No.643314

真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 17

風猫さん

白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話

真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。

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2013-12-07 01:39:09 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1352   閲覧ユーザー数:1253

~戦場:黄巾党との戦い・関羽~

 

「しぃぃぃねぇぇぇぇぇぇえぇぇえっぇえぇ!」

「テメェが死ねやぁ!」

「なめんじゃねぇぞ! くそがぁ!」

「テメェらにだけは言われたくねぇよ!」

 

 鉄と鉄がぶつかり合う音と共に飛び交う罵詈雑言、恨みもあれば怒りの声が辺りに飛び交う。その音に乗じるのは混じるのは、肉が裂かれる音、断末魔の絶叫、そして、血が地面へ落ちていく音。

 

「はぁ!」

 

 そんな中、美しい黒髪を振り乱して戦う関羽は、自身を狙ってきた黄巾党の男を一刀の元斬り伏せる。

 

「くっ、雑兵とはいえ、数が違うだけでここまで手強いとは……!」

 

 だが、ここで冷静さを失う関羽ではない。

 

「か、関羽様! このままでは前線が崩壊してしまいます!」

「分かっている! だが、後方の陣で戦況を見ている敵を引き出さねば作戦の意味がないのだ!」

「しかし!」

「もう少し、もう少しだけ踏ん張ってくれ! 頼む!」

 

 関羽の言葉は、兵の萎えかけていた闘志を再び燃え上がらせるのに十分だった。

 

「……はっ!」

 

 そこへやってきたのは、数人の黄巾党兵。

 

「おい! こんなところに女がいるぞ!」

「おお! 上玉じゃねぇか! 野郎ども、ひん剥いてお楽しみといこうぜ!」

「おうよ、俺の槍を、アンタのあ」

 

 だが、最後まで言わず、卑猥な事を言おうとしていた男の体は両断される。

 

「……ひっ!?」

「……失せろ。下郎なんぞに用はない」

「な、なんだと! おい! こいつをち――――――」

 

 だが、その言葉も最後まで言われず、全員が瞬殺されてしまう。

 

「ふん、下衆が。これ以上、この大陸に汚らわしいものを残すな」

 

 偃月刀についた血を振り払うその姿は、まさしく戦場の美しき鬼神。

 

「おおっ! 流石関羽様だ! このお方がいる限り、俺達が負けるはずがない!」

「そうだ、そうだとも! 負けるはずがないぞ!」

 

 その姿は、周りの兵たちの魂を燃え上がらせ、活力を取り戻させる。

 

「当然だ! 我らは天の遣いに仕える天兵なり! 人の道を外れた獣共に負けるなどありえぬ! だからこそ! 皆、あと少しでいい! 踏ん張ってくれ!」

 

 湧き上がる雄叫び。それは、崩れかけた前線を再び持ち直させた。その時だった。

 

「関羽様! 本隊の一部が前進してきます! 率いているのは劉備様の様です!」

「そうか、我らの援護をしてくださるのか……! これでもう少し時間が稼げる!」

 

 そこへ、慌てた様子の兵士が報告してくる。

 

「か、関羽様! 後方の陣の門が開き、敵軍の援軍が姿を現しましたぁ!」

「慌てるな! これこそが我らが待っていた展開だ!」

 

 関羽は皆に聞こえるように、澄んでいながら、良く通る声で指示を飛ばす。

 

「良いか! 桃香様の援軍と協力し、一気に押し返す! その後、部隊を反転させて、徐々に後退するぞ! 遅れるな! されども、退き過ぎるなよ!」

「はっ!」

 

~戦場:黄巾党との戦い・玄輝~

 

 俺達は本体から来た伝令の言付けを聞き、作戦実行の言葉を聞くと、スイッチを切り替えた。

 

「やっと鈴々たちの出番なのだ!」

「ああ。各員、気を引き締めろ!」

 

 その一声で張飛と俺の隊の人間は全員抜刀する。

 

「が、頑張ってください、鈴々ちゃん、御剣さん」

「任せるのだ!」

「ああ。そっちこそ、頑張れよ?」

「は、はい!」

 

 目を嬉しそうに輝かせる鳳統は少し弾んだ声色で話を続ける。

 

「部隊の後退指揮は、私に任せてください。鈴々ちゃんと御剣さんは殿の戦線維持に集中してください」

「了解なのだ! それじゃ、行こう! 玄兄ちゃん、雛里!」

「おう!」

「は、はい!」

 

 こうして俺達は関羽隊の後退支援のため、隊を動かしていった。

 

 その途中で、関羽隊とすれ違い、その中で関羽と視線が合う。

 

(任せろ)

 

 そう心に思って、そのまますれ違っていった。

 

(ん?)

 

 敵軍へ向かう途中、どこからか視線を感じた。集中して辺りを見渡すと、一人の細作らしき男が目に入る。

 

(どこかの、軍の人間か?)

