第二十六話、『連合集結』
――反董卓連合軍糾合の檄文が発せられて、三月ばかりが過ぎたある日。今日、私達劉備軍は連合軍の集結地点に到着していた。
そこにはずらりと並ぶ諸侯の天幕。掲げられた旗の数々に、皆は高揚しないではいられなかったみたいだけど、私の心はずっと
冷えている。でも、ここからはそうも言っていられない。ここが、私の戦いの始まり。何としても、戦い抜かなければならない。
そして、私は私の役目を果たす。そう心の中で決意を新たにして、私達は陣の設営を始めた――
(side:雛里)
「――ふ~、やっと終わったのだぁ~」
「お疲れ様、鈴々ちゃん」
長い行軍の疲れもあってか、机にぐてっとなってしまった鈴々ちゃんに、私はお水を渡しながら労いの声をかける。鈴々ちゃんは
片腕をゆらゆらと挙げ、それで返事をしたつもりになったのか、突っ伏したまま寝てしまった。私は指示を出していただけだった
から、それほど疲れていないけど……。
私は鈴々ちゃんを置いて、外に出る。そこに広がるのは、もう見れば見るほどに壮観な光景。諸侯の旗が数多く翻っている。特に
目立つものは袁紹さん、曹操さん、公孫賛さんの旗だ。袁術軍と孫策軍はまだここには到着していないようで、その旗は見えない。
公孫賛軍は私たちより早く到着したみたいで、慌ただしそうな様子はない。何日か前に到着したのかもしれない。
(ご挨拶しておかなくちゃ……)
一刀さん達と入れ替わりに平原に来た星さんの話では、公孫賛軍は『計画』に参加することになったということだった。星さんは
私の助けにと一刀さんが派遣してくれたみたい。正直孤立気味だったし、とても嬉しい援軍だった。星さんは物事を冷静に見れる
視点の持ち主で、猛進しがちの愛紗さんや鈴々ちゃんには良い牽制役だった。桃香様は星さんの加入を無邪気に喜んで、「一緒に
理想の実現を目指そう」って星さんに言ってたけど、それに頷く星さんの瞳の奥にちらりと影が過ったのを私は見逃さなかった。
埋伏の毒――そんな文言が頭に浮かんだ。星さん……私もそうだ。私と星さんは劉備軍の毒で、公孫賛軍はそれと同時に連合への
毒。そうとは気付かせない毒――必要な情報が手に入っていれば常識的な策と言えなくもないけど、それにしても凄い。お二人は
軍師としても非常に優れていると言わざるを得ない。
「――雛里、鈴々はどうした?」
愛紗さんが向こうからやって来た――やっぱり、私に話しかける時には少し目つきが険しくなる。いつまで引き摺るんだろう……。
「天幕の中で机に突っ伏して寝ちゃってます……」
「まったく、だらしのない奴だ。連合軍はまだ完全に集結していないとはいえ……」
「出発が結構ぎりぎりでしたし……急ぐために行軍速度を上げ過ぎたのも大きな原因だと思います。兵の皆さんもいつもより……」
「うむ。しかし、公孫賛軍も出立は遅く、私達よりもこの場所へは遠いというのに、私達より先に到着しているとは。我が軍との
練度の違いということか……白蓮殿の軍は、ご主人様や御前様の調練により極めて精強になっているというのに」
私はちょっと俯いて目を隠すと、愛紗さんを睨む。この人達は……未だにお二人をそうやって勝手に祭り上げている。この問題は
鈴々ちゃんでさえ注意したというのに、この人たちは。朱里ちゃんも朱里ちゃんだ。未だに呼び方は同じまま。きっと、直すこと
なんて微塵も考えていないんだと思う……なんだか違和感がある。尊敬の意は感じられるけど……これは、何……?
「しかし、公孫賛軍が来ているとなれば、早速行かなければならぬな」
「……」
「ご主人様に御前様はあの日以来平原に戻られていない。何があったのかはわからぬが、白蓮殿は何かを知っているはずだ」
それは正しい推理。でも、愛紗さんの顔を見る限り、そんな推理をしている表情なんかじゃない。間違い無く公孫賛さんを疑って
いる。桃香様も朱里ちゃんも同じ。鈴々ちゃんは「まだかなー」って言って、帰りを待っているだけなんだけど、この三人は最近、
公孫賛さんの話題になるとそれはもう表情が険しくなっていたから。
「桃香様の命により、全員で向こうの陣に赴くことになった。雛里も来い」
「……はい」
「不満そうだな?」
「いえ、そうではないんです。ただ、愛紗さん。相手は州牧です。間違っても今のままの表情で行っては駄目ですよ」
「表情?」
「眉間に酷く皺が寄っていますし、眉も吊り上っています。それでは誰がどう見ても敵意剥き出しにしか見えません……」
「……」
「……お気持ちはわかります。ですが抑えてください。下手をすれば外交問題です」
「……わかった」
そう言って、愛紗さんは鈴々ちゃんを起こしに天幕の中に入っていった。残された私は考える――私も挨拶に行こうかなと思って
いたから、行くことそのものに不満は無い。でも、桃香様や愛紗さんはきっと……相手が誰か関係無く、一刀さん達が関わるなら
食って掛かると思う。少なくとも、今の二人からは遠慮が感じられない。桃香様なんて陣が完成するどころかここに到着してすぐ
公孫賛様の所に行くなんて言って、そのまま乗り込んで行きそうだったし……私の不安が、現実にならなければいいんだけど。
「にゃ~眠いのだ~」
「しっかりしろ鈴々。これから白蓮殿の陣地に行くのだから」
そう言って、愛紗さんは鈴々ちゃんを引っ張っていく。鈴々ちゃんは最近、あまりよく眠れないらしい。よくわからない夢を見る
からだって言ってたけど、夢の内容については絶対に教えてくれない。まさか恥ずかしい夢……はっ!?いけないいけない、つい
桃色の思考に染まりかけた。最近の私は張り詰めっぱなしだったから、ちょっとしたことでそっちに行ってしまうのかもしれない。
しっかりしなきゃ。星さんだって表立って私を支援するわけにはいかないし、私がしっかりしないと。
(……お二人は、無事なのかな……)
一刀さん達は無事に上洛出来たのかな。あのお二人の武力なら心配はないけど、無事を確認するまではどうしても心配してしまう。
でも、これから私は建前上はお二人の敵となる。『計画』遂行のため、私は私に出来ることをしなきゃ。
(side:白蓮)
「――ふむ。袁術と孫策はまだ来ていないか……」
私達公孫賛軍は曹操軍に遅れること二日、この連合集結地点に到着していた。到着してから既に三日経ち、今日になって平原から
劉備軍が到着したのを、私は陣の中から目撃していた。出発は多分同じ位だっただろう。私は出発の直前に、忍者を使って我々が
出立する旨を書き記した書簡を桃香に届けさせた。まあ、向こうからは何もなかったわけだが……。
