【 新たなる戦いの件 】
〖 天水城の大広間 〗
体調が完全に元通りになった黄巾賊の親衛隊達。
情報を教えてくれと頼む前に、親衛隊から頭を下げられ、情報提示するので、張角達を救ってくれと頼まれる。
俺一人では、どうしようもないため、月様に護衛を付けながら、全武将が集まり話を聞いているところだ。
天水郊外で捕虜とした者は、黄巾賊の親衛隊らしく、自分達の行動が、盗賊等に利用されているのを止めさせるために、動いていたと語る親衛隊隊長『 程遠志 』25歳、独身、地和ちゃん命。
こんな紹介、普通はしないぞ! それに、何故、家久殿や信玄殿、信廉殿達をチラ見している!
程遠志「親衛隊隊長と言っても、地位も高くないスっし、こんな美人さん達に囲まれば、自己紹介もしたくなりまスよ!!」
俺と同じくらいの背丈だが、体格は筋肉質のガッチリ、顔が些か愛嬌がある若者は、照れながら頭を掻いた。
そんな彼らの目的も、今回は盗賊共の集まりが早く制止できず、後を付けるしかなかったらしい。
颯馬「……話を纏めると、張角達は反乱を引き起こしたじゃなくて、歌と踊りを楽しんでいたら、人気が高まり祭り上げられた…と、言うことなんだな?」
程遠志「そうっス! 信じて欲しいっス!」
颯馬「どう思う、詠?」
詠「ボクの密偵でも、場所が豫州潁川郡に数万規模の軍勢が集まっているぐらいしか分からないわ。中に入るたびに警備が厳重で情報が掴めないと言う話だったけど…。 情報が足りないから、何も言えないわ」
歳久「…………確か、宗教儀式じゃなかったのですか?」
家久「駄目だよ、歳姉! 元の情報鵜呑みにしちゃうと、大変な間違い起こしちゃうよ! この人達の言う事は多分真実だよ。 だって、人は嘘を吐くと鼻が赤くなるんだって言うしね!」
そんな話聞いた事ないな…と思いながら、親衛隊隊長の
『程遠志』 に顔を向ける。
程遠志「へぇー、そうなんスか? 初めて知りましたよ!」
………普通に感心している。
家久「……軍師さん、大丈夫だよ。この人、私の誘導に反応しなかったもん! もし、嘘吐いてたら、お鼻隠すはずだから」
颯馬「そうだね。間違いないと思うよ」
程遠志「?????」
家久殿の策、恐るべきだな。話の流れにのせて嘘か真実かの確認を瞬時に行うとは…。
俺も気をつけないと………。
それに、俺の世界だって『出雲阿国』が同じような事していたから、充分可能性はある。
…流石にこんな騒動にはならなかったかったが、もし、実際になっていたら、天下統一も、もっと時間がかかったかも知れない。
程遠志「どうか、お願いっス! 『 伏竜の軍勢 』の噂は聞いていたけど、まさかこれほどとは思わなかったスよ! なんとか張角三姉妹を救って欲しいっス! 」
……………………………………………………。
人を助けるのは、義輝が決めた『上善水如』の信条。出来れば行きたいが、俺達は、月様の配下の者。 月様の許しが無ければ……。
月「天城様、私からもお願いします! 張角さん達の救援、お願いできませんか? 」
え? 本当にいいんですか? 願っていた本人が聞くのも変だが。
月「実は、洛陽より使いの者が訪ねて来られ、黄巾賊の殲滅の命を受けたのです。 私と華雄将軍、後どなたか来ていただきたかったものですから……………」
俺の顔を少し熱い眼差しで見詰める。 いや、そんな風に感じるのは俺が自信過剰なんだろう。 冷静にならねば!
