No.648356

真・恋姫†無双 裏√ 第三十七話 咲夜編其三

桐生キラさん

こんにちは
咲夜編の三つ目です
力に魅せられた少女のお話

2013-12-25 20:52:49 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1861   閲覧ユーザー数:1582

 

 

 

 

 

咲夜編其三

 

 

 

 

 

 

この二年間の旅は、私に様々な出会いをもたらした。

天水の月達や、呉の蓮華達、その他にも紹介し切れないほどの英傑達と出会った。

そこで様々な事を学び、力を付け、いつしか人を護れる立場に立つことが出来た。

しかし、私の中で賊に対する憎しみが消えることはなかった

 

 

そんなある日…

 

 

 

咲夜「!!零士!少し行った先の村が賊に襲われている!」

 

零士「よく見えたね…っておい!咲夜!チッ!」

 

私は既に走り始めていた。

助けなければ…あんな思いをするのはダメだ。賊は絶対に殺す

 

零士「咲夜!乗れ!」

 

零士はバイクに乗り、追いかけてきた。

魔術か。本当に便利な技だ。だがありがたい

 

私が零士の後ろに飛び乗ると、零士は全速力でバイクを走らせた。

そして村に近づき、状況を確認した

 

よかった。まだ被害は少なそうだ。村人達がよく耐えてくれている…

 

零士「行くぞ咲夜。あまり無茶するなよ」

 

咲夜「わかってる!」

 

私は賊の群れに突っ込み、村人達を助ける

 

賊1「なんだきさグァッ!」

 

村人A「あ、あなたは…」

 

咲夜「大丈夫か!助けに来たぞ!」

 

賊2「この数相手に、たった一人か?笑わせるぜ!」

 

賊3「は!ひん剥いてヤッちまおうぜ!」

 

咲夜「下衆が…」

 

私は村人達を守りつつ、賊を次々と切り刻んでいった。

数はいたが、一人一人は大した事はないし、既に零士が過半数を潰していた

 

零士「ふむ、これで終わりか?」

 

賊4「ヒィッ!ば、バケモノー!!」

 

賊の一人が逃げ出すと、残りも次々と逃げ出していった。

チッ!逃がすか!

 

零士「待て咲夜」

 

咲夜「あぁ?なんで止めるんだ?」

 

私は零士に止められてしまった。

クソッ!逃げられた。逃げ足の速い…

 

咲夜「おい、賊を放っておけば、後々面倒になるぞ」

 

零士「あぁ。だが、その前に怪我人の手当てが先だろ?手伝うんだ」

 

私は村を見渡す。村人の多くが傷を負っていたが、死人はいないようだ。上々の結果だな

 

 

 

 

私は零士が魔術で出した包帯を配っていく。

零士曰く、薬も出せない事はないらしいが、成分が細かいので疲れやすいらしい。

だが今回は、そんな疲れる思いはしなくて済みそうだった

 

「な!おい君!大丈夫か!?」

 

赤毛の、零士と同じくらいの年齢の男がやってきた

 

村人B「いてぇよぉ…血が、止まんねぁ…」

 

赤髪「待ってろ!今助けてやる。ハァァァッ!見えた!元気になぁぁれぇぇぇ!!」

 

男は突然叫び声をあげ、鍼を村人Bに刺した。あいつは、一体何をしているんだ?

 

すると突然、まばゆい光が辺りを照らした

 

赤髪「治療、完了!」

 

村人B「え?す、すげぇ!痛みがない!血も止まった!」

 

村人Bは、先ほどまで苦しんでいたのが嘘だったかのように飛び跳ねた。

あいつは一体何者だ?

 

華佗「俺は華佗!五斗米道の医者だ!重傷者から見ていくから並んで待っててくれ!」

 

それから、華佗と名乗った男は次々に村人を治していった

 

村長「御三方!この度は助けていただき、誠に感謝します。

私はこの村の村長、村を代表して、お礼をさせてください!」

 

華佗「礼はいい。当然の事をしたまでだ!」

 

零士「彼の言うとおりです。それに、たまたま運が良かっただけです。

そんなに気にしないで下さい」

 

村長「しかし…」

 

咲夜「いいんだよ。それより、華佗って言ったか?お前、何者だ?」

 

華佗「俺か?俺は五斗米道という宗派で、医術を学んでいる者だ。

現在は修行中で、大陸を渡り歩いている。

いつかこの大陸に巣食う病魔を全て取り除くのが、俺の目標だ!」

 

な、なんていうか、熱い男だな…

 

咲夜「そ、そうか。私は司馬懿。私も大陸を旅している。そしてこいつが…」

 

零士「東零士。同じく大陸を渡り歩いているものだ。よろしくな」

 

軽い自己紹介を済ませ、零士と華佗は村長と何やら話し始めた。

私は大して興味もなかったので、外で待っている事にした

 

村人達は怪我を負いつつも、皆が協力して村の復興に当たっていた。

私は、ここの人達を守れた。その事実に確かな充足感を感じていた。

それと同時に、もし、あの日私の村の人間も皆無事だったら…などとも考えてしまった。

過去を悔いても、仕方ないのにな…

 

村人C「はぁ…はぁ…」

 

私がもの思いにふけっていると、一人の女性が何やら慌てて何かを探しているようだった

 

咲夜「どうかしたのか?」

 

私は特にやる事もなかったので話しかけてみた。

すると女性は涙を溜めて私にしがみついてきた

 

村人C「はぁはぁ…い、いないんです!私の、子どもが…他の方の子も…」

 

咲夜「なに!?」

 

まさか、賊に連れて行かれたのか?