遠い幽州から来た私達が劉備軍よりも先に到達するとは、我が軍の練度は相当に高くなっているようだ。これならば、乱世となり
麗羽が攻めてきても質で負けることは無いだろう。もう乱世なのだが……正直なところ、この連合は三文芝居もいいところなので、
腹癒せに倍額投げつけて帰ってやりたいところだが、一刀の……我が友の頼みだ。ここは忍耐しなければ。思えば私はずっと耐え
忍んできた……今回もそうするだけだ。それに今回は目的意識がこの上なくしっかりしているから、忍耐することはそう苦なこと
ではない。
「――白蓮様~」
「ん?どうした涼音?」
陣の外に出て周囲を眺めていた涼音が私の方に歩み寄ってくる。何か気になることでもあったのか……報告がマメなのは助かるが。
「劉備軍、かなり急いで陣の設営やってるよ」
「そうか……成程な。私を問い質しに来るつもりか。あいつのことだ、将を全員引き連れてくるだろうな」
「見え透いてるよね~。ま、それが桃香の良いところでもあるんだけどね」
確かに、あいつは正直者だ。それは美点として評価することが出来るだろう。しかしながらああも露骨だと、私はもう何もかもを
通り越して呆れる。あいつ、「ご主人様はわたしのなの!」とか思ってんじゃないだろうな。一刀への好意が非常に強いのは私も
よく知る所だが、今迄のあいつを見ていると、どうもな……旗印として掲げている以上、「皆の為に起ってくれた凄い人」という
認識なのはまあ間違い無いだろう。『天の御遣い』は乱世を収めるために大陸に降り立つという予言なのだから。涿にやって来た
あいつと再会して以来、どうにも私は一つの違和感を拭い切れないでいる。
(あいつの執着心は見るからに異常だった。まるで一刀達が自分達のために舞い降りてきたんだと思い込んでいるかのように……)
これが私が抱いている違和感だ。二人の存在は『天命』にも等しく、有為の人材であることも間違い無いから、欲しがる気持ちは
わかる。曹操や孫策も同じだろう。だが、それにしても桃香は異常なまでに二人に執着していた。特に一刀に……そりゃ、あんな
良い男は滅多にいないだろうけど、それにしたって異常だろう。
(こうは考えられないか?あいつ自身の戦う理由と、『天の御遣い』の表向きの存在意義は似ている。私は確かに、涿郡の発展の
ために二人の力を借りてきた。だがあいつはそれが不満だったんだ。私が二人を縛り付けているようでな……実際、私は二人を
縛り付けていたのかもしれんが……きっとあいつは、私が二人を擁していることを「縛っている」とし、自分達が二人を擁する
立場になれば「二人は本来の目的のために戦えるのだから、自分達は縛っていない」と考えるんだろうな……)
実際、私の仮説はそう的外れではないだろう。人間、自分の行為については中々目がいかないものだ。私だって、意識して自分の
やっていることに目を向けなければ、ともすれば桃香のように自分の行いを正当化してしまいかねない。しかし、もし私の仮説が
正しいとするならば、それは余りにも矛盾している。二人の理想……戦う理由を桃香が私物化している、ということになるからだ。
本人は「皆の為に戦っているから~」と主張してそれを認めないだろうが、あいつは涼音達が懸念しているように、自分の理想は
他者にとっても理想だから、皆が自分と同じ理想を抱いて戦っている、という考えがどこかにあって、他者の意志を無視しがちだ。
自分は正しいと思い込んでいるから。自問することをしない人間は、本当に性質が悪い。
「白蓮様?どうしたの?」
「ん?ああ……ちょっと物思いに沈んでしまっていたな。すまない」
「物思い、ね……やっぱり桃香のこと?」
「その通りだ。一刀から言われたことだけではない。色々と状況が見え始めているからな……この連合も、だ」
「ま、連合の大義名分なんて肥溜め送りの糞以下だからね。それを真に受けてる桃香って……呆れた」
非常に残念なことだが、桃香は調べようともしなかったということだ。確かに洛陽に放った物見はほぼ帰ってきていないのだから、
人の死を嫌う桃香の判断としては良いし、人間として見てもその判断は間違っていない。犠牲とは決して肯定してはならないもの。
だが、犠牲が必要になる時というのは往々にして存在するのだ。
「君主としては、あいつは未熟過ぎる。部下に『死んで来い』の一言も言えないようでは、為政者失格だな」
「そんなこと進んで言いたい奴なんて誰もいないんだけどね……あの子ったら自分の手を汚すのが嫌なのかな。まったく駄目だね」
「それもあるだろうがな。あいつはまだ子供だということだ。周囲の人間が言っているから正しい、これは甘えに過ぎない。自ら
掲げた正義の旗の下、自らの意志で知ろうとしなければ、幾ら正しいことを為さんと欲しても、それは最早正義に非ず。況して
あいつのような理想を掲げる者であれば、尚更多少の犠牲を払ってでも情報を得るべきなんだ。そうすることによって無意味な
争いを回避することも出来るだろう……状況に流され、ただ争乱に身を投じる者の理想など、決して天には届かない」
「……うわ。白蓮様、厳しいね」
「伊達に長いこと為政者をやってはいないのでな。私とて、部下を無為に死なせるのは絶対に嫌だ。だが、その死を背負って己の
理想の為に、正義の為に戦い続けるということが何よりも大切だとは思わないか?人の命は、軽くはないんだよ。命を賭けねば
正しく未来を切り開くための光が得られない時、それを得るために一つの命が失われるのなら、それを背負うべきが為政者だと、
私は思っている。犠牲を生むということの意味を履き違えてはならん。我らの掲げた正義が、独善とならぬためにもな」
「そうだね……でも白蓮様。それを桃香が理解すると思う?自分の理想ばかり追いかけて、現実を見る目が曇っているあの子が?」
「……今は無理だろうな。だが、この戦いで桃香がどちらに転ぶのかは決まるだろうさ。私達は私達の役割を果たそう、涼音」
「りょーかい。じゃ、『お仕事』の準備してきまーす」
ふっ……『お仕事』とはな。舞台上には既に役者が揃っている……連合内及び世間の認識と、実際の様相はまるで異なっているが。
こうして連合を組んでいる時点でこいつらは朝敵と化している。諸侯の中に劉姓は桃香しか見受けられない。劉璋は益州に籠って
出て来ないし、劉表は病に臥せっている上にお家騒動だ。劉璋は益州の立て直しで忙しいんだろう……心配だな。
さて、多くの諸侯は勝ち馬に乗ることしか考えていないだろうが、曹操と孫策はそれぞれに目的があるはずだ。だが桃香はどうだ。