それと、同時に思い浮かぶ事があり、月様に尋ねる。
颯馬「我らの軍勢が準備出来るのは、約一万人。対する黄巾賊の軍勢は数万規模。 これは、他に援軍が来ると見て宜しいのですか?」
月様は、俺の質問にコクリと軽く頷き、説明を詠に任せる。
詠「使者からの口上だと、渤海太守『袁 本初』、南陽太守『袁 公路』、騎都尉『曹 孟徳』が主に参軍するみたい。 袁家は、三公を輩出した名門。曹孟徳は、近頃名声を広げる将だわね………」
俺は、その名を聞いた後、一人の姫武将に近寄る。
颯馬「信廉殿、俺と共に来ていただきますか?」
信廉「は? ……姉上ではなく、私、ですか?」
颯馬「はい! 俺は信廉殿と行きたいのです!」
信廉「はい!!! 是非、ご一緒させて下さい!!!!」
よし、これで策の準備が一つ………って、何故、皆、こっちを見るのかな? 信廉殿は、目を真っ赤にして落涙しているし………?!
お、俺、何か悪い事、言った?!?!
信廉「とんでもないです! クスン、わ、私は、嬉しいのです!! 」
信廉殿は、泣きながら話す……。
『 まだ戦乱の頃の武田家では、私は「信廉」ではなく、「信玄の影武者」だったのですから。 あの時は、姉上が必要とされ、私は万が一の控えでしかなかった………。 それが、姉上「武田信玄」ではなく、私「武田信廉」を選んでくれたのですから! 』
颯馬「俺は、お二人の優劣なんて御駒がしい事できません。ただ、今回は、間違いなく「信廉」殿に来て欲しかったのです。 他の誰かではなく…。 信廉殿、どうか、お力を貸していただけませんか? 」
信廉「此方こそ、よろしくお願いします! 颯馬!!」
信廉殿は、思いっきり穏やかな笑顔で、俺に返事を返した。
義清「あ、兄者! 今度の戦には、我らが守護させてもらう!」
宗茂「そうです! 兄様の身辺は、私達が!!」
そういえば、二人して守ってくれると、言ってくれたな…。
俺は、二人の頭を撫で回し、宜しく頼みと願うと、大いに喜ぶ!
宗茂「必ず、必ず、お守りします!」
義清「我が槍に掛けても!」
道雪「ならば、兵を率いる将が必要ですね。 その任、この立花道雪にお任せ願いたく………。 勿論、高橋紹運もです」
紹運「わ、私もお願いしたい! 必ず颯馬の役に立つから…」
静かに頭を垂れる道雪殿と顔を真っ赤にしてお辞儀をする紹運殿。
颯馬「お二人がいるなら心強い! ぜひ、お願いします!」
まさか、二人が付いて来てくれるとは思わなかったので、失礼ながらお二人の手を、交互に挟み込み感謝の意を捧げる!
紹運殿の顔が赤いのは何度か見かけたが、道雪殿まで赤くなるとは思わなかった。 うんうん、役得、役得。
これで大丈夫いいかなと思い、横を見たら………涙目の信玄殿がそこに居た。
信玄「 先月の戦では、景虎達を重用して名を挙げ、その後の戦いには、黄巾賊の討伐で義輝公や昌景達が名を挙げる。……………今度の戦いにも、私は不要と言うのですか?」
俺は、とんでもないと言って、逆に質問する。
颯馬「華陀に診察を受けられ、体調はどうですか? 信玄殿は華陀の診療のため、まだ戦に参加させてはいけないと思っていたからです。もし、問題なければ、是非参加をお願いします!」
信玄「……コホン、私の体調は大丈夫です! 二日前に華陀殿の診察を受け、完治を確認しています! ですから、颯馬! 私も、私も!」
必死に付いて来たいと頼む信玄殿を見て、根負けする俺。
だけど、万が一の場合があるから、護衛を頼むか…………。
颯馬「小太郎! 信玄殿の護衛を頼めるか?」
小太郎「……………。…………………は、はい! わかりました!」
颯馬「??」
……………こんな具合で、兵一万人と各将達と共に出陣した。
そして、留守の詠や将達にある事を頼む。
『策の準備をしたいのだが、その材料(壱、弐)がこの世界にあるか確認をしてもらいたい。 出来れば販売通路も確保しておいて欲しい。 また、参から六は、早めに欲しいので、準備を頼みたい』
壱、『 燃える水(謙信殿の地では臭水という)』
弐、『 年に三度、栗の実が取れる場所 』
参、『 竹簡 百個 』
四、『 蓋付きの陶器 五十個 』
五、『 藁束 五千束 』
六、『 竹 三百本 (長さ八尺)』
詠達は首を傾げつつも了解してくれた。 もし、この予想が違えば、只の笑い話になるだけだ。
だが、予想通りだと今のうちにしなければ、間に合わない!
