No.643281

真恋姫無双~年老いてNewGame~ 七章・後編

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2013-12-07 00:02:39 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3245   閲覧ユーザー数:2685

 

「麗羽様!戦線が維持できません!」

「申し上げます!右曲が張遼の奇襲を受けて壊滅状態です!」

「同じく前曲許緒、典韋の奇襲を受け混乱しております!」

(七乃・・・これはもしやまずい状態なのではないかの?)

(えぇ・・・相当まずいようですね・・・どうしましょうか?)

(どう考えても負け戦なのじゃ、逃げるぞ、七乃!)

(はい♪では孫策たちに殿を押し付けてパパッと逃げてしまいましょう!)

「華琳さんがまさかこんなに兵を隠していたなんて・・・猪々子さんと斗詩さんを呼び戻して陣形を整えますわよ!

 これでは負けてしまいますわ!美羽さんたちはその間の時間稼ぎ・・・って、あら?美羽さん!?どこに行きましたの!?」

 

「なっはっは!袁紹の鼻っ柱に一撃かましたったで!

 次ぃ!もっぺんつついたる!張遼隊突撃ぃー!」

 

「・・・・・・・・・・・・やっつける」

 

「風さまからの指示だ!掛かれ!掛かれー!!」

 

「こっちにも隊長から指示がでたでー!一気に掛かりー!」

 

「突撃なのー!」

 

「さぁ、北郷からの指示だ。全軍構え!矢を放てぇ!!」

 

「えぇいまだか!我らにはまだ指示が来ないのか!?」

 

『こちら本陣、こちら本陣、そろそろ袁術を追撃されたし』

 

「来たか!行くぞ!華琳様の威光を存分に知らしめるのだ!!」

 

これで全部っと。

本陣に詰めていた俺の仕事の半分は終わった。

 

「ふぅ・・・あとは戻ってきた兵をまとめて終わりか。案外あっけなかったな。」

「えぇ、まさかここまで上手く策にはまるとは思わなかったわ。」

 

風が考え出した作戦とは「十面埋伏の計」

全部将を小分けにして潜ませて踏み込んできたところを

一気にガバアァッ!!

 

「相手がいのししさんだからできるのです~」

「それにしても見事だったわ風。」

「・・・・・・・・・・ぐぅ。」

「おい、起きろ風。」

「おぉ!急にお褒めに預かり照れ隠しで寝てしまったのですよ!」

「素直な子は嫌いではないわ。あとは春蘭が上手くやってくれればこの作戦は完璧ね。」

「春蘭だったら大丈夫だろ。なんせ華琳に一番長く仕えているんだからな。」

「そうですね、きっと大丈夫だと思いますよー

 それよりも袁紹追撃の指示を出したほうがよろしいかと」

「それもそうね。全武将に伝令!今回で麗羽たちの再興の道も閉ざしてやりなさい!」

 

 

「ご苦労様。」

「あなたもね。」

 

その後南皮へと逃げ帰る袁紹を追撃し、北方四州は華琳が統一した。

袁紹と組んで進軍してきた袁術は待ち構えていた春蘭と孫家に挟み撃ちにされ、消息不明。

ちなみにあっという間に落日の憂き目を受けた袁紹たちも消息はわからずじまいだったらしい。

 

こうして、いとも呆気なく官渡の戦いは幕切れを見せた。

 

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

 

「袁紹、あっけなかったな~」

 

ひさしぶりに休みが取れた俺は、自分の部屋でゴロゴロしながらそう呟いた。

出かけたい気がしないわけでないけど、真桜にいろいろと新しいものを作ってもらったのでそれの実験もかねて今日は室内。

年をとっても機械いじりとか分解組み立て作業が好きだっていうのはやっぱり男の子ってことなんだろうね。

そんなわけで一時の安息をたっぷりと楽しんでいるのではあるが・・・

 

「一刀、入るわよ。」

 

その時間はすぐに終わりを迎えた。

 

「はいよ、開いてるよ。」

「今日は部屋にいるのね?

 …せめて起きてから部屋に招き入れなさい。」

「ん~、はいはい。

 そういえばそうね。最近は詰め所で寝てることも多いからな・・・

 とはいってもちゃんと帰っては来てるんだぞ?」

「話半分で聞いておくわ。ところで・・・それはなに?」

 

華琳様が机の上のものに興味を示したようです。

 

「あぁ、これは手錠だ。真桜特製鋼鉄手錠の試作品。あいつホント器用でいろいろつくってくれるんだ。

 確かに無駄なもんも多く作ってるけど。これとか。刺すと刃が引っ込む小刀とか、あとはそうだな…こっちはびっくり箱とか。」

「一刀、無駄なものに予算を割く余裕などうちにはないのだけれど?」

「でもこういうのが必要経費なんだって…技術ってのは遊びから進歩することも多いんだ。

 んで、まぁ今日は何をしていたかというと、この手錠の強度と仕組みがこれで正しいかの確認を頼まれててね。あと一般の警備隊にも使い方覚えてもら

 

わないといけないから説明書きを作ってたんだ。」

「また貴方達は・・・でも、それはなんだか使えそうじゃない。

 それで?それはどうやって使うのかしら?」

「だからその説明を今作ってるんだって・・・

 そうだな、折角だからこれ読んでもらってもいいかな?」

 

そういって俺は説明書を華琳に渡した。

 

「私に試し読みをしろと?・・・いいわ、貸してみなさい。」

 

そうはいっても華琳様、顔が緩んでますよ?

そういえば曹操って好奇心旺盛だったんだっけか?

