No.643537

真恋姫無双~年老いてNewGame~ 八章・前編

びゅーてぃふるびくとりー

2013-12-07 23:11:11 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3139   閲覧ユーザー数:2563

 

「例によって例のごとく、俺は仕事に追われているのでした、まる。」

 

袁紹を打ち倒し、華琳が領土を広げてからその平定に思ったよりも労力を使うことになった。

袁家に従っていた連中の中には宦官の血統から成り上がった華琳をよく思っていないのも少なくない。

そのため各地で小競り合いが起こるたびにやれ春蘭だ霞だが鎮圧に借り出されていき、先日ついに凪と沙和まで出撃していった。

もとより警邏隊は本隊予備軍なので指し当たっての問題はないのだがそれでも戦が続くと訓練目的で警邏隊の手伝いをしていた連中も

本職に戻らざるをえないので、その分こちらの負担が増える、という寸法なわけだ。

 

「難儀なもんだなまったく・・・」

 

一人ごちてもしょうがないけどこの仕事量・・・半端じゃないよなぁ。

軍師連中の現状はというと、ちんきゅーは恋と一緒に盗賊の鎮圧。

詠は春蘭、季衣とともに南方を押さえに行ったので残ってる軍師は桂花、風、稟である。

さすがは王佐の才と称される才女といったところで、桂花は顔を輝かせながら華琳から与えられた仕事をこないしており、風は風でマイペースながらこちらもなかなかな勢いで仕事をこなしている。

稟は・・・まぁ相変わらず鼻血であるがそれでも俺の10倍はいい仕事をしている。

しかし文官のトップクラスがやるような案件はそれこそ簡単にはかたずかないものが多いわけで。

しかし仕事はたまる一方で。

そうすると比較的手の空いているやつが簡単な仕事を請け負わないといけないわけで。

それがすべて俺のとこに回ってきている、とこういう寸法だ。

つまり俺はいま報告書から街の警備、軍師の下働きを同時にこなしている。

これで仕事は楽な方だっていうんだから参ってしまう。

もともとは秋蘭が行っていたの仕事も多いのだが、その秋蘭と流琉を連れて袁家の残党の鎮圧中っていう・・・

つまり、いま残っている武将は俺と真桜のみである。

厳密に言うと俺は武将ではないので真桜のみである。

厳密に言うと俺は武将ではないので真桜のみである。

大切なことなので二回いうのである。

 

しかしそれも華琳の思惑通りであり、この真意はおそらく先日の一件から来ているものであるはずだから俺がとやかく言うもんでもない。

与えられた仕事をこなし、街の安全を守る。

それが俺の仕事なわけだ。

 

簡単だろ?

 

「簡単なわけあるかい!ウチかて隊長のそれの調整しながら仕事もせなあかんのやで?」

「まぁそういってくれるなよ。」

「はぁ・・・折角からくり夏侯惇将軍が手に入ったっちゅーのに全っ然いじられへんし・・・」

「これだけ人手が足りなかったらそりゃしょうがないよな~それこそ今戦でも仕掛けられたら俺も軍を率いろってさ。」

「そりゃそうやろな~って出来たで隊長、これでどないや?」

「お~、すげぇ!なんという再現度だ!」

「隊長も平気で無茶いうから大変やったわ・・・特にこの射出口の部分がやね・・・」

「ほぉ~・・・さすが真桜だな・・・虎牢関の時のと比べ物にならんね・・・」

「当たり前やん!おんなじもんばっか作ってるんは二流や二流!」

「そういうもんか?」

「そういうもんや!」

「職人のこだわりってやつか・・・それにしてもこの装飾もすげぇなぁ・・・」

「なに?その良さわかる!?やっぱ隊長、ええ趣味しとるわ~

 ここの金の龍なんか苦労したでぇ?まずもちーふは姐さんの武器の龍でやね・・・」

 

やべぇ・・・変なスイッチ入れちゃったか?