『汜水関、虎牢関の戦い』に……………!
◆◇◆
【 覇王の件 】
〖豫州潁川郡、大将軍何進 大天幕にて〗
ウロウロ ウロウロ ウロウロ………………。
何進「………遅い、遅いぞ! 使者は送ったのだろうな?!」
武官「ハッ、確かに各太守、有力な官軍に集結するよう伝えてあります! ですが、急な閣下からのご命令ですので、軍備等の準備で刻がかかるのでしょう! 何せ、大将軍閣下の御前ですので、どの軍も入念に準備をしているのでしょうから!」
何進「そうか? そうだよな! 大将軍様だからな! 俺!」
武官「その通りです。閣下! あなた様は泰然とお待ちしていただければ宜しいのです。 威厳を込めて…………!」
何進「………おっと、昔の口調が出てしまったか。…すまんな」
武官「………いえ」
バサッ!
兵「大将軍閣下は、こちらの天幕にて休憩しておいでです」
??「…案内ご苦労。 さて、大将軍閣下は、天幕にいらっしゃるかしら?」
??「華琳様! 天幕に入って見ればわかります!」
??「…姉者、それではただの礼儀知らずだ…」
ザッザッザッ! ピタ!
何進「オッホン! 私が大将軍何進である!」
ザッザッザッザッザッ スッ!
華琳「失礼しました! 騎都尉の『曹孟徳』、お召しにより参上つかまりました。 こちらは、我が配下、『夏候元讓』、『夏候妙才』と申します。 以後、宜しくお願いいたします」
春蘭『……………』ペコ
秋蘭『……………』ペコ
何進「ウム、よくぞ参られた! 皇帝陛下も此度の反乱には、大いに御心を痛めておいでだ…。 この何進の元で軍功を励み、陛下の御心を安らかにしようではないか!」
華琳「は! では、我らはこれにて」
何進「うむ。また軍議を開くときは、使者を遣わす! それまで己の天幕で休んでおれ!!」
華琳「はっ! では、失礼致します!!」
ザッザッザッザッザッ バサッ!
ーーーーーーーーーーーーー
〖天幕外にて〗
華琳「……誰も居ないわね?」
秋蘭「はっ。 我ら以外には……」
華琳「そう…。 あれが元肉屋の何進。 流石、血筋だけで高位に着いた醜男だわ。 アレに戦術なんて聞くのは無駄、早く桂花に合流して、張角達を引き込む手を考えなければ………」
ドドドドドドド!!!
