色々と騒ぎがあった宴会の後、リトは曹操に部屋を用意された。
別にいいのに…と断ろうとしたが、野宿する気かと怒られしぶしぶ借りたのだった。
そんでもって翌日、久々にちゃんと寝たリトは部屋を出ると……なぜか楽進が扉の前にいた。
しかも正座で。
「おはようございます、平沢殿」
「あ…うん、おはよ。なんか朝練でもしてんの?」
「いえ、平沢殿に弟子にしてもらおうと…」
「お休みなさい」
弟子に…と言った時点でリトは扉を閉める。
楽進は少し驚きながらも、立って扉を叩く。
…隣の壁から空間を斬って出てくるリトに気付かずに…
「あ、ちょっ…平沢殿!?平沢殿ーッ!?」
(悪いな、ちょっと卑怯だけど朝飯食いに行くわ)
「せっかく……流琉の朝食を食べようと思ったのに…」
「詳しく話を聞こう」
「うわっ!?」
ビュン、といつの間にか楽進の背後に現れたリト。
これは境界を司る程度の能力ではない…ただの脚力で移動したのだ。
「ひ、平沢殿!?」
「話は聞こう。そして、朝食が俺達を待っている!」
「あ、ちょっと…!?」
「さあ行こう、すぐ行こう!」
目をキラキラさせて楽進の手を引くリト。
よっぽど流琉の料理を気に入ったのか…
だが、
「あの、そっちは厠ですよ…」
「……ごめん、道案内プリーズ…」
「シュウマイうまー!!」
「どんどん食べて下さいね♪」
「おう!」
シュウマイをパクパクと食べるリトを見て顔を赤くする流琉。
妙に熱がこもってるような…、と楽進は思ってはいるが口には出さない。
それで、と楽進は自分の料理に唐辛子を大量に入れながらリトに話しかけた。
ちなみに隣には李典と于禁がいる。
「何故私を弟子にしてくれないのですか?なにかご事情でも…」
「いや、だって俺弟子とった事ないし。第一俺も修業してる途中だし」
「まだ強くなるの~!?」
「もういいんやないかい!?」
「うんにゃ、とりあえず目標は無敵超人だからな…まだまだ足りない」
口をモグモグとしながら答えるリトは楽進の朝食を見ている。
どんだけかけるんだろうか…そんな気持ちで。
「でもいいんやないか?弟子の一人や二人くらい…」
「だーかーら、弟子とった事無いから不安なんだって。俺の師匠の許可が必要かどうか分かんないし」
「そんな……」
「あ、だったら平沢さんの師匠さんに許可貰えばいいんじゃないの?」
できたら苦労せんわ、と李典が突っ込むが…リトは頭の上に電球ピコーンさせている。
三羽烏がまさか…と思っていると…やっぱりそうだった。
「それもそうだな……久々に行くか、師匠と兄弟子達のとこ」
「軽っ!?」
「いいんですか!?って兄弟子がいらっしゃるんですか!?」
「まあね、史上最強の弟子が俺の兄弟子」
「何その凄いんだかそうでもないのか分からない名前!?」
それぞれ突っ込むがリトはぶつぶつと呟いてるので、聞いていない。
むしろこの集中力はどこから来るのか…。
「よし、じゃあ楽進も行くか」
「え…それは、平沢殿の師匠がいる世界に…ですか?」
「そう、色々と準備が必要だけどさ」
そう言うと、リトはご飯を掻き込んで席を立つ。
流琉へのあいさつも済ませて庭に進んだ。
「ちょっと準備してくるからちょっと待っててな!」
「あ、はい!」
「何準備するんやろ?」
「さあ?」
―――――。
それでもって数分後…楽進達は庭に呼び出されて来ることに。
するとそこには……魔方陣のようなものと、その真ん中に大量の銀のメダルがあった。
「これは一体…」
「んじゃ始めるか…ほいっと」
「はうっ!?……」
「「凪(ちゃん)!?」」
リトは楽進の額に置いてあるのと同じメダル…セルメダルを当てる。
すると楽進は気を失い倒れるが、リトがそれを支えた。
于禁と李典が騒ぐが、リトは当てたメダルをメダルの山に放り込んだ。
すると…メダルは入れたメダルを中心に動きだし、形を変える。
そこにいたのは……今気絶しているはずの楽進だった。
「え…あ…!?」
「うぇえええ!?」
「な…凪ちゃんが二人ーーー!?」
「これは俺が持ってる錬金術師の書に書かれてある…って聞けよ」
とりあえず三人を落ち着かせ、説明し出すリト。
その内容は…
目の前にいる楽進は錬金術によってセルメダルで作られたもの。
元の楽進の意識をセルメダルに移してそうさせたのだ。
だが、体のシンクロ率が低く動きにくい。
歩くことぐらいは簡単なのだが。
「すごいなぁ…その錬金術っちゅーのは」
「まあ、不完全だけどな。制限時間は大体三時間…三刻ぐらいかな」
「それでもすごいの~!」
「あ、そうだ。楽進の服装変えないと、あっちで変人扱いされる」
えっ…としている楽進の肩に手を乗せると、そこから楽進の服装が変わった。
言うなれば…女子高の制服。
詳しくは公式を見てね!
