくなっていく。昨日まで体調が悪かった人間に品質の落ちた肉を食わせるとは何事か。この事をレミリアに言ったほうが改善されるだろうと思い、憤慨した気分を抑え直談判する。

 ほぼ無休でやらされると思うのだから、せめて楽しみの食事はまともにして欲しい、という願いだ。

 

「あらあら、今日はまともなものを揃えられなかったのかしら。いつもなら新鮮なものがあるはずなのに……で、その料理はどうしたの?」

「……さすがに残すのは気が引けたんで、一応全部食べましたが……」

 

 横谷が答え終わったあと、レミリアの身体が小刻みに震えだした。時折くっくっ、と堪えている笑い声が漏れてくる。

 その様子に横谷は顔を赤らめる。確かに文句を言いながら、そのくせその原因となった料理は残さず食べるというのはおかしな話とも思える。

 なぜ残さず食べたのか。ここにも祖母のタヱが原因である。

 食べられる者たちの命、生産者、料理を作ってくれた人に感謝を込めて食べなければいけない。たとえ味が不味くとも、文句を言うのは全て食べ終わって「ご馳走様」を言わなければ、食べる側の立場の者に文句を言う資格はない。

 幼い頃にそう言い聞かせられ、まともに料理をしたことのない祖母の、多少不味い料理を食わされても我慢して食べた。その後こちらが文句を言うと逆切れされたが、とにかく出されたものは全て食べた。子供心で反抗するよりも残すことへの罪悪感に負けてしまうからだ。

 祖母が嫌いでも、やらされたことを無意識に行っている。小さい頃からやらされたことは簡単には忘れようとも、反抗することもできないものだ。

 

「ふふっ、あははっ、あっはっはっはっは!」

 

 遂に堪えきれなくなったのか、レミリアは大声で笑い出す。横谷の顔がさらに赤くなる。

 

「た、たとえ不味くとも全く食えなかったわけではなかったし、残して咲夜がナイフ持ってこられたら困ると思って残さなかったんだ! そ、それ以上笑うな!」

「あっはは、ごめんなさい。あまりにも言ったこととは違ったから」

 

 レミリアの笑いが徐々に治まり、一息ついたところで更に言葉を付け加える。

 

「それに、人間の肉を全て食べちゃう人間は初めてだったから」

 

 

「!? いま……今、なんて……!?」

 

 横谷はその言葉に驚愕した。冗談で言ったのか、それとも本気なのか。どちらに関しても聞きたくない言葉をレミリアが平然と喋った。

 

「今日の『お遊び』に付き合ってもらうのに体調が悪いままじゃつまらないから、咲夜に頼んで精がつくように、わざわざ人間の肉を使った料理をあなたに食べさせたのよ」

「な、なにを……」

 

 横谷はレミリアの言葉を聞くたびに吐き気が催しそうだった。自分が共食いを――知らなかったとはいえ、食していたという逃れられない現実に横谷の心に重くのしかかってくる。そこにレミリアは容赦なく横谷に問いかける。

 

「どう、初めて人肉食べた気分は? 身体中みなぎってきたかしら」

「……うっ……うおえっ!」 

 

 膝が地面に落ちる。横谷の心の負荷に耐え切れずえずき、涙を絶え間なく流している。

 

「あら、やっぱり刺激が強すぎたかしら」

 

 レミリアは未だに横谷を見ずに喋り続ける。

 

「言動と同じくらい、見た目とは違う性格を持っているのね」

「ハァ、ハァ……おい……なんだってそんなもん食わせやがったァ!」

 

 こみ上げてくる吐き気を抑えて顔を上げ、レミリアに向かって声を荒げる。

 

「言ったでしょ? 『お遊び』に付き合ってもらうためよ。そのためには万全な体調で挑んでもらわないと」

「なんなんだよ、その『お遊び』って。何なんだよそれは!?」

「つまり、こういうことよ」 

「なっ!?」

 

 刹那、レミリアの羽が大きく広がり、座っていた椅子とテーブルが横谷に向かって飛んでくる。

横谷は素早く横に転がり飛んでくる椅子とテーブルを避けた。

 