春蘭「華琳様ーーーー!!!」
華琳「どうしたの?春蘭。 道にでも迷っていたの?」
春蘭「華琳様!! 私はこんな所で迷子になんか、…む?」
秋蘭「どうした、姉者?」
春蘭「秋蘭、もし私が迷子になった場合、『迷子』と呼んでいいのか? 迷子は『迷った子』と書いて迷子だ! 私のようないい大人が迷子になった場合も、迷子と呼んでいいのか?」
秋蘭「……姉者、つまらない言葉遊びはいいから、何を華琳様に報告をしにきたのだ? あまり、待たせると失礼だぞ? 」
春蘭「秋蘭~~! わっ、わかった! 言うから!」
華琳「…で、どうしたの?」
春蘭「は、はい! 董卓軍が到着したようなのです! あの『伏竜の軍勢』と共に…………!」
華琳、秋蘭 「「 ! 」」
春蘭「『董』の牙門旗を先頭に、変わった服装をした一団が見えました。 一人椅子に座りながら地を滑るように動く者が……」
華琳「『伏竜の軍勢』は、怪我人にも無理を強いる軍勢なのかしら? もし、そうなら、この『曹孟徳』の敵ではないわ!」
春蘭「ち、違うんです! 華琳様!」
秋蘭「姉者?」
春蘭「わ、私は華琳様に仕え、度々ながら戦に出て、恐れを知らず戦いました……。 しかし、椅子に座る者と目があった時、初めて『恐怖』と言うモノを知りました…! この者から、早く間合いを開けたい、早く去りたい、帰りたいっと、恥ずかしながら………」
秋蘭「あ、姉者、本気で、そんな事を?」
春蘭「あぁ、本気だ! あれは人ではない。 正に『鬼』だ!」
華琳「 ………いいわ! 信じます! 」
秋蘭「華琳様! 姉者の戯言「本当にそう思う? 秋蘭?」…… 」
華琳「他の事にはあまり頭は回らないけど、直観力に関しては群を抜く春蘭が、ここまで怯えるのですから、間違いないでしょう! 本当に鬼かどうかは別にして………クスクス」
春蘭「酷いですよ~ 華琳様~!」
華琳「ごめんなさいね、春蘭。 でも、わかって頂戴。 もし、例え相手が鬼であっても、私の覇道は邪魔させない!!! 私は、誓ったのだから! 『曹 孟徳』の下、民の安寧を守ると!!」
春蘭、秋蘭「「 華琳様!!! 」」
華琳「そして、春蘭。……今は怯えていてもいいわ。しかし、次の戦場では、その鬼を喰らう羅刹になりなさい! 怯えたままでは、戦場で不覚を取るし、そのような心根では絶対に勝てない! と覚えておきなさい。 いいわね!
…それに、怯える春蘭を見るなら、寝台の上で見たいのよ……クス」
春蘭「はい!! 華琳様の御命令であらば!!!」
秋蘭「……華琳様、その時は是非、私も…………」
華琳「えぇ、秋蘭も一緒にね。 私一人で楽しむのは、無粋だから」
春蘭「華琳様~! 秋蘭~!」
秋蘭「フフ……」
★★★★★
【 小覇王の件 】
雪蓮「はぁ~~、疲れたあぁぁぁ! 冥琳、おんぶ!!」
冥琳「…あなたねぇ、私に喋るだけ喋らせて、何を疲れたふりをしているの! はぁ………。また、疲労が…………」
雪蓮「ブーブー、私、そんなに遊んでないモン!」
冥琳「…大将軍の謁見の時に、私に喋らせて、あなたはいつの間にか雲隠れ。探しに行けば他の将と仲良く喋って……「冥琳」…ん?」
雪蓮「………あの子の事、どう思う?」
冥琳「あの子? 「ほら、伏竜の!」…………! あの軍師か!」