周囲に流されて董卓を悪人と決めつけ、自ら進んで朝敵になろうとしている……よりにもよって中山靖王の末裔を自称する桃香が、
漢王朝に刃を向けるとは……大した皮肉だ。『正史』では漢王朝の再興を目指す劉備が、『外史』では漢王朝を立て直そうとして
いる善良な少女・董卓に刃を向け、乱世への狂った序曲に乗せられて踊る、愚かな踊り子と化すとはな。
「連合の意義など、最初から存在しない……この狂った連合が奏でる戦いの音色……お前はそれに踊らされるだけで良いのか?」
私は急いで陣の設営を進める劉備軍の陣地の方を見やりながら、ふとそんなことを、ここにいない友人に問い掛けていた。
(side:桃香)
「うわ~、すごい数……」
反董卓連合軍の集結地点に到着して暫く、急いで陣の設営をしながら、わたしは同じくこの地に集まった諸侯の軍勢を眺めていた。
まだ孫策さんは来てないなあ。袁術さんのところの客将だっていうし、袁術さんが来てないってことは孫策さんも来てないんだね。
後は……曹操さんの軍がわたし達の近くに陣を構えてる。落ち着いてるみたいだからわたし達よりも何日か先に来てるんだろうな。
陳留からここって近いもんね。目と鼻の先だし。平原からだと遠くて大変だったよ。
「……白蓮ちゃんもいる……」
曹操さんの陣よりも離れた所に、白蓮ちゃんの軍の陣が見える。あっちも落ち着いてるから、到着してから何日か経っているんだ。
涿からここまでだと、平原から来るよりずっと遠いのに、わたし達より早く到着するなんて……出発するっていう手紙は来たけど、
わたしはその手紙を読む気になんてなれなくて、朱里ちゃんに任せてしまった。
……白蓮ちゃんに呼ばれてご主人様達が平原を発ってからもう三月。出発までずっと帰ってこなかった。だから、わたし達は集合
期限に間に合うぎりぎりまで平原で待っていたけれど、結局二人は帰って来なかった。
黄巾党の残党にでも襲撃されたのか、或いはまだ白蓮ちゃんの所に留まっているのか、若しくは……と、朱里ちゃんは言っていた。
どれも考えられる可能性だと思うけど、わたしは三つ目の可能性を疑っていた。
「……白蓮ちゃん、まさかご主人様達を脅迫して……!」
そんなことは無いと思いたいわたしと、それしか考えられないというわたし。後者の方が強いように思う。だって、白蓮ちゃんの
理想はご主人様達の理想とは違うんだもの。平和な国を作る、その根本は同じだと思うけど、白蓮ちゃんのやり方じゃ、みんなを
救えず沢山の悲しみを生むだけだと思う。白蓮ちゃんのやり方じゃ遅過ぎるんだ。みんなを助け、笑顔になれないなら意味なんて
無い。あっていい筈がない。誰かが悲しまなきゃいけない世界なんて、そんなの許せない。
「ご主人様はみんなのもの……白蓮ちゃんのものじゃないんだよ。みんなを笑顔にするためにこんな滅茶苦茶な大陸に降り立った
人を、どうして縛りつけちゃうの……?」
幾ら考えても、わからない。わたしには、わからないよ。どうして縛り付けるんだろう?白蓮ちゃんの理想が何なのかは知らない。
それについて白蓮ちゃんは何も話してくれなかった。でも白蓮ちゃんのやり方じゃ、沢山の人が悲しむ。それだけはわかる。
この大陸を笑顔でいっぱいにするために降り立った人を、まるで自分が正しいって言わんばかりに縛り、自由を奪うなんて……!
利用するという意味ではわたしも他人の事は言えないかもしれない。でも、わたしはあくまで名前を借りただけ。同じ理想を持つ
者同士、一緒に頑張っていきたいって思って、何度も誘って、その甲斐あって黄巾党との決戦後に二人は来てくれた。これからは
もっとたくさんの人を守れるんだって思った。もっとたくさんの人を笑顔に出来るって思った。
みんなのために頑張っている人を縛り付けるなんて。自分の理想のためにあんな凄い人達を縛り付けるなんて。絶対に許せない事。
同じ理想を持ってるわたし達の所に来てくれた人を、また縛り付けるなんて……!
ご主人様達はあそこにいるんだろうか。いるとしたら、取り戻さなきゃいけない。これ以上、白蓮ちゃんにみんなのご主人様達を
独占させるわけにはいかない。
それに、なにより……
(ご主人様を白蓮ちゃんにとられちゃう……!!)
それが一番、わたしは不安だった。愛紗ちゃんや朱里ちゃんも同じ気持ちだと思う。
星ちゃんに訊いたけど、星ちゃんはご主人様達について「自分とは入れ違いになったのかもしれない」としか言ってくれなかった。
だから、詳しいことは何もわからない。でも、きっとわたしの推理は間違ってはいない筈……だって、そうとしか考えられない。
すぐに確かめに行かなきゃ!こんなことしていられない!
「桃香様」
「……」
「……桃香様?どうなされた?」
「……あ、え?星ちゃん?どうしたの?」
「眉間に酷い皺が寄っていましたぞ。一体どうなされた?」
「ご主人様と御前様のことで……」
「……ふむ。それについては既に申した通り、私は何も存じませぬ。しかし、書簡ではちゃんと涿を発ったとあったでしょうに」
「書簡でなんて、何とでも言えるよ……やっぱり、直接確かめないと信用出来ない」
「では、反董卓連合軍の檄文も、直接洛陽の現状を確かめないと信用出来ぬというわけですな?」
「それとこれとは別問題だよ、星ちゃん。檄文は袁紹さんと曹操さんの連名なんだもん、信用出来るよ」
「……権力争いという線は考えておられないと?」
「そんなこと……これだけの人が集まったんだもん。権力争いなんて、きっと関係無いよ……悪いことをしている董卓さんを倒す
ために……みんな、集まったんだよ、きっと。だから、みんなで力を合わせて、都に住んでる人達を助けるんだ♪」
「……」
「だから、早く二人には帰ってきてもらわなくちゃね。悪い人たちをやっつけて、都を笑顔にするために、ね」
「……そうですな。ですが、せめて陣が完成してからにしてくだされ」
「……わかったよ」
そうだよ……二人には早く帰ってきて欲しい。みんなで洛陽の人たちを笑顔にするために、この連合に参加したんだから……民に
希望を与える『天の御遣い』の二人がいれば、洛陽の人たちはきっと笑顔になってくれる。そうじゃなきゃ、意味が無いんだから。
□反董卓連合集結地点・袁紹軍陣地
「――おーっほっほっほっほ!こんなに集まってくださいましたのね!やはり、この名門袁家の頭領たる私の呼びかけには――!」
「――姫ぇ……そんなこと言っても、参加している諸侯は事前予想よりも少ないんですよ?」