「てんめぇ……! なにしやがる!」

「ふふふ、いいわねその動き。あそこで当たっていたら幻滅ものだったわ」

「あぁ?」

 

 レミリアは不敵な笑みをこぼしながら横谷の方を見ている。この行動の真意を横谷はまだつかめていない。

 

「どういうことだ。何言ってやがる。幻滅って、なんのことだよ!」

「それはあなた自信の身体に聞くことね」

「!?」

 

 後ろから声が聞こえて横谷は振り返ると、そこには咲夜が佇んでいた。

 

「お嬢様はあなたの中の『力』に興味がおありなのよ」

「はぁ? お前何言ってやがるんだ、何の力だよ? 俺に何の力が宿ってるんだよ、ええ?」

「そんなの私に聞いても知らないわよ。あなたのその『力』とやらがどんなものか調べるために、わざわざお嬢様が設けて下さった『お遊び』なのよ」

「・・・・・・」

 

 全員が無言になり、月夜の静寂さが一層増す。横谷は未だにその言葉の意味がわからず言葉が出なかった。

 

「つまり、あなたは今からその『力』を使ってお嬢様と遊んでもらうのよ」

 

 静寂を破り、咲夜がさらに噛み砕いた説明をする。

 

「なんだってんだよ……なにが俺の中の『力』だ。言っとくがな、俺はそんな『力』を使った覚えも、ましてや持った覚えもねぇよ!」

 

 横谷は大声で怒鳴り散らす。

 

「それ以前に咲夜、あの飯を作ったのはお前だよな」

「ええ、そうよ」

「お前は、人間の肉を見ても、なんとも思わなかったのか……?」

「ふむ……そうね、味付けは何がいいか迷ったわね」

「テメェッ!」

「なにを怒っているの? 味付けがお好みじゃなかったかしら?」

 

 咲夜は調理している時に思った事を素直に返答しただけで、横谷が目を血走らせて怒っている様子に首を傾げる。

 そんな咲夜の様子に、横谷は更に憎悪の念が増していった。

この女は人肉を調理して、抵抗も嫌悪の気分すらもなかったのか。その料理を材料と同じ人間の者に出しても気が引けることもなかったのか。そして今、自分が怒っている様子を見て首を傾げて、まるで自覚していない顔だ。

 こいつはもう人間じゃない、ヒトの皮を被った悪魔だ。門番や魔法使いの付き人よりも恐ろしい悪魔だ。

 横谷は人肉を食わされたことより、躊躇なく非人道的な行いをする咲夜の冷酷さに、怒りを抑えることが出来なかった。

 

「さぁ、そろそろお喋りはいいかしら?」

 

 レミリアがうずうずとうずく身体を抑えながら話を遮り、「お遊び」の再開を急かしている。しかしそんな思いとは裏腹に、横谷はレミリアを一瞥した後、真っ直ぐドアの方に歩いて行く。

 

「ざけんな! 『力』だなんだか知らんが、そんなのに付き合えるか! 部屋に戻らせて――」

 

 刹那、何かが素早く通り過ぎた音、そしてナイフが外壁に突き刺さった光景を目の当たりした。次の瞬間、頬から皮膚が浅く裂けて血が垂れるのに気づいた。

 

「悪いけどこれは強制参加なの。逃げようたって無駄よ」

 

 咲夜がナイフを手に持ちながら忠告する。先ほど頬に通り過ぎた物は、咲夜が放ったナイフだ。

 

「……クソッタレがァ……!」

 

 傷口から垂れた血を拭い、横谷の顔が大きく歪み悪態をつく。

 

「ふふふ、いいわぁその眼。さぁ見せて頂戴、あなたの持っている『力』を!」

 

 真紅の目が大きく見開き、レミリアは羽を大きく広げ上空に飛び立つ。

 

「あははは! この紅魔館城主、レミリア・スカーレットが直々にあなたの力を見定めてあげる!」

 

 月に照らされたレミリアの高らかな笑いは、深淵の月夜に響き、それが『お遊び』の開始の合図となった。


 
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