雪蓮「そう! 「天城颯馬」と言う『伏竜の軍勢』の軍師……」
冥琳「…私が孫家の『周 公瑾』だと名乗ると、血相変えていう事が「お身体は大丈夫ですか?」だったか? 新手の誘いの手かと思ったが………。 どうやら、本気だったようで驚いたわ…」
雪蓮「……冥琳、お願い! 一度医者に見てもらって! 私のカンも颯馬の意見が正しいと教えてくれるの!!」
冥琳「だが、可笑しな話だ。 初対面の相手に、『あなたは病気に掛かっているかもしれない』というか? しかも、敵になるかも知れない軍師の病気を直してくれそうな医者まで、紹介するなんて……」
雪蓮「…………私だって、最初は疑ったわよ! 私の名前「孫策」を名乗ると、『伯符さんですか?』って…。まだ紹介していない字を喋るから、つい手が動いてね……剣で颯馬をバッサリやろうと思ったんだけど…」
冥琳「そうか、バッサリ…………って、あの軍師に怪我させたの! 雪蓮は?! 」
雪蓮「大丈夫、安心して。 確かに剣を向けたけど、護衛の女の子に阻まれちゃたの! 勿論寸止めにする気だったんだけど、アレを防ぐのはたいしたものよ。蓮華にも見習ってもらいたいんだけど……」
冥琳「お願いだから、こんな場所で揉め事なんか起こさないでくれる?! ただでさえ厄介な『伏竜の軍勢』に喧嘩売るなんて、雪蓮だけよ!! 」
雪蓮「まぁ、何もなかったからいいじゃない。 颯馬も許してくれたし。 問題は、無いわよ。 うん! 」
冥琳「………そういえば、雪蓮。 いつの間にあの軍師を名前で呼んでいるの? あっ、まさか……また………?!」
雪蓮「うん、真名を預けた…。 あの後、謝罪してから、いろんな事を喋ったの……。本当、なんであんなに喋っちゃたのかなと思うだけどね……。 とても、親身に聞いてくれた。
国の未来の事、家族の事、仲間の事、お酒の事、私の大好きな親友の事……。 たまに合いの手を入れてくれたけど、にこやかに笑いながら。 そうそう、母様の事も喋ったわ! 颯馬は、『一度お会いしたかった』って、寂しそうに……ね。
その時に、彼の目を覗いてみたら…。
凄く深くて澄んだ瞳、これなら信用出来るって思ったの。
あ、でも、ちょっと違うかな……。 うーん、信用というか、とても辛い悲しみ、数々の修羅場を越えたような瞳がね、私を安心させてくれるというか、寂しさを感じさせなくしてくれるのかな?」
冥琳「そう、ならば私も、再度会った時にでも真名を預けれる者か見定めるとしようか。 雪蓮を疑う訳ではないが、軍師として奴の腕前を見ないと、信用がな…。 それと、無事に帰還出来れば、診断を受けてみるとしよう。 今回、早くも雪蓮に疲れさせられたらから、体調も著しく落ちてるかもしれないし……」
雪蓮「ちょっと! その言い草は無いんじゃない?! …でも、ありがとう………冥琳!」
☆☆☆☆☆
【 天の御遣いの件 】
〖 大将軍何進 謁見前 〗
桃香「ほらー! 皆、早く! 戦が始まっちゃうよ!」
愛紗「桃香様、そんなに急いでは、転んでしまい………!」
ドタン!!
桃香「え~ん! ぶった!!」
鈴々「ニャハハハ、お姉ちゃん、鈍いのだ!」
一刀「ほら、大丈夫か? 気を付けないと、危ないぞ!」
桃香「ふえぇぇぇぇん! ご主人様!」
ムギュッ!!