「――良いじゃんか、斗詩。黄巾党との決戦の時よかずっと多いと思うぜ?」
「――私には増えたようには見えないんだけど……はあぁ……」
「――ところで、美羽さんはまだ着きませんの?」
「――あ、はい。まだみたいですね」
「――まったく、あの子には名門の生まれであるという自覚が無いんですの?」
(――美羽様も姫にだけは言われたくないと思うけど……)
「――顔良さん、何か言いたそうですわね?」
「――えっ?い、いえなんでもありません!」
「――そうですの。ならばよろしくてよ……あら、劉備軍が到着なさいましたのね」
「――あ、はい。先程到着されました。陣の設営が物凄く速いですけど…」
「――意気軒昂、ということなのでしょうね。一刀さんもいらっしゃいますし、頼もしい味方ですわね」
「――斗詩を助けてくれたしなー。一刀のアニキが来てくれたら百人力だぜ」
「――そうですね。でも、あの人に頼り過ぎるのはいけませんよ」
「――勿論ですわ」
□反董卓連合集結地点・曹操軍陣地
「――ふむ」
「――華琳様、劉備軍が到着したようです」
「――ええ、見えているわ……それにしても、劉備軍は物凄い早さで陣を設営しているわね。工兵部隊の練度が上がったのかしら」
「――間者からの報告では、劉備軍には常設の工兵部隊は存在しないとのことですが」
「――弱小勢力の泣き所ね。まあ、我が軍と比較する方がおかしいのだけれど。向こうは新興勢力だし」
「――しかし、我が軍は兵力そのものはあまり増えておりません。そして将の数も不足しております」
「――耳が痛いわね。今のところ、私達の泣き所はそこ。しかし、多少兵力が少なくても、質の良い将が多くいれば戦力は上がる」
「――はっ」
「――勿論あなた達は優秀な将よ。でも、数が絶対的に足りないわ。戦いは先ず数を揃えることから始まるもの。将も同じなのよ」
「――仰る通りです。では、どうなされますか?」
「――わかっているくせに」
「――策が必要とあらばお任せください」
「――ええ。頼りにしているわ、桂花……董卓軍には優秀な人材が多いと聞くわ……欲しいわね。我が覇道の為に……」
□行軍中・袁術軍
「――のぅ、七乃や。まだ着かぬのかの?」
「――はい~。でも明日には着きますよ~」
「――そうか。孫策はどうしておるのじゃ?」
「――孫策さんでしたら変わらず私達の軍の後ろを行軍中ですよ。旗印に統一感が無いですね~……銀色の後ろは真っ赤っかとは」
「――まあよかろ。しかし、反董卓連合軍とな。麗羽の発案だと聞くが……」
「――そうですね~。まあ、曹操さんとの連名という話ですけど」
「――皇帝陛下救出の大役をあやつだけに担わせとうはない。妾の子ばかりにいい顔などさせぬのじゃ!」
「――あらほらさっさ~」
「――七乃……お主、最近それを多用するようになったのではないかの?気に入っておるなら別に咎めはせんがの……」
□行軍中・孫策軍
「――この調子なら、明日には着きますよ~」
「――ありがとう、穏。それで、連合に参加している諸侯については?」
「――え~っとですねぇ……幽州牧・公孫賛、兗州牧・曹操、冀州牧・袁紹、豫州牧・袁術、平原国相・劉備。以上が有力な勢力
だと思いますがぁ~、他は有象無象ですねぇ~」
「――穏にしては辛辣過ぎる物言いだな」
「――だってぇ~事実ですからぁ~……」
「――ふむ。事実は残酷ということだな。人材が充実している公孫賛、軍の質が高く将も優秀な曹操が二大勢力と言ったところか」
「――劉備軍は気にならない?」
「――『天の御遣い』達を擁しているという点では、他とは決定的に異なる。関羽に張飛……最近では趙雲といった武将も加わり、
さらに諸葛亮、鳳統といった智謀の士をも擁している。人材の充実ぶりでは公孫賛軍にも引けは取らん。そう考えると曹操軍は
不憫だな」
「――天の時を得ているわね……人の和もあるみたいだし」
「――だが……それにしては不自然な所がある。お前もそれは承知しているだろう、雪蓮?」
「――そうね……本人の評判が中々伝わってこない。御遣い君達の影響力も考えものね~。上手いこと使わないと自滅するだけね」
「――お前のことだ。それ以上のことを考えているのだろう?」
「――うふふっ、まあね……でもちょっと不安なのは、全然勘が働かない事なのよね」
「――お前の勘が働かないということは……」
「――この戦い、何かが起きるわ。それだけはわかるの……でも、そんなことを気にしていてもしょうがないわ。今回の争乱……
董卓自身は悪くないかもしれないけどね……孫呉の未来のために、董卓にはここで舞台から降りてもらうわ」
「――ふっ……そうだな」
(side:雛里)
私達は焦った様子の桃香様に連れられて、公孫賛軍の陣地に足を運んでいた。星さんは陣でお留守番してくれている。
(……緊張してきちゃった……)
私は確かに劉備軍に属する軍師。でもその実、私は『埋伏の毒』であり、他勢力に内通……とまではいかないけど、主君の理想に
反する理想を抱く反逆者。本当に反しているのかどうかは定かではないものの、私が面従腹背を働いていることだけは間違いない。
それが私の信じた道だから、後悔するつもりは無いし、寧ろその道を選んだことを誇りに思いたい。
これから行くところで会う人達は、私の本当の意味での同志。
最近ではすっかり出てこなくなった口癖。人ごみも苦手は苦手だけど、前よりは怖くなくなった。それはきっと……私の中に強く
根付いてる何かがあるから。私を同志として迎えてくれた、一刀さんと朱里さん。お二人の強い意志が、私の心に深く、強く刻み
込まれている。それが何より、私を励ましてくれた。星さんもまた、私の同志。孤立しがちだった私を支えてくれた。
……今は、公孫賛さんと桃香様のやりとりを注視していよう。きっとそれも、今後やっていくために重要なことだと思うから。
「――来たか、桃香」
「……久しぶりだね、白蓮ちゃん」
桃香様にしては珍しく、怒りに満ちた低い声だった。それを知ってか知らずか、公孫賛さんは話を続けた。
「随分と陣を組み立てるのが早かったな。何か急ぎの用事でもあったのか?」
「……しらを切るんだね」
「しらを切る?まさか一刀達のことか?」
「それ以外にないでしょ……!」
「それならばちゃんと説明しただろう……一刀達は数日こちらにいただけで、ちゃんと涿を発ったぞ」
「じゃあなんで帰ってこないの!?わたし達のご主人様なのに!」
自分の目つきがすっと鋭くなるのを感じる。愛紗さんや朱里ちゃんもそうだけど、この人は……!