「きゃ~~~!凪ちゃん可愛いの~!」
「これ…平沢はんのいた世界の服なん?」
「まあ…そんな感じ。正確には制服だけど」
「こんな…可愛い…服……私には…」
「似合ってると思うぜ?普通、男ならほっとかないだろうし」
リトの言葉にぷしゅ~、と頭から湯気を出す楽進。
こういった事に鋭い于禁は眼鏡の奥でキランと目を光らせていた。
そんなこんなで、リトは空間を斬って別世界に行く穴を作った。
これじゃなくても行けるのだが、本人曰くこっちの方がめんどくさくない、だそうだ。
「んじゃ、行ってきまーす」
「では私の体を頼んだぞ」
「「いってらっしゃーい」」
―――――。
穴を通った先にあったのは、大きな門。
上には、左から『梁山泊』と書かれた看板がある。
リトは懐かしいと言う気持ちと共に門を開けようとするが……楽進が周りの風景に大分驚いていた。
「…久しぶりだな…よっし入る…」
「ひ、平沢殿!この地面、石のように固いのですが!?」
「うん、ああコンクリートでできてんだよ」
「ではあの山のように大きいのは!?」
「ビルね」
「あの人が乗っている箱は!?」
「自動車」
「あの線が繋がっている棒は!?」
「電信柱……もうはいっていいかな?」
「―――おや?懐かしい顔じゃと思ったら、リッちゃんだったか」
突然、後ろから声をかけられ、戦闘体勢に入る楽進。
一方のリトはゆっくりと後ろを見た。
そこに居たのは、背がかなり高い筋骨隆々の金髪の老人…。
それを見ると、リトは深く礼をした。
「…お久しぶりです、長老」
「ちょう…え?」
「ふぉっふぉっふぉっ、やっぱり時間の流れが違うからかのう…こっちではリッちゃんが出発してそんなに経っとらんよ」
「そうですか」
「あの、平沢殿…この人は…?」
「俺の師匠の一人、無敵超人 風林寺隼人だよ」
師匠と聞いて、楽進は背筋を伸ばしたが引っ掛かりを覚える。
師匠の一人………一人?
まさか複数いるのか?
「平沢殿…まさか」
「うん、俺の師匠は五人いるんだ」
「それで、そちらはどちらさんかの?」
「あ、はい!私は楽…」
「――あぱ?リトの匂いがするよ!」
自己紹介を始めようとする楽進だが、意外な邪魔が入る。
門を開けて出てきたのは、これまた筋骨隆々の褐色の大男。
あぱ?と目的の人物を見つけると……胴上げをした。
「アパパパパ!やっぱりリトよ!久しぶりよ!お土産買ってきたかよ!?」
「ちょっ…アパチャイさん、ストップ!?玄関先で胴上げしないでくださいよ!?」
「ΟДΟ」
「おーい、この娘さん放心しとるぞー?」
目の前の巨人、アパチャイ・ホパチャイは胴上げを止めて楽進の方を見る。
すると驚いたのか、リトを落として固まってしまった。
そして、門の中に戻りながら衝撃発言をする。
「……アパパパパパパパパパパパパ!?皆ーーー、たいへんよーーー!?リトがお嫁さん連れてきたよーーー!?」
「アパチャイさんぅぅぅぅ!?」
「ほう、そうなのかの?」
「ち、ちちちちちちちちち違います!!?」
玄関先で何を叫んでいるのやら…
リトはアパチャイを追いかけ誤解を解こうとするが、時すでに遅し。
中にいる、合計六人と一匹に伝染してしまった。
「えっ…リトが帰って…ぇぇえええええええ!?」
「まあ、どうしましょう!?お赤飯を炊きませんと!」
「めで…鯛…」
「なんねリッちゃん、結婚したのね!?じゃあおいちゃんがお嫁さんのチェックを…」
「リトテメェ、何俺より早く嫁もらってんだ!?」
「ふむ…日本の法律では男女の結婚はまだ早いから……アパチャイ君、間違いなんじゃないかな?」
「ぢゅ!」
「……岬越寺師匠しか…まともな人いないのか…!orz」
入った瞬間orzしてしまったリト。
上から順に、白浜兼一、風林寺美羽、香坂しぐれ、馬剣星、逆鬼至緒、岬越寺秋雨、闘忠丸。
上二人と一匹を除くと全員リトの師匠だ。
「俺は……楽進の尊厳をマモレナカッタ…orz」
「まあまあ、とりあえず話を聞こうじゃないか」
「あ、はい…私は―――」
それから数十分…楽進は梁山泊メンバーに自分の事と自分の世界の事、何故ここに来たのかをはなした。
リトは部屋の隅で体育座りして放心していたが。
それで結果と言うと…
「いいんじゃないかの?」
「いいんじゃねーか?」
「いいと思うよ」
「あぱぱっ、持ってけどろぼーよ!」
「いいんじゃないかね?」
「いいとおも…う」
「満場一致ですか!?」
ケンイチが突っ込む通り満場一致だった。
まあ、分からなくもないが。
そして、まともに突っ込むケンイチに安心している。
梁山泊に突っ込み少ないし…
「いやいや、適当じゃないよ?リト君は誰かに教える事がかなり上手だ。武術の才能は並みだけど」
「orz」
「いや、僕も才能ないって言われたんですけど…orz」
「お二人ともしっかりですわ~!」
才能が並み&ないと言われた二人は落ち込み、美羽(風林寺)が励ます。
――あれ、こんな人だったっけ?