愛紗「桃香様、くっつきすぎです! そ、それでは、ご主人様が…」
一刀「ほら、桃香。 愛紗が怒る前に離れて、ね?」
愛紗「…………………………」
朱里「ご~主人様、桃香~様、やっと、おいつい…………はわわ!」
雛里「朱里ちゃ~ん、ご主人様、いた………あわわわわ!!」
星「おやおや、これは熱い事で。 妬けますな(ニヤニヤ)」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
〖 大将軍何進 謁見後 〗
一刀「………ごめんなさい!」
愛紗「何を気にしているのか、まっーーたく、わかりません!!」
桃香「あ、愛紗ちゃん抑えて、抑えて……」
愛紗「桃香様! そもそも、あなたがあそこで躓かなければ!!」
桃香「ごめんなさい! ごめんなさい!!」
朱里「あのご主人様? 結局、どうなりました?」
一刀「あぁ、俺達は曹操軍とと董卓軍の間で、補佐に回れとなったよ! 大将軍にお願いして、渋い顔されたときは、マジ焦ったけどね。 これで、朱里の策の一つができた訳だ?」
朱里「いえ、まだわかりません! 右は覇王曹孟徳、左は『伏竜の軍勢』を従える董卓軍です! 私達の立場で、この二人を出し抜いて手柄を立てる事は難しいですが、今後の活躍のために頑張らなくてはいけましぇん……はわ!」
雛里「朱里ちゃん!」
星「主よ、幼き幼女の恥じる姿を堪能する事に、異議はありませんが、他の軍に対して、どうか気をつけていただきたい……。董卓軍の配下、いや盟友なのか分かりませんが、『伏竜の軍勢』には、特に…」
一刀「偵察ご苦労様、星。 ……………やはり、強い?」
星「『天の御遣いの軍勢』と別名を持つだけあって、覇気が段違いに違います。………おかげで秘蔵のメンマの味が悪くなる一方で。」
鈴々「覇気に当たると、食べ物の味が不味くなるのか?」
愛紗「…違う。 星、お前でも緊張してしまう程の猛者の集まりなのか? 味が悪くなったのではなく、緊張し過ぎて味覚が感じれなくなったのだろう………?」
桃香「……えっ?」
星「流石は愛紗、推察通り今も手のひらの汗が引かぬ。 武将は、どう見ても我らと同じ年頃か少し上だが、覇気が尋常ではない…! 如何に修行したら体得出来るか、教えてもらいたい程だ!!」
愛紗「そんなにもか! 一体何者何でしょう?! 『天の御遣い』を冠するはご主人様お一人のはず! それなのに…………!」
一刀「………俺、あの軍勢の正体が少しわかったよ…………」
桃香「ご主人様?!」 愛紗「なっ!!」 鈴々「にゃ?」
星「ほう?」 朱里、雛里「え~~~!!!!」
一刀「天の国に伝わる古の戦闘集団、『戦国武将』の将達だ!」
桃香達一同「…………………………」
一刀「確信もあるんだ。 こっちでいう将の「牙門旗」にあたる「旗差し物」が今見えて、『風林火山』の文字が書いてあったんだ! 」
雛里「……孫子ですね? でも、ご主人様の話を聞いて、真似したと考えられるのではないですか?」
一刀「それは無い。何故なら、その文字は天の国の文字で書いてあったから。それも、昔見た古の旗そのままの字体、書き方、旗の作りだったんだ。 これは、俺の言葉だけでは、再現出来ない……」
星「主、その者達は主と同じ天の住人なのですか? 失礼ながら主と比べても、雲泥の差がありすぎます。 決して主が惰弱とか貧弱とかいう訳ではなく、あの者達が強すぎるのです!」
一刀「星が俺をどう見ているか、よーくわかった。 あの人達は、俺がいた世界より約四百年前の世界の人達だ。 文明は俺の世界が上だが、戦闘能力、軍略等は、俺なんか話にならないよ……」
鈴々「お兄ちゃん、難しい事考え過ぎなのだ! 今は、両方とも味方だから仲良くすればいいのだ!」
桃香「鈴々ちゃん、良いこと言う! そうですよ、ご主人様! 今は味方なんだから、仲良くすれば事情を教えてくれると思うの。 最初から敵視すれば、相手だって疑ちゃいますよ! 」
一刀「そうだな。桃香や鈴々の言うとおりだ。 まずは、こちらから接して情報収集だ! そして、出来れば協力をお願いしよう!」
★★★★★
【 名門袁家の件 】
麗羽「おーほっほっほっほっほっほっほ! 渤海太守『袁本初』ですわ! おーほっほっほっほっほっほっほ!」