「ご主人様……か。果たして本当にそうか?」
「そうだよ!みんなを笑顔にするっていう理想を掲げた、わたし達のご主人様なんだよ!」
「……」
「なんとか言ってよ!」
「……あまりこういうことを言いたくはないが、お前達は一刀達に見限られたんじゃないのか?」
「!?」
「お前達がどのように一刀達を遇していたかくらい、見抜けないとでも思ったか?お前達、あれほど私が言ったのに、あいつらを
祭り上げて旗印にし、それで平原を発展させたんじゃないのか?私とて確証の無いことを言っているということはわかっている。
だが、民の噂はどうだ?一刀や朱里のことはこれでもかとばかりに伝わってきたが、お前のことは殆ど伝わってこなかったんだ。
まあ、あいつらがお前達の旗印になることを承諾したのなら、私は何も言わんが……可能性はなきしにも非ずだろう?」
公孫賛さんの仰っていることは正しい。勿論、一刀さん達は承諾していないし、公孫賛さんもそれを知っている筈。なのにこんな
ことを仰っているのはきっと桃香様を試すためだ。ここで桃香様がどういう反応を返すか……多分、私の想像通りだと思う。
「もちろん承諾してくれたよ!一緒にみんなを笑顔にしようって!」
やっぱり……言うと思った。
「ほう、そうか。ならば私は何も言わんし、今後も捜索は続けさせる。気の良いあいつらのことだ、ひょっとしたら青州の状況を
黙って見ておけず、孔融に協力しているのかもしれんぞ?こっちにはお前達を寄越せば良いわけだし。お前達、信頼されてるな」
「あ……」
「ちゃんと孔融にあたったのか?一刀達は誰かが困っているのを見れば見過ごせない。お前と同じさ。お前達に心配をかけてまで
そんなことをしているというのはいただけないが。だが、黄巾党の残党に邪魔されて連絡が平原まで来ていないのやもしれん」
(……公孫賛さん……凄い……)
なんという言い訳。だけど確かに、お二人はそういう話を聞いたら飛んでいきそうではある。多分桃香様もそう思っているだろう。
二人はあまり軍の活動に干渉しなかったけど、その気になれば劉備軍を乗っ取ることだって出来た。そして青州牧である孔融様に
協力しての黄巾党残党の征伐を行う……考えられない話じゃない。私達は領地を守り、勢力の拡大を図っていたけれど……これは
桃香様相手には効果的な説明だと思う。桃香様は人助けを何よりも重視するから。
「確かに、孔融殿からの書簡は届いたことがありませんが……」
「孔融とは洛陽時代からの友でな。宮仕えだったから本当に丁寧な奴だぞ?お前達が着任したらばちゃんと書簡を送ってくる筈だ。
それすらも届いていないということなら、一刀達が孔融のところにいるという連絡が平原まで届いていないのも頷ける」
「……」
「あいつらが賊ごときに負けるものか。我が軍が束になって掛かっても、四半刻もせぬうちに逆に全滅の憂き目に遭うからな」
「……そう、だね。そうだよね。うん、白蓮ちゃん、ごめんね?」
「気にするな。お前もあいつらを信じてやれ。仲間なんだろう?私だって、仲間の誰かが行方不明になったら心配するが……それ
以上に信じるさ。必ず生きて帰ってきてくれると。何故なら、私の無二の戦友達であり、家族だからだ。なあ、水蓮?」
「はい……私も、お姉様、と、同じ、です。劉備さん、も、信じて、あげて下さい……」
ああ、この人達はなんという策士だろう。言っていることは全くの正論だし、情を重んじる桃香様の気持ちを擽るような論法……
これは上手く追及を躱すと同時に、一刀さん達が来ていない理由をどう説明するかを桃香様に助言しているようなもの。桃香様の
ことだ、お二人がまるで自分達の許から離れていったかのように諸侯に思われることは避けたい筈。朱里ちゃんもそれは同じだと
思う。もし公孫賛さんに責任を擦り付けようとすれば、それはただでさえ弱小勢力で、仁徳を売りにしている桃香様の首を絞める
結果になる。また発言力の違いにより、桃香様より公孫賛さんの言い分の方が説得力があるということになる。幾ら一刀さん達に
依存して名前を売り、勢力拡大を図ってきたとは言ってもまだまだ弱小勢力だ。そんな勢力が、類い稀な実績をあげている州牧を
相手に責任を求めても、諸侯から足元を見られるだけの結果になる。公孫賛さんは暗にそう言っているんだ。これは朱里ちゃんも
見抜いていると思うけど……。
「……お話は分かりました。では、そちらにご主人様と御前様はいらっしゃらないのですね?」
そう朱里ちゃんが言った、その時だった。
「――それ以上白蓮様を疑われると、立場が危うくなるのはそちらですのよ、お姉様?」
聞き覚えのあり過ぎる声が、聞き覚えのあり過ぎる口調で聞こえてきた。
見ると、向こうから歩いてくるのは、朱里ちゃんに似た金色の髪で、頭の両側に輪っかを作るという特徴的な髪型の女の子だった。
腰には愛用の剣を帯びている。朱里ちゃんより若干背は高いけど、顔立ちはそっくりの女の子――静里ちゃんだった。
「し、静里!?あ、あなたどうして……!?」
「お姉様、雛里さん、お久しぶりですの。わたし、公孫賛軍に仕官することに致しましたの」
「久しぶりだね、静里ちゃん……いつ公孫賛軍に?」
「つい先日ですの」
当然、これは嘘だ。静里ちゃんが仕官したのは一刀さん達が涿に着いた翌日だと、星さんから聞いている。そして、静里ちゃんも
『計画』の参加者だということだった。正直、彼女までが?と思ったけど、一刀さん達の人を惹き付ける力は桃香様よりもずっと
上だし、納得は出来る。
「そ、それより!静里、さっきのはどういうこと?」
「あら、お姉様は気付いていらっしゃらなかったんですの?もしここで白蓮様に責任を求めるようなら、それは劉備さんの風評を
害しかねないということですの。徳高き劉備さんの家臣であるお姉様がそのような態度を取っていては、矛盾が生じますのよ?」
「そ、それは……」
静里ちゃんらしい指摘だった。当然ながら静里ちゃんは公孫賛さんの意図を正確に理解している筈だ。それでこうやって言うって
ことは、朱里ちゃんを試しているんだ。理想を貫き続けるということ、そして主君の名誉を傷付けないようにするにはどうしたら
良いか。ここで朱里ちゃんが疑いを持ち続ければ、桃香様の首を絞める結果になる。心の中で思うなら良い、それは自由。だけど、
口に出しては余計に桃香様の立場が悪くなる。静里ちゃんはそう言いたいんだ。
「朱里ちゃん、知り合い?」
そこで桃香様が朱里ちゃんに訊ねる。朱里ちゃんが答える前に静里ちゃんが答えた。
「申し遅れました。わたしの名は諸葛均、字を子窯と申しますの。朱里お姉様が御世話になっておりますの」
「妹さんいたんだ~。わたしは劉備、字は玄徳だよ。よろしくね」
「よろしくお願いしますね、劉備さん。お姉様は慌てがちなので、色々と御迷惑をおかけしてはおりませんの?」
「ちょ、ちょっと静里!」
「お姉様はわたしよりも年上なのですから、もう少し落ち着いて欲しいですの。あなたが慌てた所で、結果は変わりませんのよ?」
「はぅ……」
「あはは……なんだか愛紗ちゃんみたいな……」
「聞こえましたよ桃香様。それは一体どういう事です?」
「……あ、あはは~……」
「笑って誤魔化そうとして見せても駄目です」
なんだか急に空気が緩くなってしまった。そこでふと、桃香様が静里ちゃんに向かって問いかけた。
「ところで、どうして二人別々のところにいるの?姉妹なら、一緒の方がいいんじゃない?」
桃香様が静里ちゃんを引き入れようとしている……きっと朱里ちゃんを慮ってのことなんだろうけど、それは静里ちゃんに失礼だ。
静里ちゃんには静里ちゃんの信条があって、それに合致するから公孫賛軍にいるのであって、決して成り行きじゃない。桃香様は
その機微に疎いように思える。それは信念の違う他者という存在を受け入れられないからだと思う。
「御気持ちは有り難いのですが、わたしはわたしの信じるもののために公孫賛軍に居りますの」
「でも、家族がばらばらになるなんて……」
「そんなことを仰るなら、今は孫策軍にいらっしゃるわたし達三姉妹の長姉・諸葛瑾はどうなりますの?」
「え……?」
「わたし達は姉妹。それは変わりありませんの。ですが信条は各々違います。その点を御承知の上で、そう仰っているんですの?」
「……」
「お姉様が劉備さんを信じたのと同じように、わたしは白蓮様を信じて仕官しましたの。そこに口を挟まれる謂れはありませんの」
「な、貴様!桃香様のご配慮を……!」
そこで愛紗さんが怒りの籠った口調で、静里ちゃんに食って掛かる。どうもこの人は桃香様を絶対的に正しいと考え過ぎる傾向が
あって、かえって不信感を煽っているように見える。静里ちゃんは愛紗さんの怒気には動じず、静かに言葉を紡ぎ出す。
「関羽さん、幾らご配慮頂いても、わたしにその気持ちが無い以上、劉備さんのお誘いには応じられませんの。それとも、まさか
劉備さんのお誘いを受けないことは、あなたの中では相手に刃を向けるほどに重大なことなんですの?受け入れられないという
ことが信じられない、そう仰りたいんですの?あなた方の理想は誰もに支持されなければ成立しない、弱い理想なんですの?」
「貴様ぁっ!」
愛紗さんが偃月刀を振り下ろす――金属音。その刃を受け止めたのは静里ちゃんの『血焔熾刃』だった。腕は鈍っていないみたい。
「なっ……!?」
「言い忘れておりましたの。わたし、こう見えてもそれなりに剣を扱えるんですのよ?」
「くっ……」
「白蓮様が何も仰られないので申し上げますが、ここは公孫賛軍の陣地ですの。そこで刃を持ち出すということがどういうことか、
関羽さんは当然ご承知の筈ですの。もしわかっておられないのなら、武人としての礼儀を疑いますの。そして、刃を持ち出して
まで脅すとは……理想に賛同しなければ脅迫、ですか。あなたが劉備さんの理想の価値を貶めているようなものですのよ?」
「桃香様の理想こそ至上だ!価値などつけられぬ!」
「民にとっては、あなた方の理想は有益か無益か、そのどちらかしかないんですの。現実を見た方がよろしいのではないですの?