 

咲夜「おい!本当にいないのか?」

 

村人C「はい…みんなで探しているんですが…どこにも…」

 

チッ!最悪だな

 

咲夜「待ってろ!私が探してやる!」

 

逃げ込んだ場所はだいたいわかる。あの程度なら、私一人でも…

 

 

 

 

咲夜「この辺りに……見つけた。あれか」

 

私は、賊が逃げ込んだ森の中に入っていった。

零士に学んだサバイバル術のおかげで、賊の足跡を辿る事も成功した。

そしてしばらく進むと、洞窟を発見する。間違いない。あそこだ

 

咲夜「さて…人質の確保が先か、それとも…」

 

殲滅が先か。内部の構造を把握していない分、慎重に動かなければならない。

見つかるのはマズイ。人質の命に関わってくるからな

 

咲夜「となると、まずは人質を見つけるか」

 

私は地形を記憶しつつ、洞窟内を探索し始める。

なかなか入り組んではいたが、迷うほどじゃないな…おっと!

 

賊5「ふぁぁ…ねみぃ。ったく!巡回なんて必要かね」

 

賊の一人がダラダラとこちらに向かっている。好都合だ。奴に聞くか

 

賊5「布団にくるまりムグッ!」

 

私は賊の口を塞ぎ、喉にナイフを当て、物陰に引き込んだ。

チッ、暴れやがる

 

咲夜「大人しくしろ。刃が食い込むぞ」

 

私は強めにナイフを押し当てた。賊の喉からツーッと血が流れる

 

賊5「……」

 

すると賊は大人しくなった

 

咲夜「利口だな。さっそくだが、お前達が連れて行った子ども達はどこだ。

必要の無い事以外は言うな。言ったら殺す」

 

私はナイフを押し当てたまま、賊の口を解放した。

賊は数度咳き込み、そして弱々しく答えた

 

賊5「この先を、少し行って、左に、牢がある…」

 

私は再び賊の口を塞いだ

 

咲夜「本当だな?」

 

賊は頷く。場所は割れた。救出前に退路の確保をしなければな

 

咲夜「おっと。御苦労だったな。もう逝っていいぞ」

 

賊5「こかぁっ……」

 

私は賊の喉を切り裂いた。賊は少しのたうちまわり、やがて倒れ、血だまりを作った

 

咲夜「きったね」

 

さぁ、この辺一帯の消毒が終わったら、牢を覗いてみるか

 

 

 

 

私は牢屋に訪れる前に、この洞窟内の地形を全て記憶した。

宝物庫、食料庫、寝室、そして大広間。出口は二つあったな。

その後は賊が教えてくれた場所に進み、牢屋を視認する。

ここからなら、二つ目の出口が近いな。救出後はそこに行こう

 

咲夜「警備は…二人か。しかも寝ている。やる気あるのか?」

 

私はナイフを握りしめる。静かに…静かに…さぁ、永眠のじか…

 

「あ、あなたは?」

 

私が寝ている賊の一人を殺そうとすると、牢に入っている一人の女と目が合ってしまった

 

な!この桃色!喋んなよ!

 

 

ザシュ

 

 

賊6「おっあっぐっ!」

 

私が一人を殺す頃、人質の一人が喋り出した。

そしてその声で、もう一人が起きてしまった

 

賊7「な、なんだ貴様!」

 

咲夜「チッ!死ね」

 

私はナイフで賊を切り刻んでいく。ちくしょう、ヒヤヒヤしたな

 

咲夜「はぁ…おい。助けにきたぞ」

 

人質は、この桃色を含めて5人か

 

桃色「!あ、ありがとうございます!みんな!助かるよ!」

 

子ども1「ほ、ほんと?」

 

子ども2「おうち、帰れる?」

 

桃色「うん!みんなで帰ろう!」

 

チッ!このバカ女、声がでけぇ

 

咲夜「おい、もう少し静かにしろ。見つかりたいのか?」

 

桃色「あぅ。ごめんなさい…」

 

咲夜「はぁ…これで全員か?」

 

桃色「はい。あの、本当に助かりました!」

 

この桃色、年は私と同じくらいか。その割りには、ずいぶん発育がいいな。

私もそこそこあると、思っていたんだがな

 

 

ガチャン

 

 

私は警備から鍵を奪い、牢屋を開けて行く。さて、ここからが本番だな。

この頭のユルそうなバカ女が騒ぐ前に脱出できれば上々だ

 

桃色「みんな、シーっだよ!」

 

お前が一番黙れ

 