猪々子「姫が居れば、到着した報告の使者もいらないから、楽でいいや! なぁ、 斗詩?」
斗詩「そんな訳ないでしょう! 文ちゃん、相手は姫より位の高い大将軍だよ。 失礼がないように到着の使者を送らなきゃ!」
猪々子「えーー、あんなの只の肉屋のオッサンだぜ? アタイは、よく何進の肉屋に買い物行ったから、顔見知りなんだ。だから、大丈夫、大丈夫」
斗詩「それでも、駄目! 他の諸侯が丁寧に挨拶したのに、名門袁家がやらなかったら、どうなると思う?」
猪々子「偉そうなやな奴って思う。 勿論、斗詩は別! 」
斗詩「私より、姫を心配して!!!」
猪々子「へいへい。…さて、大将軍様に使者を出しておくか!」
◇◆◇
【 軍議?の件 その壱 】
〖その日の夜 大将軍何進の大天幕にて〗
俺が月様と信廉殿、道雪殿、宗茂と共に天幕をくぐる。
小太郎は黄巾賊の陣の偵察、華雄殿、信玄殿、紹運殿と義清は、軍勢の管理を任せている。 程遠志達も、黄巾を外して潜り込んでもらった。
先程まで、外に漏れ聞こえていた話声も潜め、諸侯が俺達を注視する。 正直、俺はそんな偉い奴じゃないから、注目されても何もでやしないぞ! と、心中でぼやく。
まぁ、中にはちょっとした知り合いもいて、俺と目が合うと座っていた桃色の髪の彼女がニコッと笑い、軽く手を振ってくれる。 その後ろに佇んでいた黒髪の眼鏡美人さんは、軽く会釈してくれた。
ただ、それだけで……何故、視線が強くなる? 今度は身内からも? 俺は、その視線を振り払うように動き、立ち止まっている月様に席を譲る。 そして、道雪殿をその横にきてもらう。
俺と宗茂、信廉殿と三人がその後ろに待機。
颯馬「…信廉殿、紙と筆はお持ちですね?」
信廉「えぇ、言われた通りあります。 え~と、袁本初と曹孟徳の似顔絵を描けばよろしいのですね?」
颯馬「はい! 策の一環に繋がりますので、なるべく似せて書いて下さい。 でも、無理は禁物ですよ! 」
信廉「はい! 頑張ります!」
信廉殿は、紙と筆を持ち書き出す。 信廉の腕だ、いい絵を書いてくれると期待する。 言っとくが本当に策に使うためだ!
宗茂が、本当ですか~?っと疑う眼差しを向けたから。
全く失敬な…………。 もし、気になるのなら、前の二人のような人を描いてもらい、肌身離さず持ち歩くぞ!
月「………へぅ」 道雪「……颯馬殿」
二人が、綺麗な顔を朱に染めて、俺に振り向き睨む。
颯馬「あっ、声が出てしまいましたか? すいません、ご不快でしたね。このような厳粛な会合に、浮ついた事を言ってしまって… 」
俺は二人に謝ると、更に睨まれた。
………………謝罪が足りなかったか?
☆☆☆☆
桃香「……愛紗ちゃん、あそこに『ご主人様』がいるよ?!」
愛紗「あの不意打ちの如く女性を口説き、好意を得ても空気の如く感じない朴念仁さ! 性格は瓜二つですね」
一刀「……何が瓜二つなの?」
桃香「え? え、えっと、あのお兄さんも、ご主人様と同じ周りが暖かい空気だねと、愛紗ちゃんと話してたの! ね、愛紗ちゃん?!」
愛紗「え、そ、そうです! ご主人様と何となく性格が似ているなと思ってたんですよ あは、あはははは……」
一刀「?」
★★★★
春蘭「……くっ! 駄目だ! あそこも、ここも…!」
秋蘭「…姉者、どうだ? 勝てるような隙が見つかったか?」
春蘭「 ……全く隙が見当たらない! だが、私は負けん!! 必ず打ち破って見せるぞ!!!」
華琳「…あら、清楚で可愛い娘じゃない! 足を動かさないのは、何かしら病でも患っているのかしら? ……赤く染まる白い肌、艶やかな黒髪、見たことが無いけど脱がしたくなる服、もの凄くそそらせるモノがあるわ! …………フフフフフフフ!」
秋蘭「姉者! 華琳様が!」
春蘭「か、華琳様、お気を確かに!!」
☆☆☆☆
雪蓮「ほーんと、見てて退屈しないわよね。 周りの将も一癖も二癖もあるようだし。 …あっ! 私の剣を阻んだ子が、こっち睨んでるわ! コワ~イ 助けて 冥琳!」
冥琳「自業自得だ。 この事が蓮華様の耳に入れば、また小言の嵐だぞ? 助け舟なぞ出すつもりはないがな!」
雪蓮「えぇぇぇ! 酷い、冥琳! 鬼、ブーブー」
★★★★
麗羽「あら? 見知った顔も見えますが、知らない顔も数多くいますわね! では、改めて紹介を! 私が渤海太守『袁本初』ですわ!