理想の価値を決めるのは民であり、あなた方ではありませんの。民を笑顔にする……笑わせないでください。そんな御様子では、
寧ろ『笑顔になることを強要している』としか取れませんの」
「もう良い、静里。そこまでにしておけ。だが愛紗、お前は流石にやり過ぎだ。ここで刃を持ち出せば、即座に斬殺されても全く
おかしなことではないんだ。いつまで甘えている気だ?もし私がその気になれば、その責を桃香に求めることも出来るんだぞ?
少しは己の態度を改めろ。でなければ、桃香に危険が及ぶ。それもお前が原因になってな。もう今日の所は帰れ。お前の闘気で
兵が怯えてはかなわんのでな。愛紗、私達はなにも桃香の理想を否定しているのではない。桃香のやり方が気になるだけなんだ。
それを忘れないでくれ」
「……はい」
公孫賛さんの仲裁で、何とかその場は収まった。私は内心ほっとしていた。愛紗さんは一度こうなると中々収まらないから。
それにしても、桃香様が仲裁に入らなかったのはなんでだろう……静里ちゃんの言葉に納得がいかなかったのか、それとも自分を
省みて発言を控えたのか。私としては後者であって欲しいんだけど……反省しない人だから、多分前者だと思う。
「桃香もな。諸葛均がこちらにいる理由を考えてもみろ。家族でも、信じるものが違うというのはままあることなんだ」
「でも……」
「でもでもだってでは何も変わらん。それは前にも言った筈だ。時に孔明、お前は納得しているのか?」
公孫賛さんの問いが、朱里ちゃんに向けられた。朱里ちゃんは少しの間思案し、少し寂しそうな表情を浮かべてそれに答える。
「……それが私たちの運命なら、仕方のないことだと思います。姉様も静里も、私と違う道を歩むことを選んだのなら……」
「静里の選択を尊重すると?」
「はい……静里は私の妹です。出来れば離れたくはありません。でも、私は水鏡塾を離れて桃香様に仕官しました。それは自分の
信条に従ってのこと。静里が自分の信条に従って公孫賛軍に仕官したとしても、私には口を出すことなんて出来ません」
「ふむ……成程な。わかった。ならばせめて誓おう。静里のことは私達が全力で守るとな」
「よろしくお願いします。私よりも余程できた子ですので、ご迷惑をかけることは無いと思いますが……」
「ああ」
朱里ちゃんは納得しているみたいだった。静里ちゃんと朱里ちゃんはすごく仲が良かったから、これも当然の結果だと思う。尤も、
朱里ちゃんと静里ちゃんは年齢が近いから仲が良いだけではないらしい。緑里さんとはあまり良好な関係じゃなかったと記憶して
いる。年齢の離れた緑里さんと二人の間には何某かの蟠りがあるみたいだけど、それも今の桃香様には理解出来ないかもしれない。
尤も、私もそれについては何も知らないんだけど……。
「朱里ちゃん……本当に良いの?」
「はい。それに、所属がばらばらになったからと言って、私たちが敵同士になってしまったわけではないんですから」
「……うん、わかった。じゃあ、白蓮ちゃん……わたし達は戻るね」
「うむ。私の勘だが、明日には袁術と孫策も到着するはずだ。軍議で会おう」
「うん。それじゃあね」
そう言って、桃香様は皆を連れて陣を出ていく。私は静里ちゃんと少し話したいことがあるからと朱里ちゃんに説明し、少しの間
残らせてもらうことにした。桃香様は朱里ちゃんにも残るように勧めたんだけど、朱里ちゃんはそれを断り、引き上げていった。
皆の後ろ姿が見えなくなった後、私は静里ちゃん達のほうに向き直る。
「……雛里さんも、『計画』に参加されるんですのね」
「うん……」
「理由は訊きませんの。その内に『計画』に参加するに足る『誇り』が息づいているのなら、何人であろうと拒みは致しませんの」
「ありがとう……」
「……ふふっ。雛里さん、少し雰囲気が変わりましたの」
「そ、そうかな……?」
「一刀さんに……惚れてしまわれましたの?」
「……へっ?……あ、あわわ~っ!?」
顔が真っ赤になる。久しぶりに口癖まで出て来た……なんて冷静に分析している場合じゃない!