 

 黄巾党の特徴である黄巾を巻いてないので、少なくとも敵ではないと思うが……。

 

(いや、今は目の前の戦いに集中すべきだ)

 

 敵でないのであれば、相手にする必要はない。

 

 細作の事を記憶の片隅に放り投げ、俺は迫ってくる敵軍へとそのまま突っ込んでいった。

 

「シッ!」

 

 抜刀時の斬撃と、返しの斬撃で二人を屠る。

 

「の、のやろう!」

 

 左から襲い掛かってくる賊に鞭のようにしならせた裏拳を当て、怯んだところを袈裟に斬り捨てる。そして、その勢いのまま右の敵を、斬ろうとしたが、

 

「御剣様に手出しはさせん!」

 

 その賊を公孫賛の所から一番に抜けてきた部下が切り捨てる。

 

「助かった!」

「いえ!」

 

 部下に礼を言うと、俺は左手で釘十手を逆手で抜き放ち、そのまま賊の首を叩き折る。

 

「黄仁! 他の奴らは!?」

「全員、三対一で当たっています!」

「負傷者の出た組は?」

「百七十組、どこも健在です! 戦死者も同様です!」

「よし! 行動は3だ! 各員、やられるなよ!」

『御意!』

 

 近くにいた部下は、俺が考えておいた暗号でそのことを近くの仲間へ伝えていく。暗号、と言っても、行動を番号で振り分けただけの物だが。1がとにかく生き残れ、2が味方を守れ、3が目に付く敵を確実に仕留めろといった感じだ。

 

「しぃねぇ!」

「ふっ!」

 

 何てことを考えていたら、後ろから賊が襲ってきたので、左の釘十手を鳩尾辺りに突き刺してから右の刀で上半身と下半身を両断した。

 

「お、おい! こいつまさか、黒死神じゃねぇか!?」

「風に流される霧のように命を奪っていくって噂の!? 嘘だろ!?」

 

 なんか、色々尾ひれがついてんな。

 

「ならば、その噂の真相、ここで見せてやろう」

 

 だが、ハッタリをかますには最高の素材だ!

 

「ひ、ひぃ!!!」

「か、敵うもんか! にげろぉ!」

 

 あっさり逃げていくやつは放っておいて、俺は逃げなかった奴を仕留めていく。

 

「ぐぉ! てん、ほーちゃ……」

「チー……ちゃ……ぐふっ!」

「アァ……れんほ、ちゃん」

 

 だが、そいつらは皆して同じような断末魔を上げて死んでいく。

 

(テンホウ、チーホウ、レンホウ、か?)

 

 戦いながらもその情報を考える。

 

(ちゃん付けで呼んでいるところから、女か)

 

 右からの攻撃を上体を軽く逸らすことで避けると、左から円を描くようにして攻撃をしてきた敵を両断する。

 

(ここまで同じ名が出てくるという事は、こいつらの頭の名前なのか?)

 

 今度は左から来た剣を釘十手で挟んで砕くと、刀で心臓辺りを貫いた。と、俺の近くに鳳統の隊の人間が近づいてきた。

 

「御剣様! 鳳統さまからの言伝です! できるだけ敵を引き離さないぐらいの速度で撤退を始めてくださいとのことです!」

「承知した! 黄仁!」

「御意に! 各員、撤退するぞ! 周りの速さに合わせろよ!」

 

 この作戦の肝は追い払わず、かといって諦めさせないという至極難しいバランスを取らねばならない。

 

「御剣様! 前方より関羽様の隊が!」

「こっちの支援に来てくれたか」

 

 正直、バランスの見極めが不安だったから、助かったと思ってしまった。

 

「よし! 関羽隊と合流するぞ! かといって急ぎ足になるなよ!」

『はっ!』

 

 近くにいた者は返事を返し、他の者へと移動しながら伝言をしていく。

 

「玄輝殿!」

 

 少しすると、俺達は関羽隊に合流し、共に後退していく。

 

「お怪我は!?」

「すると思ってんのか?」

「……それもそうですね」

 闘志を感じられる笑顔で答えてくれる関羽。

「北郷や劉備は?」

「共に先行して、我らの到着を待っているかと」

「そうか……」

 

 そこで俺はさっき考えていたことを関羽に話す。

 

「そういえば、テンホウ、チーホウ、レンホウって知っているか?」

「? 聞いたことがありませんね……」

 

 一体何なのです? と聞かれたので、俺は逃げなかった黄巾党の話をした。

 

「そういえば、私が斬った敵の中にもそんな事を言ってたような……」

「そっちでもか。やはり、頭の名前か何かか?」

「そうですね。玄輝殿の話を聞く限りではそう判断してもいいかと」

「あとで皆に聞いてみるか」

 

 と、そこで前方の隊に動きがあった。どうやら二手に分かれたようで、砂塵が左右へ動いていく。

 

「関羽!」

「ええ! このまま駆け抜けるぞ! 遅れるな!」

 

 前方の味方部隊のゲートをくぐり、俺達はすぐに劉備たちを見つけ、そこへ駆けて行った。

 