まぁいいや、楽しそうだし。

 

「ふん・・・・・・へぇ・・・これがこうなっていて・・・なるほど。大体わかったわ。」

「はやっ!もうわかったのか?」

「えぇ、この説明書もなかなかのものね。わかりやすく出来ているわ。

 ただ字は汚いわね。」

「・・・・・・精進します。」

「頑張りなさい。それはいいとして、この“手錠”とやらも天の知識なのかしら?」

「そうなるかな。縄での捕縛って相応の技術がいるからね。俺には到底出来そうになかったから作ってもらったんだ。

 いろいろ使い勝手がいいし、何より持ち運びが便利だ。」

「なるほど・・・でもちょっと重たくないかしら?」

「それはいま試作段階だからね。強度重視で作ってもらったんだ。これから軽さとの折り合いをつけていく感じだよ。」

「へぇ・・・よく出来ているわね・・・」

 

ガシャ

 

「俺もビックリしたよ。真桜に仕組みだけ伝えただけだったんだけどまさかここまでしっかりしたものが出来てくると 思っても見なかった。」

 

ガシャ

 

ん?あれ?

 

「ふむ・・・こうやって逃走を防ぐことも出来るのね。なかなかいいものじゃない。」

「便利だろうと思って作ってはもらったんだが・・・

 一つ、いい忘れてたんだけどさ・・・これいま、はずせないんだよね・・・」

「…へ?」

「いや、だから・・・これ腕からはずす時用の鍵穴がないんだよ・・・」

「だってあなたこれが正しく動くか試してるって・・・」

「腕じゃなくても試せるでしょうよ。」

「え?あ・・・。」

 

華琳の奴、こういうところで抜けてるんだから・・・

 

「しっかしどうするかね・・・これ・・・」

 

華琳の奴よりにもよって俺の右腕に手錠をかけてくれちゃって・・・

その反対側はもちろん華琳の左腕につながっている。

護送中の犯人じゃないんだから・・・

 

「鎖を切れば一応自由にはなれそうだけれど・・・強度の試験もかねているなら春蘭に切らせて見ましょうか。

 春蘭!しゅ・・・」

「だっ!ちょっとまった!ダメだ!春蘭はまずいって!」

「何するのよ!なぜ春蘭ではダメなの?あのこの腕を疑っているとでもいうのかしら?」

「春蘭に任せた場合、疑うのは俺の腕の安否だ!十中八九ぶった切られるわ!」

「・・・私が悪かったわ。」

「はぁ・・・だからといってこのままでいたら華琳のこと探しに来た秋蘭あたりに見つかって春蘭にってことになりかねんし・・・

 しょうがない、真桜のところまでいくしかないな。」

「でもあのこどこにいるかわからないわよ?」

「それはある程度予想は出来るさ。警邏は昼からのはずだから、今頃は惰眠を貪っているだろう。」

「・・・あなたの部下、仕事はしているわよね?」

「一応・・・させてるつもりではいるけどねぇ・・・」

 

 

で、探しに出たのはいいんだけど・・・

 

「やべっ。」

「ぶっ・・・痛いわね、どうしたというの?」

「いいから隠れろ。桂花だ。見つかったら面倒くさい。」

 

「一刀こっちに来なさい!早く!」

「なんだってんだ。」

「春蘭よ。腕に未練がないならこのまま進んでもいいのよ?」

「すみません。勘弁してください。」

 

「なぁ秋蘭」

「どうした姉者?」

「こっちから華琳様の気配を感じるんだが・・・気のせいだろうか?」

「奇遇だな。私もだ。」

 

「はっ!華琳様の香りがした気がするわ!あとあの精液男の臭いも!」

 

そんなこんなで隠れんぼが始まったんだが・・・

 

「くそう!なんだってこんなことに!」

「あなたが不完全なもの作らせるからでしょ!何とかなさい!」

「勝手に使ったのは華琳のほうじゃないか!」

「あなたが紛らわし言い方するからでしょ?」

「華琳が早とちりしたんだろ!人のせいにすな!」

「見つけた!華琳さ・・・華琳様!何をしていらっしゃるのですか!そんな男と一緒になって!」

「こっちだ秋蘭!こっちのほうから華琳様っぽい気配が・・・北郷、貴様華琳様と何をしている!」

 

あ~あ~見つかっちゃったよ・・・

 

「しかたないか・・・ほれ華琳手を貸せ・・・よっと」

「え、ちょ・・・なにするの?きゃっ・・・やめなさい!降ろしなさい!」

「いや、こっちも命がけだからな、いくぞ!」

 

この状態、所謂お姫様抱っこという状態である。

右手と左手をつながれてしまっているため負ぶうことは出来ないし、

正面に抱えるっていってもこっちのほうが走りやすいわけで・・・

 

なんて言い訳だな。

 

「くく、なんかこういうの楽しいな。ほれ、舌噛むなよ!」

「ちょっと!もっとゆっくり走りなさい!」

「まだ死にたくないからな!しっかり掴まってるんだ!」

 

見つかってしまったものはしょうがない。

後は一気に走っていくだけだ。

捕まったら・・・そのとき考えよう。

 

だから俺はそのときの華琳の表情に気がつかなかった。

気がつく余裕はなかった。

その後、なんとか無事に真桜の部屋にたどり着いた俺たちは真桜に茶化されながら手錠を分解してもらい事なきを得た。

ついでにその拘束力を身をもって体験した華琳に正式に認可をもらい、手錠は警邏隊の装備として採用された。

 

こうしてたまの休みは消費されていくのであった。

 

 


 
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