「にゃ、にゃんでしょんなこと……!」
「噛み癖は直っていなかったのですね……わたしがそう思ったのは、雛里さんが堂々としていらしたからですの」
「え……?」
「公孫賛軍の方々と面識を持たれたことは承知しておりますの。それでも、以前の雛里さんなら先程のような一触即発の雰囲気に
中てられて慌てたりしていた筈ですのに……堂々とした佇まいのままでいらっしゃいました。それにはやはり何か……何か強い
御気持ちが雛里さんの中にはあるのではないかと……そう思いましたの。尤も、雛里さんは元々芯の強い方ですが……」
静里ちゃんの指摘を受け、少し振り返ってみる……確かにそう。今迄、私はあまり自己主張をしてこなかった。でも、今は確実に
何かが違う。私の中で何かが変わりつつある。その変化を与えてくれた人達を、意識してしまうのは当たり前のことだった。
「……そうだね……うん、静里ちゃんの言う通りだよ。私、一刀さんの強い意志を感じて……それがずっと、心の中にあるの……」
「やはりそうでしたのね」
一刀さんのことが好きなのかと問われれば、間違いなく「好き」と答えられると思う。あんなに強い意志を持った方になら、私の
全てを委ねてしまっても良い位だと思っている。それはきっと叶わない気持ちなんだと思うけど、私は一刀さんを慕っている。
「……私は、私の信じた道を……一刀さん達が示してくれた道を歩きたい。例え、それが終わりの無い地獄の道行だとしても……」
あの人が示してくれた道。それがどんな苦しい道であっても、私はそこを歩みたいと思える。私は、誇りを知ることが出来たから。
私の言葉が終わるのとほぼ同時、今迄静かに話を聞いていた公孫賛さんが私に歩み寄り、右手を差し出してきた。
「鳳士元……誇り高き我が同志よ。その道は我らも歩む道。お前は決して独りではない。私の真名をお前に預けよう。白蓮という」
「お預かりします……私の真名は、雛里です。よろしくお願いします、白蓮さん……」
「うむ、確かに預かった。さて……涼音、優雨、水蓮、風!」
白蓮さんが皆さんを呼ぶ。そして皆さんから真名を預かり、私も真名を預けた。以前から面識のある涼音さんや優雨さん、風さん。
そして初めて面識を持つ水蓮さん。人見知りの私が初対面の彼女に何ら警戒心を抱かなかったなんて、昔の私からすれば信じ難い
こと。水蓮さんは所作こそ武人のそれだけど、柔らかい雰囲気を纏っていて、なんだか安心させてくれる。この人が筆頭武官だと
聞いて驚いたけど、人が見かけに依らないという「例」……にしてはとんでもない「例」を知っているので、然程驚かなかった。
「劉備軍に身を置く雛里は大変だと思うけど……星もいるから、困ったらいつでも相談してね。あいつの助言は凄く的確だからさ」
「はい……ありがとうございます、涼音さん」
「それじゃあ、改めて結盟だね。白蓮様、あの言葉を……」
「ああ。雛里、『計画』参加者の合言葉は知っているな?」
「……はい」
そう。あの日、一刀さん達が平原を発つ時に教えられた合言葉。それは私達『計画』参加者の絆を象徴する言葉。それこそが――
「――ただ、誇りとともに」
その言葉を合図に、私達は示し合わせたように天に向かって拳を突き上げた。
――翌日。軍議に行った桃香様と朱里ちゃんからの話で、私達は先鋒を押し付けられたとのことだった。
でも、一刀さん達を欠いていることと、その理由を説明したところ、袁紹さんが兵力と物資の支援を約束してくれたらしい。以前
受けた恩もあるからって。あんまり良い噂は聞かないけど、根は悪い人じゃないみたい。単純とも言うけど。
「朱里ちゃん、董卓軍の兵力ってどのくらいなの?」
「連合が得ている情報よれば、二十万近くの兵力だそうです」
「二十万っ!?うわ~……連合より多い……」
私が想像していた通り……総大将を決めるのに手間取ってしまったので、これ以上時間を浪費しないためにも、汜水関と虎牢関を
抜けて洛陽に至る道を進軍することになった。函谷関という手もあるにはあったんだけど、弱小勢力の劉備軍にそれを意見出来て、
しかも諸侯を納得させる発言力などある筈もなく……あの難攻不落絶対無敵七転八倒虎牢関の突破に挑むことになってしまった。
私は留守番をしていたけれど、その時に一刀さんが寄越してくれた忍者の報告で、一刀さん達は汜水関にいることがわかっている。
一刀さんは何進さんがいなくなり空位となった大将軍に任じられたみたい。事実上、董卓軍を指揮下に置いたことになる。一方の
朱里さんは驃騎将軍に任じられている。さらに向こうには涼州連合の盟主である馬騰さんの名代として、かの名高い錦馬超が軍を
率いて援軍に来ているらしい。一体、どこまで手を回していたんだろうか……お二人は優秀な軍師でもあるけど、その先見の明は
凄いを通り越して怖いくらいだ。
緒戦からいきなり大荒れの予感がする。もし向こうに一刀さん達がいるとわかったら……。
(一体どうなっちゃうんだろう……)
もちろん、見当はつくけど……戦場で予断はしてはいけない。何が起きるかわからないから。あくまで可能性として考えるだけ。
そういえば、旅に出ていた灯里ちゃんが一刀さん達と一緒にいると聞いた時は跳び上がりそうになった。灯里ちゃんも『計画』の
参加者で、他にも何人かを旅の途中で仲間に加え、その上董卓軍まで味方に引き入れた。しかも、皇帝陛下直々のお墨付きという
凄さ。あの人達はどこまで凄い人達なんだろう……。
「連合軍は……勝てるよね、朱里ちゃん?」
「……兵力では既に負けています。そして向こうには二つの強固な関、汜水関と虎牢関があります。将の数は然程多くないという
情報を入手していますが、そこが付け入る隙かもしれません。大部隊でも細やかな指揮が出来るのとそうでないとではかなりの
違いが出ますから。戦いは先ず数ですが、それだけだと烏合の衆に過ぎません。それを丁寧に指揮出来る将が兵力に見合う数が
揃ってはじめて精強な軍ということになるんです」
「じゃあ、こっちには凄い人がいっぱいいるし、大丈夫だよね♪」
「気をつけなければならないのは『飛将軍』とも呼ばれる呂布……黄巾党の師団一つをたった一人で壊滅させた武将です」
「呂布……あの天下無双と名高い呂布か」
「はい。流石に連合軍の大兵力を一人で吹き飛ばせるとは思いませんけど、注意しなければ……」
朱里ちゃんは軍議に赴く前に斥候を放っていたので、戻ってくればこれ以上の情報が得られることになる。でも多分、忍者がいる
向こうにその手は通じない……ほぼ確実に捕えられる。確実な情報はおそらく連合側には入ってこない。向こうはこちらの正確な
情報を得て、既に防備を固めている筈。そして、向こうは一刀さん達『天の御遣い』を味方として得たことで、士気も高いだろう。
この連合軍ではまず間違いなく苦戦する……ううん、こっちも士気は高いと思うけど、思惑も練度もばらばら。御丁寧にも兵力で
負けているというおまけつき。将の数にしても、董卓軍側は多くの優秀な武将級の人物を味方に引き入れたことによって、全体の
統率力が上がっている筈。それに、公孫賛軍の事を例にとっても、一刀さん達が調練を担当したところ僅か一月足らずで飛躍的に
練度が上がったというから、きっと向こうの兵の練度も上がっている。つまり、「苦戦する」の範疇ならまだ良いほうということ。
「雛里ちゃんはどう思う?」
朱里ちゃんから私に話が振られる。勿論、私は思索に耽って話を聞いていなかったわけじゃない。このくらいの芸当はお手の物だ。
「……私達の兵力は二万程度。これで先鋒を務めるのは非常に厳しいです。まともに当たったのでは被害が大き過ぎます」
「そうだよね……でも、絶対に生き残らないと……」
「大まかな作戦は、袁紹さんから通達があるかと思います。先ずはそれから……」
自分で言ってて期待薄なのは重々承知の上。そうこうしているうちに袁紹軍からの伝令が来たけど、袁紹さんの作戦は案の定――
「――『雄々しく、勇ましく、華麗に前進』……なんだこれは!?」
(……やっぱり……はぁ)
案の定過ぎて寧ろ驚きそうになったくらい。星さんも頭を抱えてやれやれといった風だ。でも、これは逆手に取って考えれば良い。
「……逆転の発想です。つまるところ、細かい部分は私たちに任されているということです」
「む、そういう考え方もあるか……しかし雛里、先程お前は我が軍ではまともに当たれないと言っていたではないか?」
そう。確かに私はそう言った。でも籠城戦をやられては策を弄しても意味が無い。まともにぶつかるしか……それに一刀さん達が
出て来たら、劉備軍は桃香様の命で間違いなく突撃態勢を取ることになる。冷静さを失えば、どんな策も実行出来なくなるからだ。
「籠城戦をやられては、私たちはまともにぶつかるしか無いです。敵軍の配備状況にもよりますが、篭られてしまうでしょうから」
「むぅ……つまり策も意味を為さないというのか。朱里、お前はどうだ?」
「……雛里ちゃんと同じです……籠城戦で策というのは調略の役に立つ程度です」
「何にせよ、情報が必要だということか」
(白々しい……じゃあなんで最初から洛陽に物見を放つことをしなかったの……?)