あの! 超! 有名! な『袁本初』は、私の事です!!!」
猪々子「わぁぁぁ………。姫、張り切ってるけど…、誰も見てないぞ? これほど華麗に無視されるのも、ある意味凄いな 」
斗詩「でも、しょうがないよ…。 噂が各地に流れた『天の御遣い』と今は煌めく『伏竜の軍勢』。 そんな名高い軍勢がここにいるのに、姫のような『幾ら有名でも知ってるよ』状態の軍勢じゃ、目新しさがないから注目されないよ!」
猪々子「うんうん、斗詩、その通り! それにしても、董卓軍の軍師の兄ちゃんは、とても強いとは思えないな。 どう見ても文官にしか見えないんだけど? あの噂って本当なのか? 」
斗詩「文ちゃん、あの噂って?」
猪々子「『伏竜の軍勢』が始めて戦をしたとき、あの兄ちゃんも戦ったんだってさ。 で、その時に摩訶不思議な徒手の技で敵大将を討ち取ったんだっていう話。 鎧の上から撃ち殺したとか?」
斗詩「私達だって、武器持ってやれば簡単だけど、素手は無理だよ?」
猪々子「だから、摩訶不思議な拳なんだよ! だから、あの兄ちゃん見てるけど、そんな強そうに思えないし。 ……あぁ、わからん!」
☆☆☆☆
??「(ボソボソ)……??ちゃん、あの「伏竜の軍勢」の軍師さん、なかなかいいじゃないかな?」
??「(ボソボソ)……??ちゃんもそう思う? ご主人様とあの軍師さんを受けにするか攻めにするかは、今後の活躍次第で考えていこうね。 あっ、貂蝉さんどうしようか?」
??「(ボソボソ)う~ん、難しいところだよね…。純愛? 鬼畜? 受け攻め? 寝取られ? 色々浮かぶけど……」
??「そうだ、華陀さんも入れて四人の話を入れても!」
??「それ、いいね! 後で少し案を纏めようか?」
愛紗「お前達、何を話している?!」
朱里、雛里「はわわ(あわわ)! ごめんなさーい!!」
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あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
前に読んだ真・恋姫×戦極姫の小説を読んだときに、「二人の主人公が合わさったらどうなるか?」というコメントを見たのが、一刀登場の理由になります。
自分としても、原作の一刀がとても気に入っているので、悪役にはさせません。 それなりの役も果たして貰おうかなと。
前の自分の作品に少し出しましたが、様々な絡みの中で出てきますので、よろしくお願いします。
ちなみに、この作品の『北郷一刀』は、原作よりも少し強くして居ます。流派も『示現流』ではなく『薬丸自現流』という示現流から別れた流派を使用という事にしています。検索するときは、『野太刀自現流』で出るかもしれませんが、同じ流派ですので。
また、よろしければ、次回の作品もお願いいたします。
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義輝記の続編です。やっと恋姫のキャラが多数出せました。
どこまで原作のキャラに近づいたか判りませんが、宜しければ読んで下さい。
12月20日、一部訂正しました。