 

(一時間後・・・)

 

「・・・でなでな!この引き金の部分がまた苦労してなぁ?強度との兼ね合いが・・・」

 

(さらに一時間後)

 

「・・・ちゅうわけでこの細工を足すことにしたんや、これで隊長の言ってた通りの使用感になるはずでやね・・・」

 

こうして忙しい夜は

無駄話によって更けていくのであった・・・

 

 

………

………………

 

「機を見て敏なり」

好機を逃さぬよう迅速に行動するさまを指す。

今我が軍はもの凄く手薄なのは前述のとおりであったが、まさか数日で周りに動きがあるとは思わなかった。

携帯電話やパソコンがあるもといた時代だったらそりゃこの程度の速度では驚かないんだけど、まさか馬が現役で活躍するこの時代にここまでのスピードで情報が伝わることに驚いた。

しかし国境付近で動きがあり、しかもそこが突破されたと伝えられたならばこちらとて動かないわけには行かない。

まさかそのまま街で一戦構えるわけには行かないので一番近い出城に全兵力をつぎ込み侵入者に対して迎撃の態勢をとった。

 

相手はもちろん・・・劉玄徳。

大徳で知られる漢王朝の末裔中山靖王の子孫である。

「私に隙があったのなら噛み付いてきなさい。」

これは確かに華琳が言った言葉である。

劉備はそれを忠実に守った。

ただそれだけのことでだろう。

それはいい。彼女達も生き残るのに必死なのだ。

今回の場合明らかに無茶しているのは華琳のほうなのだ。

 

「やっぱりやり過ぎなんじゃないのか?本当に残ってんの俺たちだけだぞ?」

「ここで負けるようなら私の天命もそれまでってことよ。いいからはやく準備をなさい。」

「なぁ、これ話し合いでなんとか解決ってできないもんなの?」

「あなたねぇ…この期に及んでまだそんなことを言うの?」

「だって劉備って徳による治世とか言ってんだろ?だったらさぁ…」

「だったら、とっくに使いの一人がきていてもおかしくないわ。」

「…まぁ、それもそうだよな。こっちから使いは送ったのか?」

「まぁ、使いというほどではないけど、間諜は入っていたわね。

 バレた奴らは身ぐるみ剥がされて送り返された。

 結局、こういうやり方しかない世の中なのよ。いい加減覚えなさい。

 さぁ、無駄話はここまでよ。戦の準備は出来ているの?」

「あぁ、本陣の設営はとっくに済んでるよ。」

「そう、早いわね、ご苦労様。では陣を展開させましょう、あちらさんはお待ちかねよ?」

「それはそうと・・・・・・本当に大丈夫なんだな?」

 

俺は、思わずそうつぶやいていた。

目の前に広がるのは劉備の率いる大軍とはためく劉、関、張、趙の旗、噂通りならそこにおそらく公孫賛もいるんだろう。

三国志の英雄揃い踏み、といったところだ。

まさに総攻撃だった。

 

対するこちらは将らしい将は真桜だけである。

一番早く戻ってこられそうな将でも明日の昼かよくて朝。

それが現在確認が取れている中で最速らしい。

だからこそ華琳の敷いた陣が気に掛かる。

 

「篭城戦じゃないのか?」

 

「いいえ、打って出るわ。」

 

「負けて暗君と馬鹿にされようとも?」

 

「勝って名君の誉れを受けるためよ。

 ここで勝てば曹魏の強さは一気に世に広まるわ。ほかの連中への牽制にもなるでしょう。」

 

「勝てばそれだけみんなの負担も減るってことか・・・」

 

相変わらず華琳の目には二歩も三歩も未来が見えている。

俺には到底見えない未来を捉えている。

 

「そのためにも一刀、今回はあなたの命も賭けて頂戴。

 虎牢関くらいの冴えをもう一度見せてほしいわね。

 ・・・頼むわよ。」

 

そんな華琳が、それでも俺を頼っている。

ならば俺が返す返事は一つしかなかった。

 

「あぁ、任せておけ。」

 

「さぁ一刀、全軍を展開するわ!弓兵を前線に配置、敵の突撃の勢いを殺し迎えうつわ!」

「おぅ!」

「左翼は桂花、右翼は風に、稟と真桜は後曲に、それぞれの判断で本陣の動きを補佐なさい!」

「御意!」

「御意なのです~」

「第一射が終わり次第一刀は後曲に下がり左右両翼をみて相手を撹乱なさい!その混乱をついて本体は敵陣を打ち崩すわ!

 …一刀、私の背中は任せたわよ?」

「…死ぬ気で支えてやるさ。」

「良い返事ね、期待しているわ。」

 

小さく、しかし確かに笑みを浮かべたあと、華琳は全軍に号令を放った。

「聞け!曹魏の精鋭たちよ!この戦、我が理想と誇りを賭した試練の一戦となる!皆の命を預けてもらうことになるでしょう!

 しかし私も皆と共に剣を振るい死力を尽くし、勝利の鬨を上げようではないか!

 すべての敵を打ち倒し、その血で勝利を祝いましょう!全軍、前進!!」

 


 
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