桃色「あの、ところであなたは?」

 

もうすぐ出口、というところで、桃色が話しかけてきた。ここまでは順調だな

 

咲夜「あぁ?お前らの村を襲った賊を追い払ったしがない旅人だよ」

 

私は警戒しつつ、話に付き合ってやることにした

 

桃色「ほぇー、凄いんですね。羨ましいなぁ」

 

バカ女は能天気に答えた。いちいち腹立つな

 

咲夜「なにがだ?」

 

桃色「私も、みんなを守りたいんですけど、闘うとか苦手で。

いつも、みんなの邪魔ばっかりしちゃうんですよね」

 

見ればわかる。じゃなきゃこんな所にいないだろう

 

咲夜「だろうな」

 

桃色「あぅ、そんな正直に答えられると、さすがに傷つきます…」

 

咲夜「知るかよ。…お前、そうやって誰かを助けたいって思って、実際何かしたか?」

 

桃色「どういう事ですか?」

 

咲夜「例えば、私は二年前に賊に家族を奪われた。その時に、自分の無力さを呪ったよ。

以来、私は鍛錬を怠っていない。その結果、今はこうして、お前達を守れる立場にいる。

お前はどうだ?」

 

私は、何を話しているんだろうな。なんでこんな話、こんなバカ女に…

 

桃色「私は、その、痛いのとかはちょっと…」

 

咲夜「それで、なんの努力もしてこなかったのか?苦手だと、切り捨てて」

 

桃色「…」

 

甘ったれるなよ

 

咲夜「いいかバカ女。力が無きゃ、なにも救えない。

だから力を付けろ。本気で誰かを助けたいならな」

 

桃色「力だけじゃ…平和になりません…」

 

咲夜「あぁ?」

 

桃色「私は、あなたとは違います。私はもっと、別の方法で、みんなを助けたい!」

 

咲夜「綺麗事だな。結局は力に頼るぞ」

 

桃色「そんな事ありません!」

 

咲夜「なら、今のこの状況、武力以外で切り抜けられるのか?」

 

桃色「それは…」

 

咲夜「もっと現実を見ろ。今のままじゃ、ただの夢想家だ。

理想だけじゃ人は救えない。守るための力を、身につけるんだ」

 

桃色「守るための、力…」

 

咲夜「あぁ。よし、出口が見えた。帰れるぞ」

 

桃色「あの、私にも、誰かを守れるかな?」

 

咲夜「さぁな。お前の頑張り次第じゃないか?バカ女」

 

桃色「もう!さっきからバカバカ言わないでくださいよ!私には劉…」

 

咲夜「待て!来やがったぜ」

 

出口に出たところで、洞窟内からは複数の賊が押し寄せてきた

 

咲夜「さっさと行け!」

 

出口の外には橋か…使えるな

 

桃色「あなたは!」

 

咲夜「いいから行け!時間を稼いでやる!」

 

桃色「でも!」

 

咲夜「バカ女!守りたいんだろ?最初の仕事だ。

その子ども達を無事に村まで連れて行け。わかったな!」

 

桃色「!!…わかりました。死なないでください。助けを呼んできますから!」

 

あのバカ女は、子ども達を連れて橋を渡り切ったな。さてと…

 

 

ザシュ ガシャーン

 

 

私は橋を切り落とした。

これで、賊共は追えないはずだ。まぁ、私も帰れなくなったがな

 

咲夜「ハッ!関係ないか。さぁ賊共、お前らに明日はないぞ!」

 

そして私は、賊の群れに突っ込んで行った

 

 

 

 

ピンク髪の女の子視点

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…もうすぐだよ!みんな頑張ろ!」

 

私は洞窟を抜けた後、一目散に村を目指した。

私たちが橋を渡ってしばらくすると、何かが崩れる音が聞こえたけど、あの人は大丈夫かな?

……あ!

 

「名前、聞いてなかったな。あれ?私も名前言ったっきゃうっ!」

 

痛!つ、つまずいちゃった…

 

子ども3「劉備おねえちゃん大丈夫?」

 

劉備「え、えへへー、大丈夫だよー!」

 

うぅ。恥ずかしいなぁ…あ、村が見えてきた!

 

子ども4「うわぁーん!かあさまー!」

 

母親「あぁ、よかった…本当によかった…劉備ちゃん、本当にありがとうね」

 

劉備「い、いえいえ!私はなにも…あ!村長ー!」

 

村長「おぉ劉備!無事じゃったか!」

 

劉備「村長!今すぐみんなで洞窟に!私を助けてくれた人がまだ!」

 

村長「心配せずともよい。先ほどとんでもなく強い御仁が向かった。会わんだか?」

 

劉備「い、いえ。でも、それならよかったぁ…」

 

私はここで緊張の糸が切れ、脱力し、気を失ってしまった

 

 

 

守るための力、かぁ…

 

私でも、誰かを助けられるのかな…

 

んーん、助けるんだ

 

私一人じゃダメかもしれないけど

 

いろんな人と協力して

 

いつか、みんなが笑って暮らせる世界を………

 

 

 


 
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