楽進はそう思いながら眺めていた。
「でも事実じゃないか。アパチャイ君に電子レンジの使い方を教えたり、録画も教えただろう?」
「はぁ!?あれ、リトが教えたのかよ!?」
「リッちゃんナイスね!これで“昼どきピチピチ温泉列島”をアパチャイに頼めるね!」
「…あんたまだそんなの見てたんすか!?」
「復活…した」
流石に突っ込まなきゃならないだろう……リトは復活。
そして正座している楽進にセクハラしようとする剣星の妨害を開始していた。
しかも速度が馬鹿早い。
「リッちゃん、そこを退くね!修行の前においちゃんが体つきをよく見るね!」
「嘘だ!毎回師父と出掛ける時に、セクハラの謝罪俺がするんですからね!?」
「じゃあおいちゃんに死ねと!?」
「バレンお嬢様呼びますよ!?」
高速で手足を激突させるリトと剣星。
ちなみにバレンお嬢様とは剣星の娘、馬蓮華のこと。
リトは別世界にいるときには別世界の人間をあだ名もしくは下の名前を呼ばないようにしている。
これはにている名前の防止のため…だそうだ。
「そうだ、リト君。これを持っていくといい。ケンイチ君と君の今までの修行メニューが書いてあるメモだよ」
「じゃあおいちゃんは漢方薬のメモを…」
「「ぎゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!?」」
「な…何故叫んで…」
「あ、あはははは…」
叫ぶ弟子二人に渇いた笑い声。
正直修行は地獄だった……かなり臨死体験したぐらいだし。
するとそう言えば、と長老がリトに聞いていた。
「リッちゃん、この世界を出てどのくらい旅をしたんじゃ?けっこう強くなっとるし」
「ん~、280年……ですかね。でもほとんど戦ってばかりで自主練できなかったけど」
「ひっ…平沢殿!?お歳はおいくつ…」
「一応十五なんだけど、別世界で生きた時間は380年くらいかな?」
桁が違う……そんな事を思いながら、楽進は再び仰天したのだった。
「もう行くのかの?」
「はい、制限時間がもう少しなんで」
門の前、リトと楽進は梁山泊メンバーにそういいながら空間を斬って穴を作った。
そろそろ制限時間……帰らなければならない。
そう思っているときに、楽進から声をかけられた。
「平沢殿…いえ、師匠。これからよろしくお願いいたします!」
「うん、よろしくな」
「これからは凪とお呼びください。戻ったら早速修行を!」
「分かってるって、でもちゃんと女の子らしいことしろよ?」
「えっ!?でも……こんな傷ですし…」
「凪は傷なんか気にならないほど可愛いから大丈夫だって」
「お…お世辞はほどほどに!?」
「本心なんだけどなぁ…」
そう言って穴の中に入っていくリトと凪。
完全に穴が閉じた頃には、今回のオチを…アパチャイがした。
「あ、お土産貰ってなかったよ!!!」
「ヂュウウ!!」
「そこぉぉぉ!?」
XXX「作者と!」
一刀「一刀の!」
X一「「後書きコーナー!」」
XXX「今回は別世界にコンニチワ回でした」
一刀「てか作者…前回の歌詞問題反省してんのか?」
XXX「深く反省しております…」
一刀「今度からは出だしぐらいにしとけよ?」
XXX「…はい」
一刀「で、なんか今回ギャグ多かったよね」
XXX「一応中盤はギャグ多めに設定してるんだよ」
一刀「て言うか、達人達が個性豊かすぎて凪が空気に…」
XXX「しょうがないじゃん、だって達人なんだもん」
一刀「で、前回から思うけどフラグが立ってるのちらほらあるな」
XXX「オリ主設定の通り、お前と同じ位の女タラシだぜ☆」
一刀「俺が!?何で俺が!?」
XXX「……無自覚がっ」
一刀「まあいいや、次回の真・恋姫†無双巡る外史と仮面の魔神十六話は!」
XXX「仮面編 “それでも戦い続ける”。次回は作者の好きな恋姫とプラスαのメイン回です」
一刀「もの凄くピンポイントー!!」
XXX「ちなみに、恋姫出身の仮面ライダー出ます。そして、ある恋姫のリトへの接し方が…」
再見ΟДΟノシ
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アパパパパ