「ご主人様!」

「お兄ちゃ~ん!」

 

 そこへ別方向から張飛と鳳統が合流してきた。

 

「みんな、無事か!?」

 

 北郷は心底心配していたのだろう。皆の顔を見るなり、すぐに心配の声を皆に投げかける。

 

「あったりまえなのだ!」

「は、はい」

「もちろんですとも」

「当然だ」

 

 合流したメンバーのその返事を聞いた北郷は大きな安堵のため息を吐いた。だが、その顔はすぐに引き締まり、指示を飛ばしていく。

 

「よし! それじゃ反撃に移るぞ!」

「にゃー! 待ってましたぁー!」

 

 そう言って張飛は蛇矛を自分の頭で旋回させ、二度、三度とそれを振う。

 

「そろそろ我慢の限界だったのだ! ねね、思いっきり暴れちゃっていいんだよね?」

「ああ! 思う存分暴れちゃってくれ!」

「やっっったぁ! なら鈴々、ちょっとだけ本気で行っちゃうのだ! 愛紗ー、背中はお願いなのだ!」

 

 その言葉に関羽は優しげだが、闘志に満ちた表情で返事を返す。

 

「ああ。鈴々の背中は私が守ってみせる。……私の背中も任せるぞ」

「当然! じゃあ、みんな! いっくよー!」

『応!』

 

 張飛の言葉に力強く頷く兵たちは、自身の武器をもう一度握り直す。

 

「突撃っ! 粉砕っ! 勝利なのだー!」

 

 その号令の元、兵士たちは目の前の黄色い軍団に再び突撃していく。ただし、今度は手加減など一切ない。

 

「な、なんだよこいつら!?」

「さ、さっきと全然勢いが違うぞ!」

「つーか、狭ぇ!」

 

 混乱している敵は、ようやく自分たちが嵌められたことに気が付くが、時すでに遅し、だ。

 

「く、くっそ! 野郎ども! 陣形を組むぞ!」

 

 隊長格らしき男がそう言うと、敵は慌てて陣形を組むのだが、

 

「てか、陣ってなんだよ!?」

「う、うるせー! キレイに形が整っていりゃそれでいい!」

「……アホか?」

 

 やはり、賊は賊、ということなのだろうか?

 

「そんな付け焼刃の陣が通用するか!」

 

 俺は単騎で六人ほどの塊へ突っ込んでいく。咄嗟に振るわれた槍を紙一重で避け、突き出されている腕を槍ごと両断、絶叫を上げる前に返しの刃でその命を絶つ。次に襲い掛かってきた敵は剣が振り下ろされる前に右肩で当身を食らわせ、一歩退いてから下から縦に斬り裂く。後ろから来た敵は左手で抜いた暗器で額と心臓を射抜く。それとほぼ同時に前から来ていた敵を腹から二つに分ける。そして、再び左手で暗器を抜き、その左右後方にいた敵を仕留める。これでこの塊は消滅した。

 

「う、嘘だろ!? 六人をあっという間に!」

「か、囲め! 囲んで一気にやっちまえ!」

 

 まぁ、妥当な判断ではあるが、それは俺一人の場合だ。

 

「御剣様を守れ!」

「てめぇらなんぞに手出しさせるかよってんだ!」

 

 俺に集中していた奴らは後ろから襲ってきた部下に斬り捨てられていく。そして、その混乱に乗じて俺も近くの敵を肉塊に変えていく。

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!」

 

 逃げ出そうとしていた黄巾党の首を落としたところで、本陣からの伝令がやってくる。

 

「御剣様! 御遣い様からの伝令です! “浮足立っている敵を追い詰めよ”とのことです!」

「了解した!」

 

 まぁ、アイツがこんな口調で命令するはずがない。本当のところは “疲れてると思うけど、みんなで追っ払おう!”といった感じで言っていたのをこの兵が独自に解釈したのだろう。

 

(正直、この伝令、使えんかもしれん)

 

 あとで、孔明か鳳統にでも相談するとしよう。今は目の前の敵を蹴散らすだけだ!

 

 俺達の隊は敗走を始めた黄巾党の兵を討ち取るため、彼らの背中へ向けて全力で駆けだした。

 

あとがき~のようなもの~

 

はい、どうもおはこんばんにゃにゃにゃちわ、風猫です~

 

これにて、劉備陣営のみの黄巾戦は終了となりますが、次はいよいよ、あの方が……!

 

にしても、もうすぐ今年も終わりますね。いやぁ~、光陰矢のごとし、何てことわざもありますが、年を追うごとにその言葉の意味が身に染みてきますw ん? クリスマスがその前にあるよ~って?

 

え? なんですかそれ? 何かの食べ物ですか? 生憎食にはあまり興味がなくて……

 

てなわけで、いつものように何かありましたらコメントの方にお願いいたします。あと、前々回にも書きましたが、キャラ設定についての意見も募集中ですので、コメントをください。

 

では、次回~


 
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