私の中に怒りの炎が静かに燃え上がる。戦で兵が死ぬのはよくて、情報収集で物見が死ぬのは嫌。そんなの……事実を知っている
私からすれば、あまりに白々しい。この人達は戦の重さをわかっているんだろうか。わかってたらこんなことしないよね……。
「斥候が帰ってくるのを待つしかありません」
「そうだね……じゃあ、今日はこれで解散にしようか。なんだか腹の探り合いで疲れちゃった」
「桃香様に同じく……休んで気分転換をすれば、良い考えが浮かぶかもしれません」
「さんせーなのだ!」
「そうですね。では、解散にしましょう」
愛紗さんが桃香様の提案を受けて解散を宣言し、皆が三々五々散っていく。そして皆が天幕に入っていったのを確認し、私はこの
場に残っていた星さんに向き直った。
「……星さん」
「ん?どうした、雛里?」
「この戦い……『計画』の布石として重要な一戦です。一刀さん達は汜水関にいらっしゃるそうです」
「忍者から報告があったのだな?」
「はい……一刀さんは大将軍に、朱里さんは驃騎将軍にそれぞれ任命されたそうです。しかも陛下から直々に……」
「なんと……では、董卓軍は事実上、主の指揮下に置かれたというわけだな」
「そうなります……」
私は星さんに忍者からの報告内容を余すことなく話す。情報共有は大切だ。馬超さんの件になると、ふと星さんが遠い目になった。
まるで、旧友の名前をふと聞いて、懐かしく思っているかのような……そんな顔だった。星さんでもこんな顔をするんだ……。
「……そうか。翠がな。馬騰殿の所にも手を回したと言っていたが……やはり、あやつが来たか……」
「馬超さんとお知合いなんですか?」
「ふっ……昔の戦友さ」
そう言う星さんは、とても遠い目で空を眺めていた。私もつられて空に目を向ける。今日は雲がほとんどないから夕暮れも綺麗だ。
……一つ、訊いてみたいことが頭に浮かぶ。ここには他の皆の目は無いので、躊躇うことは無いと思って、私は星さんに訊ねる。
「董卓さんのことも、もしかしてご存じなんですか?」
「ああ、知っているさ……年の頃はお主と同じくらいかな。戦いを嫌い、物静かで普段から笑みを絶やさぬような愛らしい少女だ」
「……」
「あやつもまた、かつての友……恋敵と言っても良いか」
「ええっ……!?」
凄くびっくりした。董卓さんの人物像については一刀さんから聞いていたから驚かなかったけど、それよりも星さんが董卓さんと
恋敵の関係にあったなんて。星さんだって人間、恋愛をしないなんて言えないけど、それにしても……。
「昔の話だ。その恋は最早、叶わぬのだからな」
「……」
……恋敵ということは共通の恋愛対象が必要な筈。そして星さんは余程の男性でなければそういう感情を抱くことは無いと見える。
導き出される結論――星さんが認め、そして恋愛感情まで抱くほどの男性。そんな男性は、私が知る中では一人しかいない。
「……もしかして」
「ふむ。『鳳雛』と言われるだけのことはある。流石の洞察力だな」
「……やっぱり、そうなんですね……」
「そうだ。しかし、最早その恋は叶わぬ。それでも私はあの方の槍として、あの方が指し示す道を切り開くのみ……我が槍を以て
あの方の意を遂げ、共に駆けること以上に望むことがあろうか。この槍を我が忠義と愛の為に捧げるのだ、悔いも不満も無い」
「……私も、同じです」
「……それは、どちらの意味だ?」
「どちらも、ですよ。星さん、私も……あの人のことが好きなんです。心の底から尊敬してますし、お慕いしています。私の智を
以て、あの人の歩む道を共に歩みたい。忠義というのとはちょっと違いますが……」
「……恋は女を輝かせるものだ。例えその恋が叶わずとも……その想いは、きっとお主を強く成長させるだろう」
「はい……」
星さんの言う通り……これまで一刀さんを見てきた中で抱いたこの想いが、私をここまで来させてくれた。前の私だったらとても
耐えられないような状況にも耐えられるほどに、私を強くしてくれた。
でも、この想いは叶わないと思う。だけど、大切にしたい。水鏡先生も言っていた。いずれ恋をする時がきたら、その想いは何が
あっても大切にしなさいって。私はその教えに従う。誰かを想うことが、人を強くするのだと。一刀さんや朱里さんも言っていた。
その一刀さん達は誰を想って『計画』を作ったんだろう?
いつか知りたいと思う。あんな凄い人達が誰を、何を想って『計画』を作ったのか。それを知るためにも、今は。
「今は、戦わなくちゃ……」
「うむ、そうだな。この戦い……重大なものとなる。それは劉備軍にとっても、諸侯の軍にとっても……」
「大陸は益々混乱するでしょうね……劉備軍にいる筈の『天の御遣い』が董卓軍側にいるんですから……」
「だが、この連合軍は名前を美々しくしただけの、謂わば反乱軍だ。どちらが本当の悪なのか、それを民に知らしめる必要がある」
「そうですね……私達は私達の役割を果たしましょう。今は、猛毒を持つ蛇として……」
「うむ」
私達は沈みかけている夕陽に目を向ける。夕陽はいつも通り、静かに西へと沈んでいく。
その紅蓮の炎にも似た輝きは、心なしかいつもより強く見えた。
――まるで、漢王朝に宿る火徳の力は、まだ消えていないと告げるかのように。
あとがき(という名の言い訳)
どうも、Jack Tlamです。
いやー久しぶりに投稿した…ん?一週間前に第三章が終了したばかり?ならいつも通りのペースか。
卒論の仕上げに没頭していたせいか、感覚がおかしくなってますね…。
まあおかげで卒論は無事提出できたんですけどね。
今回は連合側の視点で、連合の状況を説明(と言うほど大層なことは説明してない)させていただきました。
というわけで、多少視点が変わることもありましたが、今回は雛里が主役でした。主人公不在なので。
最初の方は時系列がバラバラです。桃香視点の話が一番早く、冒頭の雛里視点の話が一番遅い感じです。
今回の主役は雛里なので、それを明示するために敢えて雛里を最初にさせていただきました。
まあ、雛里や白蓮と桃香の認識の違いとかをより明確化するという目的もありますが…
それ以上に、しっかりしている雛里や白蓮の後に桃香の話を持ってくることで…後はおわかりですね?
感情移入を重視した結果ですので、お許しを。
次回は今回の話よりちょっと時間を遡り、一刀側の話になります。
雛里が忍者兵から報告を受けていた通り、既に涼州から馬騰の名代としてかの錦馬超…翠が来ています。
短くなるかもしれませんが、次回もよろしくお願いします。
次回もお楽しみに。
次回予告
誇り高き西涼の戦姫・馬超。その真の想いが示される時、青年は何を思うのか。
次回、『その名は錦馬超』。
歩むべきは確かな大地。駆けるべきは未来への道。歩む馬の蹄の音が、心の蒼天に響き渡る。
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第四章スタートです。
今回は連合側に視点を移していますので、主人公不在です。ではでは。
※アンチ展開有
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